うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「AshSnow Eve」感想

「どうやら世界の危機らしいけれど私達には関係ないわね?」

やること済ましてすっきりしちゃおうな前置き。前置き。

 

 

えー、今回はゆきやどりさんところのフリーゲームAshSnow Eve」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道、面クリ型のRPG。ほんのりと鬱展開。

同作者様の次作『エクスシアの翼(以下エクスシア)』とも関連のある作品です。本作→エクスシアの順番で遊ぶとより楽しめるはずですが、私はうっかり逆順でプレイしちゃいました。てへへ!

というわけで、エクスシアの感想が前提の記事になっています。ご了承あれ。

 

 

では、良かった点など。

 

 

仄暗い世界観とゆるいじゃれ合い

 

鬱蒼とした森の住処を抜け、とある目的のために街に向かうところからお話は始まります。夜になると襲い来る化け物、怯えて閉じこもる人々、そして双子の目的等々、舞台設定はかなり暗めです。また、中にはぎょっと目をむく鬱展開もあり、全体的に仄暗いムードが漂っています。好きです。

 

一方、キャラや掛け合いはかなり明るめ。

主役の双子からして二人の世界でマイペースに進んでいくおかげで、ほどよい距離感を保って楽しめました。感情を入れ込み過ぎて心がザクザク刺される作品もそれはそれで大好きなんですが、この作品はバトルがテンポよくさくさく進みますし、ストーリーもこのくらいの温度感が丁度いいなーと思います。

 

 

 

事あるごとにしれっといちゃつく双子

 

やっぱり好きなのが双子の仲の良さです!

ちょっとした会話の隙にいちゃつくのを忘れない心意気。弟“で”遊んでいる感じも姉弟の力関係があっていいなあと思います。「だ、騙されないぞ」がすごくツボでした。

あ、終盤からアッシュの女装話が出てきたり、どことなく男の娘風に扱われるネタが少しあったりします。といっても軽いものだったので、この手のネタ苦手な自分も無難に受け入れられました。

弟側も何かとデレて好きアピールをぽろっとこぼしてくれるのがたまりません。

 

双子のドット絵の身長差も狂おしいほど好きなんですよ。バトル画面で立ってる二人を見てるだけでにこにこできてしまう。力関係はスノウのほうが上っぽいのにかばう側に立つのは弟っていうところも萌えます。

かばう技の説明文もすごくときめくんですよね! 味方を、じゃなくて、姉を。こういうさりげないところが凝ってる作品大好きです。

 

 

 

難易度(比較的)易しめのバトル

 

バトルも進め方もエクスシア同様、さくさく進んでバトルが熱いシステムです。

エクスシアのほうでは敵のカウンターがかなり強かった印象でしたが、本作はアビリティにカウンター無効がある他、デバフ技も豊富なのでまだ手心を加えられている印象でした。敵の一撃でHPが半分消し飛ぶこともあまりないので、やっぱり未プレイの方は本作でバトルシステムに慣れてからエクスシアのより高みに挑むのが良い流れかなー、なんて。

代わりに全体回復技が無いので、アイテムや集気法、ガード技をけっこう重宝した覚えがあります。それでもだいたいは初見クリアできた、はず。

 

ギリギリで勝利してガッツポーズを決めるバトルも好きですが、「しっかり対策すれば意外と勝てる」くらいの難易度も達成感があって好きです。

あと、バトル中にたくさん動いてくれるドット絵も必見です!

スノウがコマンド選択中にゆーらゆーらしたり、攻撃時に設定どおりおリボンを解いたりするところが細やかで素敵でした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

双子がらぶらぶしながら仄暗い世界をサクサク進むRPG

この響きでピンと来る、私のような方がいるなら是非。

 

追記では次作の内容も含んだ考察や解釈やストーリーの気になったところなど。

 

 

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フリゲサイト「ゆきやどり(仔竜/壺竜)」4作品感想

 

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フリーゲーム「僕でいい?僕でいいよね?僕がいいよね?僕でいいの?僕にする?僕にしとく?」感想

「大丈夫、絶対に僕がいいって言ってくれるから」

言わせるわけじゃないところがキモな前置き。

 

 

えー、今回はcholianさんところのフリーゲーム僕でいい?僕でいいよね?僕がいいよね?僕でいいの?僕にする?僕にしとく?」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

