うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「勇者の烙印」感想

「あなたの みぎては のろわれて しまった!」

助けてまもるくんな前置き。

 

 

えー、今回はきぎぬさんところのフリーゲーム勇者の烙印」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

                               

ジャンルはRPG、ですが感覚としてはADV寄りのプレイ感です。

DL版もあるのですが、知ったのがアツマール経由だったのでRPGアツマールのスマホブラウザ版をプレイしました。

色々語りたくなる半面、ネタバレが惜しい作品でもあると思うので、そのあたりを気にする方は先にプレイしに行くことをお勧めします。

 

 

 

 

というわけで、さっそく良かった点など。

 

 

勇者を定義づけるメタストーリー

まず「タンスを漁るのが積極的に推奨される」という序盤から尖ったセンスを感じさせる台詞回し。ここでガシッと心を掴まれました。この手のメタギャグ好きなんですよ。お約束を守りつつ裏を覗きに行く流れ好きなんですよ。

RPGのお約束をこれでもかと思うほど踏襲した展開。そして怒涛の裏切り。ビターなバッドエンド。いやあ、最後まで飽きることのない怒涛の流れでした。

特にスーファミDQファンは生き生きするところがあるのではないかと思います。DQ6のOPは趣深いよなあ。

既存ネタの流用や、オマージュ展開にもきちんと王道なりの理由があって、そこもたいへんツボでした。

 

 

動き回るエフェクトたっぷりのバトル

とまあストーリーの序盤がこの手のメタギャグなので、バトルもゆるゆるかと思いきや、エフェクトが熱く視覚的にも賑やかでした。TP技があったりMP回復率があったり、それなりに戦略も効くバトルだった印象。私はついつい出会った敵を全撃破してしまうタイプなのでボスの難易度は低めに感じましたが、秀逸なストーリーに負けず劣らずバトルもメイン要素の一つと思えるクオリティでした。

 

 

DESTINY OVERCOME !

大好きです。ほんっとう大好きです。この表現愛してる、この文をあのシステムメッセージに仕込むところが愛してる。勢いもあるしストーリーと噛み合ってめちゃくちゃかっこいい。

こういう独特のシステムメッセージが見られるのがフリゲの良いところですよね。

 

 

 

 

一方難点としては、

 

 

スマホ操作のもっさり感

これは私のスマホRPGがこの作品だったからここで挙げてしまっているだけで、もしかすると全スマホRPG共通の難点なのかもしれませんが……。

どうしてもちょっと操作感が悪く、ぐねぐねしたマップ等は進みづらかったです。また、街から出た時の初期配置と次の目的地への動線の関係で、進もうとしては街に入り直すという誤動作をかなりやらかしてしまったことも。

ただストーリーにかなり狙ってるところがあるため、この、街から出た時の配置自体はあえてレトロ演出しているような気もします。考えすぎかな。

 

 

 

 

とまあ、だいたいこんな感じで。

 

RPG好きな自分には見事刺さる一作でした。

追記ではネタバレに触れる感想など。

 

 

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shiki3.hatenablog.com

 

 

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フリーゲーム「BRAVER」感想

「光が差し込めば大団円なのだ!」

レーザービームで吹っ飛んでしまいたい前置き。

 

 

えー、今回はひろさんところのフリーゲームBRAVER」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

公式サイトは閉鎖されているようですが、作者様の活動は続けられているようです。ジャンルはRPG、エンド分岐だけでなく会話分岐やストーリー分岐も多めの一作。

 

かなり昔の作品ではありますが、今でもあちこちで作品名を聞くのでプレイしてみた一作です。私にとっては合う点と合わなかった点がかなり顕著だったので、一部分では絶賛し、一部分では辛口で書いている感想文になります。心からこの作品の全てが好きという方は、そっと閉じてもらうほうが良いかもしれません。

 

 

と、物騒な前置きはさておいて感想をば。

 

 

(20190901追記)

なんとツクールMV版でリメイクがされました! これは嬉しい! メインメンバーの顔グラもガラッと変わり、よりキャラの個性を感じられる雰囲気です。これからプレイ予定の方はこちらで是非!

http://hirosroom.starfree.jp/braver01.html

 

 

 

 

 

良いなあと思った点

 

キャラがくるくる動くサイドビューバトル

 

バトルはFF形式です。リアルタイムバトル、でいいのかな? この手のバトルはタイムバーが溜まるまで暇になりがちですが、この作品はとにかくキャラがよく動くので、雑魚戦も楽しかったです。仲間全員にモーション有、かつそれぞれ動きが違うというのも凝ってますよねぇ。状態異常時、倒れたとき、魔法使用時、通常攻撃時等々、かなりバリエーションが豊富です。もうねー、見てるだけで愉しいって言うのは最強ですね!

