うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「悪党領主」感想

「殺せと言われたからには生かす方向で」

より苦しむほうを積極的に考えていく前置き。

 

 

 

えー、今回はこの節操なし!!さん製作のフリーゲーム「悪党領主」(http://inuchikushouta.e-dog.to/Game.html)の感想をつらつら書きますね。

リンク先どちらもR-18のBLサイトですので、年齢制限引っかかる方ご注意ください。

 

ジャンルはBLランダムダンジョンRPG、公式曰く「昔ながらの不親切なRPGです」とのことで、それなりにRPG慣れてる人向けの難易度になっているかと思います。

 

なお先んじて書いてしまうとこの感想文、実は未クリアの状態で書いております。はい。半端な状態で感想書いてしまって申し訳ないです。でも備忘録書かずにはいられないんです……。レビューでなくあくまで感想文ということで大目に見て頂ければと思います。

 

というわけで良かった点など。

 

真剣な口調であほえろをやらかす度胸

冒頭からしてかなりシリアス、かと思いきや。わりとお固いぞと覚悟を決めて正座で読み込み始めたところに、ふと飛び出てくる「卑猥神」の一単語に崩れ落ちました。笑いました不覚にも。これはずるいw

他にも、技名が四十八手だったり武器名がどこぞのAVのようなもじりだったりと、随所にあほえろっぽい要素が滲みでています。おかげでこちらもあまり難しいことは考えずにさくさく悪党を捕まえてざくざく凌辱できます。こういうふっ切れた世界観も時には良いですよね。遠慮なくやらかせて頂きました。

 

止めと溜めが印象的な文体

かなり文体が独特です。体言止めと――の多用があるからそう感じるのかな。他には無い語り口調で面白かったです。

真価を発揮するのはやっぱり濡れ場イベントですね。悪党調教ばっかり見てました。第三者視点に特化してひたすら状況描写を重ねていくタイプの書き方で、あまり痛がるそぶりはなかったおかげで、鬼畜ものもわりとフラットに読めます。内容はわりとドギツイ特殊プレイ多めなイメージでした。

 

ひそかに進展するサブキャラクター達

RPGに欠かせないのがNPCとの会話。家臣からのアプローチや、寝室警備の衛兵たちがじわっと仲を進展させていくのが面白かったです。萌えるぞ門番ズ!

彼らと夜伽したらパワーアップする、という、えろRPGならではのステータスアップ方法も興味深かったです。

 

 えろ向きな絵柄と決めれる個性

言ってしまえば汁ダク絵が合いそうな絵柄です。なるほど納得の18禁感。ボーイズよりがっちりした成人男性のあれそれにピンとくる方向けのグラフィックです。

主人公がメカクレなのも嬉しかったですねー。主役級のキャラにメカクレ属性がつくのは貴重な気もします。ありがたいです。

あと亜人キャラが多いので、人型の人外や特殊耳に萌える人はたまらないかと。

攻め受けは比較的妄想次第でなんとかなったり、仲間キャラの台詞オンオフができたりするのも固定厨な自分としては助かりました。

 

ボコスカ殴れて楽々回復のバトルシステム

 ターンごとにその種族によって恩恵を受けれる特殊システムが面白かったですねぇ。初めはこんなに毎ターン回復していいのか!?と驚きましたが、それでもなかなか手ごわい難易度なのがまた燃えます。

また、連続攻撃が可能になるアクセサリを併用することで、20連撃なども余裕で起こせます。戦闘スピードもある程度早いので、ざくざくざくざくっと敵のHPバーが削れていく様は見ていて大変スカッとしました。

弱点属性や耐性などがかなり重視されているので、雑魚敵でもある程度対処していかないとけっこうキツイところがあります。が、逆に攻略法さえ見つけた時の爽快っぷりはたまりませんでした。

 

 

 

一方難点としては、

 

 