選択肢無し一本道の乙女ゲー。公式のジャンル名が「僕ノベル」とあることや、この勢いと圧に満ち満ちて思わず口に出したくなるタイトル名と言い、どことなくヤバイ予感を感じさせてくれる最高の一作です。

 

 

というわけでさっそく良かった点など。

 

 

まさに浮気を楽しめるドキドキゲー

 

本作はなんと初めから恋人がいます。

文系で草食系なタイプ、決まった時に決まった通りの場所で会うスタイル。「優しい人がタイプ」という人にとって理想の彼氏――――

と、思うのですが。全く別のタイプであるカイトさんに出会ってから、お話はどんどん危なっかしい方向へと進んでいきます。

この、別の味を知ったとたんに前までの味の違和感に気付くみたいな書き方がとても巧みなんですよ! ヒロインの気持ちが揺らぐのも当然だなと思えてしまう、丁寧さと説得力がすさまじかったです。

 

 

真面目過ぎる流されヒロイン

 

巧みだと思ったのはヒロイン像もですね。紹介サイトでは「尻軽ヒロイン」とも書かれていますが、蓋を開けてみれば流されやすいだけの内気な子の印象でした。周りに合わせなきゃ、理想の子にならなきゃ、と頑張る様は痛々しくてとてもツボです。

で、抑圧された真面目ちゃんがうっかり危ない世界へ手を出してしまう感じが本当に良いスパイスになってるなあと思います。

“いつもと違うこと”をするドキドキ感が、見事につり橋効果を生み出してくれてるんですよ! 

 

アキ君は予定通りにきっちり進むタイプなのでなおさら、スリルと秘密が浮気を盛り上がらせてくれます。

明確に二股するのではなく、決して裏切ってはいないけどやましいことをしているというこの境界線もたまらなくって…………もうドキドキがとまりませんでした!

 

 

あまりに自然なカイトの口説き文句

 

女を口説くのが上手いんです。フィクションなキザっぽさも交えてあるのに、何故かあまりにリアルに感じられてしまうんです。喋り声が脳内再生できそうなくらいです。なんて上手いんだ……!

前述のヒロイン像にも絡みますが、内気で真面目な子って押せ押せで口説かれた時の返し言葉をあまり持ってない印象があるんですよね。だからこそ流されちゃうのもわかるし、カイトさんが踏み込み過ぎないからこそこっちから行きたくなる気持ちも駆り立てられるし、どこまでも巧みです。自然とそうしたくなってしまう話術よ……。

 

 

スタイリッシュに動いてコミカルにポップする画面

 

そしてテキスト面だけでなくグラフィックも秀逸です。

立ち絵がカッコイイというのも勿論そうですが、私が注目したいのはやっぱり演出面。立ち絵以外の小物や吹き出しでの表現がとても面白いんですよね。

遠景でぼやけていた彼の姿がスマホの画面でぱっと鮮明に見えるあれとか。あの演出、クリアした後だとかなり思うところがあって最高なんです!

 

他にも、場所やシーン転換を演出する文字の出し方とか、かなりあちこち動きがあってとにかく常に画面が新鮮です。カフェで流れてそうなオシャレBGMにああいうスタイリッシュな動作を合わせてくれるの、見てて本当気持ちいいんですよね。

“ゲーム”してる感じを味わえるノベルゲって大好きです。

 

ただ挙げるなら、回想シーンや吹き出し演出シーンではオートモードが止まってしまうのはやや不便だったかな、なんて。でもあの演出自体は重ね重ね好きです。

何よりも起動画面の禍々しさが曲込みで最高でした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

短編の乙女ゲーながら鮮烈な印象が残りました。

本来なら浮気ゲーというべきところですが、やっぱり私はカイトさんの印象が強いので、女を落とすのが雰囲気作りセリフ共にうますぎる至高の一作と言いたいです。

 

追記ではネタバレありの感想をちょこっと!

すごく語りたくなる作品ですよね!!

