うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「そして美しい生物の国へ」他22作品感想

「ワードセンスは最大の攻撃力および回復力」

戦場も雨だれの日常もお手の物な前置き。

 

 

えー、今回は六角レンチ(ざるそば)さんところの各作見るゲの感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

この方のファンになってしまったので拾える限りは全作プレイしようと思った結果、記事が複数に分かれております。

 

斜視子など魔法具現化関係はこちら

shiki3.hatenablog.com

 

奇譚◆~など一連の関連作品はこちら

shiki3.hatenablog.com

 

 

というわけで今回取り上げる一覧はこちら。

 

 

 

 

『そして美しい生物の国へ』

 

[概要]

元凶はダー惚だけど色んなキャラがいっぱい。

美少女もいっぱい。スピカさんがかわいい。

極端に明るかったり暗かったりはせず中庸だけれど考え出すと深みにはまる感じ。

 

 

[感想]

 

「手動開演ブザー」の発想が大好きなんですよね!

おそらくは意図しているであろう、演劇っぽい演出が多くてまさに舞台だなーと感じました。ハイテンションの導入から、随所のアグレッシブな動き、そしてチーズ蒸しパンと笑いどころは多数あるはずなのに、ぞわっとする一滴があまりに濃くてさっと血の気が引く感じがとても好きです。

よくよく考えれば何かとさりげない伏線が多いんですよね、視覚的にも文章的にも。チーズ蒸しパンもチーズだし。変化していく名前欄も楽しかったです。

 

美少女、に対してぶつける定義があまりに、こう、えげつない。

きらきらふわふわメルヘンな世界観をマップチップでこれでもかと表現しているところもまた前置きとして非常に上手いんですよね。美少女チャプターになるとどこからともなく画面四方に生えてくるフレームとかもそう。

 

チャプター選択だとシェイドが担っている、あの、スピカさんがお仲間と共に目覚めるあのチャプターが大好きです。余韻に浸りたくてあの回だけ4周した。

いやだって最高じゃないですか?

まず遠景からすっと降りてくる演出も好きですし(ポイズンのチャプターと演出が相対しているのも美しい)、どんちゃかぷーぷーで吹き出させてからの見事なタイトルコールがもう愛おしいです。3人全員がこっちを向いてコールしてくれるところが本当、ああここ演劇だなあと強く感じました。彼女たちが見ているのは輝かしい平等にあふれた未来ともいえるし、遠く遠くチャプター冒頭で映し出された惑星あるいは別世界ともいえるし、メタ的に我々プレイヤーへの布告ともいえるし。すっごくあの演出大大大好き。

 

ダーブラが、残ることを選んだ人なのではなくて、あくまで置いて去られた人というのも趣深いです。どこかを目指して何かになることとは、はたして……。

色々考えたくなるし、指向性を持った演出も見られて、何か言葉にしたくなるけど何一つつかめないような、不思議な感覚の作品でした。何度でも読みたいし色んな解釈を付けたいしあるまま受け取ってあの初読のなんともいえない気分を大事にしていたい。

 

 

[一言]

思索や哲学ができるフックをちりばめつつ、メルヘンでパワフルな何かに仕立ててある作品。

 

 

 

 『無抑圧下の叙情』

 

[概要]

顔グラなし背景画像と文章のみで男女片思い。空しい夢を見た話。

 

[感想]

これ冬にやって良かったなあとしみじみ。

ものすごくシンプルでBGMも限られている、それでも濃密なまでの夜の空気と冷え冷えとした肌寒さを感じるのは、ひとえの文章力の技でしょう。いや本当ほぼ全作において文体が好み過ぎてどうすればいいのか。

言ってしまえば、好きな人の夢を見た、空しい片思いの話です。

いっそ壊してしまう夢ならば~という言い回しがとても好きでして。言わずともシチュエーションが物語る、良い静けさと陰鬱さでした。

 

[一言]

好きな子を聖域化したり叶わない想いをこじらせ続けたりするのに萌える人向け。

 

 

 

『他愛の無い話』

 

[概要]

ダー惚とダーブラ、ちょっとシェイドⅢ。軽快に暗い。

 

[感想]

顔グラがっつりで軽快な会話、のように見えてダー惚の裏が重すぎる話。タイトル回収が毎度のこと上手いし「独白◆~」以来ダー惚の魅力をどんどん感じてうっかりハマりそうで困る困らない。

ダー惚は悪人でもないし明確な胸糞もないんだけど、本当、厭としか言えないしこりが残る読了感。これだから暗い作品は良い。ただダー惚が道化に徹しているので鬱というほどではないかも。

ところで繋がっている某作、初プレイの時はわからなかったんですが、あれですね? 「無抑圧下の叙情」ですね? 違ってたら恥ずかしい!

 

[一言]

軽快に明るい口調の重々しい会話劇。「寸劇◆~」のノリが好きならかなり合うはず。

 

 

 

 

『よふかしのっきゅん』

 

[概要]

ノックアウト、と見せかけてダー惚メイン。仄暗い。よふのきゅ、って略すとかわいい。

 

[感想]

おちゃめでうるさいおにーさんがいつもよりも静かで優しい話。

中身はシンプルな会話劇なんですが、独白◆~を通ってると見る目が変わりますねぇやっぱり。何がどうというものが具体的に出てくるわけではないんですが、誰もが一度は体験したことのありそうな“眠れない夜”の気怠く心細い雰囲気が感じられる一作でした。

フォルダ名が「追い払う」じゃなくて「追い払いたい」なニュアンスの違いもしんみりします。

 

[一言]

シリアスなダー惚に夢を見たい方向け。

 

 

 

 

『君の瞳に捧ぐ愛』

 

[概要]

キー押してのっきゅんとお話するゲ。

おまけはダー惚とたぶんダーブラフレイムⅢの仄暗い追悼話。

 

 

[感想]

 

本編:

お話パターンがかなり多く、(おそらく)全部の会話パターンを見るのに4回くらいニューゲームしました。初回はちょうどキャンセルキー押したところでお話が終わり、強制終了キーなのかと震えたものです。

エンターのみでなく他キーに仕込んであるのも面白いところ。おうたの歌詞は私も歌えるものが多くて、好みが合うんだなあとひっそり嬉しくなりました。

 

おまけ:

おなじみ仄暗い会話劇。ゆっくりと降り落ちる雨や雪がまた雰囲気出てて良いです。喪に服す、ということで話が始まる時点で既に全ては終わってしまっている話でもあります。観客のいない道化ほど空しいものはない……。

「傘を差して踊る馬鹿」というキーワードが何度も出てくるんですが、この傘の比喩もとても染み入るものでした。

ダー惚子というかダー惚というか、設定がまた良い。何にでもなれる空っぽな感じがたまらないんですよねぇ。

 

 

[一言]

のっきゅんとボケーっとお話したい方、仄暗い会話劇が好きな方向け。

 

 

 

 

『もしもそれでも愛していると言うのなら』

 

[概要]

短編2作とおまけ。グリーンサイ×ブラックパイソンと、リナックス×メビウス

 

 

[感想]

 

コンティニューでどっちかランダムに始まるという発想がまず面白かったです。見るゲ短編集だとよくある手法なのかな? 初めは骸と華のほうでした。

 

緑黒:

あの悪役ゲス顔風な緑の顔グラをこのしんみりとした雰囲気で違和感なく使えている手腕にまず驚き。太陽×月、生命×死、みたいな陰陽カプの王道どころを押さえつつ、「触れたくても触れられない」「でも衝動には叶わない」という熱烈な愛を叩きつける短編でした。儚い激情、よき。

 

人間魔族:

これ昔童話で見た!

空しいとか無駄とか辛いとかではなく、呆然と“悲しい”で結ぶのがなんだか良いなあと思います。そんな単語に収まらないくらい色々とやるせない感情で心が動き回ってるんだけど、でもこうとしか言えないよなあ、みたいな。

 

おまけ:

私もあのksgジャンルの表記見た時Dと同じこと考えました。だってそうじゃん?

