うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「泡雪のguignol」感想

「神様は試練をお与えになった」

そしてそんなものは誰も求めていなかった前置き。

 

 

えー、今回はFavorite Gardenさんところのフリーゲーム泡雪のguignol」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

エンド分岐ありの鬱展開百合ノベル。読みやすく一文でぐっと心を掴む文体と、大画面で殺伐も感動もこなしてくれるスチルが人を惹く作品です。

 

 

 

では特徴など。

 

 

二つの意味で織りなすグランギニョル

 

タイトルが読めなくてググったのが始まりでした。ギニョール、およびグランギニョル。これを聞いて何を思い浮かべるかは世代による気がしますね。

ともあれ私は「荒唐無稽の残虐劇」というイメージしか知らなくてですね、調べてみたところ「指人形劇」というような意味合いもあるそう。知って思わず目を見開きました。パペットという細かな違いはあるものの、いやはやまさに、タイトル通りのお話です。

書き過ぎるとネタバレになってしまうので心苦しいのですが、よくTwitterでバズっている「信仰」「遺体を埋めに行くCP」みたいな概念が好きな方には刺さると思います。

 

 

教会に捨てられた子と貴族の娘

 

舞台は中世風ということで、貴族社会が成り立っています。メインキャラの二人は捨て子と貴族の娘。この持つ者持たざる者といった観点がまずもう好きなんですよね。一方で身分差問題に発展しそうなところは「養女の話を断った」という形でばっさりと切って、二人の関係性の話に留まってくれたのも読みやすかったです。

さらには「男なんて嫌いよ」と作中ではっきり述べられる通り、お家のために男のために消費される女性像がちらりと見えるのも、二人が二人の間で完結しようとする流れに説得力があって良かったですねぇ。

女と女の重たく一途な想い、これぞ百合に求めるもので大変潤いました。

 

 

惜しい点

 

心底惜しいなあと思ったのは、演出面。シーンの切り替え方とスチルの出し方です。

スチル自体はものすごく求心力のある絵なんですよ。しかも画面にバンと表示されるので、こっちも度肝を抜かれますし、本当持っているものはすごく良いです。

でも、それをどう見せるかが本当に惜しかった!

スチルの表示のタイミングが情景描写よりも早いので、プレイヤー視点だと文章で驚かされるより先にスチルで先の展開がわかってしまい、衝撃度が激減してしまっているんです。間に暗転を挟むなどして、文章でも「!!」となるタイミングぴったりでスチルが出ればものすごく効果的だったと思います。文章もスチルも高水準だからなおさら!

 

また、場面転換にも溜めが欲しいところ。

文章送りとページ切り替えがおそらく同じなので、長い時を過ごしたり深く思い悩んだりした後のシーンも直前と地続きだと錯覚してしまいがちでした。アイキャッチを挟むでも良し、暗転してウェイトを眺めに取るでも良し――――それこそ演劇のように幕を一時的に締める隙間があるとより感情移入も深まったと思います。

 

あと余談ですが、暗い鬱展開が大好きなので、あとがきの文章はちょっと寂しかったかな……。

 

 

とまあ、こんな感じで。

鬱展開としてきっちりやり切ってくれた印象の作品です。

信仰、思慕、家族愛、狂愛、理想像などなど、複雑に面を変える想いを抱えた百合が好きな方へオススメ。

フリーゲーム「catalepsy」感想

「白ければ白いほど色鮮やかにうつるもの」

一瞬で染まるのも時間をかけて染めるのも好きな前置き。

 

 

えー、今回はcotoliaさんところのフリーゲームcatalepsy」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐ありの鬱展開ノベルゲー。捉えようによっては近親要素ありで、吸血鬼がメインです。雪気色がよく似合う、病み要素が輝く乙女ゲーでした。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

静かに穏やかに絡めとる情愛の物語

 

公式サイトの雰囲気からしてオシャレな本作。各キャラのKEYとして選ばれている単語「無知」「狂信」「支配」がまさに、まさに好みでして、気づけばDLしていました。

確かにヤンデレだったり鬱展開だったりするのですが、苛烈さはなく落ち着いた雰囲気の作品です。主人公がおっとりとした性格で全てを享受していくからか、どのエンドも不思議と読後は心静かな気持ちになります。

きちんと明るいシーンや心を通わせ合うシーンもあって、狂気や血が裏に潜んでいても全体的に穏やかに見えるんですよね。こう、真っ暗闇にゆっくりと沈んでいくキャラクター達を見守るような……よい心地でした。

 

 

 

ぱっと一目で攫って行く視覚演出

 

作中の舞台である雪の森、淡く繊細な絵柄、薄くぼやけて溶けていきそうなメッセージウィンドウ、滲みや染みが上手く表現されているテクスチャなどなど。あちこちで世界観が感じられ、作品の雰囲気がとても完成されている作品です。

キャラの視点が変わるとメッセージウィンドウの色合いも変わるんですが、これがまた、すごくお話に合う見た目なんですよ。終始「綺麗だなあ」と思いながらプレイしてました。雪のようなグラフィックでもしっかり文字は読みやすいのもグッド。

 

そして、何よりスチルの使い方!