 

 

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フリーゲーム「エクスシアの翼 -亡国の凶星-」感想

「聖女を味方につけた死神が負けると思うか?」

清濁併せて無敵になれる前置き。

 

 

えー、今回はゆきやどりさんところのフリーゲームエクスシアの翼 -亡国の凶星-」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ストーリー等が面ごとに分かれている、変則的なRPG。やや鬱展開、でもクリア後はさっぱりした気持ちになれる、そしてほどよくハードな戦闘が魅力です。

私はクリアしてから気づいたんですが、同作者様の前作『AshSnowEve』と関連がある(というか時系列が後)ので、未プレイの方は先に前作プレイをおススメします。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

小分けで読みやすいストーリー

 

最も独特なのが、面ごとに分かれているストーリーかなと思います。

お話自体は一本道ですが、シーン区切りごとにお話が一度切られ、メニューでの編成やセーブなどができるようになっています。

他ゲーだとこの手の区切りに使われるのって戦闘やダンジョンのイメージなんですよね。話が進行して、ちょっと操作するタイミングが入って、また話が進んで――みたいな。でもこのゲームはそういうわざと作られた区切りがなくて、そこで終わったから切る、みたいなシンプルさがあります。

言ってしまえばお話のテンポが良い!

長くて十数クリックで一面終わるボリューム感はどことなくソシャゲライクだなー、なんて。

 

 

 

必要な要素だけが詰まったシステム

 

お話の区切りもですが、他の要素にしても同様に良テンポ。スキルが装備になっているので防具の付け替えは不要、レベルは武器依存なので雑魚狩りも不要、ノンフィールドで探索要らず、とかなりシンプルに要素が削ぎ落されています。

宝箱の罠やアイテムの福袋など、ちょっとしたランダム要素は残してもらえているのも嬉しいところ。無駄を省く一方で、プレイにおけるドキドキ感を残してもらえている印象でした。

サブクエストでお話の補足が聞けたり、キャラの個性が見えたりするのも良点ですよね。初めは口の悪さにぎょっとさせられたコロナさんも、だんだんと愛嬌あるお人に見えてくる……かも。

 

 

 

「あ!」「は!」「は!」「は!」「は!」

 

プレイ済みの方にはきっと通じるであろうこの表現。

もうねー、サロス君の登場演出が大好きなんですよ!!!

ほんっと大好き、あの表現方法はシンプルながらも目から鱗で、ゾクゾクものでした。ちょっと狂った雰囲気の弟キャラでしかも姉様呼び、ピンポイントにツボを刺されまくりですよもう。好き。

もっと言えば、彼の暗転する演出は、強キャラっぷりを醸し出すものとしても話の幕引きとしても優秀で、色々なところが噛み合っててめちゃくちゃ上手いんですよね。尊敬する。さりげなくも頭から離れない演出だと思います。

 

 

 

スキル次第で封殺可能な熱いバトル

 

そしてやっぱり欠かせないのが、バトルの熱さ!

終盤になればなるほどかなり敵の強さが増してくる他、作中でコロナさんが容赦なく教えてくれる通り、あんまり力でのゴリ押しはしづらい仕様です。だからこそスキルをどう回すか、アビリティの特性でどう色付けするかが問われてくるわけですよね! 強敵を試行錯誤でぶっ飛ばすタイプのバトルが好きな私としては大変興奮しました。

 

バトルデザインが物語の進行に合わせて変わっていくのも楽しいんですよねぇ。

序盤はファストカットやカウンターなどを重視して手数で圧す戦い方を好んでいましたが、相手もカウンターしてくるのに合わせて不能系のスキルが役立ち始め、物理最強になってきたところで魔法敵の登場――――等々。

相手の編成に合わせてこちらもスキルを付け替えたり、あるいは通常攻撃でスキルの習得を試みたりする必要が出てきて、常に新鮮な戦闘でした。

 

討伐敵がかなり難易度高めなのも楽しい!

初見で倒せなくても大丈夫なように帰還石が設定されているのも、優しいしコンセプトが伝わってくる良い仕様だなーと思いました。宝箱拾うついでに軽く腕試しして、敵のハメ技にどう殴り返していくか考える流れがすごく楽しかったです。

 

 

 

惜しい点

 

終盤の展開が駆け足

 

27日目あたりから物語が終末に向けて加速するのですが、盛り上がり優先で真相の発覚がやや駆け足に感じられました。街の全員が……等々の場面を一度挟んでもらえれば、もう少し飲み込みやすかったかも。

別ゲーが絡んでくる設定らしいので、私のプレイ順に問題もあるのかな。

でも、あの鬱展開な感じや、エンドでの一言で彼らの結末を悟らせるあのやり方はとっても好きです!