 

[一言]

切ないしんみり百合っぷる見たい人向け。

 

 

 

 

『羈旅◆肌に刻みて心を求む』

 

[概要]

道中の選択肢によってエンド4つ(のはず)に分岐。結末はパラレルに変わるが、どれもどことなく詩的で切ない雰囲気。ウォーターⅠとサモン。

 

 

[感想]

 

腕に傷、蛇の目傘、記憶喪失。三重苦ならぬ三重不審なお兄さんというのがまず印象的でしたねー。なんだろう、これだけでもう濃いというか、この作品にしかない雰囲気じゃないですか。アンバランスな感じがすごく良い。タイトル画面にもなっているイラストがすごく好きです。

傷の解釈がどのエンドでも綺麗に異なる、というのもまた面白いところ。

 

やっぱり言い回しの妙が光るのはこの作者様の特徴ですね。

ドラ子の登場時の口上とか、性格診断の流れるような言い当てっぷりとか。ウラヤマさんとオトヒメさんにぷんぷんするウォーターⅠも可愛かったし、彼らに物申すサモンの理論も興味深い解釈でした。

 

初めに辿り着いたのはロマンチックエンドでした。ある意味一番物語らしく綺麗な終わり方だったのではなかろうか。まだまだPIAY歴が浅く、レイシアの名前にピンとくるキャラが思い当たらなかったのが惜しかったかも……。偽闇子? ダー闇子? とりあえずこのエンドだとサモンはホムンクルス的な何かなんだろうと思っています。

続いて鬱っぽいエンド選んだ時の診断に笑いました。そうだよ大好きだよ。ここまで雰囲気が様変わりするとは思っていなかったので、幅広さに驚かされました。

でも、無難な選択エンドのほうがダメージきつかったんですよね……。こっちのほうが現実世界のやるせなさに近い気がするからかな……。

最後に優柔不断エンドへ行ってしまったのはちょっともったいなかったかなーとも思います。

 

ともあれ会話分岐がなかなかに細かく、1プレイの分量もちょうどいいのでエンド回収もはかどりました。2周目で気づく伏線なども。お兄さん、初めは傘の閉じ方忘れちゃってたんですね……。

 

 

ちなみにググったついでにメモ。

バーナム効果:誰にでも言えるあるあるネタを診断に取り込んで言い当てるように見せかけるやつ

羈旅:キリョ。旅、旅の抒情を詠んだもの

箴言:シンゲン。教訓的な短い警句

 

回想シーンでさりげなく顔グラの枠色が変わってたり、選択時に効果音が鳴ってくれたり、ちょっとした演出も丁寧な一作でした。

 

 

[一言]

細かく変化するテンポの良い会話、詩的な言い回し、どことなく切ない結末などが好きな方向け。

 

 

 

 

『薔薇と雨』

 

[概要]

シルエット表示のみで男と女。3分ゲ。個人的な趣味によりダクジャヌとダー惚とダーブラだと思い込みながら読んだけど、ミルミさんかなあとも思ったり、でもミルミさんが飛び降りるのは別作者のゲームらしいしなあと思ったり。

 

 

[感想]

 

冒頭の女性のセリフが痺れすぎてて大好きでした。

無粋ながらも整理のために書くと、どこかの誰かのもしも作品の中で、自分たちが永遠に同じストーリーを繰り返すことを自覚しているキャラ達の話なのかなあと思っているのですが。

自分たちがゲームキャラだと認知するのではなくあくまでループする運命だけを認知しているのが、メタ・ファンタジーどっちとも取れて良いですよね。

「指先だけでしか感じられない世界」という呼び方が本当に素敵です。魔法のエンターキー。

 

 

[一言]

永遠に同じことを繰り返す世界、惚れた弱みの愚か者、という感じ。

 

 

 

 

『ただ無力な言葉』

 

[感想]

十数クリック。この作者さんのポエム力の始まりを感じます。

静かな音と海と無力な言葉。フォルダ名も意味深で好き。

いかようにも捉えれる言葉っていいですよね。

 

 

 

 

『ダメ人間はツかれてしまった!』

 

 

[感想]

 

単眼、クロノッポイ、美少女共同生活系ラノベ。解凍してフォルダ名に頷きました。せやね。さくっと単眼、導入編。この後なんだかんだで結婚しましためでたしめでたしで良いと思う。

とりあえず単眼ちゃんがかわいいです。これに尽きます。見どころ終わり。

 

 

 

 

 

『ストーカー連鎖』

 

 

[感想]

 

タイトル通り。魔王軍が主でCPもよくみかける感じ。

妖精が真逆の方向に走ってったのに吹きました。ストーキングしてないやないか!

恍惚→嫁様は見るけど嫁様→恍惚は珍しいかも。あと鎖というより輪になってる気も。

今のすっかり増えまくったもしもキャラ達でやったら長蛇の列になる気がします。

 

 

 

 

 

『考えるということ』

 

[概要]

偽ダーエロ・ナイ様・ザンニンニン・クレアス。へんたいってなんだろう。

 

[感想]

恍惚は万能な竿役だなあ。嫁様を食い散らかして娘様に手を伸ばしかけるイメージが強かったのです。

ナイ様のカー君の世界線は今から考えるとわりとありそうな気が。

偽ダーエロ妹のユグドラちゃんもこういう経緯でケモナーになったのかなあと思うとしみじみ。エロリアはともかくとして、使いやすいですよねエロ設定って。

 

[一言]

ナイ軍だけどアレブラっぽい構文。

 

 

 

 

『この子と貴方と私と色々』

 

[概要]

ミルミとアルテマ中心。

 

[感想]

瀟洒なメイド長の設定が膨らんだ感じ。

てっきりミルミさん最恐伝説が始まるのかと思いきや、ほんのりと切なくもかっこいい恋愛話でした。ああいう引きすごい好きなんですよ。アレックスじゃなくてナイ軍を出す辺りも人選が好きで、なによりあの圧倒的な強キャラ演出に震えます。

師弟関係、寿命差、結ばれないけど想い合う関係、とかって好きな人絶対いますよね。良いですよね。数分だけど熱いドラマを見た気分です。

 

[一言]

続いてくれよぉ!!!

 

 

 

『マイナーズ劣情』

 

[概要]

2003ダークエルフとザンニンニン中心、偽ダーエルとディオナとナイ様がサブ。ギャグ寄り。

 

[感想]

いやディオナはかなり人気キャラでは?と思ったのですが、当時はそんなでもなかったのかも。偽エルフ兄様も好きだよ……生真面目すぎてあんまりVIPのノリに乗り切れないところとか好きだよ……。

ともあれ、2003エルフが自分のマイナーっぷりを嘆いて暴れてナイ様のおかげでちゃんちゃん落着な話。

ザンニンニンへの愚痴とそれに対するレスポンスが、耳に痛い部分もあり、ギャグだと思って油断してたけどこの作者さんの他作品の片鱗はあったなあという感じでした。

天丼やお約束オチの廊下猛ダッシュに、わかっていても吹き出してしまったのでやっぱり勢いは大事。

 

[一言]

もしもキャラの出番とか設定とか影薄ネタとかが好きな人向け。

 

 

 

 

『I can not neveeeeeeer give up!!!』

 

[概要]

餡軍中心、ダークのオールキャラなノリ。劇中劇ギャグ一直線。

 

[感想]

 

死んでは生き返りーなある意味天丼ギャグなんだけどこれが不覚にもツボに入る。勢いは大事ですね。

せっかくならしょうゆのごとく尺伸ばして延々と続くのも見てみたかったかも。後半はカオスハイテンションでなんかようわからん間に終わってたけどええか、という感じのノリ。

あと敬語ドSダモン君応援してます。ファンです。サインください。ダー闇子ちゃんが見れてハッピーでした。

 

 

[一言]

まさにVIPRPGのノリ。カオスと勢いで笑いたい方向け。

 

 

 

『聖人が僧衣を脱ぐ時』

 

[概要]

ネクロさんと聖人さんとダー惚とダーブラ。よくわからないが愛すべきナルシストをぶん殴りたい気持ちが楽しめる。

 

[感想]

 

爽やかにゲスいダー惚をにやにやしながら楽しむゲー。セリフの切れ味が良すぎて不覚にもたびたび吹き出しました。タイトルのドシリアスな雰囲気はどこへ行ったのか!

