うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「黄昏の冒険記」感想

「運命が私を拒絶しようと、審判の刻まで命の砂を紡がなければならない」

具体的にはベリータルトを頂きたい前置き。

 

 

えー、今回はPIKA's GAMEさんところのフリーゲーム黄昏の冒険記」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ジャンルはVIPRPG、主役は凸シェイドⅢ。

ですがびっくりするほどVIPのノリはなく、もしもワールドでもありません。むしろ9.8割がオリジナル設定と言える一本道のRPGです。

 

 

普段は良かった点から入っていくんですが、本作においては合わなかった点から行きます。ここを覚悟のうえでプレイするのとそうでないのとはかなり差が出ると思うので!

 

というわけで合わなかった点から。

批判多めになるのでご容赦ください。

こういうシーンがあるよ、くらいのネタバレもします。

 

 

偏ったスキルと振り直し不可

 

私はステータス振り分け系のゲームだと真っ先に武器(物理攻撃)を上げる性質なんですが、それが本作では相性激悪でした!

スキルポイントもかなりコストが重く、振り直し可にして欲しかったところ。せめて振り分けた結果、どの程度性能が挙がるか、どういった技を覚えられるか、といったところは開示して欲しかったです。

 

以下は具体的な私怨なので読み飛ばしどうぞ。

本作は圧倒的に魔法ダメージが強力です。

例えばボスのHPが6000で、こちらの各スキルがMAXの場合。

通常攻撃 → 100ダメージ  魔法攻撃 → 400ダメージ

くらいの差はあります。

魔法攻撃も相性差によってはノーダメージなので三種の魔法を均等に育てていく必要は出てきますが……。通常攻撃は装備欄を三つ使ってそれでも運次第のクリティカルで削っていかないといけないのを考えると、魔法の方が圧倒的に安定します。

単純な話詰むんですよね。回復が追いつかないわ、状態異常にかかったら負け確だわ。そのうえ終盤ボスには珠の効果を全消しする技を連発されるので、クリティカル↑系の装備は軒並み無となります。ムリゲー!

案の定詰んだので数時間かけてスキルポイント集めしました。はぁ辛かった。

 

 

 

マップの行き来がしづらい・アイテムが集めづらい

 

これは私がアイテムを見逃がしている可能性も大いにあります。が、それでも言いたい、テレポートオーブの枠が少ない!

本作は街と街の行き来に敵の出るマップを3つほど通り抜ける(全逃げしても5分はかかる)くらいの距離感があるんですよね。それどころかダンジョンの奥の奥の奥地でボスがいるようなところに居を構えている村も。

引き返す必要がないなら問題ないんですが、ここでアイテム調達の面倒さが問題になります。

本作はお金の概念がないので、一日一回ラインナップの変わる交換屋を使ったり、一日一回無料でアイテムをくれるお店に通ったりするのが基本です。その街限定のアイテムもそこそこあります。つまり、宿屋に止まったら色んな村を回るのが効率的。一方で行き来にはかなり時間がかかる……相性が悪いんですよねぇ。

ついでに言うと、全体的な演出も含めテンポはかなり悪いです。宿屋、ワープ、回想シーン、船移動など何かにつけウェイトを挟むので。

 

 

回復手段がダンジョン内で尽きると詰み

 

上記のとおり、アイテム取得に手間が多いのにも関わらず、ダンジョンの仕様はかなり鬼畜です。

まず、ボス前回復は原則一切ありません。ボス前ワープもありません。ダンジョンを踏破したボロボロの姿でボスに突入です。テレポートも封じてあるので回復手段がダンジョン内で尽きると詰みます。

そしてフィールド上に物が落ちていることもあるのですが、マップの端は基本的に画面からはみ出ているので、一目でキラキラマークが見えず、行き止まりとわかっている道を進む必要も出てきます。いや必要というほど重いものではないんですが、用意されているものを無視する構造はそもそもズレてるかなとも思うので。

そのほか具体例として。引き返し不可(警告なし)で回復ポイント皆無のダンジョンにMP吸収系の雑魚敵がわんさか出てくるとか。正規ルートを通らないと引き返すことになる分かれ道が4つあって道は総当たりとか。見通しの悪い森マップが三連続とか。

私のように迷子になりがちなプレイヤーさんは覚悟を決めましょう。

 

 

キャラクター付けが無難

 

ここは良点というべき箇所かもしれませんが、私個人としては合わなかった点になります。各キャラの性格やセリフ回しがあっさり味です。

謎めく教団はいても電波的な台詞を聴くことは少なく、街の人はだいたい親切。血が出るシーンやシリアスシーンはあれど、どうにも台本的。予想の範囲に収まるテンプレ台詞が多かったので、長編の感動・ドラマティックな展開・胸を打つキャラクター、みたいな要素は塵とも無かったです。

ただ、動機や行動原理はきちんと明示されているんですよね。なので読みやすいし、王道ではあります。わかりやすいお話を楽しみたい、王道は好きだけど熱血は苦手、ストーリーでそんなにグイグイ迫ってこられたくない、という方には合うのかも。

 

 

 

ぐだぐだ書きましたがまとめると、

・マップが無作為に広い

・戦闘バランスが極端

・全体的にテンポが悪い

・キャラがあっさり

という感じです。

 

 

 

さて暗い話を終えたので本題行きましょう!