 

 

アイテムが持ち腐れる時がある

 

アイテムの取得がガチャ方式なので、使わないアイテムが出てきます。これ自体は良いんですが、討伐を1・2回で終わらせようとすると武器のレベルアップがラスボスまでMAXにならない(=通常攻撃でのスキル取得が取り切れない)ことがあるので、出来たら売却での金策もあると嬉しいなあと思いました。

ただここはあえて縛られている気もするので、あまり突っ込めないところでもあります。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ダークヒーローな導入に見えて、その実かなり熱くて最後は爽快なお話でした。

病みキャラ、鬱展開などが好きな方にも、さっぱりしたお話が好きな人にも勧められる作品です。

 

追記ではバトルの所感をちょっとだけ。

 

 

 

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フリーゲーム「美術空間」感想

「たとえ魔であっても良いから永遠に魅せ続けていて欲しい」

アートの前には善も悪も無力な前置き。

 

 

えー、今回はFuming (ふーみん) さんところのフリーゲーム美術空間」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

プレイ時間は私の場合だと9時間、エンド分岐ありですが基本的には一本道に集約されるRPGです。一部にホラーと見える描写と、がっつり鬱展開もあり。ただし、誠実にこちらを盛り上げてくれる作品でもあります。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

美術を冠するにふさわしいマップ作り

 

初めてこの作品のタイトルを見た時、まずぎょっとしたんですよ。よっぽど自信がないとこのタイトルはつけられないだろうな、と。やっぱり美術と名を冠するからにはそれにふさわしいだけのグラフィックが来るんだろうと。

そんな期待を大いに超えてくれる!!

本当にタイトル通りのアートなグラフィックでした!

「美術」「絵が上手い」という表現って、その一言では表しきれないくらい幅広い意味を込められていると思うんですが、この作品はまさに絵画の美しさ・パワフルさ・奇怪さを感じます。

本当幅広くて、それなのに統一感があって、もうね、もう、「美術空間」ですよ。タイトルがしっくりくる作品です。

 

マップに奥行きを持たせてあるのも独特。

遠景を進んでいくと合わせてキャラも小さくなっていったり、狭まる光を追っていったら素敵な場所に辿り着いたり……どのマップもあそこを歩かせようと考える時点でセンスを感じるものばかりでした。

いやあしかしこの手の視覚面の良さは、言葉で書いても伝わらないですね! マップグラフィックを見て欲しい!

 

一方で、難点もあるはありまして。進行可能なポイントがわかりづらいという一点なんですが……。

でも私、あのマップの中に「→」みたいな進める位置を示すマークを入れたくないなあとも思うんですよ! だって美術だもんよ、もう。宝箱やお金はきちんと、隠し通路がどこかにあるんだぞと伝わるような位置に置いてありますし、むしろそういった配置の気遣いを評価したい気持ちです。

さらに言えば、歩いててはっと横道を見つけるのもなんだか絵画的だなあと思うんですよね。気に入ってる画集を見返しててある日、細部のこだわりに気付かされる感じ。

なので難点はありますがそこも好きです。

 

 

 

神話の元ネタを踏襲する誠実さ

 

主役の3人以外のほとんどのキャラには、敵も味方も含め神話や伝説上の名前がついています。これ自体は創作あるあるだと思うのですが、私がすごくイイ!と思ったのは、エピソードやちょっとした要素もしっかり元ネタ通りなところです。

3人の魔将が一番わかりやすいかな? マップにもお話にもリスペクトを感じさせつつ、しっかり独自の色で味付けしてあるところも素敵でした。

 

 

 

明るく信頼し合う3人組

 

で、ここまでの記述だと初見の方にはかなり高尚な作品だと誤解されてしまうかと思うのですが、これがまたちょっと違うんです。小難しいだけじゃない、むしろ根幹のところは親しみやすい王道感が出てるんですね。

そのキーとなるのが主役の3人。彼らにはいわゆる元ネタがなく、それぞれが良い個性を見せてくれます。見た目こそ、サングラスゴリラ・黒衣の魔女・パーカー服の一般人、となかなか不揃いですが、話してみると意外にもこれがすごく親近感の持てるキャラばかり。

マップや一部のストーリーはかなり尖っている本作、それでもそこかしこで明るい面を感じられたのは、やっぱりこの三人の仲の良さからくるものでしょう。

シリアスが続く中でふっと天然な発言が零れたり、いざ決戦の前にアイスブレーキングな盛り上がりと喝入れがあったりと、随所の和やかなムードが微笑ましかったです。

 

戦闘中に全員が動き回ってくれるのも賑やかで好き!