しのの動きが一番好きかも。ふよふよ浮いてる感じと言い、くるっと回る攻撃モーションと言い、動き回ってくれるのが見ていて楽しかったです。あと睡眠時のひろのポーズもほほえましかったですねぇ。

また、バトルだけでなく顔グラの種類が豊富だったり、一部のイベントでの顔グラ配置がこう、おおっと驚かされる勢揃いぶりだったりしたのも印象的でした。

 

 

 

 

選ぶ主人公によって変わるシーン

 

美少女グループ“ウィアソリス”から主人公を1人、イケメングループ“アンダリューサイト”からお相手役を1人選んでストーリーを進行させていくのが主な流れです。そして、選べるからにはもちろん分岐があるということで――1周目では見れなかったシーンを主人公を変えて見るといった形で、群像劇的な楽しみ方もできます。

イベントスキップこそありませんが、選択肢が多く細かな違いがあるので自然と色んな組み合わせの周回プレイをやりたいと思わされました。

また、メインストーリーは共通部分が主ですが、メールイベントは4人とも異なります。返答パターンも多く、攻略キャラとのメールは話す内容自体が変わるので、セーブロードで回収するのがはかどりました。

「好きなタイプは?」の返信がどれも萌えるんですよね!わかっちゃいてもテンション上がります!

細かい会話分岐はメインキャラのみでなく、NPCにも実装されています。章ごとの区切りでNPCのセリフが変わり、中にはサブキャラなりの物語がひっそりと進行していたことが伺えるようなセリフもあって、さりげなく楽しかったです。

 

 

 

RPGのお約束ギミック

 

世界観こそヴァーチャル世界で、ウイルス等々の用語も含め(当時における)近未来SF風ですが、グラフィックや敵キャラはどれもファンタジー寄り。話の展開やキャラの反応もかなり身近に感じられるので、むしろ王道ほのぼのRPGをプレイしているような気分でした。小難しい単語が苦手な自分にとってはとっつきやすくてありがたかったです。

また、ツボの中のアイテム・属性別のダンジョン・町の人と話すと進行するミニイベントなど、RPGのお約束をしっかり踏襲していたのも良かったです。

 

 

 

合わなかった点

 

 

正義が理不尽なストーリー

 

ぼかして書くにせよ察しの良い方には以下ネタバレになるかもしれませんが……。

ラスボスがあまりに不憫。先にキャラ別エンドを見たせいもあるかもしれませんが、仲間たちの台詞には「どの口が言ってんだ」と突っ込まずにはいられませんでした。

本当の意味での元凶達がきちんとあの場で謝ったり、一瞬でも後悔したりしてくれたらまだ納得いったんです。ギャグちっくに顔を見合わせてヤベッって反応をするとか、そのくらいでも良いので。それがまさかの開き直り。これであの二人への好感度がガクッと下がりました。それまでお気に入りだっただけに辛い。

十字路のお爺さんが漏らす情報や、ペット事件などを踏まえて、軽いミスリーディングが入っているあたりは良かったと思うんです。ただシリアス展開を入れて盛り上がらせたいのならなおさら、棚上げ展開は魅力がドン底落ちに感じられました。

しまいには序盤の展開も目につくようになってしまい、困っている人を置いてけぼりにしてキャッキャッと騒ぎ合うウィアソリスの面々が、集団になると気が強くなる典型的な苛めっ子グループにしか見えませんでした。つらい。

 

 

 

汎用セリフのみで少し物足りないイベント

 

