うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「Nights of the Knife」感想

「月下は陽ほど明らかでなく」

どうにか隠すフリができる前置き。

 

 

えー、今回は陸路の果てさんところのフリーゲームNights of the Knife」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

分岐ありの女性向けノベルゲーム。恋愛要素もありはしますがそっちよりはキャラの行く末を見守る面のほうが強い印象です。

というわけでさっそく印象的な点など。

 

 

 

三人の柱と二つの視点

 

この作品はいわゆる共通ルートにおける部分がほぼ無く、攻略対象3者3通りの全く異なるストーリーが展開されます。また、キャラのルートを1周すると次からは真相を掴めるルートへとたどり着くことができます。

実を言うと初回プレイ時には、ある程度の情報が知っている前提で進むので戸惑いました。これは誰でここはどこであいつとは誰ぞや、という。でもピースを揃えさえすれば考察なしで補完できるので中盤以降はするする読めます。

 

全ルートクリアで世界の真相がわかる、という意味では群像劇に近しいかも。ヒロイン視点と攻略対象視点が両方見れるのも特徴でしょうか。

ルートごとに知ることのできる真相の量が異なるのは面白いところだなーと思いました。攻略順によって感想が変わる作品だとも思えます。

 

 

 

盲目ヒロインの目に見えるもの

 

また、ヒロインの特徴もこの真相の明かし方に影響しています。もともと特別なコミュニケーションを必要とする展開(盲目・沈黙・あと言ってはいけないなど)が大好きなので、この設定は嬉しかったです。ただここに関しては引っかかる点もあり。ネタバレになるので詳しくは追記に格納します。

時にはちょっと天然を狙いすぎと感じるシーンもありますが、まあ好みによりけりかなと。流れに翻弄される大人しめな善人ヒロインと、自分の足で切り開いていく力強いヒロイン両方見れるのが新鮮でした。

 

 

 

シンプルに文字のみ豊富な回想

 

立ち絵やスチルは一切なし、文字のみノベルゲームです。がっつり長めの作品なので、画面ベタ貼りの形式は読みやすかったです。

やっぱり立ち絵が欲しい気持ちもありはしますし、作者様はどうやらイラストも描かれるようなのでなおさらではあるんですが……。盲目設定や他の設定を考えるとやっぱり文字のみが良いよなあと思いなおしました。

 

欲を言うならエンドロールは2柱目以降スキップ可にしていただきたかったところ。あと、アナザーストーリーの見方がわからず数時間周回してました。数字をクリックするだけなのにてっきり文字を選択しようとしてしまったんですよねえ。ばかだー!

加えてBGM面には不満ありです。シーン切り替えが頻繁なので、BGMがイントロ部分で切り替わることが多く、逆に気が削がれてしまいました。

 

一方良点として挙げたいのは回想の細やかさです!

エンドだけでなく、攻略対象ごとにエピソード一つ一つを読み返すことができるという。ここまで細かい回想機能は初めて見ました。これだけシーンを分けていたらBGMも細切れになるのも致し方ないのかもしれません。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

キャラの目的・世界観・過去など、あちこちに上手い設定が盛り込まれているので、終盤でも驚かされるお話だったように思います。

真相を知っていく過程が好きな方やシリアスな乙女ゲーが好きな方向けです。

 

追記からはネタバレ全開の感想など。

 

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フリーゲーム「カリスは影差す迷宮で」感想

「せめて楽に殺してやろう」

ちょっと善心を見せてる感じが一番悔しい前置き。

 

 

えー、今回は喘葉の森さんところのフリーゲームカリスは影差す迷宮で」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐ありのダンジョン探索RPG。女性キャラに対する好感度要素あり。

ヒロインの見た目、というか豊満すぎる胸部にぎょっとするところではありますし実際作者様はえっちな方面でも活躍されている方ではあるのですが、見た目で釣られると驚かされます。

 

中身はかなり硬派!それでいてコミカルな面も失わない!