発狂モーションが全員違ってるのに気づいた時は思わず声が出ました。細やかさが感無量ですよ。それぞれそのキャラらしいモーションなところも大好きです。

 

 

 

死ぬかと思ったギリギリバトル

 

「あいつらは強いぜ」の説得力があまりに高いところも本作の魅力です。強いんですよ、ほんっとうに! すごい楽しい! ラスボスに三回負けて殴り倒した時には思わずガッツポーズと勝利の雄たけびをしてしまいました。

雑魚敵相手でもスキルをがんがん使う必要があり、うっかりすれば全滅してしまう――そんな難易度が好きという私のような方には全力でおススメです。

 

もちろん息切れしないように工夫もしてあります。例えばターンごと自動発動の強化スキルがあったり、ダメージを受ければ受けるほど発動できる必殺技的なスキルがあったり、戦闘後はHPが自動的に全回復したり。

逆手に取れば、死なない程度まで攻撃を受けてから雑魚敵を倒し、ボス戦に初手必殺技ぶっぱで挑むというやり方もできます。興奮しますね!

さらには戦闘が苦手・キツイ人のために、イージーモードが搭載されている親切具合。切り替えによるデメリットも一切ありません。やさしい!

 

あと、さりげなくめちゃくちゃ嬉しくて好きなポイントとして。

「ミス」がありません。でも必中というわけでもありません。

代わりに出てくる概念が、「相殺」です!

ガキィンと気持ち良いSEと共に攻撃を弾き、あるいは弾かれる様は実にカッコイイです。同じことが起こっていても言葉と演出を変えるだけでここまでクールになるんだなあという学びも得られました。連続攻撃を連続相殺した時の興奮がヤバイです。好き!

 

 

 

後出しじゃんけん無しの信頼感

 

かなり序盤に、回復魔法を覚えられるアイテムが手に入るのですが。

私、こういうの使うのって悩んじゃうんですよね。後から出てきた仲間のほうに覚えさせたほうが効率的かもしれないとか色々考えちゃって持ち腐れたり。

でもこの作品は、後から仲間になるキャラはきちんともうその魔法を覚えてくれてるんです。この時点で私はこの作品を信頼しました。

 

キャラの育成方針が決まる指輪にしても、主人公だけかと思いきや全員選べるので他キャラでバランスが取れますし。ほとんどの使い捨ての回復ポイントは、消耗してたらその場で使って大丈夫。ワールドマップやワープポイントもしっかり用意してあって、とにかく、「あの時残しておけばよかった!」みたいな後悔が少なめでした。

 

さすがに終盤はどうしても強技を全員公平に、というわけにはいきませんし、武器防具は一か所だけ上位のものが売られるようになります。が、最終戦辺りまでは最強から数ランク低い装備でもなんとかなります。Tシャツで魔将は屠れます。

エンド分岐にしても最終戦直前から回収できる(はず)という優しい仕様。

疑わず、倒しきれない敵は後に回して、順当に進めばいいというそれだけでこんなにも快適なんだなあとしみじみしました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

このほか、戦闘のテンポやちょっとした演出がどことなくレトロゲライク、特に私はFF6を思い出したのでその辺りが好きな方はニヤリとできるのではないかと思います。

 

アートな世界観の中で、ハードなバトルとディープでダークな物語を、明るい仲間たちと一緒に。バランスの取れた実に好みの良作でした。

 

 

追記ではネタバレ全開の感想。

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フリーゲーム「泡雪のguignol」感想

「神様は試練をお与えになった」

そしてそんなものは誰も求めていなかった前置き。

 

 

えー、今回はFavorite Gardenさんところのフリーゲーム泡雪のguignol」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

エンド分岐ありの鬱展開百合ノベル。読みやすく一文でぐっと心を掴む文体と、大画面で殺伐も感動もこなしてくれるスチルが人を惹く作品です。

 

 

 

では特徴など。

 

 

二つの意味で織りなすグランギニョル

 

タイトルが読めなくてググったのが始まりでした。ギニョール、およびグランギニョル。これを聞いて何を思い浮かべるかは世代による気がしますね。

ともあれ私は「荒唐無稽の残虐劇」というイメージしか知らなくてですね、調べてみたところ「指人形劇」というような意味合いもあるそう。知って思わず目を見開きました。パペットという細かな違いはあるものの、いやはやまさに、タイトル通りのお話です。