吸血鬼だと知ってはいましたし流血描写の旨も心得ていたんですよ。でも、それでもはっと目を奪われるあの白と赤! どちらのルートでもすごく、すごく効果的なスチルがあって、思わず息を呑みました。すっごくどきどきして、お茶飲んで震えて一呼吸おいてセーブしてから戻った覚えがあります。どれだけ動揺してしまったんだ。好きです。

 

あとさりげないところだと、エンド名の表示の仕方や、ゲーム起動時の作者様のタイトルロゴ表示の仕方などもすごくお洒落で素敵でした。

 

 

 

世界観にしっくりくる選曲センス

 

あと語っておきたいのが選曲センスです。

この手のシリアス寄りでお洒落なゲームって、特に明るい場面での選曲が難しくなるのではと思うのですが、本作はそこでも冴え渡るセンスを見せてくれました。

なんだろうなー、明るいんだけど雰囲気ブレイカーではなくて、やっぱりオシャレなんですよ。街のBGMとかも好きでした。素材サイト様の存在自体も勿論ありがたいことですが、膨大な曲の海からどれをお借りしてどううまく組み込んでいくかというのも、作者様の腕の見せ所だよなあと思います。ところどころでSEが入っていたのも細やかな作りでした。

 

 

 

惜しい点

正直にということで、細々とした点も少し書きますね。

 

・オートボタンが非表示

スキップと一緒にオートも右下に配置してもらえるとプレイしやすかったかなと。

 

・ところどころの描写が駆け足/違和感

ミゼラの中で兄さまのことが圧倒的に上位に立っているのであれば、嘘をつくシーンはもう少し尺があるとより感情移入できたかもしれないなー、なんて。

また、人間の常識を知らないミゼラが、例えば初対面の人の家に入る時に申し訳なさそうに挨拶する(失礼という常識がある)点なども違和感がありました。他にもいくつか。

でも、こういう細かいところをバッサリ切ってるからこそ良いなあと思うシーンもあります! 

ここは熱く追記で語るつもりですが、とにかく冗長を省くことによる良し悪しが両方出た結果なのかもしれません。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

吸血鬼、という乙女が一度は食らいつく要素を美しい仄暗さと共に描いてくれた一作だなあと思います。

世界観重視、ツンデレ男子萌え、きょうだい萌え、鬱展開好きの方におススメです。

 

追記ではネタバレがっつりで、エンド語りなど。

 

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フリーゲーム「イグノラントメイガス」感想

「気分次第で変わる性格もあいつだからで許される」

まるっと受け入れてるうちに伝説のパーティができちゃう前置き。

 

 

えー、今回はゆきやどりさんところのフリーゲームイグノラントメイガス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

キャラの好感度による分岐はあるものの、大筋のストーリーは一本道のRPG。バージョンは1.04でプレイ。選択肢によるミニイベントと戦略の広いバトルが特にお気に入りポイントです。

 

というわけで良かった点など。

 

 

デフォ名まで選択できる、大量の会話分岐

 

初手で驚いたのは主人公の名前。

通常デフォルトネームは一つと相場が決まりがちですが、本作はなんと3つ&自由入力の中から好きな名前を選択できます。ボロンゴ・ゲレゲレ・プックル的なあれ。この発想を実際に起用しているゲームにはまだあまり出会っておらずとても新鮮でした。

 

そして選択肢の多さは勿論ここだけにとどまりません。主人公の応答セリフは基本的に3種類、しかもメインストーリーだけでもほどよく喋るタイミングがあって、選ぶのがすごく楽しかったです。

どれも選びたくなる選択肢なんですよー! かっこつけたものからギャグに特化したおちゃらけ選択まで。そりゃね、どれも言いたくなっちゃいますって。

私は基本ナンパ師っぽい選択肢を選びがちでしたが、他のプレイヤーさんだとどうなるのか気になる作品でもありました。

 

さりげない良点としては、選択肢を連打でスキップしてしまわないよう、効果音とウェイトでしっかり知らせてくれるところ。ウディタゲーは特に連打事故が起こりやすいので大変助かりました……!

 

 

 

ついつい寄り道自由行動

 

で、さらに上記の膨大な選択肢分岐を、生かしているのが自由行動。街中で自由行動を選択するとパーティメンバーがあちこちに散らばって二言三言お話してくれるんですが、ここでも会話分岐が起こるんです。もうね、大歓喜ですよ!