とにかく探索好きや読み物好きとしてめちゃくちゃ楽しい作品です。

 

というわけでさっそく良かった点など。

 

 

闇の深い設定を受け流すクールキャラ達

 

とてつもなく強力な魔術師「カリス」を護衛としダンジョン探索をする

――という名目の裏で彼女を暗殺すること。

これがゲーム中に提示される第一目標です。

 

キャラが軍属で生死の概念にやや冷淡であること、世界が名前を呼んじゃいけない最凶の者に一度滅ぼされかけた後であること、人体実験や人造兵器が成り立つ世界観であること、等々。要素だけを見るとかなり陰鬱で、シビアな世界観です。

しかしながら、キャラ達の掛け合いは実にユーモアに富んでいます。本来の意味であるところの“クーデレ”や“無表情萌え”をとくと味わえます。愛着が湧くような会話のおかげで、

彼らを機械的な軍人ではなく責任感と好奇心旺盛な一個人として親しめました。

黒先輩の時も感じましたが、この作者様はクール×クーデレを描かせるともうとんでもなくピカイチですね!!ありがとうございます好きです!黒髪ロングよありがとう!

 

 

おちゃめで豊富な会話イベント

 

もう少しキャラクターの面に触れておくと、語りたいのは豊富な会話イベントです。

ダンジョンを探索していると手に入る遺構、これを持って帰って宿に泊まるとサブイベント的な会話が始まります。これが面白いのなんのって。どれもオチがついていて、世にも奇妙な物語に近い味わいを醸し出しています。

カリスや主人公のキースのキャラが深まっていくのも楽しいんですよね!

とんでもない装備品をつけながらも生真面目な顔で解説を始める主人公は必見です。これぞユーモア、これぞクールキャラの醍醐味。ぬいぐるみイベントがめっちゃ好きです。

 

また、宿屋でのイベントだけでなく、いつでも使える「会話」コマンドの雑談や、ダンジョン内の物体を調べた時の一言コメントもニヤニヤしてしまいます。こういうのがあると探索が捗っていいですよねぇ。

思わぬヒントを得られることもあり、ゲームとしての有用性に長けているのもポイントが高いです。

 

 

 

日数で調整されるストーリー進行度

 

システム面で面白いなあと思ったのは、鍵を使用するのに一定の日数が必要であることです。

鍵をセットだけしておいて解読をしたり魔法を覚えたりして、上層に行くための情報や強さが揃ったあたりで先に進める、みたいな流れ。プレイヤーの進行度の調整が本当上手くできてるなあと思いました。

 

また、やることはあれど多すぎず少なすぎず、その日できることをすべてこなしたらちょうど次の日に探索へ行けるくらいのボリュームなのもありがたかったです。できることが多岐に渡るとどれから手をつければいいのかわからなくなるものですが、優先順位がある程度作品内で提示されていたので、フリーな動きが苦手な私でもさくさくスケジュールを組んで進められました。

 

 

 

濃厚な世界観を読み込める解読文

 

そして解読と言えば読み物、アーカイブ要素!

もうね、とっっっても濃密で幸福でした!!

 “手慰みで町を滅ぼした最凶”とか “獅子・騎士魔術師”とか“女性資源”とか、あっちこっちの情報がツボなんです。鬱要素がぎゅっと詰まった感じや、中二心が真剣な意味でうずうずする感じ、大好きなんです。もう読むのがとても楽しかった!

 

物によって文体や内容の語り口が異なるのも面白いところ。

中にはSCPっぽいものもあります。たのしい。ねこです。

 

これ遺構一つだけでSS一本書けるのでは、と思うくらい発想も目からうろこで興味深いものばかり。意地でもコンプしたくなります。しました。ああ楽しかった。情報が増えるとノートや説明文に追記されていくのも、読み解いている感じが強まってわくわくします。

 

そして例に漏れず、ダンジョン探索のヒントとして機能している面もあります。ただのフレーバーで終わらせない辺り、完成度の高さが感じられましたね……!