全画面のメッセージウィンドウ

メッセージ表示が毎回大画面表示なので、ちょっとした一文お知らせで画面が切り替わるのはちょっと気忙しかったかなと。ルーン取得や技術書取得も普通のアイテムと同じように右上表示のほうが助かったなーと感じました。

 

押しても取れない悪党

これは仕様なのかわかりませんが、逃げ回るアイテム扱いのキャラが捕まえられないことがしばしば……? どうもジャンプしている時にエンターを押しても反応されないようなのですが、後半になると常に皆がぴょんぴょんしているので、回収にかなり手間がかかります。逃げ惑う市民を無理やり手篭めにすると考えれば萌え要素はありますが、多少作業感は否めませんでした。

 

 

倒しても消えない敵キャラ

そして敵キャラ。看板型の倒せば消えるキャラと、シンボル型の倒しても消えないことがあるキャラの二種類います。

まず共通して言えるのが、逃げるコマンドの意味がほとんどなくなっていること。特に前者の場合、逃げても無敵時間のようなウェイトがないので、メニューを開く間もないまま再戦になってしまいます。ボス前のフロアになると敵の数もかなり多いので、10連戦等々も余裕で起こります。耐性や戦い方がある程度わかってきても、エンカウントがこう多いとちょっと大変でした……。

続いて後者、消えない敵について。いや、何度か殴れば消えはするんですが、強敵なので避けるべきです。が。ただでさえ狭い道が多いランダムダンジョン、このタイプの敵複数匹に出入口を塞がれて、ほぼ詰んでしまうことも。

ただでさえアイテムも階段も全部動き回るシンボルシステムなうえ、障害物が多い&敵が多い&逃げられない、でなかなかダンジョン探索が楽しみきれませんでした……。

作業感が強かったのでもうちょっと逃げる隙が欲しかったなあと思いつつ、女性向けに珍しいハードめの難易度なので、需要があるにはあるのかもしれないとも感じつつ。少なくとも自分にはちょっと合わなかったみたいです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

BLとしてもゲームとしても上級者向け、大人のゲーマーなお姉さま方に向いている一作だなあと感じました。

 

 

 

さて、最後に現在のプレイ状況などめもめも。ネタバレ入るので追記に畳みますね。

 

 

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フリーゲーム「MerryMerry」「モタモタバレンタイン」感想

「身近にいるからたくさん増える」

そのうち当たり前になる前置き。

 

えー、今回はへもへもさんところのフリーゲーム「MerryMerry」「モタモタバレンタイン」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

どちらも女性向けの短編恋愛ゲームです。思わず一気にプレイしてしまったので、紹介もセットで失礼。といっても相互に関連性はなく、それぞれ単品で楽しめます。

 

というわけでさっそく順番に。

ぼかして書いてはいるつもりですが、念のためネタバレ注意です。

 

 

 

『MerryMerry』

 

 

[概要]

サンタな少女とその師匠がミニゲームしつつドタバタする、女性向けクリスマスゲー。

 

[ストーリー]

イロモノキャラ注意の説明書き通り、序盤からなかなかにどぎついです。中には世知辛いエンドに現実を思わされることも。とはいえ誤解なきよう、序盤のエンドはとことんギャグコメディに走っていますし、全体的にもイケイケハイテンションな雰囲気でした。

何より初めの号令が本当ツボですw 演出もあいまって吹き出しました。

一方、回想シーンになると一気にシリアスへ変わります。あの始まりからこんな味も出せるのかーと驚かされました。

やっぱり鬱展開好きとしてはメリの背景事情に注目したいところ……。今、彼女がくるくる表情変えてにっこにこしてるのは救われますね。

公式の紹介にある通り、確かに糖度は控えめ。けどこの二人はそのくらいの距離がベストと思わされる、いい感じに家族愛も含めた明るくあったかい話でした。

 

[システム]