本作の好きなところ! いえーいパチパチ!

いやこれがあったからこそエンディングまで行けたんですよ。

というわけで良かった点について。

 

 

 

中二心をくすぐるワンシーン

 

祭りサイトにあるとおり、「厨二的シナリオ」です。

主人公の属性は闇でもなく黒でもなく陰!

記憶喪失でシニカルな喋り方をする女主人公!

精神世界でもう一人の私と対話する展開!

選ばれし者が手に出来る槍を床に突き刺すと道が開け!

鏡に光を当てて紋様にかざせば扉が開く!

奥義で翼生やしたり極大ビーム出したり吸収攻撃したり!

こういうの皆好きでしょ、という概念やワンシーンをぎゅっと詰めてくれているのが本作です。私も好き。わかる。

 

厨二と言っても、エンジェルフェザーが生えて鎖と薔薇がじゃらじゃらするタイプとか、組織の陰謀に立ち向かうべく秘密警察コードネームαことチーム最強の俺が名乗りを上げるタイプとか、暗黒破壊神が≪審判の右手≫を振りかざすタイプとかがあると思うんですが、本作はどれともつかずどれも拾っていく感じでした。

要はひたすらにカッコイイ演出が詰まってる感じ。

ジャンプでダークヒーロー系の読み切り漫画やってる感じ。

反社会的っていうわけでもなく、基本的には善意で世界が回っている感じなので、厨二は好きだけどヒャッハー系はちょっと……という方にも安心して見てもらえる展開だと思います。

 

好きな演出はほんといっぱいいっぱいあるんですが、中でも一番はワープ時の演出! ウェイトが長いって叩いておいて何なんですが、あのモーション自体はすごい好きなんですよー! 着地時に波紋が浮かんで、爪先から優雅に舞い降りるような、あれ。凸シェイドⅢは長髪だからなお映えるんですよね。イラスト化で一枚絵でも見たいです。絶対絵になる。

 

 

 

細かい変化にこだわるマップ

 

さりげなーく感動したポイント。

雨害を受けた村の、川が増水して道のマップチップが狭くなってるところ!

いやこれ言葉だとふーんで終わるんですけど目で見ると「おお!」って思うんですよ! ちゃんと展開がマップに反映してる……危機感が目で見てわかる……! こういう細やかな仕事人ぶりはほんと好きでした。

ゲームとしてのマップ作りは前述の通り合わないんですが、演出としてのマップ作りはレベルが高いです。目立った自作チップで覇権を取るのではなく、細やかな良さが積み重なっていいなあと思える感じ。

 

前述の他にも、例えばラスボス前の道は本当美しかったですねぇ……。禍々しさと幻想的な雰囲気が見事に調和してて、何もない行き止まりなのに景観目当てでついスクショ撮っちゃいました。

 

 

 

オリジナル設定の中でのシェイドⅢ

 

世界観はもしもワールドではありませんし、主人公は名前変更可能で、よくあるはい設凸シェイドⅢとも違った性格をしています。具現化キャラなどの代表キャラも全くと言って良いほど出てきません。

それでも、シェイドⅢを使ったところが上手いなあと思うんですよね。

プレイしていただいた方なら理解してもらえるかなと期待してるんですけども。きちんと、シェイドⅢである理由というか、彼女が選ばれた訳にピンとくるところが好きでした。

それを象徴するように、戦闘属性が闇・光・陰なところも独特。街にいるモブキャラの属性説明文も好きなんですよね。属性相性をしっかりこう、神話っぽく表現してくれるのすごく好き。

 

 

 

ドットがよく動く戦闘アニメ

 

バトル自体はコマンド選択型(デフォ戦)なんですが、キャラクターのドット絵が常に戦闘画面に表示されています。サイドビューってやつだ。で、どの行動をしてもとにかく主人公がバリバリ動いてくれるんですよ! 見ててすごく楽しかったですし、なにせ厨二心を大いに“わかって”くれてる作者様なので、どの演出もカッコよかったです。

武器が槍なのもポイント高いんですよね! 探そうと思ったら案外見当たらない気がします、槍使いの女の子。FEとかSRPGではよく見るんですけども。

魔法も詠唱やら髑髏やら闇を想起させるオーラやら、とにかく色々と“疼く”グラフィックでした。こういうのほんと好き。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

合わなかったところもあるけど、心から拍手喝采したいレベルで秀逸なワンシーンに出会える、このためにプレイしてきたんだと満足できるRPGでした。

フリーゲーム「蝶」感想

「可憐など手の内に握り込んではすぐ折れる」

力を込めずにじぃっと見守ってあげる前置き。

 

 

えー、今回はSinilintuさんところのフリーゲーム」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