むちむちちゃんが脱ぐというだけでも読んでみたらいいと思います。

ぶっちゃけネクロさん周りの設定は全く知らないしダーブラとダー惚が取り合いしている女子も候補が複数浮かんでしまったので、もうちょっと事前にはい設を学んでからプレイしたほうが良かったのかなあと思ったり。これも無意識下の系列かな……。

 

[一言]

この、なんともウザイが憎めないダー惚のキャラと、武骨なお人よしダーブラのキャラが好きなんですよね。

 

 

 

『紅』

 

[概要]

ナイ様とブライアンパンマンとダー惚。キャラ被り死すべしのギャグ。

 

[感想]

エルフがあんな汚れキャラになるとは、本当だよ! 誰だよヘレンにチェーンソー持たせたの! 好きですけど!

策士に見えるナイ様と餡様のおとぼけ劇場でした。やっぱり私畳みかけてくる笑いに弱いですわ、耐えても吹き出してしまう。

あとダー惚のBGMって勢いで笑わせるのにぴったりですよね。本当ずるいな、美味しいキャラしてるなこのやろうと改めて思いました。大好きですよ悔しい。

 

[一言]

Xjapanは関係なかった。

 

 

 

 

『忠犬ダーブラ

 

[概要]

ヤンデレっぽいシェイド(デコ)とダーブラ。バイオレンス。

 

[感想]

不穏な空気にうんうんと読みました。

何をした、中身が何、というのをはっきり言い切らずに、そうかもしれないしそうでないかもしれないと思わせるのが良いですよね。

そして最後がずるい。非常にずるいw

強く共感します。

 

[一言]

闇のある性癖を持ってる人向け。

 

 

 

『アイシュウを謳う窓』

 

[概要]

切ない雰囲気のダークファンタジー

 

[感想]

人形に囲まれた悲しい女神の話。人形のセリフ部分がちょっと読みづらくはありますが、超短編なので気になる前に終わります。

外は見えない、と言いながら最後に天気を持ちだしてくるセンスが素敵。

彼女のおしまいについての台詞も心に残ります。

 

[一言]

切なめダークメルヘンがモノクロ調によく似合う一作。

 

 

 

 

『画鋲』

 

[概要]

ダークネスとハー妹。引きこもりをリアルに刺す。

 

[感想]

超短編だけど、まさにタイトルのようにザクっと心を刺して終わる読了感。ボリューム的にも序盤とラストの繋がり的にも、ちょっといっぺん読んでみてくれとオススメするのに最適。暗いけど。

導入が軽快で唐突だから初めは気づきにくいが、ラストには「ああ……」となる引きこもり特有の焦燥感やら自己嫌悪やらがぎゅっと詰まっている陰鬱作品。大好きな雰囲気です。

 

[一言]

鬱展開、引きこもり、自己嫌悪など。

 

 

 

 

『シェイドⅢ(デコッパチ)とダーブラ

 

 [感想]

タイトル二人が初めまして。他ゲーをさんざやった後にここに辿り着いたので、おおーここが原点(仮)(多数)かとしみじみ。あるあるのksgらしいksg。

 

 

 

 

『アンパン軍の怪談』

 

[概要]

餡軍、アン様とダモンとダー惚中心。ギャグホラー。

 

[感想]

すぐにちっちゃくなっちゃうアン様と、怪しげな研究(馬鹿)をしているダー惚の話。

やっぱりこういう、はい説で済んでいるものにじわっと闇を色付けしていくものは好きです。深読みしてくださいって言ってるようなものですよね。

 

[一言]

冷蔵庫は開けたらすぐ閉めような!

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

『羈旅◆肌に刻みて心を求む』『そして美しい生物の国へ』『薔薇と雨』『聖人が僧衣を脱ぐ時』辺りがやっぱり好きだなー。

日々ちまちまとプレイしていった作品群なんですが、余韻が強かったり一言が刺さったりするものが多くて、かなりどっさりどっぷりと楽しめました。

 

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

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同人ゲーム「ファタモルガーナの館アナザー」感想

「その日が前日と呼ばれれば既に必ず終わりが定められ」

未来から観測する過去ほど歯がゆいものはない前置き。

 

 

えー、今回はNovectacle(ノベクタクル)さんところの同人ゲーム「ファタモルガーナの館アナザー」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

この作品をネタバレ無しで語るのは無理だと判断しました。

一応、追記でない部分は、せめて致命的なシーンはぼかしているつもりです。それでも念のため、本記事は『ファタモルガーナの館』および関連作を既プレイの方に読んでいただければ幸いです。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

 

プレイヤーの読後感を考えた構成

 

ファタモル本編を想定すれば察しはつきますが、本作もかなりの鬱展開です。なにせモルガーナの過去編です。スチルも圧倒的な画力で臨場感と残酷さを見せてくれるものが多く、心がぞりぞりと削られていきます。好きです。

 

で私としては、ファタモル本編が希望のあるエンドで終わることもあり、こっちはもう救いようのない鬱展開だけが来たとしても驚かないという覚悟で読みました。そして確かに、どうしようもなくただただ閉じていく、もどかしくやるせない悲劇がありました。しかも質が素晴らしく、緻密に隙も無く積み上げられた展開です。

でも、鬱だけじゃなくて。あのハッピーエンドをあのタイミングで持ってくるのが上手いし、そこから舞台裏へも心理的に行きやすいし、何よりボーナストラックが素晴らしかったんです。

メインエピソード中盤で暗い話と前向きな話が交互に出ていたこともそうですね。プレイヤー心理や、陰と陽の雰囲気をうまく使い分けて、希望も絶望も見せてくれる作品作りだったなあと思います。

要は、各エピソードの解放タイミングが上手い!

 

 

 

人間味のある魅力的なキャラクター達

 

中にはかなりの変わり種として描かれているキャラもいます。とても同じ人とは思えない悪逆の徒もいます。それでも、悔しいことに奴が辛い目にあってよかったとは思えないんですよねえ。

やっぱり、キャラに一貫性があるところがうまいなあと思うんですよ。思考がブレても葛藤の理由に納得ができて、出自や来歴も後天先天問わず、一人の人間が立っている感じ。悲劇が起こってしまう土壌がしっかり固められていて、説得力を持って襲い掛かってくるようなお話でした。

 

基本的に悪役の背景事情を後出しするのは反対派なのですが、こと本作においてはものすごく旨味のある幕間だったなあと思います。

本作の幕間は悪役の言い訳じゃなくて、きちんと、解答編なんですよね。どうして彼女が、という引きを作って、盛り上がりを落ち着かせつつもプレイヤーが離れないような構成づくりをするために用意されている……ここ本当に美味いなあと思います。

先に終わりを知っているからこそ突き放して見れる部分は有りますし。逆にだんだん感情移入していってしまったらもうドツボで、やっぱり終わりを知っているからすごく苦しい。この苦しさが好きです。

 

 

 

豊富なサブエピソード

 

さて、私はあくまで本作はモルガーナとヤコポの物語のみだと思い込んでいたのですが、蓋を開けてみればサブエピソードとして思わぬキャラの語りが読めてとても嬉しかったです。

特に新キャラについては他作品でちょこちょこ名前や設定だけ出されていたので、やっと出会えて感無量でした。

そして、そして胸が詰まって涙がぼとぼと流れてきたのはあの、最後のお話ですよ! ファタモルをプレイしてきて、皆のお話をこうして見続けてきて良かったなあと震えた瞬間でした。本編の後味があれでサブエピソードがあれというのもすごい、プレイヤー心理を熟知してますよね……!