先んじて書いておくと、会話分岐が多数あるのは本当に素晴らしいです。労力もかかったでしょうし、特に恋愛関係のイベントはニヤニヤさせられるものでもありました。

が、せっかくならあと一歩行って欲しかったというのが贅沢ながらも正直な気持ちです。

細かくは追記で書きますが、顔グラ差分のみのポイントも多かったので、あまり一貫したキャラ感が味わえなかった印象でした。この辺り、せめて語尾や「だ」「なの」口調だけでもキャラごとに統一してもらえていたら萌えたのになあと思います。

重ねて書きますが会話分岐の存在自体は素晴らしかったです。

 

 

 

ある程度レベル上げすると打ち止めになるスキル

 

周回プレイや裏ダンジョンを考えると、かなり高レベルになることも想定されて作られているはずなんですが、一定のレベル以降はスキルを一切覚えなくなるのがキツかったです。

せめてリカバーⅣか全体復活技は欲しかった!

このせいで、パーティに入れたくても技の関係で入れれないキャラが増えてしまったのが残念です。また、リーク以外のアンダリューサイトメンバーたちがスキル無しなのも辛いところ。

回復アイテムも、低性能か高額全回復の両極端で、レベル上げをしないと進めないのにレベルを上げても顕著な成長が感じられないという寂しい事態になりました。残念。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

気に入ったところと合わなかったところがありはしたものの、なんだかんだと言いながら4周するほどには思い入れもある一作でした。なにより、良い意味でやりたいことをやりたいように繰り広げて突っ走る勢いの良さを感じられる、とてもフリゲらしい作品だと思います。

 

ご都合ハッピー、ストーリー分岐や主人公交代、サブイベント的な恋愛要素、仲間多めのギャグなRPGが好きな方向け。

 

追記ではネタバレたっぷりの感想を書いてますので、気になった方はどうぞ。

 

 

 

 

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フリーゲーム「遺書」感想

「残りのページを数えるよりは、お話の先を予想する方が楽しい」

終わりがあるのが悪いわけではない前置き。

 

 

えー、今回はJelikoさんところのフリーゲーム遺書」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

一本道短編ノベルゲー、美しい雰囲気の一作です。

 

 

繊細で穏やかな別れの話

 

タイトルからして別れを想起させるこの作品ですが、雰囲気としては終始穏やかです。彼女へのプレゼントを考える彼と、部屋に来た彼を迎える彼女。一つ一つ柔らかく沁み込むような文章が多くて、シンプルなはずの話なのに、なんだかとてもきらきらして見えました。

初めは文字が小さめで読みづらいなあと思っていたんですが、一言一言をゆっくり拾っていくこの雰囲気には合うよなあと思い直したり。背景も枠のその向こうを考えたくなるような綺麗さがあって、お洒落な雑貨屋の雰囲気がありました。

 

 

 

小説とステンドグラスとチョコレート

 

また、良いなあと思ったのは話の端々に出てくる小道具の数々です。

まずあのチョコレートのくだりからして素敵ですよねぇ。

特に私は彼サイドから始めたので、「どうして彼女がチョコレートを?」という小さな疑問から、彼はどれを選ぶのか、彼女はどんな反応をするのか、彼と一緒になってどきどきしながら読み進めました。

彼の気持ち一つ一つは現実にありえそうな、とても身近なものなんですが、これがお話となると小さな謎やきっかけとなってくれて「先が気になる」という気持ちを膨らませてくれたように思います。

彼らの背景事情についても、あえて言い切る前に扉の音で察せれるような展開にしてあるのも上手いなあと思わされました。

 

 

 

他にも、パッと目を引く美麗なイラストや、おまけとして読めるなれそめ話なども魅力的。

クリア後は自然と「素敵な時間をありがとう」と言いたくなりました。

 

 

 

本が好きな人や、恋人との穏やかな時間にあこがれる人、切なくもあたたかいお話が好きな人に強く強くオススメしたい一作でした。

 

 

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フリーゲーム「初恋メルティング」感想

「好きと言うには度胸が足りないんだけど言わないでおくには勇気が足りない」

そこまで行ったら言っちゃおうな前置き。

 

 

 

えー、今回は児戯ズムさんところのフリーゲーム初恋メルティング」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

さくっと終わる短編バレンタインノベルゲー。選択肢の組み合わせでエンディング分岐もあり。

どうしても自分はヤンデレに注目しがちなのでついついこの作者様にもそのイメージが強いのですが、今作はほのぼの+甘い感じの穏やか平和な一作でした。こういうのもいいよね。

 

というわけで、魅力的な点など。

 

 

学生時代をひしひしと感じさせる会話

小ネタのバレになってしまって恐縮なんですが、先輩が後輩に「ほらダッシュ」って言うあのシーンがなぜか妙にツボでして!