通常のノベルパートの他、2つのミニゲームと1つの探索要素があります。

ミニゲームはけっこう鬼門で、手ごわかったです。アクションのほうがクリアできない一方で、ランダムのほうは逆にいつも勝ってしまうというw いやー苦戦しました。

探索のほうは、単に調べるだけじゃなくって回想も絡めてあって、進めていくとどんどん二人の思い出がわかるようになっていくシステムです。これぞ乙女ゲームって感じがしましたねぇ。二人の関係性がわかるといっそう萌えます。

その他基本システムも勿論充実してました。

 

[一言]

師匠×弟子ものや、ラブコメ、家族愛、クリスマスゲーをお求めの方向け。

 

 

 

 

 

『モタモタバレンタイン』

 

 

[概要]

ファンタジー学園ものが舞台の恋愛調合ノベルゲー。吸血鬼×狼娘なカップリングになってます。幼馴染萌えの方も是非に。

最近吸血鬼萌えが激しいので思わずガッツポーズしました。

 

[ストーリー]

説明書きにはほのぼのとありますが、個人的にはやっぱりこの作品もコメディ要素が強かった印象でした。一部のギャグエンドが強烈だったからかな。いわゆるイロモノネタもちょこちょこありはしますが、何でもありな超展開こそ調合ゲーあるある、これはこれで笑いながら楽しませてもらいました。

既にヒロインのモカには想い人がいる設定なので、そのぶん片想い・片想われな描写が多めです。特に片想われをヒロイン視点で描写するのは難しそうなイメージですが、サブキャラのエリンが良い動きをしてくれてました。さっすが良い親友だ。片想いならではの健気なエピソードも多くて、ぐっときますねぇ。

基本的にどのエンドもあっさり味かコメディ風で終わりますが、唯一の恋愛エンドでは糖度がかなりたっぷりです! 見惚れてしまいそうなスチルと共にあんな台詞を言われちゃそりゃあ、きゅんときますね。見ているこっちが照れてしまうくらいロマン溢れる展開でした。

 

 

[グラフィック]

調合ゲーということで組み合わせによるエンド数が多く、それに合わせてスチルも多めです。ぶっとんだものからほのぼの癒されるものまで多種多様でした。お手手つないでるスチル――って書いたら既プレイの方には伝わるかな。あれがお気に入りです。

また、おまけの立ち絵閲覧モードが素敵です! ゲーム内では見られない全身図が確認できるので、思わず舐めまわすような視線を向けてしまいました。アレンジが効いてはいてもエリンと一緒の制服ではあるんですねぇ。着る人が違うとこうも違って見えるのかー。

立ち絵だとナルシスト全開のドヤ顔が大好きです!!!

なお、全クリすると起動画面に変化が起こります。すごくうっとりできる、ロマンチックな雰囲気なのでお見逃しなく!

 

[攻略・システム]

システム自体は3つのアイテムから好きなものを選んで組み合わせる、オーソドックス調合ゲーです。攻略も公式サイトに記載されているので詰まることはないかと思われます。

一直線に全エンド回収を目指すと、貴重な会話変化をちょこちょこ見逃すことになってしまうので、何度か色々試してから見るといいかもしれません。

 

[一言]

幼馴染萌え、吸血鬼ネタ、ラブコメなどピンとくる方向け。

 

 

 

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フリーゲーム「せつなゆ魂」感想

「今日が明日に続くための証明を」

夜になると皆死ぬ民族の前置き。


 

えー、今回はシャイムの私目(http://www.eonet.ne.jp/~shime/index3.htm)さんところのフリーゲーム「せつなゆ魂」(http://www.eonet.ne.jp/~shime/setsunayu/

)の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

さて、この作品。唯一無二だなあというのが第一の感想でした。似た形式のゲームは滅多にお目にかかれない気もしたり。

何がどう独特なのか、プレイしてもらった方はわかるかと思うのですが。まあ、まずは初回の感想から。

 

 

 

・起動は証明の始まり

 

起動してまずポカーンとなった方、たくさんいるんじゃないでしょうか。

包み隠さず書くと、「ゲームスタート……あれ?」「操作説明で全然知らんキャラが出てくるんだけど」「医療用語わからぬ」等々が私の最初の感想です。

しかも最初に選ばされるルートは一本道のバッドエンド。専門用語も出てくるけど、正直頭に?がいっぱい。

……こんな書き方だと、さぞかし鬼畜でつまらんゲームだと思われてしまうでしょう。

しかしながら!!