メインエピソードだけでもかなりのボリュームですが、サブエピソードもかなりの満足感が味わえました。

 

 

 

 

とまあ、隠しながら?語れるのはこんな感じ。

鬱もキツイが希望も大きい、読んでよかったなあと心から思える話です。

 

ネタバレガッツリの話は追記から。

 

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VIPRPG「パラとパラ オルタナティブ」「ギンガミⅡ」「MIKURO_COLORS」「懺悔室」「想い出とまわる君 ~Memories Of...~」「ライチがピアノ弾くだけ」感想

「繋がるその輪で丁寧に、坂道転げ落ちて見せましょうや」

ネット上にも袖する縁な前置き。

 

 

えー、今回はフリーゲーム「パラとパラ オルタナティブ」「ギンガミⅡ」「MIKURO_COLORS」「懺悔室」「想い出とまわる君 ~Memories Of...~」「ライチがピアノ弾くだけ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

VIPRPG、どれも見るゲ寄りですが一部操作有り。作者様は一緒だったり違ってたり。関連作品はそれぞれ概要に記載。

 

 

 

 

『パラとパラ オルタナティブ

 

[概要]

男女パラライズの起源のような見るゲ。水関係の魔法具現化もサブキャラでちらほら。

 

 

[感想]

 

海を守る孤独な少女と、出会った少年の話――ということで途中までは悲恋ものの王道を直球に進みますが、最終章で装いはがらりと変わります。

無限少女のくだりは正直、一読で理解するには難しいやり取りだったのですが、エピローグまで辿りついてやっとピンときました。「弧を描く」という表現も良いですよね。この手の選択が巡り巡る展開とても好きです。

同一を求める、家族を求める気持ちと、恋で突き進もうとする身勝手な少年心のすれ違いみたいなのは実に業深くてしみじみしますね。

いやあまさかあのイケメンがクラゲとはなあ。

あとおまけ、ヘルミーナとクルスに笑いました。良作よね。

 

 

[一言]

君の存在意義をこんな形で終わらせたくない見るゲ。

 

 

 

 

『ギンガミⅡ』

 

[概要]

『ギンガミ』のほうがエラーでプレイできなかったのでこっちから。話は繋がってないらしいので安心。RTPキャラで鬱展開見るゲ。

 

 

[感想]

 

見事に全部ぶっ壊していく鬱展開でした。

帽子の下の流れでなんとなーくジサツのためのっぽいなと思ってたら本当にそうで吹き出すなど。クトゥルー要素が入っていることからもわかる通り、理不尽鬱系で、あまりの容赦のなさはいっそ潔いほどです。

何よりもうエンドロールの演出の悪趣味さがあまりにも美しい。あの演出を見れただけでもプレイして良かったです。

 

血がずりずり引きずられていくドットとか、皮肉に心を削っていくタイプの演出が上手いんですよね。序盤の明るく青春なシーンをしっかり描いてあるからこそ刺さる。

お兄ちゃんの150万のくだりとか、暗澹とした気持ちになりました。心からの憎悪とかじゃないからこそより辛くて、よき。

 

作中の父親にしても宇宙的なものにしてもそうですが、圧倒的で理不尽な暴力に善なるものが滅多刺しに壊されていく姿は、なんとも言えず何度も見たくなるのあれ何でなんでしょうかね。心が痛むからこそ癖になると言うか、この世は腐った水の底というか。異様に中毒性がありました。

 

 

[一言]

鬱展開好きに是非。

 

 

 

 

『MIKURO_COLORS』

 

[概要]

キャラグラは三将軍とブラインド、ですが、名前も性格も舞台もガッツリオリジナルな見るゲ。イベント戦闘はあるけどほぼ見るゲ。学園もの×格闘武芸もの。『詩歌を嗜むRe』をプレイしておくと、小ネタにニヤリとできるかも。

 

 

[感想]

 

権力のあるボスに牛耳られた学園で、ハグレ者の二人と人避けする転校生が手を取り合り、巨悪に立ち向かう────という熱血もの。面白いのはこの舞台がお嬢様学校である点。加えて、悪も単なる悪ではなく一本筋の通った信念を持つものであるという点がとても素敵でした。

いやまさに鉄子自身が熱血なんですよね。文字通り。あの覚醒シーンほんと好き、文末に「!」が入り始めて文字から熱気が漂い血潮かけ巡る感じがものすごく熱くて好き。

 

あと上手いのが、回想や伏線の繋げ方、それを伏線とプレイヤーに気付かせる反復法です。

例えば竜子と鉄子のセリフの被り方。そしてそれを否定する友が傍にいたか、そうでないか。氷雨には笑顔、鉄子には泣き顔に見えたキネ子の表情。定期的にかかってくるおじさんからの電話……。

読み進める間に積み重ねられてきた様々な描写が、最後にガチリとハマり込む爽快感が最高でした。泣かせにくるだけじゃなくて、この作品独自の言い回しで彼女達だからこそという唯一無二さを出してくるところも好き。大根に醤油で泣かせられるとは思わなんだ。

 

個人的にセーブはこまめにしたい派ではあるので、普段ならシーン区切りでもセーブが欲しいと思うところではあったんですが……。本作はむしろこのセーブの控えめさが良かったです。一気に読んでこの熱い感情を叩きつけて終わる、このプレイ感こそが好きです。どちらのエンドでも。

 

続編予告も気になるところではありますが……。今のところはまだない、のかな? これだけでもきっちり完結しており、しっかり満足感のある一作です。

 

 

[一言]

ともだちパワーは最強。

 

 

 

 

『懺悔室』

 

[概要]

2012紅白。メモリストリーム男女の短編集。ちょっとだけキャンセルさん。

 

 

[前置き]

 

メモストさんに初めて出会ったのは『起きて寝るお話』だったんですが、当時はメモスト女の自殺願望やらメモスト男の多重人格やらの設定が全然ピンと来てなくてうまく読めなかったんですね。

 

やっと理解できました! 原点はここか!!

はあやっと出会えた、これでメモストさん関係の文脈がやっと理解できるようになりました。嬉しかったなー。

 

紅白のページのスクショがかなりこう、作為的な電波文だったのでどうしよっかなーと躊躇ったんですが、蓋を開いてみれば理解しやすいよう論を広げながら哲学する話が多くて安心しました。少なくともあえて電波にしました~みたいな厭らしさはなかったです。まあ安価だもんね。

 

 

[感想]

 

というわけでやっと本編の話。

下ネタ→哲学→哲学→下ネタ→哲学みたいな、交互にボディブローかまされる構成です。

しょっぱな近親相姦尻穴性交をかまされて爆笑したんですが、言ってることはガチだったのでいっそうヤベエよヤベエよってなりました。楽しいね。

 

公開順通りにプレイしていったら、この作者様がメモスト達に与えているテーマはわかりやすく理解できると思います。

箱の中のダイヤモンド、観測できない場所で鳴った木の倒れる音、目の前に実存していない過去の記録。確実に存在していたはずの見えないもの、みたいな。生前葬の話の、死んだ後に発生する私の悼み、とかもそうですね。

ここに幽霊なるものを入れてないのが一貫してていいなーと思います。いたかどうかわからないものを前提に出すんじゃなくて、確実にあったと言えるはずのものが無いと思わされてしまう不確定さみたいなところを突きたいんですよね、きっと。

共通したダウナーなBGMや、淡々と繰り広げられる哲学的問答がとても楽しい作品集でした。

 

台詞や勢いは4Pする話が好きなんですけども。「君だって数学Bを履修しただろう!」が好きすぎてほんとツボ。

中でも一作だけ切り取るなら墓参が好きだなー。シームレスに人格が入れ替わる多重人格的なもの大好きなんですよ。RPGツクール2000の話をしよう、と綺麗に繋がっているところも、OPとEDみたいで大好きです。あれ、これだと切り取れてないな。まあいっか。

 

ともあれ、観測されない存在は存在していると言えるのか、シュレディンガーの箱猫みたいに両方の可能性を持つものはどちらかに規定されないとどちらともいえないんじゃないか、みたいな感じの話が好きな人には合うと思います。哲学にわかの自分でも楽しめたのでね!