なんかなー、言葉遣いが良いのかな。あるあるネタだからかな。高校離れて久しい身なんですが、急に懐かしさがぶわっと込み上げました。

直接的には関係しないサブキャラの皆さんの会話がこう、ほどよく自然なんですよねぇ。

 

 

ひょっこり左上の顔グラ

あと良かったのが、モブキャラの全員に顔グラがついていること。単純に可愛くて素敵ですし、読み手としては立ち絵との差があるおかげで重要キャラが一目でわかるのもありがたいです。

気になるのが常に眠そうな彼と、高身長の彼女。特に眠そうな彼はおまけでちょこっと活躍してくれて嬉しかったです。

 

 

一方で、気になったところとして。

 

 

選択肢が総当たり一本

どのエンドも結ばれたりカップル成立の予感を感じさせたりするものなので、選択肢を間違えても問題はないのですが……共通ルート部分にヒントなどがあったらもうちょっと“選んだ”感があって嬉しかったかもしれません。

とはいえ、短編にも関わらずエンド数が多いのは良いところ。プレゼントがどう使われることになるのかの妄想も膨らみました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

メイン攻略対象はまさに少女漫画のヒーローって感じで、等身大の恋を感じさせてくれました。

ハッピーエンド一直線のほのぼの甘い恋愛ゲームをお求めの方向けの一作です。

 

 

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og.com

フリーゲーム「結晶石と錬金銃」感想

「歯が浮くセリフを高らかに」

笑ってくれれば重畳な前置き。

 

 

えー、今回は川崎部さんところのフリーゲーム結晶石と錬金銃」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

プレイしたのはver1.50a6。

 

バンバン銃を撃ちまくりながら、色んな人たちの物語に触れていくゲー。メインのストーリーが一本あり、実績を解放して解放されるエピソードで補完をしていくタイプです。

この手のジャンルなんていえばいいんでしょうね。シークレットファイル型?

とにかく、かなり面白かったので、さっそく感想など。いつもに比べて自分語り要素多めです。

 

 

 

アクション苦手でも銃器知識ゼロでもウェルカム仕様

 

この作品、ガンシューティング?アクション?の要素がバトルのメインと聞いて、しばらくプレイをためらっていた作品でもありました。軍事系や国家情勢系の文章を読むのがかなり苦手なんですよね……。

でもなんでダウンロードしたかってそりゃ、「帝国魔導院決闘科」および「召喚指揮候補生」がものすごく、ものすごーーく好みだからです!! どちらの作品もですね、システムとフレーバーテキストとキャラが本当心の中心をズガンと射貫いてくれたんですよ。

ですので、やっぱりやってみよう!と思いプレイを始めたところ大正解。エピソードと言い、要所の言葉遣いといい、ノリと言い、もうめちゃくちゃ熱くて気持ちよかったです。

なので、私のようにプレイヤースキルやジャンルでためらっているプレイヤーさんがいるなら、物は試しをおススメしたいです。帝国のノリは良いですよ!

 

なにぶんこんな感じでこの作品に手を付けたので、前作前々作をプレイしていなくても楽しめるかといわれると謎ではあります。少なくとも世界観と設定用語は濃いので、この作品にピンと来るなら他2作もプレイしてみてほしいなあという気持ちです。

 

なんかエッセイ的なことを書き散らかしてしまったのでちゃんと、アクション苦手な人でも触れれるという点についてもう少し書き加えておきますと。

 

まず、銃の種類がたくさんあります。ただの無機質な装備品ではなく、職人とのサブイベントや改造時のコメント等のおかげで、「よくわからないけどこの人好きだから使ってみよう」という取っつきやすさが生まれてくれます。カラシニコフが大好きです!