例え初回がわけわからんばかりでも、もう一度起動して、別のルートを見てみようと思わされるパワーがこの作品にはありました。それを以下、もうちょっと具体的に述べましょう。

 

 

・スチルもりだくさんの漫画形式

 

あとがきで作者さん自身が「絵を見てもらうゲームです」と謙遜しておっしゃられていたように、もうスチルだらけです。これでもかってほどです。

画面も漫画風で、キャラの台詞は吹き出しで表示されます。でも、静止画だけに留まりません。タロットがよく出てくるんですが、下からしゅぱっと、それこそ抜き取ったような動きで出てきます。

他にもバトルシーンがあったりカットインがあったりそれからそれから。

要は、見飽きることがないんです。

中でもお気にいりは偽証明後の起動画面。二人の指差しQ.E.D.に、バトルのカットインです。決めどころはやっぱり印象に残りますねぇ。

 

そもそもキャラデザが好みなんですよー!

ナユタは片メカクレですし!アソウギは小悪魔ルックですし!好き!

 

 

・カガク×哲学×恋愛の熱いストーリー

 

そして見どころはもちろん、ビジュアル面だけではありません。ストーリーもかーなーりー濃密です。そして、冒頭で独特だと言いまくった理由がここにあるのです。

ヒロインは数学好きさん。ゆえに、本文でも数学の概念がいっぱい。文系だからこれは……となりつつ、なんとか読み進めていくと、おやおやおっと。これは面白いんじゃないか?と思い始める。そんでもって、ナユタの説明で最高潮。天国地獄をまさかこうやって表そうだなんて!

はい、ここで私は落ちました。コンプリートまでまっしぐらです。

というわけでですね、文系の人にも勧めたい数学カガク系ノベルです。

まだ私には理解しがたい概念も多かったんですが、なんとなくわかる、まではいけた……ような…気がします!たぶん!まあ、細かいところまで突きつめなくても、熱くて萌えて楽しかった!があれば良いんじゃないかなー、なんて。

 

ラプラスの悪魔は名前だけしか知らなかったので、これを機に知れて良かったなーと思いました。

一通りプレイすると、初めはとっつきにくかった「証明」「カガクする」なんて言葉がすごく、わくわくする魔法の言葉のように思えてきます。これも、プレイしてよかったと思える点だったり。

 

 

 

・ナユタの言い回し

彼は台詞がいちいちかっこいい。

バスケシーンのQ.E.Dに惚れました。

 

 

とまあ、こんな感じで。

ネタバレ全開の解説?考察?メモ書き?は追記に書くことにしましょう。

 

合う合わないは勿論ありそうですが、この求心力は流石というか、騙されたと思ってちょっとやってみてと言いたくなる一作です。

文系理系関係なく、少しでも興味を持たれたら、本当、試しにやってみてください!

 

 

 

 

 

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フリーゲーム「残懐」感想

「一ミリずれただけで完成品は歪み切る」

恨み辛みは即解消しような前置き。

 

えー、今回は8piece(http://charon108.web.fc2.com/)さんところのフリーゲーム「残懐」(http://charon108.web.fc2.com/zannkai.html)の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

事件の動機を聞きだすゲーということでジャンルはサスペンス……と見せかけて実は現代ファンタジーなノベルゲームです。考えさせられるようなものが好きな方向け。

というわけで特徴などつらつらと。

 

 

正義と罪は誰が決めるのか? 重くのしかかるテーマ

 

ざっくり書くと、“恨み”“人の悪意”みたいなのがお話の中心に据えられています。といっても胸糞悪いタイプの鬱展開ではなく、どちらかといえばやるせない感じ。

サスペンスとして考えてしまうと先の読める展開になってしまいますが、現代ファンタジー、あるいは独白やキャラの葛藤を楽しむ話だと考えればかなり思わされるところのある一作でした。