読まずとも察せられる仕掛けと、読まないと絶対無理な仕掛けとが二種類あり、それによってストーリー進行度が調整されているのもまた上手い作りだなあと舌を巻きました。

 

 

 

ピンと感じさせるダンジョン、遺構の意外な使い方

 

さらに遺構で言うと、ただ集めるだけでなくアイテムや装備品として使えるところも面白かったです。中には意外な使い道があったり、しれっと使用可能になっていて気づいた時に思わず声が出そうになったりするものも。

それに合わせて、ダンジョンの仕掛けがシンプルながら手を変え品を変えて飽きさせない作りなのも魅力の一つでした。

 

「おや?」と思うところには必ず何かがあります! 意味のないオブジェクトはほとんどない、このマップ作りの丁寧さ! 作者の狙いに気付けた時の興奮がもうすごかった!

邪道ですが区画外をノーヒントで見つけられたのはひそかな自慢です。へっへっへ。見てわかるマップ作りって本当いいよねぇ。

 

立札や回答集など、明示される形でのヒントは少なめなので、ハッと気づくまで時間がかかるところもありはしました。けれども古文書の取得は容易なので、解読して読んで意味にさえ気づけば、かなりの数の回収ができるように作られています。

どどんと解答を乗せるのではなくて、主人公のみならずプレイヤーも解読して探索しているこの感じ、シンクロ感がとても気持ち良い作品でした……!!

 

余談ですが、BGMもどれもオシャレで雰囲気に合ってます。コーラス入りのあのBGMが、マップの堅苦しさと設定の息苦しさもあわせて、狂信的な神秘さを感じさせて大好きです。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

他にも隠しフロアや隠しボス、カリスの細かな反応の変化、敵によって異なる動きやオートバトルと手動バトルの使い分けなどなど、良点は盛沢山。

 

まとめて言えばありていですが、かなり丁寧で完成度が高いです。

短編といいつつも、どっぷりと浸かって楽しめた一作でした!

 

クーデレ、探索ゲー、中二設定、爆乳、軍人等にピンとくる方へ。

 

 

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追記ではネタバレがっつりの感想文です。

 

 

 

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フリーゲーム「鳥と忠臣と姫騎士と。」感想

「我ら姫様親衛隊、たとえ地の底水の中!」

それでも隣には並べませんな前置き。

 

 

えー、今回はpineteaさんところのフリーゲーム鳥と忠臣と姫騎士と。」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐ありの超短編乙女向けRPG。キャラ同士の掛け合いをみるのが主な感じ。

というわけでさっそく特徴的な点など。

 

 

 

特定の層を狙い撃ちするキャラクター

 

短い中でも攻略対象のキャラ属性が伝わりやすく、かつピンポイント・ダイレクトにその手のキャラが好きな者のツボをついてきます。乙女ゲーにおけるサブ攻略キャラ好きさんはわりと引っかかってくれるんじゃないでしょうか。

私はタイトルでDLしたクチです。従者だし。DLせざるを得ない。期待通り、私が従者萌えにおいて求めるものがきっちり詰められていて大変満足でした。ありがとうございます。双子萌えもひそやかに摂取できました。しばらくは幸福です。

 

なんというか、塩梅がかなり上手いんですよね。それぞれのキャラにこだわりを持って書かれているような印象を受けました。バルドみたいなキャラは特に。最後まで胡散臭さと不安定さを突き通していたのは本当すごいと思います。

皆初めからデレ度がかなり高く、相当の信頼関係や交友を深めた状態から話が始まるというのも大きいですね。話の展開も、彼らのこれまでとこれからの妄想が膨らむようなものでした。

 

 

おしゃれなタイトルロゴと美麗なグラフィック

 

顔グラこそシンプルな一種類ですが一目見ただけで画力を感じます。姫騎士様の外見が好みすぎるんですよね…!