私は連打や敵の反応に合わせた動きをするのが苦手なので、マウス押しっぱなしでも発射される銃や、細かな調整無しで一撃必殺出来る武装を愛用していました。プレイヤースキルを補える装備を選べれるのもいいところ。

さらに言うと、難易度自体はこの手のゲームの中でもおそらく易しく設定されているんだと思います。実際、武装強化さえしていれば終盤はかなりさくさくでした。強い武器を出し惜しみしなくてよいというのもありがたい点です。

 

公平に難点も上げるとすれば、シンボルエンカウントの点でしょうか。

私は鬼ごっこも苦手なので、狭い道での敵シンボルはもう少し減らすか判定を甘くするかして欲しかったのが本音ではあります……。また、面によっては回復手段なしで突き進むのを求められるので、シビアなところがあったのも確か。

でも、負けた戦闘でもノーリスクでそのバトル開始時からコンティニュー可というのはかなり助かりました。アクションゲーにおけるやり直しのリスクってめちゃくちゃ恐ろしいものがあるので……。また、さんざっぱら撃ち合いをしたのでプレイヤースキルが上がった、の、かも、だといいな、という感じもあります。

雑魚戦でのメリットはほぼ無いと言っても過言ではないのでシンボルはほどよく避けましょう、というのもシンボルエンカウント制の潔さを感じました。

 

 

 

意味深・メタ読み上等のセリフ回し

やっぱり痺れたのがテキスト面だったので、そこにも触れておくと。

主人公はお助け屋的な動きをするので、初めのうちは人助けをして人と交流を深めていくRPGなストーリーなのかなーと思わされます。

が、エピソードが解放されていくと、じわじわと出てくる意味深なセリフやキャラ同士だけで通じ合う単語、符牒めいた反応等々が気になり始めます。話もどんどん壮大に、個人から世界を巻き込んでいく展開へ。情報の出し具合や、エピソードの解放条件の調整が実に絶妙です。

謎が一気に答え合わせとして開放されるのは終盤も終盤なので、「わからない」状態が苦手な方にはかなりきついかもしれません。

 

しかしですね!

このセリフ回しがまたかっこよく、ほどよく中二心が疼き、魂が揺さぶられるんです。ぶっちゃけ、中身がよくわかってなくても熱い想いが伝わるんですよ! 置いてけぼりにならないのがすごいと思う!

難しいこと考えながら全体像を想像するもよし、リアと一緒に「おれもよくわかんねぇ!」とへらへらしながら勢いに乗ってしまうもよし。

なんだかんだで最後には熱く盛り上がれる、気持ちいいストーリーでした。

要所要所でセンスの高いセリフはそれこそ山ほどあるのですが、中でも最終戦のロランのセリフが大好きです。

 

 

 

恩を恩で返す、優しい世界観

キャラは皆和気あいあいとしています。ただ、上記の通り暗躍したり舞台裏で激しく動いたりしているので、雰囲気はところどころ殺伐です。ぎょっとする展開も来ます。辛辣な言葉が飛び交いますし、キャラがキャラに失望する展開もあります。

が、それでもやっぱり優しい世界だったなーと思います。

武装強化した時のコメント達と言い、終盤の展開と言い、「こちらこそ!」と大声で叫びたくなりました。

こう、プレイヤーのプレイに返してくれるゲームって本当、嬉しいですよね。演出が熱いけど過剰じゃないというか、感動させにくるんじゃなくてあくまで釣られてこっちが熱くなってしまうような構成なのもぐっときました。

 

 

 

配役ぴったりのボイスと、ここで決めるSE

また、立ち絵の絶妙な表情変化など語りつくしたい点は山ほどありますが、中でも注目したいのは音面でした。

 

まずボイスについて。バトル中の要所要所でしか聞けはしませんが、配役ぴったりの演技で、決めボイスがとにかくハマってるんです。バトルの出来によって、褒めてくれたり心配してくれたり、あるいはぶーたれたりするのも可愛いところ。ボイスを聞きたいがために意味もなく過去ステージを練り歩くこともありました。

ジャックの「スタンバイ」がかっこいいんだよなあ!