ごく稀に選んでいない選択肢の話が前提になることもあり、ちょこっと噛み合わない感じはあったかも。そのぶん、エンドに直結する選択肢がわかりやすいので、コンプはしやすく難易度優しい仕様になっています。

最後の選択肢にはかなり悩まされました……。すっきりとした解が無いのもこういったシリアスものの醍醐味ですね。

 

 

 

時折交わされる明るいギャグ

 

さて、公式サイト等々を見ててっきり徹頭徹尾シリアスなのかと思いきや、けっこうゆるーい雰囲気の展開もいくつかありました。たまーに天然ボケを繰り出す類や、明るい調子で冗談を言う志郎に肩の力を抜いてもらえることもしばしば。名前のくだりは笑いましたw

ただ、せっかくのシリアスシーンで不意にネタが出てきたりして、(志郎の混乱っぷりの描写なのかもしれませんが)せっかくの緊張感がかくーっと無くなってしまう時も。こればかりは一長一短ですね。

 

 

 

“対面”を意識できるスチル

 

取り調べや聞き込みなどの場面に合わせて、立ち絵が対面式の一枚絵と切り替わります。視覚的にも語りを聞いている感じが出て好きでした。あと単純に、正面顔というか、黙って真剣な目つきでこっち見てる感じのイラスト大好きなんですよねぇ。そういう意味でも嬉しかったです。

また、メッセージウィンドウも場面によって細かく切り替わり、台詞部分と独白部分の違いを強く意識できる構図でした。

こういうところからも、やっぱりキャラの“語り”が中心の作品だなあと思います。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

追記にはプレイして考えたことなどちょこっと置いとくので、ご興味ある方は続きからどうぞ。

 

 

 

 

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フリーゲーム「かたわら」感想

「選ばれし一般人は驕るよりまず戸惑う」

一万人目のお客様な前置き。

 

えー、今回は睦月朔さん企画の共同製作フリーゲームかたわら」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。とりあえずリンクは公式ページのみで、企画以外のスタッフの方割愛させて頂く形で申し訳ありません。

 

ジャンルは女性向け和風ファンタジー恋愛ノベルゲーム。必読にはほのぼのを目指したので甘くはないかも~と書かれていたのですが、個人的にはわりと糖度高めな印象でした。口説く口説かれるというよりちょっとずつ寄り添い合って想いを深めていくような感じの恋愛だからこういう注意書きがあるのかもしれませんね。

 

というわけで、さっそく印象に残った点など。

 

 

 

芯の通った世界観をさりげなく描くストーリー

 

和風ファンタジーな世界観で、妖・術・土地神様などがキーワード。それぞれのキャラにある特殊な設定が、エンドで見事に噛み合うあの構成には痺れるものがありました。

特に上手いなと思ったのは、ちょっとしたエピソードや演出でさりげなく世界観が深められている点です。単に置手紙をするのではなく式神を飛ばしたり、ヒロインのお手伝いシーンで村が自給自足で成り立っていることを示したり。そもそも冒頭からして、他人の家でも気軽に入れる親しさや村社会の親密さがくどい説明無しにさらっと描き出されています。いやー、こういう、描写だけで伝わってくる世界観って良いですよね。下手に専門用語を使うよりもどっぷり浸れる感じがします。

 

勿論萌えたのはあの“手を出すとやばいことになる”あのアイテムです。既プレイの方ならこの書き方で通じるかな。萌えました。どんな想いであれを作ったのか考えて二度萌えました。ありがとうございました。

神と人、術を持つ者持たない者、大陸の人と外の人、などなどの異文化交流的な側面も多かったように思います。わからないところが多いからこそお互いがちょっとずつ理解し合っていく――みたいな展開がお好きな方にはツボかもしれません。

 

 

 

ギャップ萌えが光るキャラクター

 

結論から書くとハマりました。だだハマリでした。びっくりするほど好みでした。しかも三人とも!!!