1周は数分、余韻は数日、周回必須の乙女向けノベルゲー。要素だけ取ればヤンデレともいえますが、個人的にズシリと重く熱っぽい情念の話と呼びたい感じです。

 

というわけで良かった点から。

 

 

レトロ和風の世界観

 

ガタンゴトンと揺れる列車が作中の舞台となり、顔を合わせる彼も漆黒の外套に学生帽姿で、全体的に古風な雰囲気です。起動画面からして椿に蝶、花札を思わせる彩度の幕のような模様など、ぱっと見た瞬間に時代背景が伝わってきます。

そして何より、作中画面の構成ですよ! 木枠の乗車席、窓枠の外に見える星空、そして漆黒の出で立ちの美青年……。絵になるとはまさにこのこと。

 

グラフィック面のみならず、お話の端々に感じられる時代背景も魅力的です。学業が当然とはまだされていない時代、貧困にあえぐ家族や、妻の価値の低さなど。そこがガッツリメインというわけではないので、あくまで触る程度ではありますが、少しの描写で境遇がしっかりと伝わってくる語り口でした。

回想シーンは基本的に黒背景ですが、地の文のじっとりとした描写が美しく、イメージ補強は十分にできました。一面の彼岸花が目の前に広がって見えるような語り口です。

 

 

 

ミステリアスで冷静な相席相手

 

青年こと征四郎さんの見た目がまたドストライクなんですよねえ!

闇というよりは夜色と表現したくなる、蠱惑的な黒髪赤目。美しい切れ長の瞳に、どこか人を寄せ付けない雰囲気。そのわり、優しく折り目正しい敬語口調で、何度も「お嬢さん」と呼び掛けてくれるところ。もうね、あの、惚れます。

 

しかも、途中で一人称変化があるんですよ。こういうさりげない、素の自分がにじみ出てしまうような演出、大好きなんです。大好きなんです……!

 

本作が周回必須となっているところも併せて語りたいですね。

お話を進めれば進めるほど征四郎さんの内情についても語られていき、一時相席しただったはずのあっさりとした関係も、どんどん変わっていきます。

列車内という状況は変わらず、彼の表情も口調も淡々としたもの。だからこそ最後、エンドのルートに入ってからの変化がものすごく刺さるんですよねえ……。詳しくは追記で語りますが、もう、実に萌えました。

 

 

 

合わなかった点

 

最後に少しだけ合わなかった、もとい惜しかった点。

 

・終盤の独白

 

物語終盤、熱っぽく物語に入れ込んで展開が加速していったからこそ、終盤の独白はちょっと減らしても良いかもなーなんて。

足を止めて振り返るための説得力も作りたかったのかなと考えましたが、先行きがない状況なのは回想でしっかり感じられたので、十分かなと。

台詞はステキなんですよ、最高! 

あの直前の征四郎さんの言葉とかゾクゾクしました……! 大好き。

 

 

・初回のシステム面

 

セーブロード不可で、お話とシステムが絡んでいるあの構成自体はとても好きです。ただ、Live Maker様はデフォの表示速度がかなりゆっくりなので、文字送りスピードと文字表示速度は調整させてほしかったですね……!

いえ、メニューの一部を封印するのはたぶん技術的に大変なんだろうなという想像はつきます。なので、事前に知っておくとそういうものだと思えるかな、程度の気持ちで書き残しました。

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

病みと孤独が感じられるストーリー、レトロな世界観、じっとりと重い感情などが濃厚に感じられる作品でした。とにかくオススメ。今まで出会ってきたフリゲキャラの中で十本指に入るくらいには好きな攻略対象でした。

 

追記ではネタバレ全開の感想など。

 

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フリーゲーム「青のアウェアネス」感想

フリーゲーム「リレガトゥーラ」感想

フリーゲーム「Retro Reflection」感想 

 

 

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フリーゲーム「三色有形」感想

「凛と背を正し、しかつめらしい顔をして、説法を述べ、」
魂の揺らぎは何一つ起こらないということにしていた前置き。


えー、今回は7tera.さんところのフリーゲーム三色有形」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

選択肢無しの一本道ノベル。死後の世界で過ごす、和風でしっとりとした雰囲気のお話です。

というわけで良かった点など。

 

雰囲気を感じさせる縦書きノベル

 

死後の世界、八重桜、閻魔様など、どことなく和風の死生観で物語は構成されています。そこは読み始めてまず綴られる縦書き形式からも伝わることでしょう。
墨で描くようなフォントも特徴的で、白が基調の画面によく映えます。どうしてもゴシック体に慣れているので初めは少し違和感がありましたが、数ページも読めばすぐ慣れました。訥々と語るような、物思いを少しずつ形にしていくような文体によく合うグラフィックでした。

 

 

静かに立ち込める霧の表現

 