また、起動時のタイトルロゴもオシャレなデザインです。フレーム等々からも通じるロイヤルな雰囲気が良かったですねぇ。デフォウィンドウを使うか、少し手を加えるかで、見た印象はかなり変わってくると思うのです。

 

 

 

とまあ、キャラや見た目には満足した一方で、物足りない点として。

 

 

超ゆるゆるなバトル難易度

 

戦闘全逃げ&通常攻撃連打でもボスには楽勝です。負けるのが逆に難しいほど。

これがよくあるただのRPG風アドベンチャーならむしろ望ましいことではあるんですが、この作品では「ラスボス後に憔悴した描写がある」「レベルが上がりやすく豊富なスキルを覚える」の2点を踏まえて考えると惜しかったなあと思います。

楽勝だったという描写ならストーリー上も納得いきますし、スキルの使用を想定していないのならするする進むのも抵抗はないのですが。やっぱり覚えたものは使いたくなりますし、ただ無駄打ちするのではなくせっかくならキャラクター性能等でも萌えたい。ステータス萌えをしたい。

というわけで、ゲーム性という意味ではちょっともったいないなーと思いました。

とはいえ乙女ゲーやキャラ萌えという意味なら前述のとおり満足です。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

全エンド回収まで30分かからないくらいのボリュームなので、気になったら試しにDLしてみるとよいかと。

追記ではネタバレ込みの感想です。

 

 

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フリーゲーム「Destroy」感想

「悪魔に情け容赦は似合わない」

黒翼にふさわしい生き様を探しに行く前置き。

 

 

えー、今回はpineteaさんところのフリーゲームDestroy」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

しらみつぶし探索系の脱出乙女ゲー。攻略無しだとかなり難しそうですが、私は遠慮なく攻略頼る派なのですいすい進みました。公式で出していただけているのがありがたい!

というわけでさっそく特徴など。

 

 

 

魔物と人間の両面楽しめる豊富なエンド

 

初回の何も見ないで進んでいた際のプレイ時間はだいたい20分以下、攻略を見ると10分くらいだったのですが、その短さの中にエンドは14種類もあるという豊富さでした。

銃器が出てくることやヒロインがセイレーンという魔物なこともあり、世界観はどことなく血生臭い雰囲気です。中には“魔”を生かしたエンドもあり、大変興奮しました。好きなんですよそういうの。

前向きなエンドもあり、魔物と人間の対比がエンドの色にも出てるなあと思わされます。

 

惜しいのは、全体的なボリュームがコンパクトな関係で、鬱の余韻が少なめなところでしょうか。この手の短編ゲーは分岐をセーブロードしてハイ次、というエンド回収作業になりがちでもあるので、せっかくの重苦しいエンドが味わいきれなかったのは惜しかったなあと思います。

扉から出る前に長めの会話イベント等があるともっとのめりこめたのかも。

 

とはいえエンドが多いのは嬉しいことですし、何より悪役であるロイのセリフがどのシーンでも必ず一つは響きました。セリフ回しがね、かっこいいですよね……ずるい……。

 

 

 

極力無個性寄りの無口主人公

 

乙女ゲーであってもヒロインのキャラや性格ががっつり味付けされているもののほうが多い中、この作品はとことん無個性寄りです。

設定付けされているのは外見、種族がセイレーンであるということくらい。声を奪われているので話すことすらありません。

 

面白いなあと思うのは無個性寄りでも行動に個性が出ていること。エンドによって展開の闇の濃淡が異なるので、場面によっては主人公の行動が突飛に見えたりひどくドライだったり、あるいは情深く見えたり、万華鏡のように印象が変わります。

“私が”というより、“この子は”黙ったままの胸の内でどう感じてどう考えて行動したんだろうという想いを馳せたくなる主人公でした。

 

余談ですが私、セイレーンと言えば人魚寄りのイメージがあったので、羽根の話をされてたいそう驚きました。ググってみたところ魚系の印象は中世からで、それ以前は鳥系だったとのこと。ほへー。勉強になります。

 

 

 

あちこちに仕込まれまくるアイテム

 

マップが歩きやすくまとまっているのに対して、得られるアイテム量がなかなか多めなのも特徴の一つです。序盤は探索範囲が狭いこともあり、探すまでもなくぽこじゃかアイテムが手に入ったのでテンポの良さに驚かされました。

ただ一点個人的に、例のカギはもっとわかりやすい位置に配置しておいた方があの選択肢の意味も出るのではないかなーと思ったり。すぐにでも外に出れる状態で鍵を手に入れたこともあって、あの選択肢が脱出降参の意味だとわかるのに間が必要だったので……。

謎解きはほとんどなく、練り歩いてしらみ潰せばなんとかなるので、そういう意味では難易度低めなのかもしれません。暗号が2周目からは時間短縮できるのもひそかに助かりました。