聞いてて気持ちよかったのは白猫さんです。紹介PVではキンキンボイスがちょっと苦手だなあと思っていたのですが、ゲーム中ではほどよく気の抜けたのじゃロリボイスで、中でも「ゲージが余っとるぞーい」にはありがとうありがとうと言いながらぶっ放してました。

 

次にSEについて。ダダダダダダダッという爽快な連射感はあの銃撃音あってこそだなあと思います。ミーシャを使い始めた時は圧倒的なにぎやかさに吹き出してしまったことも。

音量調節って素敵ですね。

 

最後にBGM。曲がぬるっと戦闘用に切り替わり、ぬるっと通常マップ用に戻るので、雰囲気や勢いを保ったまま挑めてよかったです。終盤でこの曲調(?)を使うのか!と感嘆させられたところもありました。

 

前々から聖国のテーマ曲などは好きだったんですが、やっぱり曲幅広くて楽しいなあと思います。おまけのテーマ曲のタイトルも好きです。

 

 

 

 

 

一方、気になった点としては、

 

 

 

イベントバグ・進行バグ

 

ウディコン掲示板等を見るに、私のプレイしたver1.50だとかなりのバグは駆逐されているようなのですが、それでもちょこちょこあります。バトル中にエラーの緑帯が出てくるのはわりと慣れました。技師サブイベントを後回しにしようとすると詰むこともあるので要注意です。また、敵シンボルとの接触判定がうまくいかず、行き止まりなのに敵と戦えないので抜け出せないといった状態に陥ったことも。

掲示板は閉まっているようなので、サポートがどうなるのかはわかりませんが……ある程度の挙動の不安定さは踏まえたうえで、セーブは小分けするのをオススメします。

 

上記に合わせて、マップの難易度もかなりステージによって異なります。敵がいても避けやすくて一直線に行けるマップと、ぶつかりまくったりギミックがややこしかったりのマップとで差が極端だったかなと感じました。特にマップギミックがある場合はどうしても時間がかかるので、ある程度マップの広さは制限してほしかったです。

 

 

そしてこれは本当、文字通り気になった点なんですが……

エピローグいかに。いやこういうところを直球でつつくのは野暮だと知っているんですが、うーんうーん。召喚指揮候補生はひっそり増えてましたし、帝国魔導院はなるほどな行き方だったので何かあったら嬉しかったなあという気持ちです。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

エピソード回想・音楽鑑賞も完備で、SS含むおまけ充実度と達成感がたっぷりの一作です。ボス戦前の空薬莢の音にぞくぞくする、熱くてCOOLな一作でした。

 

 

追記からはネタバレがっつりの感想など。

 

 

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フリーゲーム「勇者の道」感想

「自己肯定のためには他者の賛歌が必要だ」

本音じゃなくてもごまかせる前置き。

 

 

えー、今回は白瀬伊月さんところのフリーゲーム勇者の道」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ツクール製ではありますが、プレイした感覚としてはノベル寄り。分岐多数のマルチエンド方式で、トゥルー以外全てバッドエンドという鬱展開仕様です。やったね。

というわけで、さっそく良点など。

 

 

勇者とは何のためにあるのか

 

全体的に、RPGにおける勇者と魔王ものの設定をとても真摯にシビアな目線で突き詰めていくストーリーです。

魔王を倒したその後は?

救った人々のその後は?

勇者が魔王を倒す動機は?

これらの疑問はRPG好きやメタ好きが一度は考えた展開のはず。実際それらを逆手に取った作品も散見されます。しかし発想はあっても全てを網羅する勢いでかつこのボリュームに収めているのは流石の一言でした。

魔王と勇者の二人で完結するのではなく、分岐が進むごとに世界が少し開けて、哲学的な問いの定義が増えていくのも楽しかったです。

 

 

テンポ良しのクイックセーブ&ロード

 

また、エンド数が多い分、エンド回収のためのシステムも丁寧に整備されています。いやあまさかツクール製のゲームでノベルゲ的なクイックセーブとロードに出会えるとは思っても見ませんでした。いわゆる通常のセーブがエンドや達成率の確認用、栞が分岐の回収用だと思うと良いのかな。