画面は常にホワイトアウトのような演出が成され、まさに描写されるとおりの霧の集落を感じさせます。立ち絵が画面効果より奥に表示されているのもとても上手い演出。記憶がない主人公の境遇や、ここで何を為せばよいのかという先の見通しなど、ストーリーとも絡んで世界観を感じれる演出でした。
代理人の見た目が好みなのでしっかり拝みたい気持ちがないと言えば嘘になりますが、世界観を彩るという意味では断然現行の形が好きです。

 

 

死んでも飢えは魂が感じるもの

 

死後の世界には閻魔様がいて、罪を裁かれて、地獄で浄化して輪廻転生が成される――――よくよく知られている死生観をベースにしつつ、独自設定も加えて、物語はゆるやかに進行していきます。
死んでからもご飯は食べるし、人の営みは続けられるこの感じ。この作品の、魂が潤う、っていう考え方がものすごく大好きなんですよね。死後はああいう世界に行きたいかも、とぼんやり思うなど。

そして興味深いのが、こういった舞台を通して目的が記憶を探ることから徐々に別のものへとシフトしていく点です。語りたいけどネタバレになっちゃうかな、と思ったので以降は追記に格納。

 

 

 

その気持ちを定めない語り口

 

八重自身が気づいていない気持ちがふっと表面に出てくるあの瞬間、あのシーンがとても素敵でした。謎とか意味深な台詞とか、そういう形ではなく積み重ねていく描写が伏線になってるんですよ。あれ本当綺麗だったなあ!
よくよく文章を思い返すと、八重って彼のことをよく見てるんですよね。人の癖なんてものはきっとよほど見ていないと気づけないし、服の着方、姿勢、あらゆる描写がまるで八重の視線のよう。それらが全てあの結論にたどり着いた瞬間、すごく納得しました。

 

そして、私の記憶が正しければ、安易に一語で規定できそうなあれらの視線と感情を、絶対に言い切らずに終わるんですよね。
例えば、泣いている人の気持ちを「彼は悲しい」と表現するのはとても容易い。でも、それを絶対にしない。それでいてくどくなくて、静かに、そっとお互いが察して繋ぎ合えるだけの要素は見せてくれるという――――もう、感嘆です。描写の仕方がとても美しい。
地獄の責め苦を味わうシーンとかも、いつもの私の鬱萌え的な意味ではなく、解脱と情動(矛盾してるけどこう書きたい)を感じさせてくれて本当に輝くシーンでした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

静かな気持ちで読み進められ、それでも気持ちに温かく言葉にならない何かが込み上げる、良質なノベルでした。


ネタバレ込みの語りは追記にて。

 

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フリーゲーム「雪のガラドリエル」感想

「夜も寒さも怖くない、だって君によく似てる」

朝の眩しさに目を細める前置き。

 

 

えー、今回はSpace not farさんところのフリーゲーム雪のガラドリエル」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

女の子二人で星を見に行く、百合っと短編RPG。ラストで選択肢はありますがエンド分岐はなく一本道、クリアまで1時間くらい。

別名のシェアウェア「泥のガラドリエル」という作品もありますが、本作だけでもすんなりと進められます。

 

というわけで良かった点など。

 

 

前後隊列がくるくる入れ替わるオリジナルバトル

 

特徴はやっぱり、隊列を利用したバトルシステム!

前後で使えるスキルが変わってくるので、どう立ち回らせるか常に悩むこの感じが楽しかったです。敵は常に前列を狙ってくるので、HPが減ってきたら隊列を入れ替えて庇ったり、あるいは強制入れ替えに右往左往したり。移動しながら使えるスキルがあるのも、戦略の幅が広がって悩みがいがありました。

 

リエルは前列だと物理、後列だと魔法の火力・回復。

ラナは前列だと盾、後列だと物理。

習得できるスキルを見るに、こんな感じの振り分けになってるのかな? 

ラナの隊列移動技が楽しくて、基本魔法を放ちながらくるくる入れ替わって戦ってました。セットできる行動が三つだけなのと、連続で同じ行動はできないところも良い制限。

パーティメンバーが二人で固定だからこそできる、本作ならではのシステムでした。

 

 

 

雑魚も強敵、ただし逃走も確実な難易度

 

この作者様の作品だけあって、難易度はけっこう高め。無策のパンチ連打だと雑魚敵にもころっと全滅させられます。

 

ただありがたいことに、本作で全滅のデメリットはありません。挙げるならゲーム終了時にプレイ履歴となるレコードが出力されるので、そこに記載されるくらいかな。

ゲームオーバーすらなく、むしろ強化アイテムまでもらえたうえでリトライできるというとても優しい仕様です。中には負けた時にアドバイス的な会話が発生することも。この辺りの設計から、「自分に合う難易度でプレイして欲しい」というようなメッセージ性も感じました。

戦闘後に全回復するので、常に全力で戦えるのも楽しい!

 

というわけで、この作者様のゲームに慣れている方であればむしろ難易度は易しいと感じる作品かもしれません。血沸き肉躍る難易度の作品多いですからねぇ。

本作はプレイヤーにとってちょうど良いバランスを追及されていると思います。

 

 

 

星と雪がおしまいを締めくくるストーリー

 

さて、ストーリー面はとてもシンプル。

公式の説明文も端的で、力強く、全てを表してくれています。大好きなので引用してしまいますが……。

「夜が明ける前に。雪が溶ける前に!」

わくわくしません? 