こういう会話分岐って、多すぎると逆に回収するのが目的みたいになっちゃうこともあってジレンマを感じるんですが、本作はある程度進むと行動制限がかかってくれるので助かりました。決まった枠の中で膨大に用意されてる会話をちまちま楽しむ感じが好き。

 

さりげなーくみんなの個性が伝わってくるところも好きなんですよね。ノノはいつも彼女と一緒にいるなあとか、ロアはタバコ吸うときはちゃんと一人になれる場所を選んでるんだなあとか。

あと単純に、キャラ達も各自で好きにやってるんだとわかると、なんか安心感があります。彼らには彼らのプライベートがあるんだなー、みたいな。

 

 

 

王道をしっかり固めていくほのぼのファンタジー

 

さて、では葉末ではなく根幹はどうかというと、ストーリーはドンと王道な印象でした。村の幼馴染たちがちょっとした冒険に出て、色んな人と出会って、そうこうしているうちにスケールがどんどん大きくなっていく――――そんな感じ。

キャラ同士がみんな仲良しなので、世界観も性善説で、前向きで明るい展開を無条件で信じられるような雰囲気が自然と出来上がっています。きゃっきゃと盛り上がってるうちに気付いたら色んな危ないこともなんとかなってた、この緩さがよき。

いわゆるお約束な展開もきっちりやり遂げてくれて、すっきり爽やかなプレイ感でした。

 

 

 

ほのぼのと対極のハードでディープなバトル

 

で、ほのぼのと穏やかに終わるだけでないのがこの作品の面白いところ。

特に熱中したのがバトルシステムです!

ATB? ゲージが溜まると行動でき、通常攻撃でSPが溜まるタイプのバトル。余談ですがこの手のバトルの通りが良い呼び名を教えて頂きたい。

キャラの固有スキルは無い代わりに、装備品である武器や紋章にスキルが付随しており、装備の付け替えで疑似的にキャラメイクができる印象です。加えて、陣形選択によってある程度キャラのステータスに補正がかかります。

一方で、レベル上げの恩恵はHP上昇くらい。脳筋戦法もできなくはないですが、特に序盤はどう戦略を立てて敵を殴り飛ばすかが問われる、かなりハードなバトルでした。

 

お金にそこそこ余裕ができる反面アイテムが一人4つの所持制限だったり、回復スキルのコストがそこそこ重かったり、ニクイところで縛りが入ってきてるんですよねぇ。バランス調整が上手い! ばっちりハマる戦い方に気付ければ意外とするっといけますが、そこに気づくまでの試行錯誤が試されているようなプレイ感でした。

具体的な戦略等々は追記に格納するとして。

勝利した時の興奮が実に気持ちいい、バトル好きも大満足の作品です。

 

 

 

ぴこんと吹き出しアイコン

 

最後に原点回帰して。ゆるっとほのぼのなストーリーに合わせてグラフィックもかわいい感じです。基本はドットの歩行グラのみなんですが、お話し中にぴこぴこ吹き出しが出てきてくれるので見た目は明るく賑やかな感じ。ステータス画面も情報量は膨大なのにすっきり見やすくて驚きました。

あと、戦闘時のオリジナル規格なグラフィックがとってもかわいくて好きなんですよ!

戦闘時はどのスキルも魔法も固有の演出が走りますし、キャラもかなり動き回ってくれるので、かなり見ていて楽しかったです! ゆらゆらふらふらする彼女のモーションがほんっと大好き。

 

 

 

合わなかった点

 

と、絶賛しまくったところで合わなかった点もいくつか。

  • レベルがばらけるパーティメンバー
  • 入れ替えの操作感
  • アクション要素

辺りですね。ここは少しネタバレになってしまうのですが、パーティ分断イベントがあるからにはレベルは自動的に統一してもらえたら嬉しかったかなと……。とはいえレベル差が20あっても意外にぎりぎりなんとかなる難易度なのはやっぱり凄い絶妙ですよね。

あと陣形を変えるのが楽しかったので、メンバー入れ替えに手間取ってしまうようなキー操作だったのはちょっと惜しかったかも。

アクションは、はい、例のあれです。やっぱりこれもプレイヤーが驚くほどアクション苦手だからというところはあります! 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

この他にも用語辞典や絶妙な隠し通路など、RPGにあるととっても嬉しい要素がぎゅっと詰まっている作品でした。

他の人のプレイングが見たくなるゲーは良ゲーの法則。

 

追記にはネタバレ感想やバトルの語りなど。

気になる方は下記へどうぞ。

 

 

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同人ゲーム「ロマンディックミスティリオン フリー版」感想

「天寿を全うして初めて辿り着ける永遠」

苦痛と取るか喜悦と取るかは心次第な前置き。

 

 

えー、今回は大人の道楽さんところの同人ゲーム「ロマンディックミスティリオン フリー版」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

元々は有料作品のR-18要素有なRPG。年齢差カップルで男の娘誘い受けが楽しめるBLものです。リンク先も年齢制限有りで、体験版DLページではえっちなCGが見えるのでご注意を。フリー版はこちらから飛べます。

フリー版と有料版の違いはエロシーンがあるかないか。フリー版もとい体験版と言えば基本的には途中で終わってしまうものですが、本作はトゥルーエンドだけでなくクリア後おまけ要素まで楽しめます。フリー版というよりは全年齢版という感じかも。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

衣装替えもたくさんの男の娘満喫ゲー

 

攻略対象は男の娘な死神、レヴィ。

内面や話し方はしっかり男の子してるタイプの女装っ子です。……と書き切っていいのかな。女装と男の娘の定義には揺らぎがあるので表現が難しいですね。

照れつつも誘ってくれるツンデレさんで、余裕のある成人男性なタキとの相性の良さを感じながらにやにやさせて頂きました。

 

で、熱く主張しておきたいのがこの男の娘要素のこだわり具合。

もっと言えば衣装差分の多さです! 