書き過ぎるとネタバレになってしまうので心苦しいのですが、よくTwitterでバズっている「信仰」「遺体を埋めに行くCP」みたいな概念が好きな方には刺さると思います。

 

 

教会に捨てられた子と貴族の娘

 

舞台は中世風ということで、貴族社会が成り立っています。メインキャラの二人は捨て子と貴族の娘。この持つ者持たざる者といった観点がまずもう好きなんですよね。一方で身分差問題に発展しそうなところは「養女の話を断った」という形でばっさりと切って、二人の関係性の話に留まってくれたのも読みやすかったです。

さらには「男なんて嫌いよ」と作中ではっきり述べられる通り、お家のために男のために消費される女性像がちらりと見えるのも、二人が二人の間で完結しようとする流れに説得力があって良かったですねぇ。

女と女の重たく一途な想い、これぞ百合に求めるもので大変潤いました。

 

 

惜しい点

 

心底惜しいなあと思ったのは、演出面。シーンの切り替え方とスチルの出し方です。

スチル自体はものすごく求心力のある絵なんですよ。しかも画面にバンと表示されるので、こっちも度肝を抜かれますし、本当持っているものはすごく良いです。

でも、それをどう見せるかが本当に惜しかった!

スチルの表示のタイミングが情景描写よりも早いので、プレイヤー視点だと文章で驚かされるより先にスチルで先の展開がわかってしまい、衝撃度が激減してしまっているんです。間に暗転を挟むなどして、文章でも「!!」となるタイミングぴったりでスチルが出ればものすごく効果的だったと思います。文章もスチルも高水準だからなおさら!

 

また、場面転換にも溜めが欲しいところ。

文章送りとページ切り替えがおそらく同じなので、長い時を過ごしたり深く思い悩んだりした後のシーンも直前と地続きだと錯覚してしまいがちでした。アイキャッチを挟むでも良し、暗転してウェイトを眺めに取るでも良し――――それこそ演劇のように幕を一時的に締める隙間があるとより感情移入も深まったと思います。

 

あと余談ですが、暗い鬱展開が大好きなので、あとがきの文章はちょっと寂しかったかな……。

 

 

とまあ、こんな感じで。

鬱展開としてきっちりやり切ってくれた印象の作品です。

信仰、思慕、家族愛、狂愛、理想像などなど、複雑に面を変える想いを抱えた百合が好きな方へオススメ。

フリーゲーム「catalepsy」感想

「白ければ白いほど色鮮やかにうつるもの」

一瞬で染まるのも時間をかけて染めるのも好きな前置き。

 

 

えー、今回はcotoliaさんところのフリーゲームcatalepsy」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐ありの鬱展開ノベルゲー。捉えようによっては近親要素ありで、吸血鬼がメインです。雪気色がよく似合う、病み要素が輝く乙女ゲーでした。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

静かに穏やかに絡めとる情愛の物語

 

公式サイトの雰囲気からしてオシャレな本作。各キャラのKEYとして選ばれている単語「無知」「狂信」「支配」がまさに、まさに好みでして、気づけばDLしていました。

確かにヤンデレだったり鬱展開だったりするのですが、苛烈さはなく落ち着いた雰囲気の作品です。主人公がおっとりとした性格で全てを享受していくからか、どのエンドも不思議と読後は心静かな気持ちになります。

きちんと明るいシーンや心を通わせ合うシーンもあって、狂気や血が裏に潜んでいても全体的に穏やかに見えるんですよね。こう、真っ暗闇にゆっくりと沈んでいくキャラクター達を見守るような……よい心地でした。

 

 

 

ぱっと一目で攫って行く視覚演出

 

作中の舞台である雪の森、淡く繊細な絵柄、薄くぼやけて溶けていきそうなメッセージウィンドウ、滲みや染みが上手く表現されているテクスチャなどなど。あちこちで世界観が感じられ、作品の雰囲気がとても完成されている作品です。

キャラの視点が変わるとメッセージウィンドウの色合いも変わるんですが、これがまた、すごくお話に合う見た目なんですよ。終始「綺麗だなあ」と思いながらプレイしてました。雪のようなグラフィックでもしっかり文字は読みやすいのもグッド。

 

そして、何よりスチルの使い方!