してくれる人はきっと、合います。

本当にこの通りのゲームです。

そんなわけで小難しい背景事情は後回し、仲良し二人で星を見に行きましょう。

 

基本的に明るくテンポの良い掛け合いで進んでいくんですが、最後の最後にはっとさせられるところも大好きでした。色々な設定がパチリパチリと組み合わさって、最後の最後でようやく意味がわかり、タイトル画面で裏付けられるこの流れ。最高です。

 

 

 

明るくメタく、時に切なく

 

直接的にどうこうがあるわけではないんですが、二人できゃっきゃする感じの会話が多いので百合的に萌えた作品でした。

二人の関係性も微笑ましいんですよね。明るく元気いっぱいなリエルと、むすっとしながらもなんだかんだで付き合ってくれるラナ。突き放すような言い回しや、グイグイ引っ張る描写にも、二人が気の置けない関係であることを感じさせてくれてほのぼのします。

 

面白いのはやっぱりメニュー画面ですよね!

メニュー画面を開くたびにさりげなく二人が会話してくれるんですよー! これがまたかわいいの笑えるの。パターンもかなり多く、アドバイスからメタな宣伝、時事ネタまで多岐にわたります。

というか字数も少ない一言コメントでここまで掛け合いできるのすごすぎません? 震えます。ベタベタではなくじゃれ合いっぽい感じなのがまた和みました。

さりげなく何かが察せられる会話を混ぜ込んであるのも上手いなー、なんて。

 

 

 

 

最後に一点、合わなかったところ

会話シーンでのカメラ移動の仕方。話すキャラの方へ視点が寄るので微妙に酔いがちでした。まあそんな長くもないので、あくまで気になった程度のポイントです。

 

 

 

と、こんな感じで。

ほのぼの切ない展開、褐色三つ編みっ子と仏頂面メイドの百合、テンポのよいオリジナルバトル、短編一本道RPGをお求めの方にオススメです。

 

追記にはネタバレありの感想や、自分のプレイレコードなど。

 

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フリーゲーム「SElementAct」感想

「崇拝する者に崇拝される者が負けるはずがないのであれば」

しかしながら信仰を捨てれば茫漠とした世界が待っている前置き。

 

 

えー、今回は雨夜曲切さんところのフリーゲームSElementAct」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ストーリーは最低限、カードのコンボは無限大なカードゲー。プレイヤーがいるかはともかくとしてオンライン対戦要素もあるので、TCGとしても楽しめるかも。

 

 

さっそく良かった点など。

 

手持ちのカードで十分強く、収集するとより強いデッキ

 

ゲーム開始時点ですでにデッキは用意されており、1戦取得できるカードも多め。集めやすく入れ替えやすいゲームです。初期デッキでもある程度立ち回れる程度には強いカードが揃っているため、初めから敵も味方も手加減なしの全力バトルが楽しめます。話が早いって素敵だよね。

カードゲーの序盤って、ルールを把握するまではひたすらフルボッコされまくる印象が強いんですが……。本作は初期デッキの優秀さや敵AIの丁度良さのおかげで、勝つ喜びを味わいつつ進められました。

 

作中の説明が簡素なこともあって、難易度や敷居は少し高いかと思うのですが、そのぶんカードゲー好きにはガッツリ楽しめる仕様になっているかと思います。

あ、でも私みたいに軽くヴァンガ齧った程度のライト層でも楽しく遊べたのでご安心。公式サイトや同梱ヘルプはかなり丁寧に説明があるので、取扱説明書を読んでから挑みたい人は是非そちらもどうぞ。

 

 

 

予測不可能のスタートから生まれる予測可能のバトル

 

デッキからランダムで5枚選出され、そこから手札を自分で3枚選ぶ。このシステムがまた熱いんですよね。上手いコンボを考え付いても、ランダム選出で選ばれるかどうかも考慮する必要があるという。

自分はシナジーを考えるのが苦手なので、そこまでガチガチに詰めたデッキは作れなかったんですが、それでもラスダン周りで勝率八割くらいまでは上り詰められました。好きなコンボとかは追記にて。

 

対戦相手の手札もこちらの手札も全て明かされた状態でバトルがスタートするので、場にカードを出しさえすれば、以降の動きは全てが計算可能です。もちろん、対戦相手の動き全ては開示されていませんが、読もうと思えば所詮は3パターン。きっちり計算して封殺したいタイプの方はものすごく気持ち良いバトルだと思います。

私はけっこう感覚やノリでデュエルしてしまうタイプなんですが、それでもなんとなーく起こることの予想がつくところが興味深かったです。

 

スキルの効果や属性相性を自動計算して、計算過程を画面上に筆記してくれる点もすごくありがたい。反省点やバッドシナジーの考察がしやすいんですよねえ。TCGは理路整然と動くもの、ということを再認識しました。

カード説明を相手自分問わずいつでもチェックできるところもポイントですね! リアルバトルだとなかなか何度もカード見せてとは言いづらいので……こういうところは電子ゲーならではの良さだと思います。

 

 

 

アイテムゴリ押しも許される難易度

 

すごろく式にダンジョンを進んで、歩数などの条件を満たしてボスと戦う、というのがおおまかな流れ。私も初めは道中敵でも律義に戦ったり、歩数が多すぎでバーストしたりしていたんですが、なかなか進めない理由がアイテム縛りしていたことだと数時間して気づきました。遅いな?