 

 

 

 

他、ステンドグラスのようにパッと美しいエンド画像や、細やかな攻略対象の台詞反応など、短いながらも良点は多め。

気軽にプレイできるので、紹介ページ等見てピンとくるならプレイしてみると良いのではないかなあと思います。

 

 

 

 

追記ではネタバレガッツリのエンド一言感想。

 

 

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フリーゲーム「なれのはてのものがたり」感想

「恨むのはぼくだけでいいよ」

そしたらたぶん誰もが忘れられる前置き。

 

 

 

えー、今回は風待ち駅さんところのフリーゲームなれのはてのものがたり」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

基本は一本道の探索ゲー。公式で「戦わないRPG」という紹介がされているとおり、いわゆる勇者魔王ものになります。

というわけで、さっそく良かった点など。

 

 

昔懐かしスーファミゲーの趣

「はなす」コマンドがあったり、台詞が全てひらがなだったり、MIDIな音楽だったり。

どことなくファミコン時代のレトロRPGの空気の中でお話は進んでいきます。

記憶喪失の主人公、魔王と人間が隔てられている世界、いつでも回復できる仮住まいなどなど。RPG好きにはピンとくる世界観です。

一方で、斜め移動もダッシュもあり、システム面はテンポよくさくさく進みます。顔グラ変化やスチルはもちろん、まさかの動画演出まで惜しみなく差し挟まれるなど、イマドキなプレイヤーへの演出力もばっちりでした。

 

 

ココロを集めるおつかいイベント

誰かの悩みを解決してあちこちの街をうろつくミニイベントが豊富なのも、この作品の見どころの一つです。この手のおつかい要素って下手すると手間にも感じてしまうものですが、ことこの作品においてはミニイベントがあってこそという感じがしました。

何でもない村人や魔物にもドラマがあって、彼らの零すちょっとした一言にココロがそっと温かくなったり、逆に少し痛くなったり。ほのぼのしつつも切ないあの雰囲気は、おつかいイベントでそっとキャラたちが届けてくれるセリフの一言一言が作り上げているんだなあと思います。

赤い悪魔の言葉には激しく共感して共感のあまり大爆笑してしまいました。わかる、わかるぞ。サブキャラ同士にひっそりと関連があるのもいいなあと思います。

 

 

聖人君子も悪人もいないストーリー

ざっくりストーリーを書くと、勇者に救われた後の世界の話です。

こういった、王道展開に少しのメタを挟むストーリーってやっぱり発想が面白いですよねぇ。何度見ても人によって切り口がずいぶん変わるので新鮮さを感じます。トゥルーエンドの満足感はかなり高く、プレイして良かったなあとしみじみ思えるストーリー。

 

そして何より良いなと思ったのが、各々に引っかかりを残してあるところでした。全員が全員良い人とは言えず、一方で悪い人とも言い切れない、このやりきれなさが深く心に沁みます。

物語中に起こる不思議なことも、具体的に書くとネタバレしてしまうので追記に格納しますが、好みな要素で嬉しかったです。

 

案の定キャラとしてはナーヴが一番好き。敬語、後悔、やるときはやる、ドロドロ生真面目。たまりません。大好きです。

 

 

 

細かな会話分岐と「はなす」コマンド

ともすれば重苦しくなってしまいそうな雰囲気を、ほのぼのへ引き上げてくれるのがこの「はなす」コマンドの存在です。

あのコマンドを初めて有効活用した時はもう、にやにやが止まらなくって!

以降もあちこちでにこにこさせられました。とある行動をすると拗ねられてしまうのも微笑ましいです。

 

このはなすコマンドのみでなく、ミニイベントや住人達のセリフも進行状況によって細かく変わっていきます。このセリフへの凝りっぷりは、同じ作者様の前作を思い起こされたり。

やっぱり探索ゲーはキャラの反応の変化があってこそですよね!