複数人攻略対象がいるのに全員が大本命というのは本当初めての体験です。なのでネタバレ込みで追記にがっつり書くとして、ここではふんわりとしたことを書いておこうかと。

 

共通して感じたのはギャップ萌えです。序盤でキャラのテンプレートな一面を見せておいて、ヒロインと想いが通じた後に本来の気質や意外な成長っぷりを見せてくれるのがもう、たまりませんでした!今までかっこつけて隠してたところがちらちら見え隠れする感じにどきどきします。つっけどんなキャラの優しさにきゅんときたり、にこにこ明るい子が実はちょっと寂しい面も持っていたり、なんて設定に萌える方向けです。

ヒロインも選ばれた運命にただ流されるだけじゃなくて、彼女なりの理由をちゃんと持ってその道を選んだり、潔く決意したりしていたのが好印象でした。時には悩む弱さがあるのも共感できて良かったです。

 

 

 

どきりと見惚れるグラフィック

 

立ち絵のクオリティがとにかく高い!ここを真っ先に推したいです。特にクチナワの真っ赤な目はさりげなく光っているように見えて、とても引き込まれました……!見つめ合って文章を止めちゃうこともたびたび。かっこいいです。

あとくるくる変わる表情、何より双子が怒った時の気迫はただならぬもので、見ているだけで震えがきそうなほどでした。睨まれたい。睨まれたい!!

キャラデザ自体も皆好みでついつい見惚れてしまいます。サカキとスグセで服のパーツがアシンメトリーだったり、逆に黒白神様がお揃いっぽかったりするのもツボでした。

ヒロインちゃんはスチルだけの登場になりますが、こちらもほどよく好みな長さの黒髪で嬉しかったです。やっぱり女の子の黒髪は良いですね……。

 

 

 

 

一か所だけ残念だったのはデフォルトの文字フォントに癖があり少々読みづらかった点ですかね……。フォント変更はできますが、起動するごとにリセットがかかるらしく、毎回調整するのは少々面倒でした。

とはいえ、デザイン的な意味でかなり和風らしさが出ており、雰囲気に合っているのは確かだよなあ、なんて。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

丁寧に距離を詰めていく恋愛描写が魅力で、とにかく後日談に悶えました!

バッドでは切なくトゥルーではがっつり甘く、かつしっかり練られた和風設定が楽しめる一作です。

 

追記ではネタバレ込みの感想です。ご興味ある方は右下よりどうぞ。


 

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フリーゲーム「獣の国の花嫁」感想

あなた色に染まりに行きます」
そこに策略があったとしてもな前置き。



えー、今回は、pineteaさんところのフリーゲーム獣の国の花嫁」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

ジャンルは乙女向け短編RPG、獣人などの人外異種恋愛がメインのウディタゲームです。ヒロインは無個性タイプで、外見のキャラチップこそあるものの、基本的にセリフ無しです。

公式サイトにはプレイ時間2時間・二周目以降は半分とありますが、私がプレイした時は初周1時間・二周目以降は慣れたら15分前後になりました。なので、RPGやウディタに慣れてる人ならほどよいボリュームの短編~中編として楽しめるかと思います。

 


では、さっそく特徴など。

 

 

 

驚きのエンド数と魅力的なキャラ

 

攻略対象は3人。無邪気な犬タイプの従者や、生意気虚勢張りのショタ、読書家ながらワイルドなおじさんと、誰か一人はピンときそうな感じに属性が分かれてます。
エンド数はなんと14種類も。回想機能はありませんが、セーブデータが15枠あるのでやろうと思えば全エンドの直前データを残しておけます。


そして、うちのブログだからこそ何よりも推したいのがヤンデレ要素! そう、全体的に愛されほのぼのな雰囲気ではありますが、あるんですそういうエンドが!