 

 

[一言]

メモストさんとぷよぷよ(意味深)したい。

 

 

 

 

『想い出とまわる君 ~Memories Of...~』

 

[概要]

ループを繰り返しながら視点からの逃げ道を探すやるゲ。探索。メモリストリーム男女とサブでキャンセルさん、謎の仮面の男。

 

 

[前置き]

 

前述「懺悔室」を大いにリスペクトしたやるゲ。

作者様は「ごめん、まだわかんないや」とか「白昼夢チルドレン」とかの方。元々作風がかなり特徴的な方なので、合わせようという頑張り的な何かを感じるお話でした。自分の話に引き込んだ途端に特徴が出るようなプレイ感?

エンド直前のシーンになると同作者様の別作品にかかわりのありそうな単語やら謎の人物やら出てきますが、無視しても大筋は辿れます。この話は『懺悔室』と観測者の前提があるからこそ他作品とリンクさせてほしくなかった気持ちもあるけど、第三者が介入しないと本当に二人は停滞しか残されていないような気もするから、致し方ないのかな。

 

 

[感想]

 

難易度そこそこ高め。やれること全部やっても、二つ目の質問でかなり悩みました。そして某サイトに答えがあったので見てきました。ゆるして……。

メモストさん自体メタな存在ですが、本作はそれをゲームのギミックにまで持ってきてるところが興味深かったですねー。「メタでなければ知覚されない、知覚されなければ存在しない?」という疑問が『懺悔室』の始まりかなと思っているので、よくここまで踏襲したなあとしみじみしました。

 

そのぶん、「メモリーストリームという存在では絶対に解決できない」命題に対して出した結論があれだったのが少し惜しく感じもしましたが……。メモスト女の抱いている命題の前提自体をズラすことでメモストを救済する、みたいな構図になっているのかなあ。

調べられるもの全てに元ネタの画像が仕込まれてあるなど、愛は強く感じます。

 

 

[一言]

ループゲーメタゲーっていいよね。

 

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『ライチがピアノ弾くだけ』

 

[概要]

見るだけ分ゲ。音合わせ。ライチとやみっち。「僕に妹がいるわけがない」を知ってると楽しさ二倍増し。

 

 

[感想]

 

音合わせ、初めてプレイしたんですが、良いジャンルですね~。ツクール製のムービーな感じ。初めての人間にもわかりやすい説明があって助かりました。音量注意も気が利いていて素敵。

内容は、ホラーを乗り越えて、心温まる感じ。元ネタのマップや演出をしっかり拾っていてリスペクトを感じる作品です。

個人的にホラーや鬱作品の勝手な救済ネタが好きではないので、オチはもやっとしましたが、連弾シーンがぐっとくるものを感じました。ぎこちないピアノの表現の仕方が、とてもこう、愛おしいですね。

 

 

[一言]

数分で心を潤したい方向け。らいやみ。

 

 

 

 

納涼! 短編ホラーフリゲ8作品感想

「幽霊一体につきマイナス2℃の冷房要らず」

これからは電気屋より霊媒師の時代な前置き。

 

 

えー、今回はさくさくっと数分~1時間でプレイできるホラゲの感想を書いていこうと思います。作品はそれぞれ下記の目次の通り。

ホラー映画的なものから電波鬱系、胸糞、ほのぼのホラーまで。

 

 

 

 

『418号室』

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謎解き・追いかけっこ無しのホラー。

静けさと緊張感が満ちている一作で、わかっちゃいるのに驚かし演出には体をびくっと跳ねさせてしまいました。すさまじい。

 

探索のみでクリアできるので、難易度という難易度もありませんが、調べた時の反応が細かく変化していくのは良い感じに恐怖を煽られます。お話も私は見事に引っかかり、しかもプレイした時期がぴったり作中の時期だったのもあって、一人で「うおおお……!」と震えました。

 

エンドはどちらもホラーらしい余韻の残るもの。

私は飲まないほうのエンディングの方が好きです。達成感を味わうために何度も418号室を訪れては微笑む、ってなんだかすごく絵になりませんかね。418号室に泊まりたがる客、ということでまた新たな怖い噂になりそうなところもぞくぞくします。

かなり硬派な印象の残る作品でした。

 

 

 

『建設途中十四階』

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ミニゲーム有りの短編ホラー。考察するというよりはわからない部分をわからないまま楽しむ、洒落怖や気づくと怖いスレ系の怖さかも。

 

舞台が工事現場、という点がまず斬新。雨樋屋でなくシール屋~等々の専門職らしい用語を含め、主人公が現場の人間であるという絶妙なリアルさが出ています。

不思議なことが起こっている時にも、命の危険だからとすぐさま逃げ出すのではなく仕事現場に支障が出るから……などと考えてしまうあたりがとても現実的。この現実感が都市伝説めいたエンディングとよく噛み合っているなあと感じました。

 

グラフィックは特にドット絵が良かったですねぇ。メニュー画面のデザインや、タイトルロゴもシンプルにオシャレ。さらにタイトルコール、ここはまさに絵になる構図でほれぼれしました。

蓮コラちっくな化け物もぞわぞわした気持ちにさせられますし、ぬるっと落ちていくドットの細やかな動きにも痺れます。

 

難点はキャラの動きがかなりスローなところと、出入り口や調べるアイテムがわかりづらいところ。雑然と物が放ってあるマップは確かに工事現場らしいのだけど、特に階段周りは見えづらくて苦労したので、アイコン等が欲しいなと思います。

 

トマトジュースはずるい。

ところどころおちゃめなのもまた魅力な一作でした。

 

 

 

『サイレント』

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短編探索ホラーゲーム。

先んじて、まったく合わないゲームでした。なので酷評します

まず、操作性が異様に悪い。マップの切り替えポイントの配置とウェイトが悪くて滑りやすく、気軽に行き来ができません。アイテムは基本ノーヒントの虱潰し。虱潰しさせるならさせるで、アイテム以外にもちょっとした小話やミニイベントが欲しいですし、それがないのならはっきりここにアイテムがあると明示してもらいたいところ。

 

そのうえ屋外に出てからはマップ切り替え地点と行き止まりの判断がつきません。反復横跳びの人も、行き先を邪魔してるんだと思ってなかったので(単純にいたから話しかけようとしてた)、公園奥以外の行き先がわからずしばし戸惑った覚えがあります。「あっち行ったらやっとあたしの家だ」みたいな独り言でも入れてくれればずいぶん違うと思うのですが。 

 

極めつけはウェイトの長さ。意味深を装った無駄なウェイトが多すぎます。ver1.04でプレイしたんですが、これでも全体的にウェイト軽減が行われていた後とのことで、軽減してこれかと。

いやわかるんですよ、ホラーで間の置き方が重要視されているのも、リフレインで恐怖を煽ろうという手法も。なので、使いどころを決めて欲しいですね。

例えば、コマンドで足止めさせるタイプはウェイト軽めに、溜めたいタイプはウェイト多めに、沈黙はウェイトで表現するのではなく「……」+表情変化で表現、などにすればかなりプレイ感は爽快かつ雰囲気は損なわずに済んだかと。

 

物語もぽっと出のキャラクターが賑やかすばかりで、感動や恐怖以前に思い入れが抱けない感じ。

淡々としてる上に皆がわりと暴言を吐いたり冷たかったりするので、愛着が起こりづらいんですね。なので悲劇が起こったり事実が明かされたりしても、ふぅん、という感想です。

この「知るかバーカ」と言いたくなるプレイ感が、百合の「本当の友達」「理解して欲しい」という想いに対する皮肉である――と言われれば喝采ものですが。作中浮かぶ大半の疑問は解決されませんし、協会に来た人やカエルなどあれはいったい何だったんだという疑問が残ります。