ただステータス絵が変わるだけではなく、会話中の立ち絵が表情差分含めて変化し、さらには戦闘中のカットインから歩行グラフィックに至るまで。本当に全部が変化してくれる、細やかな出来に惚れ惚れでした!

男性向けエロゲだとお着換えはあるあるかもですが、カットインまで変わる作品にはあまり出会ったことがなかったので嬉しかったです。

色々な気候の地域に行けることも相まって、熱い地域では涼し気な格好をさせてみたり、ボス前ではデフォの正装に着替えさせてみたり、色々と脳内妄想を広げられました。

セーラーのデザインが特に可愛くて好き! ツインテ万歳!

 

 

 

メイン以外にもひっそりBLCP

 

本編のパーティは常にタキとレヴィの二人旅。安心と安定の固定CPです。他にも作中のキーキャラ同士でさりげなく矢印が出ていることもありまして、私はそっちの二人にとっても萌えて萌えて転がる勢いでした!

想いの内容が一筋縄ではいかない感じだったり、すんなり引っ付くわけではないけど強い感情が向き合っていたり、色んな種類のCPを見れるのがまた美味しいんですよね。あくまでタキレヴィ以外はサブCPなのでそこまで多く出番やそういうシーンがあるわけではないのですが、サブCPに萌えがちな私としては嬉しかったです。

 

基本はBLでサブイベントもそういう要素が多いですが、BLであることに固執されているわけではなく、サブでは男女やごにょごにょの要素もほんのりとあります。性別にこだわらない世界観というか、誰もが誰もを自然と好きになるような印象でした。このくらいが自然体に感じられて好きだなー、なんて。

BLは固定CP派で女性や当て馬を入れたくない、かつ、色んな恋やら情念やらを見たい自分としては、もう色々とありがたい作りでした。

 

 

 

様々な宗教観が成り立つ世界

 

主人公が坊主(モンクと言う方がイメージしやすいかも?)なだけあって、世界各地に宗教が成り立っています。恋愛禁止の宗派、他宗教にも寛容な宗派、自己の欲こそ正とする宗派、などなど。私事ですが倫理の教科書を飽きることなく読んでいた日々がぼんやりと思い出されました。

それぞれの教義の違いも興味深かったですし、某キャラの改宗の話にはハッとさせられました。宗教と言ってもカルトではなく、シンプルに考え方や価値観の違いだと感じる話も多くて、すんなり受け入れられた気がします。明らかな悪人も教訓話もあるんですが、我こそ正義也みたいな感じじゃなくて、温度感が落ち着いてるんですよね。この温度感、神は見守っておられるみたいな安定を感じました。

 

システム面でも「恩寵」という形で、祈りに神が応えてくださるみたいな世界観に説得力を出してあります。恩恵はかなり大きいと個人的には思うのですが、狙って起こせるものでもなく、起こったらラッキーくらいの塩梅なのもまたそれらしくて素敵でした。

 

 

 

あちこちで起こるサブイベント

 

そして人の価値観が千差万別であることを表すかのように、登場するサブイベントも豊富です。

特筆したいのがイベントの分岐の膨大さ! 

かなり多くのイベントにトゥルーとノーマルな結末が用意されています。対立する意見のどちらに味方するかというわかりやすいものから、うっかり安易な道を通って真実を見過ごしてしまう、なんていうエンドもあり。プレイヤーの行動や選択がはっきり反映してくれる感じがあって、プレイしていて楽しかったです。

めちゃくちゃありがたいことにサブイベントの達成度がメニューから確認できるので、回収が捗りました。ついついセーブロードや2周目で別の結末を楽しんでみるなんてこともしちゃったり。

 

印象的だったのはアルブの話かなあ。ふっと消えてしまうところに余韻を感じて、なんとなく心に残っています。信仰心によって揺らぐのは神様的なものの王道ですよね。

廃都アダマスのどうにもならなさも好きです。タキの価値観がわかるセリフも好き。

あとは飲めや歌えやの酔拳イベント。どうしてもレヴィと一緒にいるとタキはお人好しな面のほうが強く出るので、彼のちゃらんぽらんな一面も見れて楽しかったです。

 

 

バトル好きもキャラ萌え派も嬉しいおまけ要素

 

詳しく語り過ぎるとあれなので詳しくは追記にて。

このパートだけでもう一本楽しめそうなくらい、嬉しいボリュームでした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

他にも迷子にならないように目的が明示されていたり、どこからでも攻略できるように敵のレベルが調整されていたり、魔物図鑑があったり音楽鑑賞ができたり、細やかな気遣いが込められている作品でした。

 

男の娘、宗教や訓戒話、フリーシナリオ、イベント分岐や衣装差分多数、などにピンとくるならおススメです。

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

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フリーゲーム「怪盗ドルチェのゲーム」感想

「定義も理論もあったらいいけど、それ以上に大切なものもある」

例えば食後のチョコレートとかな前置き。

 

 

えー、今回はKIJI-N-CHI(きじんち)(kiji)さんところのフリーゲーム怪盗ドルチェのゲーム」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ウディタ製、短編連作風に章立てされているノベル寄りの謎解き探索ゲー。

端々までオシャレと惚気とチョコレートがたっぷりつまった、満足感のある一作でした~! 