といっても凶行で暴れるわけではなくて、ほんのり病み要素があったり闇堕ちっぽく見えたりするくらい。それでも、予想外の方向からヤンデレの兆候が見えた時の嬉しさったらありません。大変おいしゅうございました。

 

 

 

豊富な会話の裏に見れるしっかりした世界観

獣の国、というオリジナルの世界設定ではありますが、小難しい用語はなく世界説明も最低限に留められています。


けれども世界観が薄味というわけでは決してありません。むしろ、キャラ達の雑談からちらりと出てくる身分の話、王政の仕組み、蔓延する疫病の話などから世界観が膨らんでいくようになっています。しかも説明口調ではなく、さらっと混ぜ込んでくる辺りが自然で良い。
それこそ「成りそこない」の辺りを深めれば大長編のファンタジーものも作れそうなほど。そこをあえて短編にまとめて落としこめるのも凄いです。

そして何より、乙女ゲーに求める第一要素として、キャラクター達との交流も充実しています。ちょっとした会話イベントの起こる場所が設定されている他、何にもないところでも雑談ボタンで色々台詞が聞けるのもグッド。特に雑談ボタンは、かなりの種類の台詞が用意されててびっくりしました。連打楽しい。
本を使った時のキャラの反応が人数分設定されているのにも驚きました。会話やキャラ萌えメインの人にはものすごく嬉しいシステムです。

 

 

さくさく周回できるシステム

 

レベルを引き継いで二周目を開始できたり、メッセージスキップや歩行速度調整でハイスピードにプレイしたりできます。アイテム引き継ぎがないのはちょっと残念ではあるけれど、それが無くても十分余裕でラスボス倒せるので贅沢な意見ですよね。てへ。


面白いな~と思ったのは強敵を倒すことで近道ができるシステムです。二周目以降で雑魚敵を避けたい時にも便利だし、強敵がいるぶんレベル上げにも繋がってラスボスがどんどん楽になるし。

下手なシステムで色々スキップするとレベルが伸び悩みがちなイメージですが、この作品はこの点心配する必要がなくて有難かったです。

 

美麗で細かいグラフィック


さて、キャラ萌え・RPG要素に加えてさらに見どころはグラフィック。
とにかく立ち絵を見てもらえればこれはすぐに納得していただけるのではないかと。こういう画風はなんて言えばいいのかな、リアル寄り? 表情変化も多く、かなりクオリティの高い立ち絵です。


全体像でのみ見られる下半身や手元の部分にごってりケモノ要素が詰まっているので、亜人系人外にはしっかり人外してほしい方も嬉しいのではないでしょうか。なお、全体図はゲーム内のパスワードを公式サイトに打ち込むことで見られるおまけページから見られます。

あとは、ルートによってヒロインのキャラチップが変わるのも、さりげなく嬉しいところ。

何もしてない棒立ち状態のキャラチップが、何故か一歩踏み出した状態で固定されるのは仕様上なのかな? そこだけ少し気にはなりましたが、細かい変化があることに変わりはありませんし、特にリフルート入った時の姿はとっても可愛くてお気に入りです。

何より、それぞれのエンドに一枚絵があるのが嬉しい! これを見るためにデータを取って置いたくらいです。繊細な線画とBGMが合って、どんな雰囲気のエンドにもぴったり合う素敵なイラストばかりでした。




最後に、ちょっと惜しいなと思う点について。

 

 

イベントやエピローグのあっさり味


ヒロインが無個性タイプだからかもしれませんが、キャラからの告白やエピローグに入るまでなど、随所の大事なイベントがかなりあっさりしてるなーと感じました。
例えばラスボス撃破時にもうちょいエフェクトを入れたり、告白時だけBGMを個別のものとは違う特別なものにしたりしたら、もうちょっとフィナーレの盛り上がりが出たのではないかなと思います。


キャラに凝り、イラストはクオリティ高く、RPG要素もさくさく――ここまで良い要素が揃っているからこそ、演出面ももう一息頑張ってほしかったというのが惜しいところです。


とはいえ、上記の通りエンドロール自体はグっとくる一作です。誤解なきよう。

 


と、最後に少しだけえらそうなことを書いてしまいましたが。
繰り返すように、クオリティが高くてエンドの雰囲気も多様、ヤンデレ展開もある大変おいしい一作でした!