 

モノクロームかと思いきや普通に色がつき始めたり、サイレントゲームかと思いきや普通にBGMが入ったり、一貫性がなくタイトル回収が行われなかったところも不満です。

同作者様の『Reincarnation』は最後までプレイしたら印象が底辺から良作に変わったゲームだったので、これもそのタイプかと期待したんですが、本作は合いませんでした。

 

良点は人形たちのキャラデザインとドット絵

某イベントで二人がぴょんとその場を去っていく時の姿とかすごくかわいかったし、「どうして……?」という不安感が上手く出ていて、あそこは良い演出でした。

また、エンドのフラグに応じてメニュー画面の百合の姿が変化していく演出も、プレイヤーにわかりやすくかつ見ていてぞくぞくできて素敵でした。

 

ついでに。公式の攻略はやや語弊があります。以下色薄めで伏字。

単純にひどいことを全部してもED4にはいけませんし、ひどいことを2回程度行っても普通にED1へ行けます。ED2とED4がひどいことを全てしたうえで「捕まるかどうか」で分岐すると認識した方が、回収しやすいかと。キーアイテムとひどいことを同じ項目で記載しているのでわかりづらくなっているように思います。

伏字終了。

 

ともあれ。荒んだ主人公とともに荒んだ気分になるプレイ感でした。

 

 

 

『死んだカエルに捧ぐ』

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エンド分岐有り、鬱展開、グロ

常に画面が赤黒く、文章表示もウェイト多めでヒントも少なく、難易度はかなり高め。ただこう、躍起になってエンドを目指すというより、こういった世界観が好きな人がたっぷりと電波を感じるためにあるような作品でした。

 

常にノイズ音が鳴り響く、この時点で既に精神をゴリゴリと抉られる感じです。断片的に見れる回想シーンで、かろうじて物語の大枠は理解できる……かな。

そもそも精肉工場が舞台なので、うん。進行上カニバリズムネタが必ず起こり、ホラーとしての演出は十分。演出なのかガチなのかわからなくなりそうなくらい真に迫ったヤバさが感じられるかと思います。

 

探索ホラーあるあるの電波な表現が多いのも、狂気に拍車をかけています。狭い空間で思い当たることを何度も繰り返したり、ランダム(ではないかもしれないけど起動条件がわかりづらい)イベントが起こったり、突然別マップに飛ばされたり。本編内でもちょっとネタにされてたけど、マリオネタ(さよならを教えてのループ感)も想起できる演出でした。もちろんそれだけではありませんが。

 

ちなみに恥ずかしながらエンド1つしか回収できていません。見逃がしやすそうな鉄パイプとカエルのようなものは手に入ったんだけどそこからがうーん。

ともあれ、ガチの狂気や電波を感じたい人向けのホラーです。

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フリーゲーム「Seetate」感想

下記『びょーしにくちゃん』

 

 

 

『びょーしにくちゃん』

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電波鬱、グロ、虫、孕みネタ

ストーリーは一応ありますが、断片的であいまいな表現が多く、プレイヤーのほうで想像を膨らませながら読む感じでした。一通り読み終わると、唐突にゲームが始まります。

 

ゲームの発想は面白かったですね~。

プレイヤーはキャラを動かすという前提をガラッと崩してくれるところがまず斬新。さらにルール説明一切なしでプレイヤーに掴ませる、雰囲気重視なところも、電波ゲーとしては秀逸です。

プレイヤーが何をすればいいのか、気づけなければただびょーしにくちゃんの周りがいっぱいになるだけ。気づいても、結局びょーしにくちゃんがなるようになって終わるだけ。この救いの無さと、陰鬱なBGMと、ガサガサガサガサと湧いて出る蟲の不気味さがとても精神を削ってきます。

画面が暗転して、赤い文字?が出たらクリアでいいのかな。

「気持ち悪い」を見事に表現しきってる作品だなーと感じました。

 

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フリーゲーム「Seetate」感想

上記『死んだカエルに捧ぐ』

 

 

 

『Rumor』

aug81074.nobody.jp

一本道、鬱展開。

操作はありますが謎解きや難しい探索は一切なく、いわゆる見るゲに近いプレイ感です。

メモのおかげで次の目的がわかりやすいのがありがたい点。オチを考えると村がちょっと広すぎて開放的に思える気もしますが、コンパクト過ぎると住んでる実感が湧きづらいという難点もあるので、一長一短ですね。

 

初めは温かな家族愛の物語が繰り広げられ、おやこの作者様の作風にしては珍しいなあなどと思っていたのですが……なるほど、救いようがなく鬱展開でした。

タイトルから展開はぼんやりと察せられるものの、噂の根幹、おおもとの原因が不明なところも不気味さに拍車をかけてるんですよね。父のことか、OPの怪我のくだりが誇大化されたか、このどちらかかなと考えてはいるものの。たとえ何だったとしても関係なく、悪し様にこじつけられてしまうのだろうなー、なんて。想像がつくだけにおぞましさが募ります。

 

ちなみにマップチップやキャラチップはデフォルトのものが多め。ただしぞわっとくる良い演出が一か所あったので、それだけでもグラフィック面は大いに評価したいです。

 

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下記『幸せなエミリー』

 

 

 

『幸せなエミリー』

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一本道、鬱展開、操作有。

謎解きはありませんが、次どこへ行けばよいかは少し詰まりがちかも。まあでも探索ホラーフリゲってそういうものかな。

 

印象的なのは、再生ボタンや早送りボタンの演出です。ゲーム中ずっとビデオの中にいるみたいなあの表現がすごく独特で、良い意味で心がざわざわしました。得体の知れない不安感よ。

ずっと時系列が表示されるので、回想やお話の流れが理解しやすいのも良点ですね。エラーになっている時は精神世界や演出上の描写なんだなということもわかりますし。

 

お話自体は、自傷行為の話。不穏の芽がだんだんと形を成していき、嫌な予感はするけれどプレイヤーには止められない、このやるせなさが実に心地よい鬱でした。前向きになったところで叩き落とすのがまたえげつない……。

キャラグラに変化が起こったり、マップチップが一転したりするところも、がっつりホラーでグッド。クリア後のタイトル画面の虚しさがたまらなくなります。あと診察台に寝かされている、例の、あれが並ぶマップ。とても狂気が深くて好きです。

家族愛、一途な狂気、自傷行為などにピンとくる方にオススメ。

 

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フリーゲーム「AMANI」感想

フリーゲーム「アイシャの子守歌」感想

上記『Rumor』

 

 

 

『部屋を越ゆるもの』

sayusayu.hatenablog.jp

 

最後はちょっとだけ雰囲気を変えて、ほのぼの寄り、エンド分岐ありの探索ゲー。

ブラウザゲーでしたがふりーむだとDL変換が聞いてくれたのでダウンロードしました。ありがたい。

 

クトゥルフ神話を題材とありますが、目星やオカルト技能などのシステムもあり、実際のところはクトゥルフ神話TRPGを題材にしている印象です。クトゥルーならではの宇宙的恐怖も少なく、全体的にギャグな雰囲気

 

先に不満点を書いてしまうと、用意されたものを用意されたとおりに回収していく流れが単調でした。謎解きや探索というよりは落とし物拾いっぽい感じ。

また、せっかくSAN値(元気度)があるからには利用したかったなあと。一時的発狂を再現するのは難しいかもですが、それこそエンド分岐に関わったり、元気度の初期値を2から始めてなくなるとゲームオーバーみたいにすると緊張感が出る気がします。

ただこのゲーム、クトゥルフの緊張感や無力感を味わうというよりは「はじめてのお手軽クトゥルフ」みたいなほのぼのした雰囲気が売りだよなあとも思っていまして。そこを思うとこのくらいの難易度のほうがいいのかも。

 

良かった点はTRPGの技能要素の表現です。どことなくキャラステータスが想像できるのも楽しかったですね。サミーラはオカルト(30)くらいかなーとか。

かわいい幼女(8歳)二人のコンビ漫才や助け合う姿も見られるので、見ようによっては百合かもしれません。マイペースとみせかけたスパダリ月属性×警戒心低めの元気な太陽属性のCPはいいものだ!