イベント発生時には吹き出しが出たり、取り逃したイベントのヒントがもらえたり、見逃しそうなおまけアイテムは通り道に配置してあったりと、プレイヤーへの優しさもたくさんでありがたかったです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

昔懐かしのゲームの雰囲気やドット絵が好きな方、虚しさや切なさを噛み締めるようなストーリーが好みな方、RPGという世界観が好きな方にオススメです。

 

 

 

追記では、ネタバレ込みの感想と、考察とまではいかない解釈など。

 

 

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フリーゲーム「キサハロ!」シリーズ感想

「程よい距離感=進めない関係」

仲良しでも気遣いは忘れちゃだめな前置き。

 

 

えー、今回はたこを焼けさんところのフリーゲームキサハロ!」「キサキサ!」「キサヘヤ!」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

公開順は「キサハロ!」→「キサキサ!」→「キサヘヤ!」。単品でもお楽しみいただける短編連作シリーズもの。ゆるーい会話が癖になるラブコメノベルゲーです。

ふりーむ!様で公開されていますが、4月辺りに撤退予定とのこと。ブラウザ限定なので、良いと思ったら今すぐ是非ともな感じです。

 

 

というわけでシリーズ通して良かった点など。

 

 

元気いっぱい気遣いほんのりちやこちゃん

お気に入りだったのがちやこちゃんの性格! 個性有りヒロインと明言されている通り、まさにここでこそ会える魅力たっぷりのヒロインでした。

色っぽいことはダメでそもそも自分が恋愛対象になるとは思ってない(思いたくない)、毎日あそんで食べて元気!みたいな。あざとく思えそうな行動も彼女がやると、あほのこだなあとほんわかしちゃうんですよねぇ。

 

全く恋愛を知らないのではなく一応最低限の知識もありつつ、自分から挙動不審にフラグを折りにいってしまうところがすごくツボでした。恋愛友情問わず、周りにお友達が多くても踏み込むのには時間かかりそうな感じ。

 

 

 

なかなかどうにも両片想いな掛け合い

シリーズ通して軽妙コミカルな会話でどんどん進み、さくさく読める文体も魅力的。

男側は男側でちやこちゃんとの心地よい距離を保つべく踏み込むに踏み込めず、ちやこちゃん側はちやこちゃん側でなんとなく男女な雰囲気を感じつつも逃げ腰になるという、近づいては戻り引いては近づくこの感じ――狩りか何かかな!? 

結果フラグが立っては折れ立っては皮一枚で繋がる絶妙な距離感が楽しかったです。3人とも別の理由で両片想いになってるのがまたおいしいんですよね。

 

台詞がどこをとってもコントみたいな、ゆるーく吹き出す掛け合いになっているのも楽しかったです。ひらがな多めでだるだるユニーク。延々と盗み聞きしていたい……。

ちょくちょくパワーワードや切れ味の良すぎるツッコミが飛び出すところもめちゃくちゃ好きでした。中でもサネちゃんの挙動不審さが本当楽しくて腹抱えて笑ってしまって、その、ごめんね! 楽しかったです!

 

 

 

ポップにキュートでアクセントの効いた画面構成

スチルや立ち絵は一切ない作品ですが、ひつじさんなどのアイコンや丸っこいフォントなどで作品の雰囲気は伝わりやすく、グラフィック面もポップにキャッチーです。SNSでぽんぽんと連なっていく会話やリプツリーを見ているような感じ。

外見情報は軽く描写されますし、かなりわかりやすく属性付けられているのでイメージもしやすい感じです。

浅黒→スーくん、草食系→サネちゃん、顔がいい→ムツ。多様性。

それこそチャット形式のアプリゲーをしているような感覚で楽しめました。

ポップかわいい雰囲気の中で突如出てくる「しめさば」など、インパクトも欠かさないところがこのゲームのおいしいところですよね。

 

 

 

耳に優しいコンフィグと全開放システム

さりげない優しさに感動したのがコンフィグの音量調整のところです。

初めからミュートになっている、ここ! ここですよ!