 

 

というわけでさっそく良かった点など。

 

憧れの大人で洒落た世界観

 

もうね、何よりもまずあの圧倒的な求心力のあるOPですよ!

果たして何が起こるのだろうかと期待するプレイヤーをまず静かに舞台へ立たせて、そしてガッと魅力で掴んでくれるあのプロローグ! もうすっごくすっごくかっこよくて! 

BGMの入り、読んでわからせる筆力、打ち鳴らされるヒールの音まで聞こえてきそうなあのオシャレな画面、いやぁたまりませんよね……。

 

公式の宣伝PVもあるのでリンクを貼りますね!

youtu.be

 

各章のタイトルもそれだけで書き留めたくなる素敵な響きなんですよ。

中でも私は「1ビット・ショコラ」が好きです。不思議と字面は噛み合う感じがするのに、何が起こるのか想像がつかなくてドキドキしました。

 

 

 

黒と赤が映えるベルベット風なゲーム画面

 

PVを見て頂けたなら伝わるかと思いますが、画面全体が黒いシルエットとベルベットな背景で構成されています。これがまたハイセンスなんだなあ。

 

で、しかもこの画面を静止画で終わらせないところがポイントなんですよ。

作中では背景をプレイヤーがスライドさせて、あちこちクリックして楽しむ自由行動パートがあります。キャラやカーソルが動くのではなく、背景自体が動いていくことで、一緒に歩いている感じが楽しめるこのプレイ感。最高! ウディタの可能性は広いですねぇ。

 

ゲームを進めることで行ける場所が広がったり、それまでのお話にまつわる戦利品が増えたりと、どこまでもわくわくを残してくれる姿勢も素敵です。

 

 

 

あちこちで聞ける二人の幸せな会話

 

この作品の醍醐味は、主人公のチョコ大好きな怪盗・ドルチェと、そのパートナーである女性型アンドロイドのカノンの、すっごく微笑ましい会話です。

カノンがすぐ本音を顔に出しちゃう(文字通りの意味で!)ところがすっごくにやにやしちゃうんですよねぇ。いわゆる恋愛ノベルとは違って二人の掛け合いは文字だけで流れていくんですが、どれも情景が想像できるようなじゃれ合いっこでとってもかわいかったです。

 

前述した自由行動パートでも、二人の会話は盛りだくさん。進行度によってどんどんセリフが変わっていくので、あちこちお散歩するのが楽しかったです。

ランダム変化する会話ポイントも多いんですよね。カノンとの会話は基本5パターン以上ありますし、カフェやブティックでの会話を通してカノンの色の好みがわかるのも嬉しくって。NPCには二回話しかけちゃうタイプの私にとっては実に盛り上がりました。

探索ポイント自体も数多く、カーソル変化ですぐにポイントがわかるところもプレイヤーに優しくて好印象です。

 

 

 

なかなか苦く、けれどしっくりくる謎解き

 

ほんわか可愛い会話も魅力ですが、やっぱり二人は“怪盗”なわけでして。

本編ともいえる事件パートでは、かなり難しめの謎解きがドルチェ達およびプレイヤーを待ち受けています。

傾向としては閃きや視点の変化が必要なものと、論理パズル的なものの二つに分かれていた印象ですねぇ。ググってポンと解決するものはほとんどありません。がっつりメモも必要です。

 

が、ここでありがたいのがウディタのシステム。ウディタってPrtScrボタン押すだけでそのフォルダにスクショが楽々生成されるんですよ。なのでメモ嫌いな貴方もぽちっと一指で、なんとか、頑張ってほしい! 私のように!

公式にヒントもあります。大変助けられました。ありがとうございました!

 

凝っている謎が多いぶん、解けたときのスッキリ感はひとしおです。

そして何より、謎解き自体がお話の謎や伏線に直結しているパターンが非常に多い! ここもかなり良点として挙げたい注目ポイントでした~。

 

 

 

クリア後のおたのしみ

 

詳しくは秘密ですが、最後までどころかその先もたっぷり味わえる、素敵な作品です。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

謎解き、人間と機械、探索ポイントたっぷり、怪盗、チョコレート、なゲームに惹かれる方へおススメです。

追記ではネタバレ込みの感想をちょっとだけ。

 

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フリーゲーム「いばらのうみ」感想

「全ての温度を振り払い、貴方の感覚だけが散らばって」

それでもかすれた光どうか消さないで欲しい前置き。

 

 

えー、今回はearin(あーりん) さんところのフリーゲームいばらのうみ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ウディタ製で基本システムはRPG、一本道をひたすら前進し続ける、いわゆる雪道ゲー。序盤はけっこうカツカツですが、終盤はするするっと進んでストーリーや世界観に集中させてくれます。

死に覚え、トライ&エラーの戦略ものと書いた方がいいのかな。

 

ともあれ良かった点など。

 

 

低温な重さとなくした帰り道

本作はノンフィールド、一歩進んだらもう戻れないタイプのゲームです。そして道のりの厳しさを強調するように、一歩進むたびにダメージを食らう仕様となっています。また、軽率にアイテムを使ってしまうと終盤に“詰む”ことも多いにあり得ます。

目的は、進み切って、辿り着くこと。

この厳しさこそがこの作品における大好きなところなんですよね!