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

特に好みと合ったのは『幸せなエミリー』『418号室』です!  じっとりとした感情、大事にしていきたいね。

フリーゲーム「チェックメイト」感想

「盤を降りてもゲームは続く、王か指し手が止まるまで」

サレンダーの声が待ち遠しい前置き。

 

 

えー、今回はBlu Lunetta(ブル ルネッタ)さんところのフリーゲームチェックメイト」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

舞台もキャラも異なる二編のノベルが収録された、一本道ノベルゲーム。サークル作品ということにはなっていますが、個人的には全く味わいもテーマも異なる、合同作品に近い印象でした。

 

 

というわけで良かった点など。

 

圧倒的演技力のボイス入り

 

台詞部分は全てボイスあり、side:white(以下白編、blackは黒編)においてはまさかの地の文まで通しでフルボイスな豪華仕様です。何よりも感嘆したのがこのボイス担当様の演技力でした!

先に読んだのは白編だったのですが、てっきり複数人で読んでるんだと完璧に思い込んでいたんですよ。なので、エンドロールを見てぎょっと目をむきました。まさか、あの多役を!一人で! いやはやもう絶句です。素晴らしい。役名が何行も重なる中で声優欄は一行だけって、すごく気持ち良いですよね。

 

台詞部分には演技を乗せつつも、無理な女声を出すのではなく、低音ながら女性のセリフとして読んでいる感じがとても聞きやすかったです。無理がなくて、自然と沁みる感じ。朗読と演劇の中間を意識されている印象でした。

私は演技力より活舌を重視しがちなのですが、この点においてもパーフェクト。とにかくね、聞きやすく感情が乗りやすい、最高のボイスでした。

 

 

 

童話風な白編と、ミステリ風な黒編

 

まず、ストーリー面から。

両編とも、別の味でありながらかなり印象的な終わり方でガッと心を掴んでいってしまうお話でした。読み始めの時は「どちらも黒では」あるいは「どちらも白では」と感じるんですが、読み終えるとその色にとても納得がいくんですよ。かなり面白い読後感でした!

ネタバレになってしまうところは追記へ格納するとして。いやあ本当に、どっちの色も大好きです。チェスから派生するイメージを絡めていくのが上手なんですよねぇ。

 

次、グラフィック面。

キャラがシルエット表示で白と黒が基調なのは共通ですが、印象はかなり異なります。白編は絵本のように柔らかなタッチ、黒編はミニキャラでかわいいタッチ。似た要素なのにかなり違うように感じるのも、複数作ならではの楽しみ方かもしれません。

 

 

 

惜しかった点

 

少しもったいないなと感じた点もあるので、挙げておきますね。

 

 

・白編、オートモードと行ごとの溜めの噛み合わせが悪い

 

一行一行でボイスが区切ってある件について。行終わりの空白が短いので、オートモードだとかなり聴きづらかった点が気になりました。普通のノベルゲであれば、オート送りをこちらで調整すれば済む話なので特段なにも書かないのですが……。

本作は「通しで収録」という言葉があったのでとても引っかかってしまったんですね。せっかく、あの長さを通しで(!?)読んだというのに、わざわざ一行ごとに区切ってしまうなんて! これは実にもったいない、いっそボイスドラマ的に流しても良かったのではないかと切に感じます。

 

 

・黒編、匿名性が薄い

 

少年も秘書もお嬢様も、皆が皆個性的でかつ、黒編は白編と違ってあの世界全体のお話ではなく特定個人にスポットを当てたお話であると感じました。なので匿名性を持たせる必要をあまり感じず、もやもやと。せっかくスチル等であんなにかっこいい外見が見られるのなら、立ち絵有り名前有りで進めるほうがむしろ感情移入できたのになあと惜しく思いました。

公式ブログを拝見するに、衣装等々にもこだわりがあったようですし……。ブログを見に行くくらいには気に入った作品なので、なおさら惜しかったです。

 

 

 

 

余談ですが、強い情や執着があるとついそう見てしまう私は、黒編がBL要素を持っているように感じます。そっちに目覚めている方はよりオイシイ萌えを感じられるかもしれません。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

色々と書きましたが、ボイス重視の方や、秀逸なオチのお話が気になる方、チェスや裏表がテーマの話にピンとくる方は是非。

 

追記ではもう少しネタバレに踏み込んだ感想を書きますね。ご興味ある方はどうぞ。

 

 

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フリーゲーム「セカイノミカタ」感想

「人を人たらしめる要素は二つ脚で歩けることではない」

証明のために車椅子を出してみた前置き。

 

 

えー、今回はSuGicomさんところのフリーゲームセカイノミカタ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道のミステリノベルゲーム。ふりーむ紹介文の「すべてが誰かとつながる」通りの一作です。

そしてとにかく美しい一文が多い。一つ素敵な言い回しがあればそれだけで幸せになれる私のような人向けです。

 

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

日常ミステリから群像劇へ

 

一応お話は章ごとに区切られていますが、チャプター選択等はなく地続きの一本道です。

それでも分けられているのには明確な理由がありまして。

ずばり「日常ミステリ短編連作」なんですよね! 一章ごとにちょっとした謎かけが用意されて、そして主人公の傍らには頭の回る探偵役がいて、各章内では解決しない一匙の謎がラストで一気に表題作へとつながっていく感じ。

ノベルゲームと小説の書き方は異なるとよく聞きますが、本作は小説の構成をノベルゲームの文体でやっているような印象でした。これがまたすごい楽しいんだ。

 

そして、最終章を越えて真相編では視点主すら変更されます。回答編になると形式が変わるのもすごくミステリっぽいイメージ。

そもそも「絶対に嘘をつかない」というキャラクターが用意されている時点でミステリ叙述トリック万歳ですもん。大好きですこういうの。

 

元々この方の作品は『ドブネズミアクターズ』から入ったんですが、あの作品で感じていた秀逸な群像劇要素はすでにこの処女作から始まってたんですねえ。私、群像劇書ける方ははちゃめちゃ頭がいい方だと思います。

 

 

 

透明感と圧倒的オーラを感じるグラフィック

 

すごいな、と思うのが、キャラのカリスマ性をしっかり立ち絵で判らせるところ!

本作はけっこう登場人物が多く、どのキャラにもオリジナル立ち絵がつけられている豪華仕様です。そんな中でも、どことなく人を引きつけるタイプのキャラがぱっと見てわかるんですよ。カリスマオーラ。さすがです。

立ち絵だけでなく、フォントやメッセージウィンドウにも注目したいところ。使われているフォントが独特で初めは読み慣れなかったんですが、次第に慣れた頃にはこれこそが本作の雰囲気を表しているなあと思うなどしました。なんだろう、透明感とか、おしゃれでピュアな感じがものすごくタイトルに合うんですよねぇ。

 

 

 

必ずどこかにある胸を打つ言い回し

 

とにかくこの作品で一番熱く推したいのが、文体、美文名文です。

あのね、読んでて思わず手が止まる一文がほんとうに多いんです。はっとする。ああこの言い回しだなあ、この言い方が一番言いたいことにぴったりとハマるなあ、と思う。大好きなんです。グラフィック描けて筆力もあるってもう最強ですよね。

 

例えば作中で繰り返し使われる、マスクの掛け方の理由。推理とはどのようにしてなるのか。引用したいけどもったいない、でも言葉に出して沁み渡らせたくなるこの感じ!

私みたいに合う人は必ず心のあちこちを文で揺らされます。ストーリー構成ではなく言い回しでここまで揺らされた作品はとても久々で幸せでした……!