私、ゲーム起動して直後にドギャアアアアンって大音量が始まるのとても苦手で、いつもフリゲの初プレイする時はスピーカー起動してからexeダブルクリックしてるくらいでして。なので、この優しさとても身に沁みました。ユーザーフレンドリー……。

セーブロードでちょこちょこ背景が消えたり、ブラウザゲーゆえにキャッシュ等のせいで記録が消える?こともあったりするようなんですが、初めからおまけまで全開放するボタンのおかげでその辺りの不備も一応カバーされています。

あと、オート速度の調整でサンプルが表示されているのもすごく有難かったです! 

ノベルゲにおいてページ送りの早さ調節って最重要ですよね。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ゆるゆる吹き出す会話を楽しみたい方や、友人以上恋人未満の関係、もだもだ手をこまねいては上手いことそれっぽい雰囲気に持っていこうと奮闘しつつほだされてしまう男性陣にうっかりときめきそうな方におススメです。

 

追記ではキャラクターのネタバレ感想など。

 

 

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フリーゲーム「ムラサキ劍」中盤まで感想(0602追記)

「さてもこの世は非情であり、意外と民は呑気である」

悲壮な決意の瓦解は早い前置き。

 

 

えー、今回は、タイトル通り。

基本的に自力クリア/コンプした作品の感想ばかり連ねている当ブログですが、

さよならモガリ」に続いて第二弾のクリア前感想を書きます!

興奮が!収まらねぇ!

 

そうです、かのカタテマさんところのフリーゲーム「ムラサキ(以下無印)」の続編、

ムラサキ劍(以下劍)(not劔)」が公開されました

やったー!待ってましたー!!

 

一応公式としては「前作未プレイでもお楽しみ頂けます」とあり、

そりゃ楽しいでしょうと頷き拍手喝采したくなるところもあるんですが、

やっぱり無印プレイ済だとより楽しいと思われます。

 

そんなわけで当記事も無印はプレイ済前提で書きますね。

 

 

無印との相違点

 

ブロックにぶつかってもダメージを受けない 

 

まず大きい変更点としてはここ。

無印ではある程度ブロック整理をして逃げ道を確保しつつ、溜めて溜めて大爆発を狙う感じの動きになっていたんですが、今作はブロックが生き延びやすく(?)なりました。

ボムでブロックが潰れるどこかむしろ増えるので、ブロックがなくなりかけたタイミングでボム打ってブロック溜めの時間稼ぎも狙えるのかなー、なんて。

 

無印が公開された時はよく避けゲーだと誤認されていたようなんですが、東方におけるグレイズのようなシステムはないので、実際のところ避けを要求されるのって終盤からだと思うんですよね。一直線発射の弾幕を未だに避けきれずにHP数センチ削られる私が言うんだから説得力ある(過言)。

ともあれ。

劍ではこのブロックダメージが消えることで、避けではなく溜めが重視されるゲームというコンセプトがより明確になったのではないかなと思います。

 

 

ブロックの挙動の変化

 

ここはあくまで体感なのであれなんですが……。

無印は弾をブロックに掠るように当てると斜め上に飛んでいくような動きが強かったんですが、劍では真横に飛びがちな気がしています。操作感が違うという声はSNSでもちらほら。

また、無印では敵の出現がまばらだったのに対して、劍では画面いっぱいに敵が敷き詰められるような配置も多めです。なので、全方位に対応できるように弾道(ブロック動作?)が調整されているのかなあとも考えたり。

ブロックに当たってもダメージにならない→そのぶん敵を置いておいた!

みたいな印象でした。

 

 

見やすい実績状況

コレクションがより見やすく・わかりやすく・わからない感じになってます。

既プレイヤーには伝わると信じているよ。

条件の達成状況が分かりやすくなった他、ヒントも豊富。

詰まってる人は息抜きがてら見に行くと良いかも。

 

 

 

無印からの共通・関連

1面クリア辺りまででわかるネタバレ含むので注意

 

主人公二人とプロローグ

「主人公があっさり交代するのでは」

「何が来てもおかしくないという覚悟を乗り越えてくるはず」

「綿密に予想をしておいて裏切られるのがこれ以上なく楽しい」

等々の感情と共に正座待機していた待望の劍ですが、

続編と銘打たれているだけあり、共通点やファンが嬉しい点もたっぷりでした。

 

まずはプロローグのあの文!