吸血鬼だと知ってはいましたし流血描写の旨も心得ていたんですよ。でも、それでもはっと目を奪われるあの白と赤! どちらのルートでもすごく、すごく効果的なスチルがあって、思わず息を呑みました。すっごくどきどきして、お茶飲んで震えて一呼吸おいてセーブしてから戻った覚えがあります。どれだけ動揺してしまったんだ。好きです。

 

あとさりげないところだと、エンド名の表示の仕方や、ゲーム起動時の作者様のタイトルロゴ表示の仕方などもすごくお洒落で素敵でした。

 

 

 

世界観にしっくりくる選曲センス

 

あと語っておきたいのが選曲センスです。

この手のシリアス寄りでお洒落なゲームって、特に明るい場面での選曲が難しくなるのではと思うのですが、本作はそこでも冴え渡るセンスを見せてくれました。

なんだろうなー、明るいんだけど雰囲気ブレイカーではなくて、やっぱりオシャレなんですよ。街のBGMとかも好きでした。素材サイト様の存在自体も勿論ありがたいことですが、膨大な曲の海からどれをお借りしてどううまく組み込んでいくかというのも、作者様の腕の見せ所だよなあと思います。ところどころでSEが入っていたのも細やかな作りでした。

 

 

 

惜しい点

正直にということで、細々とした点も少し書きますね。

 

・オートボタンが非表示

スキップと一緒にオートも右下に配置してもらえるとプレイしやすかったかなと。

 

・ところどころの描写が駆け足/違和感

ミゼラの中で兄さまのことが圧倒的に上位に立っているのであれば、嘘をつくシーンはもう少し尺があるとより感情移入できたかもしれないなー、なんて。

また、人間の常識を知らないミゼラが、例えば初対面の人の家に入る時に申し訳なさそうに挨拶する(失礼という常識がある)点なども違和感がありました。他にもいくつか。

でも、こういう細かいところをバッサリ切ってるからこそ良いなあと思うシーンもあります! 

ここは熱く追記で語るつもりですが、とにかく冗長を省くことによる良し悪しが両方出た結果なのかもしれません。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

吸血鬼、という乙女が一度は食らいつく要素を美しい仄暗さと共に描いてくれた一作だなあと思います。

世界観重視、ツンデレ男子萌え、きょうだい萌え、鬱展開好きの方におススメです。

 

追記ではネタバレがっつりで、エンド語りなど。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

 

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フリーゲーム「イグノラントメイガス」感想

「気分次第で変わる性格もあいつだからで許される」

まるっと受け入れてるうちに伝説のパーティができちゃう前置き。

 

 

えー、今回はゆきやどりさんところのフリーゲームイグノラントメイガス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

キャラの好感度による分岐はあるものの、大筋のストーリーは一本道のRPG。バージョンは1.04でプレイ。選択肢によるミニイベントと戦略の広いバトルが特にお気に入りポイントです。

 

というわけで良かった点など。

 

 

デフォ名まで選択できる、大量の会話分岐

 

初手で驚いたのは主人公の名前。

通常デフォルトネームは一つと相場が決まりがちですが、本作はなんと3つ&自由入力の中から好きな名前を選択できます。ボロンゴ・ゲレゲレ・プックル的なあれ。この発想を実際に起用しているゲームにはまだあまり出会っておらずとても新鮮でした。

 

そして選択肢の多さは勿論ここだけにとどまりません。主人公の応答セリフは基本的に3種類、しかもメインストーリーだけでもほどよく喋るタイミングがあって、選ぶのがすごく楽しかったです。

どれも選びたくなる選択肢なんですよー! かっこつけたものからギャグに特化したおちゃらけ選択まで。そりゃね、どれも言いたくなっちゃいますって。

私は基本ナンパ師っぽい選択肢を選びがちでしたが、他のプレイヤーさんだとどうなるのか気になる作品でもありました。

 

さりげない良点としては、選択肢を連打でスキップしてしまわないよう、効果音とウェイトでしっかり知らせてくれるところ。ウディタゲーは特に連打事故が起こりやすいので大変助かりました……!

 

 

 

ついつい寄り道自由行動

 

で、さらに上記の膨大な選択肢分岐を、生かしているのが自由行動。街中で自由行動を選択するとパーティメンバーがあちこちに散らばって二言三言お話してくれるんですが、ここでも会話分岐が起こるんです。もうね、大歓喜ですよ!