実際、アイテムをしっかり使いながら進むとすごくさくさくプレイになるんですよ。だれそうな部分をカットする術も用意しつつ、使い放題にはならないようコストはきっちり制限してあるところが上手いと感じました。

バトルが苦手な人用に、バフかけまくりの状態でバトルスタートできるアイテムなども揃っています。「詰んだからやーめた」にならないよう、最後まで手を引いてくれる感じが素敵でした。

 

 

 

フレーバーなクトゥルフ要素

 

カード画像からしてその通り、クトゥルフ神話ネタ満載のゲームでもあります。インスマスのカードと漁村でバトルするなど、元ネタをしっかり踏襲しているのが嬉しいところ。カードの属性や能力にも知っているとにやっとできる要素があって、クトゥルフ齧ってる自分としては大変楽しめました。

前述の通りストーリーはかなり最低限に絞ってあるので、できるのはあくまでフレーバーとしての楽しみ方。あっさりした後味で、ラスボス戦後も「これで終わり?」という疑念は拭えない感じです。が、それでもラスボス戦前のイベントにはおっと思わされたことは確か。原作リスペクトも感じましたし、導入イベントと線で繋がるところも面白かったです。

 

 

 

合わなかった点

 

本作のシステムやグラフィックはかなり凝っており、シンプルな見せ方で感覚的に理解できるような形に整えられています。ただその中でもちょっとわかりづらかった点として、

 

・探索中の条件判断がしづらい

 

まず、3/3といった表示について。分母の数ぴったりでも条件としてはアウトということが理解しづらく、説明で理解してしてもうっかりオーバーしてしまうことが多かったです。4/3ならオーバーしているのでアウト、といった形の方が私は馴染んだかなー、なんて。

あと、他要素は基本的に「左or右でクリック」「YESorNO」といった形の二択でテンポよく進められるのに対して、ダンジョンを進む時の条件だけ「赤or緑or青」になるのも混乱しました。作業的に進んでいると頭回らなくなるという自分のスペック問題かもしれませんがっ……!

エスト分類の〇の色からしても、色がついている=意味がある、という認識のようなので、ボス条件に関わりない青は白色にして「赤or緑」の二択にしてあるが理解しやすかったかなと思います。

 

でも、オリジナルルールのカードゲーを組んだうえで、わかりづらいなと思う点がこの一か所だけというのはすごくすごくすごいことなので!

かなり丁寧に組まれている作品だというのは誤解なきよう。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

まとめると、運要素も含めた上で、丁寧に計算され尽くしているTCG。着実に勝ち筋を積んでいったり、予想通りに事が動く気持ち良さを感じたり――対戦相手を知的に封殺したい人向けです。

 

追記では自デッキについてちょこっと。

 

 

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フリーゲーム「青のアウェアネス」感想

「上書き保存で消えてしまう想いに価値を残せるか」

あの時は輝いていたとそれでも言いたい前置き。

 

 

えー、今回はSinilintuさんところのフリーゲーム青のアウェアネス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

プレイ時間数時間の、乙女向けノベル。お姫様と愛のある政略結婚と不思議な魔法。年齢制限あり、ダークな設定あり、でもキャラの前向きな面を見られるシーンが多いので全体的には明るく王道な雰囲気です。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

瞳に宇宙が潜む美しいグラフィック

 

この作者様の作品はいくつかプレイさせて頂いているのですが、かなり独特の画風をお持ちだなあと毎回感じます。お絵かき詳しくないから具体的に述べられないけれども、こう、きらびやか? 星が似合う感じ。

特に今作は、薔薇と異国文化、ファンタジー風の舞台なので、キラキラした絵柄がいっそう似合うなあと。単純にローブや重ね着でごてごてした服装だけじゃなくて、ロクスみたいな中華?アジアン?の服装も交えてあるのがいいんですよねぇ。どこか架空の異国って雰囲気を出してあるのが素敵でした。

 

あと、好きなのが瞳の描き方! ロクスは作中の描写とイラストがぴったりで、説得力が凄まじいですし。エミリオ様は瞳の中で星が瞬いてるみたいな、ふっと目を離せなくなる美しさがあって本当好きなんですよ~!