 

 

 

キャラクターの語る思想

 

少し漏らしたように、キャラクターは親近感のある人から人間離れしたカリスマキャラまで様々です。中でも私が好きなのは嘘の付けない彼でした。この作り物っぽい性格の彼もクリア後にはかなり人間らしく見える不思議。

どのキャラも、初めの内はそれこそよくいる誰かという感じなんですよねぇ。ですが、読み進めるうちにどんどん深層が覗けて、親しかったはずの人が致命的に理解しえない誰かになったり、あるいは理解出来るからこそ意外な一面を持っていることに驚かされたりします。とても独特な感覚でした。

 

語られる話も、喫茶店のちょっとした不思議から、警察沙汰の事故、宗教的思想と段階を踏んでどんどん話は重たさを増していきます。順を追ってのめり込ませるのが上手い。

 

その中で私、各キャラの思考の語りがすっごく好きなんですよね。運の悪さの話や、生き方死に方、ヒーローになるということなどなど。色んな考え方、思索が好きな方にはぴったりだと思います。

推理とはどのような道筋で作られるか、の宝のあの一文が大好き……。

 

 

 

 

難点として

 

真相を見逃しがち

 

読み終わったら???編へ。プレイ予定の方は要チェックです。

いやあ、単純に私が見逃しかけちゃったんですよね。はっはっは。本編がきちんと区切りをつけて終わるからなおさら誤解しがち。でも、???編でこそ見られる諸々があるのでやっぱりここが見逃されるのは惜しいなあと思います。

???はそれこそ起動画面に組み込んでしまうほうが、見逃し防止になるんじゃないかなー、なんて。システム関係で難しいのかな。

 

 

コンフィグがない

 

音量、オートモード、文章速度などなどノベルに欠かせないシステム面がどれも調整できません。できない、はず? 少なくともReadmeには載っていません。

Aキーを押せばオートにはなりますが、ページ送りと文字送りが同じスピードなので体感速度はかなり早め。文字を読みなれた人向けかなと。

自分で文章を咀嚼しながら読める、と言い換えることもできるんですけれどもね。

 

 

謎が謎のまま残ることも

 

あの人が宗教を設立することになったきっかけや、トレードマークがリュックの理由、某人物の相似、宝がボトル拾いに誘われた理由など、一部の謎や関係性についてはあまり明示されていない……ように感じます。

タイトルに関わる部分は回収されますし読後感も良いので、あくまで私の挙げた点は舞台設定・マグガフィンと割り切るべき点なのかも。でもこう、本編に登場するほとんどのものに関係性が備わる精緻な作りをしていたので、やっぱり明かされない部分は気になってしまうかな、と思います。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

まとめると、システムは少し難ありですが、それらを全無視して飛び越える勢いで文章が好きな作品です。ストーリー構成も練られたうえの読みやすさを感じるので、気になった方は是非。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

フリゲサイト「ゆきやどり(仔竜/壺竜)」4作品感想

「壊してはまた突き詰めて、崩してはまた敷き詰めて」

着実によりよきものへ進んでいく前置き。

 

 

えー、今回はゆきやどりさんところのフリーゲーム「Ash Snow -白の双子と赤き星-」「エクスシアの翼」「Monotone Clover -いつか咲く、機械の花-」「ドラゴンクレイドル」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

気づいたら公開停止になっていた作品や、ウディフェスに名残のあった作品が主になっています。なので、感想もいつも以上に私用です。

すでに『AshSnow Eve』で語っているところも多いので、これから手を付けたい方は過去記事を先に見て頂けると幸い。

 

 

 

 

 

『Ash Snow -白の双子と赤き星-』(RPG

 

現在公開中のリメイク後は『AshSnow Eve』にて。

バージョンをかなり持っているのでどれがいつどうなったのか不明なんですが、とりあえず同じタイトルでグラフィック面が一度更新されています。

レトロゲーっぽい雰囲気? システム含め全体的に全く異なるものになっているので、かなり新鮮でしたねぇ。

 

ゴリ押しできるかと思いきや、アイテム制限の関係でやりきれないバランスもグッド。余談ですが狼絵のクエストのギミックにしばらく気づいていなかったので、アイテム数を拡張できたのは最終戦の直前でした。はっはっは。セルフ縛りプレイ。

 

バトルモーションが多めで見てて楽しいのは共通ですね。初期のスノウの戦闘開始時モーションがかわいくて好きですが、SEと動きの音ハメやアッシュの戦闘開始時モーションは顔グラ変更後のほうが好きかも。

どの世界線でもアッシュがデレてくれるのにニヤニヤしました。アッシュの扱いやフルールの性格はこっちのほうが好きかなー。でもアッシュの口調はEve派だなー。

 

色々バージョンがあるとつい比較してしまいがちですが、どのバージョンにも光るものがあるのは凄いなあと思います。正当に進化しつつ、どれも単品として楽しめる感じ。

 

 

 

『エクスシアの翼』(RPG

 

現在公開中のリメイク後は『エクスシアの翼_亡国の凶星』にて。

本筋のストーリーや纏め方はこのバージョンのほうがすんなり読めて好きかも。でもリメイク後のカナリアちゃんは可愛いので捨てがたい。それにサロスの「あ!は!は!は!は!」は断然リメイク後ですね!

そうそう、ソイルの顔グラの凶悪さがガチで笑ってしまいました。ふふ。これは確かに子どもどころか大人も逃げてしまう。良いと思います。

グラフィックはどことなくプレステを思い出させる感じ? アイテム所持数も増えて、白の双子~から前進した感じが見受けられて楽しかったです。

 

 

 

『Monotone Clover -いつか咲く、機械の花-』(ノベル)

 

リメイク版は無し、のはず。とても良い話だしグラフィックもキュートだしコミカルな掛け合いも楽しいので、是非また公開されて欲しいですねぇ。終盤の熱い展開もカッコイイしロマンが詰まってて大好きです。

ウディタ製ノベルにつきものの、オートモード・セーブ機能無しな不便さが無いと言えば嘘になります。が、周回プレイ時はスキップ可だったり攻略が同梱されていたりする点は親切でした。

 

  • 表ルート:「じゃあマスターは人間じゃない」の論法が大好き。
  • 先生ルート:ある意味クロエバッドルートかも……と思いきや安心の展開。クロエを無かったことにするのではなく、表に色々追加されていく感じが仲良しで素敵ですよね。
  • 裏ルート:ここにきて風呂敷が広がった!? ハルトマンと言えば色々ありますが、「不屈の男」が一番近いのかなー。EDのサニーが歌ってる演出良かったです。

 

再生モードで一枚絵が見れてびっくりしました。嬉しいおまけお見逃しなく。やっぱりこのイグノラントやこの作品みたいな絵柄が好きです。

さりげなく他作品ネタもあって笑いました。いいよね。

 

 

 

『ドラゴンクレイドル』(RPG

 

現在公開中のリメイク後は『ひとりぼっちの竜の神話』にて。

リメイクによるパワーアップを一番感じたのは本作な気がします。よくぞここまで! すごいなあ、正統派に進化していって良作をどんどんブラッシュアップしていくタイプの作者様は、本当プレイしていて応援したくなりますね。

 

基本、二人のノリは安定。やっぱりリメイク後はどれも舞台設定に切り込んでいってストーリーを広げている感じがしますね。神の座を奪うというのはそれだけでロマンがあるので、流れはドラクレのほうが好きですが、お話の締め方はやっぱりどちらも光ります。幕の閉じ方がやっぱり上手いんだよなあ。

特にこの作品は第七の世界が終わりいずれかの世界で再び原初の神の座に竜が……という考え方も、まあ、無理やりであちこち矛盾するにしてもできなくはない気がして、妄想が捗りました。

お話の受け方の幅が広がる、プレイできてよかった作品です。

 

余談ですが、「この戦いが終わったら~」「誰と?」のくだりが地味にエグくて息を呑みました。時々出てくる容赦の無さも好きです。

 

 

 

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