こういう会話分岐って、多すぎると逆に回収するのが目的みたいになっちゃうこともあってジレンマを感じるんですが、本作はある程度進むと行動制限がかかってくれるので助かりました。決まった枠の中で膨大に用意されてる会話をちまちま楽しむ感じが好き。

 

さりげなーくみんなの個性が伝わってくるところも好きなんですよね。ノノはいつも彼女と一緒にいるなあとか、ロアはタバコ吸うときはちゃんと一人になれる場所を選んでるんだなあとか。

あと単純に、キャラ達も各自で好きにやってるんだとわかると、なんか安心感があります。彼らには彼らのプライベートがあるんだなー、みたいな。

 

 

 

王道をしっかり固めていくほのぼのファンタジー

 

さて、では葉末ではなく根幹はどうかというと、ストーリーはドンと王道な印象でした。村の幼馴染たちがちょっとした冒険に出て、色んな人と出会って、そうこうしているうちにスケールがどんどん大きくなっていく――――そんな感じ。

キャラ同士がみんな仲良しなので、世界観も性善説で、前向きで明るい展開を無条件で信じられるような雰囲気が自然と出来上がっています。きゃっきゃと盛り上がってるうちに気付いたら色んな危ないこともなんとかなってた、この緩さがよき。

いわゆるお約束な展開もきっちりやり遂げてくれて、すっきり爽やかなプレイ感でした。

 

 

 

ほのぼのと対極のハードでディープなバトル

 

で、ほのぼのと穏やかに終わるだけでないのがこの作品の面白いところ。

特に熱中したのがバトルシステムです!

ATB? ゲージが溜まると行動でき、通常攻撃でSPが溜まるタイプのバトル。余談ですがこの手のバトルの通りが良い呼び名を教えて頂きたい。

キャラの固有スキルは無い代わりに、装備品である武器や紋章にスキルが付随しており、装備の付け替えで疑似的にキャラメイクができる印象です。加えて、陣形選択によってある程度キャラのステータスに補正がかかります。

一方で、レベル上げの恩恵はHP上昇くらい。脳筋戦法もできなくはないですが、特に序盤はどう戦略を立てて敵を殴り飛ばすかが問われる、かなりハードなバトルでした。

 

お金にそこそこ余裕ができる反面アイテムが一人4つの所持制限だったり、回復スキルのコストがそこそこ重かったり、ニクイところで縛りが入ってきてるんですよねぇ。バランス調整が上手い! ばっちりハマる戦い方に気付ければ意外とするっといけますが、そこに気づくまでの試行錯誤が試されているようなプレイ感でした。

具体的な戦略等々は追記に格納するとして。

勝利した時の興奮が実に気持ちいい、バトル好きも大満足の作品です。

 

 

 

ぴこんと吹き出しアイコン

 

最後に原点回帰して。ゆるっとほのぼのなストーリーに合わせてグラフィックもかわいい感じです。基本はドットの歩行グラのみなんですが、お話し中にぴこぴこ吹き出しが出てきてくれるので見た目は明るく賑やかな感じ。ステータス画面も情報量は膨大なのにすっきり見やすくて驚きました。

あと、戦闘時のオリジナル規格なグラフィックがとってもかわいくて好きなんですよ!

戦闘時はどのスキルも魔法も固有の演出が走りますし、キャラもかなり動き回ってくれるので、かなり見ていて楽しかったです! ゆらゆらふらふらする彼女のモーションがほんっと大好き。

 

 

 

合わなかった点

 

と、絶賛しまくったところで合わなかった点もいくつか。

  • レベルがばらけるパーティメンバー
  • 入れ替えの操作感
  • アクション要素

辺りですね。ここは少しネタバレになってしまうのですが、パーティ分断イベントがあるからにはレベルは自動的に統一してもらえたら嬉しかったかなと……。とはいえレベル差が20あっても意外にぎりぎりなんとかなる難易度なのはやっぱり凄い絶妙ですよね。

あと陣形を変えるのが楽しかったので、メンバー入れ替えに手間取ってしまうようなキー操作だったのはちょっと惜しかったかも。

アクションは、はい、例のあれです。やっぱりこれもプレイヤーが驚くほどアクション苦手だからというところはあります! 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

この他にも用語辞典や絶妙な隠し通路など、RPGにあるととっても嬉しい要素がぎゅっと詰まっている作品でした。

他の人のプレイングが見たくなるゲーは良ゲーの法則。

 

追記にはネタバレ感想やバトルの語りなど。

気になる方は下記へどうぞ。

 

 

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