なお、ヒロインも顔グラこそありませんが、スチルで外見が見られます。THEお姫様って感じのふわりんくるりんで美麗な見た目なので、そちらにも思わずほうっと見惚れてしまいました。

 

 

各ルートが一つの真相へ結びつくストーリー

 

勿論ストーリー面も大注目。

一言でいうとね、構成がかなり興味深い作品です。

私は乙女ゲーというと各ルートが個別に切り離されている、攻略対象と一対一で向き合う構図が多い印象だったんですが、本作は全く異なる構成がされていてとても新鮮でした。

 

なんというのかなあ、お目当てキャラのエンドが他キャラの真相の伏線になっているんですよ。エンドを見れば見るほど数珠つなぎで謎が増えていって、全クリして見事、パチリと一つの絵を作り上げてくれる感じ! 各キャラと向き合って想いを深める王道の流れを踏まえつつ、その先の対局を見せてくれる楽しさがありました。バッドエンドもきちんと本筋に向けて積み重なってくれる感じ。

 

こういう、全部のルートひっくるめて一つの作品って強く感じられるお話、大好きです。

 

 

 

独占欲と仄暗い展開にぐっとくるエンド

 

ちょっと堅苦しい話をしてしまったので、俗に萌えについても触れますね。

あのね、萌えました。ほとんどすべてのキャラクターにこう、ヤンデレ風の、愛が重いエンドが用意されてるんですよ。ほんと、ほんっと嬉しくて!! 追記で語ります!

 

公式には「大好物だ! と仰る方にはご満足頂けるようながっつりとした描写ではありません」という謙遜があるんですが、ヤンデレ大好き鬱展開大好きの私にとっては大好物な作品でした。なので同好の方にも見逃がさずプレイしてほしい作品だなあと思います。

……こういうプッシュをしてしまうと、作者様の予防線をびりびり剥がしてしまっている気がして申し訳なくもあるんですが…………。それでも主張したい、だって萌えたから! 「私は萌えました!」なプレイヤーの声だと思って受け取っていただけると幸い。

 

 

 

魔法と魔術をめぐる深い世界設定

 

上手いなーと思うのは世界観の見せ方です。

説明をだらだらーっと連ねるんじゃなくて、世間話のついでに差し挟まれたり、講義の形で進められたりするので、すんなりと頭に入ってくるんですよね。

それにメインはあくまでキャラの掛け合いという印象もあります。説明はあくまで設定に深みを与えるためのもの、みたいな。色々と細かい部分がある、または付けようと思えば肉付けがいくらでもできるんだろうけど、キャラに関係しないところはさくっと区切ってくれてる感じがしました。

 

それでいてまた、設定がおいしいんですよねこれが!

具体的に書くとネタバレになるのでまた追記に入れるんですけども、すごく、好みの設定でした。

 

 

 

善の心とおちゃめでおてんばな一面を見せてくれるヒロイン

 

主人公もといヒロインちゃんもすごく好感が持てました。強気のお姫様ってキャラクターを好感持てるキャラとして描くのってすごくすごく難しいと思っているので、それができる作者様は無条件で信頼してしまいます。まったく別の作者様の作品を引き合いに出してしまうんですが、『ヒューミニアの花嫁』とか。人間像を描くのが上手いんだろうなあっていう信頼。

 

閑話休題

本作のヒロインの何がすごいって、「かわいくて」「おてんばで」「良い子」の三点が矛盾せずに満たしてあるところなんですよね。なんかね、見ててすっごく応援したくなる!

ちょこっと偉そうなこと言う時ですらも、すごくかわいいんですよ。愛されて育ったんだろうなあって思わせてくれるし、周りがデレデレになっちゃう気持ちがわかる。

彼女がキツイこと言う時だって、お互いが茶化し合っている、甘えたじゃれ合いの延長線上っていうのが伝わってくるので、微笑ましく見守れるんです。いいですよねえ……。

 

あとね、本音で攻略対象たちとぶつかってくれるんです。やっぱり乙女ゲーなので複数選択肢があるんですが、どんな選択肢を選んでも、彼女が考えた彼女なりの理論をきちんと見せてくれる。すごく相手との向き合い方が誠実で、根が良い子っていうのがすごく伝わってくるんです。

弱っちゃうときや悩んじゃうときや、…………なことになっちゃう時もあるけれど、決してねじ曲がらずに真っ直ぐ強く咲こうとする姿を見せてくれる、素敵な主人公でした。大好きです。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

攻略順は出会った順に、エミリオ→ロクス→それ以降を推したいかなあ。公式ブログに詳細な攻略もあるので詰まった方は是非そちらをご参照ください。

 

ヤンデレ、独占欲や執着、仄暗ファンタジー設定、パワフルでキュートなヒロインなどにピンとくる方向けかなと思います。

追記ではネタバレ込みの各キャラ感想。 

 

 

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フリーゲーム「トロイ=メライ」感想

「私のためを祈ってくれるなら、君のために応えよう」

だから君を捨ててみせる前置き。

 

 

えー、今回はPwamineさんところのフリーゲームトロイ=メライ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ツクール製探索ホラゲー、プレイ時間数時間、短い距離の即死鬼ごっこ有り。舞台としては軽くファンタジー寄り、夢の世界をふらふらするゲー、でもきちんとストーリーは明言される感じ。