 

例えば、某敵はパターンを読んでこちらの行動を詰めるとぴったり固定値でHPを削り切ることができます。

この、数字的な美しさ!

パターン行動の、余地も無駄も無いスマートさ! 

興奮しません!? 私はする! 文系なのに! 

実際ある程度プレイ用に攻略メモ等々用意してみると、意外と抜け道や取れる手段が多いんですよ。

それに気づくまでの序盤はなかなか厳しい道のりですが、一歩一歩踏みしめて、どう戦うかどう切り抜けるかをうんうん悩むのがとても楽しかったです。特に私は慎重派なので進みが遅かったんですが、このプレイ感のおかげで、まさに茨の真っただ中にいる緊張感が味わえました。

 

 

絶妙な配合のオマージュ元とオリジナル世界観

 

さて、もうタイトルでピンとくるコアな方もいるかと思うので書いてしまいますが、鬼束ちひろ氏リスペクトな要素がふんだんに盛り込まれています。タイトルに始まり、技名、アイテム名、主人公の服の意匠などなど。はてはセリフの一フレーズにも。

特に私はこの手の元ネタ探しとかが好きなので、この作品が楽しかったのもあってついつい自分の好き曲を聞き漁ってしまいました。BORDERLINEいいよね。

 

一方で、かなり独自性の高い要素もふんだんに含まれているのは、公式サイト等のスクショなど見て頂ければ伝わる通り。

作中では世界観を紐解くカギとなる「心話通信」から、謎の指令や窮屈なディストピア環境を察せられる地上の様子など、彼らにとっての現実味を帯びたセリフを聞くことができます。

そもそも、陰鬱で傷だらけの世界の中をただ進んでいく――――これだけでもう絵になる魅力がありますよねぇ。

 

こういうオマージュ元の世界観と独自の世界観がうまく交じり合って、かなり変わった味わいが出ている作品だなあと思いました。文体の色が読めないけど、それこそがこの作品の文体っていう感じ。

細かいところだと「セーブ」でなく「セ~ブ」だったり、readmeが「よめるよ」(読んでねじゃない辺りがなんかゆるくてよい)だったり、時折柔らかな言い回しが出てくるのも、なんだかすごく独特だなー、なんて。

 

 

ストーリー重視もスコア重視も楽しめる

本作をプレイするにあたり、世界観重視の私のような方は、前述の「心話通信」で語られる欠片からどういう世界でどういう話なのか想像を膨らませるのが楽しくなるはずです。敵名やアイテム名がどれも詩的なのがそれに拍車をかけてますよね……。

転じて、クリアすると自分のスコアが閲覧できます。時間は関係なく、どれだけリソースを残してクリアできたかという感じ。詰将棋のシステム面が好きな方も、大いに楽しめる作品だと思います。

 

 

コーラスの力強さが際立つBGM

そして注目したいのがBGMの選曲センスです。

コーラス入りの曲が戦闘で流れる演出だいっすきなんですよね!

しかもこの作品は特にバトルの厳しさが際立っているので、ボスの強敵感がなお増してくれました。背景色が刺々しく異彩を放つのも併せて、世界観がより濃厚になっているなあと感じます。

道中のBGMもしっとりとした雰囲気がほどよくて、バトルの時はもちろんのこと、なかなか勝ち進めないステージをどうクリアするか熟考する時もぴったりの曲でした。

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

まさに過酷な世界観で、励まされたり突き放されたりしながら、試行錯誤を楽しめる一作でした。

追記では色々考えたことや、自分のプレイングなど。

 

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フリーゲーム「Seraphic Blue」感想

「効果的な物言いは共通の認識を下地として作ることから始まる」

難読漢字にはルビを振っていきたい前置き。

 

 

えー、今回はBlueFieldさんところのフリーゲームSeraphic Blue DC altered版」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

古来から脈々と語り継がれてきた伝説の長編RPG

ついにプレイしましたよー! 作風が肌に合う作品でした!

 

クリアまではだいたい43時間くらい。ただし、ボス戦ゲームオーバー等を考えるとたぶんもっともっとかかりました。かけた時間に見合うだけの、濃密で響く物語が見れてもう大満足です。

 

とりあえず前置きとしてプレイしたバージョンについて。

原作を公式認可の元で改造したディレクターズカット版をさらにパワーアップしたaltered版(以下DCA)をプレイしました。なんか呪文みたいですねこれ。

初めはオリジナル原作版でプレイしようと意気込んでいたんですが、DCA版ならどこでもセーブができるんですよ。これは大きい! で、ストーリーも追加要素等がなくオリジナルモードを選べれると分かったのでDCAで始めました。

 

これだけ有名なゲームですし紹介文はたくさん溢れているかなー、なんて。

なので今回は、いつも以上にネタバレを気にせずパッションだけで書いていきますね。違いがわからん気もする。

 