プロローグって言って良いのかな、あの冒頭説明のコレクション。

あの文章大好きなんですよー。有無を言わせない感じと、色々わかった後だとしみじみ感慨深くなる感じ。続投で嬉しかったです。

 

主人公二人のキャラや操作特性も継続です。より遊びやすくなってるかも。

あとは主人公の立ち絵ですね! 海浬の表情が相変わらず心に辛い!

無印の流れがばっちり継承されているのが一目でわかるところもすごく嬉しかったです。初見で泣く。

 

 

どこかで見たような気がする初顔合わせ

 

(今の私のプレイ状況だと)

無印で登場したキャラが明確に全員再登場するわけではない感じですが、道中のボスや各面ボスのストーリー等々を見ると、「おやおや」と深読みをしたくなるあれがあれだったりします。

これはキャラストーリーのみでなく、弾幕のパターン等々見ててもそう。

 

コレクションもけっこう無印プレイ済・決闘解放済が基準で書かれている感じ。

といっても、初めから謎を振りまいておいて後からぱちぱちと空いたピースを埋めるようにプレイヤーへ情報開示していくのがこの作者様のゲームの味な気もしているので、わからないところはわからないで進みまくるのが良いかなと思います。

 

きっと無印全開放済みの既プレイヤーでもわからないところはわからない。……はず?

 

で、無印とのつながりを大いに見せつつ、劍から登場するボスもボスでかなりの色濃いキャラです。

1面のセリフにもう安心感を覚えますよね。カタテマゲーやってるなあって感じ。

3面の人が好きです。

 

 

 

美しい音楽と異色な演出

 

無印の時に感じたであろう「!?」や「???」は今作も健在です。

また、カタテマゲー恒例のそういう演出も健在です。

上記伏字すぎて何を言ってるのか伝わらない/伝わり過ぎるのどちらかですよね。

 

おいておいて。

そして新曲!

BGMタイトルも含めていりすの頃からずーーっと好きなんですが、今作もかなり味のある曲が盛りだくさんでテンション上がりました! 無印と比べると落ち着いた曲調が減り、ギャリギャリした激しいサウンドが増えた印象です。無印は5面の関係でピアノ多めになっていたのかも。

 

無印4面で特に感じた、BGMと画面がマッチする演出もより進化しています。

 

3面の「観光」、4面の「洞」なステージが特に印象的だったかな。3面は敵の出方やブロック、4面は背景の変化でかなり演出を加えられているので、プレイ中に余裕がない方はリプレイなどで見てみるとうっとりすると思います。

 

3面ボス曲の、くるくる使う音が変わって落ち着きない感じがまさにあの子って感じでめっちゃ好きです。時々冴えたような音が入るところが意味深。

 

 

なうぷれいんぐ状況

とりあえず私の現状況としては、コレクション半分・決闘三分の一くらい埋まって、5時間くらいプレイした感じ。エンドへの道筋は確信できたので、休憩がてらこの記事を書いてます。もうムラサキのことしか考えられない。

閑話休題

常々零しているように私はアクション操作がめっちゃくちゃド下手くそなので、もたついて一日かかるくらいかなあというのがだいたいの基準かもしれません。

エンディング見てからが本番みたいなところありますしねぇ。

 

余談ですが、公式説明文の「敵のたぐい」等々の文章、もうこの時点で好きです。

単純に「攻撃を当てることでスキップ可能」みたいな説明をするんじゃなくて、「相手が嫌な気持ちになって」という物語的説明がずずいっと付け加えられているところ本当めちゃくちゃ好きです。味気なき世に味を。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

脳の休憩がてら、書き散らかしました。

皆さんのリプレイ動画や「?????」「!!!!」なリアクションを楽しみに、

引き続き頑張ってきます。

 

 

(6/2追記

 ムラサキ年表とか 

privatter.net

 

ムラサキ劍5面クリア直後に書いたので言語が崩壊してる感想とか

 海浬編 沙月編1  沙月編2

 

ムラサキ劍サントラ受け取った直後に書いたので寄声がほとんどの感想とか

 

ツイッターでその他で放流してます。

そのうちきちんとまとめたいですね!)