なお、私がプレイしたのはリメイク版のver1.4です。

 

というわけで良かった点など。

 

 

1周目は新聞、2周目は小説なプレイ感

 

周回ではなくフラグで分岐するタイプなので、攻略さえ見ればおそらく初見からハッピーエンドにも行けはします。が、お勧めするプレイ順やおそらく想定されている道のりを鑑みて、1周目2周目という書き方をさせて頂きますね。

 

1周目だけだと正直、輪郭だけをなぞって終わるプレイ感になります。本番が2周目で、あらゆる真相がわかるようになるのもそっちなので、当たり前ではあるんですが……。

興味深いなと思うのは、1周目だけでもきちんとお話として成り立っているところ。

“足りない”感じはあったとしても、よくある真実を隠蔽するタイプのホラゲと違って、“一見あらすじはわかる”。ここ、すごいな~と思うんですよね。1周目で辿り着くであろうエンドの展開も併せて、すごく深さを感じます。この辺詳しくは追記でも語りますが。

事実だけを先に見れるのが1周目。感情移入がしっかりできて本当の意味で理解できるのが2周目。そんな感じの印象でした。

 

 

 

不幸が折り重なっていく、遠くの世界の話

 

ざっくりと言えば、3つのエピソードを見てから主人公の境遇に切り込んでいく構成。エピソードに出てくるキャラクターはそれこそ他人であり、マチちゃんが無口主人公寄りなのもあって、どことなくお話は遠くに感じられる印象でした。

誤解無きよう、恐怖がないわけではありません。むしろ淡々としている分、圧倒的な画力と共に、どことなく不安定になる怖さがあったように思います。そもそもエピソード自体が暗く、エンドも鬱展開ですしね。

なんと書けばいいのかな……。それこそ見世物みたいな感じ? プレイヤーは一緒になって慄くのではなく、既に定まっている悲壮な決意を見届ける立ち位置に居るみたいな……。ともあれ、演出としては心が不安定になる一方で、落ち着く距離感でもありました。

 

 

 

まさにアートなグラフィック

 

印象的なのは全体的な色使い。錆びた鉄格子とか、乾きかけの血液とか、黄ばんだ羊皮紙とか、そんな感じの雰囲気が伝わってくるマップが多めです。彩度低めって言ったらいいのかなあ。

前述の通り、お話自体がこちらに迫ってくるものではなく覗き見るような構造になっているので、物静かな恐怖によく合うマップだったなあと思います。調度品や外装のきちんとした質感と、子どものラクガキのような雑多さが両立してるんですよね。

マップとしてはやっぱりキルトと話せるあのお部屋が好き。

ゲーム始めた頃はかなり遅めの歩行スピードに焦れることも多かったのですが、マップをじっくり見れるという意味では良かったのかもしれません。

 

メニュー画面もまずぱっと絵で見せて伝えてくる感じ。エピソードの理解度が図で測れるシステムすごく良かったですね~。埋まっていくのが単純に嬉しいですし、これまたどことない不安を掻き立てられますし。絵柄が硬派?しっかり人物してる?ところも、雰囲気が出てて素敵でした。

 

 

 

惜しい点

 

個人的に合わなかった点も挙げますね。主にゲームオーバー関係。

 

・人名が多い

例えば星座の部屋の彼らや、著者の弟など、出番少なめのキャラはいっそノーネームのほうが読みやすかったかなー、なんて。私の脳の出来の関係な気もする……。

 

・セーブやフラグがやや不親切

これは初めの扉限定。視界が狭まるうえに、セーブポイントや鍵のフラグがややわかりづらいマップチップに多かったため、多少難儀しました。狭いマップなので、特にセーブに関しては絶対にぶつかる・絶対視界に入ってくるところに配置して欲しかったと思います。即死鬼ごっこ直前のあれとかね!

 

・即死の兆候が薄め

謎解きが総当たりできるものも多い一方で、クイズ以外はそこそこシビア。厳しめなこと自体はOKなんですが、ゲーム内での即死判定基準がブレている印象でした。「あっちではセーフだったのに何故!?」みたいな感じ。

死ぬなら容赦なくどこでも死ぬ、即死の難易度を緩和するなら念押しの選択肢やヒントを間に挟むなど、ある程度一貫性が欲しかったかなーと個人的には思います。

 

あ、でも、ゲームオーバー画面はシンプルにぞわっとして好きです。

あと欲を言うなら、一枚絵の類をもっとじっくり見たかったですねえ。サブリミナル的にぱっと出て消えてしまう演出が多かったので、せめてもう数秒ウェイトが欲しかった…。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。せっかくなら「これが好きなら」という形で属性を挙げたいんですが、挙げた瞬間ネタバレになる類のあれなので追記に伏せます。

どうにもならない心苦しさと、陰鬱としたアートな雰囲気などを存分に感じられる作品でした。

 

追記にはネタバレ感想など。

 

 

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