ともあれ、ネタバレ注意。以下感想。

 

 

 

長い長いOPと圧倒的な文章量

「OPが長さ的な意味で初見殺し」

いやあ噂に聞いていましたが、イベントシーンが長いのは事実ですね! でも、実際プレイしてみると少なくとも投げるほどではないというかもったいないというか。そりゃ確かに尺は長いですが、中身も濃いので、むしろじっくり拝聴したい感じがありました。

 

DCA版のシステム改良の恩恵にあずかっているところは多々あるにしてもですよ。

序盤は謎めく展開と切れ味の良いセリフで掴み。

中盤は序盤の伏線を回収しつつ、個人の事情から世界説明へと視点が転じ。

終盤は救世を謳い上げて世界観を大きく広げたうえでまた個人へとスポットを当てていく。

いやあこの構成力よ! むしろパタパタ伏線が収められていく流れがめちゃくちゃ気持ち良かったですし、セリフが本当どれも印象的なので、読むのがすっごい楽しかったです。中盤から群像劇っぽくもなるんですよね。この転換も世界が広がっていく感じがしてわくわくしたなあ。

 

終盤の溜めやウェイトの生む余韻、たまりませんよ本当。

ラスボス戦とかもう真骨頂ですよ。なにあの演出。冷めてるのに熱い展開。最高。

自動的にテキストが進行する時と、こっちでカチカチクリックしてテキストを進める時とで差があるのも特徴的ですよね。キャラの気持ちや言い淀みをしっかりと表現されたかったのかなあと思っています。

 

 

まあ、といっても、投げられる理由もわからんでもなくて。

わからない・知らない情報が溜まっていくのが苦手なタイプの人は、おそらく前座の部分で合わなくなっちゃうんだろうなあという気はします。情報量が多いので考えながら(先を予想しながら?)読もうとすると多分パンクするんですよね。

私も3人のヴェーネと星の代弁者のことを序盤に考察しようとして頭から煙出ました。

 

でも大丈夫、伏線は作品が自ら回収しに来てくれますし、プレイヤーに伏線を思い出させてくれるように、演出を丁寧に加えてくれます。第二章辺りからそういう、表現に対する信頼みたいなのができたので、流れに流されて突き進んだんですがこれが大正解でした。とりあえず序盤は流されておくのが吉です。

 

本当、伏線の回収が丁寧なんですよ! サビだから繰り返すね!

重要なイベントやキャラクターの根幹に関わるセリフは、しっかり序盤から繰り返し表現して印象付けてくれます。エルとの対話とかその最たるものです。

それに伏線回収のターンにきちんと回想シーンを入れてくれたり、キーとなる一枚絵やアイテムをちらつかせてくれたりします。お話の表現の仕方としてはとても親切。期間を開けるにしても数週間ごとなど、継続してプレイするならすんなり飲み込めるのではないかなと思います。

 

キャラ数も多いですが、そのぶんキャストデータも充実してますしね! 名前を覚えられないタイプの私ですが、ぱっと思い出せなくても話が進むとすぐに「あの人か」ってなりました。演出力―!

物語進行度に応じて記載内容が変わるのものすごく綿密で凄かったです……。

 

 

 

勇者魔王もの

明確な諸悪の根源である“魔王”のような立場はいませんし、世界を救うのは“勇者”ではなく“天使”です。

それでもこのお話は勇者魔王もの、古来RPGのよくあるモチーフに切り込んでいる作品だなあと感じたので、記事のタグにも「勇者魔王もの」を加えました。

例えば、RPGにおいて主人公はゲーム中で何度もゲームオーバーします。特に本作は戦闘難易度も高め、私の場合なんて全滅数はもはや数えきれないほどです。

そんな、道中で気を抜けば死んでしまうようなちっぽけな一個人に、世界を救えと要求する――――これこそ“勇者”の概念ですよねぇ。

 

では、RPGにおける勇者が勇者を完遂するためにはどうすればよいか? メタ的なこの問いからセラフィックブルーが始まっているように自分は感じます。

その答えのうちの一つが作中でも示された通り、ジークベルトの計画。彼が一貫して「ゲーム」というスタンスを崩さないのって、“天使”の裏にロールプレイ・メタ的な意味での“勇者”を想起させる意図もあるのかなと思っています。

そしてこういった物語の構図があるからこそ、セラブルは「映画」でも「ノベル」でもなく「RPG」として物語を表現する必要性があったんだろうなー、なんて考えました。

 

“勇者”であれば正義の心で立ち向かうべきところを、この作品は “天使”の理由でもって戦うところが最高に大好きでした。

善悪や幸福論は、このくらい距離を取ってお互い主張し合ってくれる方が、居心地良くていいなあと思います。

 

 

 

鬱展開と反出生主義の中で救いを提示する

この作品は、

血が出ます、人が死にます、世界に絶望します、死こそが救済だと叫びます、ネグレクト被虐待児子殺し親殺しがいます、生まれてきたことを嘆く人がいます。

一方で。

胸を張って生きる人がいます、生を謳歌しようと奮闘する人がいます、子を持てることに涙を流す親がいます、良き父として良き隣人として誰かを救えた人がいます。

 