ただこれはある意味短所とも言えそうで。私は鬱展開ってじっくりどっぷり虚しさを噛み締めるものだと思っているんですが、あまりにテンポが良いので、さくさく死んでさくさく終わるスナック菓子的な絶望になってしまっているエンドもあるんですよね……。

ただ、各エンドが雑という意味ではなくて、どのエンドでもシンプルな一言に深みがあり、その先やこうなってしまった原因に想いを馳せて胸を痛めたくなるクオリティではあります。

必要十分でコンパクトにまとまっている短編だからテンポの良さを感じるところもあるのかもしれません。

 

 

幕間代わりの探索パート

もしノンストップでエンド20個を一気に回収してしまうとなるとついつい疾走してしまい、プレイヤーが疲弊してエンド一つ一つの感じ方が薄くなってしまうかと思うのですが。

そこにブレーキをかけるように挟まってくれるのがこの探索パートです。いやぁ、これは本当、タイミング的な意味でもキャラ的な意味でも上手でした。

宝箱のところの理論には素直に驚かされましたし、たーるっ等々の嬉しいネタもありましたし。勇者という記号でしかなかったユーツにキャラとしての性格が見え隠れするようになったのも素晴らしかったです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

欲を言えばエンド回想があると良かったんですが、さすがにツクールでそれを求めるのは酷ですし、クイックセーブで対応できるのでまあまあ。

 

鬱展開好き、問いかけてくる作品好き、古き良きRPG設定好きにオススメです。

追記では各エンドの感想など。

 

 

 

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フリーゲーム「エリニュスの娘」感想

「復讐は何も生まない!」

だが吐き出さねば腹が裂けてしまう前置き。

 

 

えー、今回はアマヨノツキさんところのフリーゲームエリニュスの娘」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

選択肢でエンド分岐する乙女ゲーム

“復讐”がメインなだけあってクールで糖度低めなので、むしろ一般向けとして広く布教できそうな気もする一作です。

 

 

 

復讐の後・今・未来を描くストーリー

 

作者様ご本人までもが乙女ゲームと言うに言えない、この理由がまずストーリーの重さにあると思います。

ストーリーのテーマは“復讐譚”です。激しい憎しみよりは、恨み続けることの疲労や虚しさが強く描かれています。復讐を終えた人、復讐を受ける人、復讐を行う人など、違った視点から復讐とは何たるかが語られ、各人の答えを揺らがされながら進んでいく――――

重苦しくむなしく、真剣なストーリーが染み入りました。

一方で決して説教臭くはなく、ある意味ドライなくらい距離感があるのも、良いバランス感だと思います。復讐を終えてもゴールではなく、新たなスタートというには泥臭い、各々の向き合い方が光るストーリーでした。

 

 

辛辣で裏がある優しいキャラ達

 

復讐という重いテーマながらも案外すんなりと日常パートが進むのは、キャラクターの動き方のおかげです。重たいものを抱えていてもそれを悟らせない、あるいは受け入れているキャラが多いので、基本的に共通パートはあっさり味です。

だからこそ、それぞれの思惑や正体がわかるようになってきたころの一言一言の深さがぐっときます。なんというか、どろどろしたものを抱えているはずなのに、みんな潔いんですよね。もちろん悩んだり葛藤したりのシーンもあるんですが、それ以上に彼らなりのどうにもならないどろどろへの向き合い方が明確です。

テーマや展開を考えると虚しさが漂うけれども、はっきりした性格のキャラたちを見ているとどこかさっぱりとした気持ちにもなれる、不思議な読了感の作品でした。

 

 

シンプルでお洒落な起動画面

 

起動画面のクールさと、選択した時の音にまさに撃ち抜かれました。好きです。

エンド回想もおしゃれで、タイトルの配置の仕方等も併せてセンスがありました。実写(?)を使っていることや、エンドの余韻等から、美術品を眺めているような気分になれます。

はっとさせられるセリフといい、こういったところのセンスといい、短編でも光るもののある作品だなあと思います。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

糖度低めでダークな展開が好みの方にオススメの一作です。

追記からはネタバレ全開の感想など。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

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