追記でネタバレ込みの感想です。

 

 

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フリーゲーム「トバリ討伐隊」感想

「殺される前に殺さなければ」

そして自分に還りつく前置き。

 

えー、今回はトバリリアム(http://toba.tudura.com/tobatoba.html)さんところのフリーゲームトバリ討伐隊」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

                                                                                      

ちょっと暗めのRPG。公式サイトにはプレイに4・5時間程度とありますが、やりこみ部分を回収していたら10時間ほどかかってました。でも、それが苦にならないくらい雰囲気の素敵な作品です。

さっそく見どころをば。

 

 

散らばる世界観を繋いでいくストーリー

 

色々と探索をすることで、主人公や周りの人間、そして世界観に関する情報が得られます。逆に言えば、ストーリーだけ追おうとしても真相はわかりづらいかもしれません。

ちょっとずつわかっていくメインキャラの関係にそわそわしつつ進めていきました。考察や想像で補完する余地があるのも私好みでたまりません!

色々考えたことはこっそり追記にしまっておきますね。

 

 

 

他に類を見ないキャラクター

 

キャラクターのデザインや性格がすごく独特です。

危ない感じのお兄さんもいます!マトリョシカにされたい!!元々ナギの知り合いという設定で、序盤から説明なしにキャラクターが揃って来るので、初めはちょっと戸惑うかも? でも、だんだん明かされていく彼らの内面や事情を知ると、どんどん魅力的に見えてくるはず。

今ではすっかりカラトにめろめろです。やっぱりこの手のキャラが好きなんです。シュウの、強い人に見えてもろいところや暗い過去も好きです。結局皆好きですね、はい。

 

 

途切れず雰囲気のあるBGM

RPGってバトルに突入すると、ででーんと賑やかな曲に変わるのが常な気がしますが。

この作品ではフィールドの曲が引き続いて流れます。曲変更はボス戦くらい。このBGMがまた良曲揃いで、どっぷりと世界観に浸りながら探索を続けることができました。

 

 

歯ごたえのあるマップ

 とにかくマップが広い!!

私はけっこう迷子になるタイプなので、歩数での勲章を速攻で解禁してしまいましたw

ダンジョンによって謎解きや仕掛けが違っていて、色々と新鮮な気持ちで歩けます。

そして何より楽しいのが、マナ探し!マナ=お金・成長ポイントだと思って頂ければ。

例えば、一か所だけ色の違う花とかって気になりません? いかにも何かありますよって感じに空いてる隙間とか気になりません? 調べたら必ずといっていいほどマナが手に入ります!やったね!

こんな感じで、いたるところに仕掛けやご褒美要素があるので、探索がとても楽しかったです。

 

 

 ストイックに進み続けるストーリー

 

RPGにありがちな時間限定イベントやおつかいイベントはほとんどありません。アイテム・モンスターハントの依頼はありますが、それこそ探索中に条件を満たすことが多かったのでお手軽でした。

時折出会う知り合いと話しつつ、黙々、淡々と探索を進めていくというけっこう硬派な展開だったと思います。でも、キャラ自体はグラが可愛かったり個性的だったりするので、キャラやストーリー重視で進みたい方にも勿論オススメです。

 

 

物語が深まるサブイベントなど、やりこみ要素もありのゲームです。ステンドグラスが一個埋まらないんだよなー!

 

こんなあなたに

 

ともあれ、物静かな雰囲気で、どっぷり世界観を楽しみたい方や、考察・探索好きの方に強く強く強くオススメします! あと、今から始める人は、トバリノリをがんがん使ってがんがん補充することも勧めておきます。

以降はネタバレ込みの感想。

 

 

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