あまりの鬱展開であると話題を呼び、実際それに惹かれてプレイを始めた私ですが、蓋を開けてみればとても作中のスタンスはフラットでした。主張は確かに厭世寄りかもしれないし、演出は過激だったり露悪的だったりする時もあるけれど、決して否定的ではないと思っています。

何か主張があればその反証となるキャラクターがどこかにいて、影と光が同時に存在している感じ。そのどちらが濃いと感じるかは人に寄るでしょうが……。構成だけを見れば中庸で、優しくて、プレイヤーの考えやキャラの気持ちを全てそのまま置いておいてもらえるような形に見えて、好ましかったです。

 

ジークベルトの主張がセラブルの中核であるならばハウゼンと言う男は登場しなかったはずで、けれどもハッピーエンドは失われたわけで、もうそれがこの物語の主張の全てだと思うんですよね……。

 

誰もが一度は考えるような生死観と幸福論のジレンマを、決して借り物の言葉だけで収めるのではなく。丁寧にお話を組み上げて、言葉を重ねて解きほぐして、どこまでも反論を重ねて誤魔化さず、綺麗に描き切っている作品だなあと感じました。

人類普遍の結論なんていうあり得ないところへの着地を目指すのではなく、彼女の答えは、彼の答えは、とメインキャラの心情にスポットを当ててお話を締めるところもすごく好きです。

終盤近くのプラスとマイナスの考え方はものすごく納得があって、共感はさておくとしても意見としてとても好きだったなあ。

 

一言でいえば、作中の主張の距離感が好き!

 

 

書ききれなかった諸々 

でね、他にも好きなところ多すぎるくらい大量にあるんですよ!

 

・キャラが全員挫折して、葛藤して、改めて自分なりの回答を掴んでくる

 

・キャラ同士の粋な掛け合いや二人にしか通じない世界の構築が上手い

 

・よくある言い回しを斬り捨てて独自の文体を貫く

 → 一見わかりにくいと勘違いしそうになるが、実際はキーセンテンスを何度も作中で使用することで小難しい概念がお馴染みのものとして噛み砕かれて、とてもすんなりと頭に入ってくる。そのうえ印象に残る。素晴らしい。

 

・ あまりキャラが「好き」「愛してる」といった言葉を使わない。一方で、別れの時にほぼ皆が「ありがとう」と言う。
 

RPG慣れしていても苦戦するハードなバトル難易度
 

・閉塞感と透明感、両方を描く美しいスチル

 

とかね!!!!

 

でもこれら全てを細やかに語っていくともう蛇足で大縄跳びができてしまうんですよ。プレイして合う人は合うし合わない人は合わない、もうそれに尽きます。

君が投げたならそれはそれでいい! 

私は大好きだし心に沁みた! もうそれだけだ!

 

なんて書きつつ最後にキャラ語りします!

 

 

キャラクター

 

考え方やセリフが印象的で好きなのはニクソン

やっぱりこちらも、距離感が好きでした。激情に駆られることはあっても、人に押し付ける前に一度踏み止まるところが良いなあと思うし、そのうえで自分のポリシーや考えは信仰として持ち続けているところが好きです。

 

台詞一つで心を掴んできたのはヴィルジニー

覚醒後の口の悪さと言うかぶっちゃけっぷりというかTHE戦乙女感が惚れそうでした。戦闘前口上がいつもかっこいい。

ああいう作りのキャラクターがああいう道を選ぶ流れも大好き。

 

雑魚戦で愛用していたのはヤンシー

武器に状態異常ものが多かったので、トゥワイスインヴェストと状態異常付加、それとブーツ履かせまくってひたすら足止め役になってもらってました。キッツイ攻撃がきてもある程度持ちこたえてくれるから頼もしいんですよね。

 

ボス戦で愛用していたのはドリス

ペイルインヴァースのトリッキーな高火力が大好きだったんです。リスクの上で高火力出すのってロマンですよね。ストーリーを考えるとこの技を乱発するのは申し訳ない気持ちもありますが……。

あと、ドリスとヤンシーが二人で「頑張ろうね」「うん、ガンバろうね」って何度も言い合っているのが本当に泣きたくなるくらい癒しでした。がんばろうね……。

 

キャラクターとして総括して好きなのはレイクです。

序盤からずっとメインメンバーだったというのもあるんですが、フョードルとはまた違った意味合いで青二才な感じもこちらの気持ちを揺らしてくれてよかったです。

言ってしまえばスカしてるキャラなんですけども、なんだろう。嗤えはしないし、彼みたいに虚無へ走っていく生き方って誰もが一度は感じるよなあと思っちゃうんですよねぇ。

 

敵だとエンデが好き。

容赦ない敵が好きなんです。最前列の特等席なイベント本当好きでした。塵のような終わりも併せて、まさに敵に求める全てを抱いてくれていて楽しかったです。

 

バトル演出だとティアーズのカットインが好きでした。あっあと、「フョードルから倒して頂戴ね」。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

うっかり感化されてポエマーなことをいっぱい書き綴りましたが、とにかくめちゃくちゃ水が合う作品でした!

 

 

 

 

 

 

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