うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「蛸」感想

「絡めとるその手に、引きずり込まれてしまうのか」

それとも引き上げられるのかな前置き。

 

 

えー、今回はJACK IN THE [BOX]さんところのフリーゲーム」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐有り、乙女向けとはありますが、恋愛より人間ドラマな雰囲気を感じるノベルゲーです。プレイ初めはタイトルが意外だったけど、通してみるとこのタイトルこそが最もしっくりくる作品でした。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

じっとりとした夏のイメージが感じられる雰囲気

 

主人公が例年の如く母の実家がある田舎に“帰ってくる”ことから話が進展していくストーリーです。

初手自分語りしますが私、実家帰りってあんまり良いイメージないんですよ。ぎこちなく顔を合わせて、特段する話題も無いのに場は繋がないといけないみたいな、どろっとした感じが嫌で。

なので、じっとりとした怖さや居心地の悪さの表現がすごく身に馴染みました。おかえり、という言葉や、繋がれる手の優しさ。そこだけを取ってみれば温かくてありがたいもののはずなのに、なんだか抱いてしまう暗いイメージ。沼みたいな雰囲気。すごくすごく、いやあもうどこがどうっていうのを語ると壊れちゃいそうでもどかしいくらいには、すごく上手い雰囲気作りでした。

 

 

 

爆発するまで溜めこむ人間関係

 

竜彦と友達、主人公と親友とその彼氏、などなど、かなり根深い仲違いが描写されているのも本作の特徴です。ドラマティックさよりも生々しさが際立ちます。

絡まった人間関係の糸をどうほぐすか、あるいはどう切り断つかの話───と、いっても良いもんかなあ。

キャラが人として描写されている印象です。特に主人公周り三人の大げんかのくだりがすごくリアルだなーと思うんですよ! あのね、耐えて頑張って大好きだから皆の仲が修復できないかなってあがいて、ブツッとなんだか全てが耐えられなくなる、あの感じ。正直、もう、見てて逃げ出したくなるくらいに身につまされるところがあって、心がザクザクやられました。

感情が先走って話聞けなかったり、悪いところを自覚しててもなんかついでやっちゃったり、なあなあで流して巻き込まれちゃったり、そういうの。わかるし、おまえが悪いって言おうとしたら誰かに擦り付けることができる、だからこそ全員非があるし誰も悪くないって言いたい感じ……? うーん、生々しかったです。

 

で、本作の良いなあって思うところは、この生々しさと向き合うところなんですよね。

フィクションってやろうと思えば、全部丸投げして「全員不幸になりました!」あるいは誰かの想いを無理に捻じ曲げて「全員幸せになりました!」、ができますよね。もちろんそういったものも手放しで賛美したくなるんですが……。

本作は人間関係の生々しさが出てるからこそ、すんなりいかない展開に説得力が出るんですよ。泥臭くて変にこじれて回り道して、なんとかかんとか繋ぎ直してやっていくようなやり方。正直しんどいよなー!って思います。もー、コミュニケーションなるものから逃げ出したい!でも、そこを描いてみせてくれるところが、好きです。

 

 

 

エンドタイトルとリンクする背景

 

なんだか抽象的なところばっかり語ってしまっているので、グラフィック面も語りましょうか。

基本立ち絵はないんですが、それでも見飽きず読ませてくれるパワーがあります。文章力はもちろんのこと、文章の配置などもそうですね。小説っぽい書き方ではあっても字詰めベタ貼りではなく、体裁が整っています。じっとりと緩やかな雰囲気の時は改行多めだったり、追い詰められている時は一行びっしりだったり。

同作者様の他作品でも感じることなんですが、背景画像や文字だけでもこんなに雄弁になるんだなあとしみじみします。

表示形式がオートと相性悪い、などの難点もありますが、Nscripter製でエンド回想があったり選択肢までスキップが未読でも止まってくれたりするのは嬉しいところ。

 

背景画像は縦帯の形で表示されるデザインなんですが、ここの使い方がとても上手いんですよ。コンプしてくれた方には通じるはず! それに、ああいうデザインをされていることで、ねえさんへ依存している竜彦の視野の狭さも感じられて好きです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

舞台や設定はかなり暗いけれど、その暗い沼に片足突っ込んでなんとかかんとかもがいていくお話、というイメージでした。

 

姉に依存する従弟、ドロドロ人間関係、田舎の閉塞感、みたいなものにピンとくる方向けです。

 

追記ではネタバレ感想を少しだけ。

 

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フリーゲーム「DollyGirl」感想

 

 

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フリーゲーム「ヒトガタ奇談」感想

「心を込めて作りました、心の無き人形です」

込められた想いはどこに宿るかな前置き。

 

 

えー、今回はdydyさんところのフリーゲームヒトガタ奇談」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道和風短編集ノベル。立ち絵なし、BGMもポイントのみ、そのぶん硬派な文章が光ります。ホラー寄りですが、幽霊ものというより人のおぞましさにスポットが当たっている感じです。

 

各話感想に字数を割きたいので、先んじて全体的なシステム面から。

 

  • 一文表示が長め、読み心地はノベルゲというより小説寄り
  • 回想シーンは黄色字なのでやや読みづらい
  • レトロで雰囲気の感じる背景画像と縦書き文章
  • ドロッとした後味の作品が5つ+α
  • 読み終えて初めからを押すごとに新しいお話が読める形式、あとがき表示の後に読めるヒトガタ奇談の別章2つでおそらくコンプ

 

とまあ、こんな感じで。

 

以下は各話感想です!

匂わせる程度のネタバレはするので要注意!

 

 

 

ヒトガタ奇談 工藤栄太郎

 

これぞエログロ、いや耽美!

気づけばどうしようもなく犯していた、という点がまさに魔性の美でしたねー。

人形の美しさの描写も素晴らしいんですよ。ドール愛好家の方がよく、角度や光源で色んな表情を見られるとおっしゃっているのを見かけますが、そういった愛で方をきっちり把握したうえで書かれているのだろうと察せられる書き方でした。

ただ溺れるだけでなく、踏み止まろうとする意思を描写してくれるところがまた、唸るほど上手いんですよねえ。まだ気の迷いかもしれない、とプレイヤーすらも思ってしまう構成が素敵でした。父には消費され恋は報われず心が空っぽのまま終わってしまった彼女も、扱いがあまりに皮肉で趣深かったです。

 

 

 

少女地獄

 

タイトルがこうだけど構成は藪の中。

序盤の派手派手しい色文字は少々読みづらかったものの、文体はやはり魅力があります。

女学生が影でひそひそと内緒話をしてはくすくす愛らしく笑っている雰囲気とか。周囲の悪意を世界全体が濁っていると拡大解釈して絶望していく感じとか。夢見がちで輪になってどんどん過激になっていくところとか。そういうの好きな自分としては、あまりにもツボでした。

こういうのって、仮に真実を知ったとしても逃げられないじゃないですか。エンカウントして取り込まれた時点で終わり、みたいな。愛らしくて弱弱しい存在にスポットが当てられているからこそ、オチが化け物じみていて良いなあと思います。

美青年というのも実に良い煽りですよね。

 

 

 

告解

 

源氏計画と近親相姦と性別性的嗜好についてみたいな。

美子が自分の“変態”で“異常”な部分を、環境のせいだと思わず、生まれつきで自分の責だと思い込んでいるところがあんまりにもいじらしくて純粋で好きです。そのように、作られてたという点を含めて大好きです。

LGBTが世に馴染む概念になってきた昨今、こういう話ができるのも舞台設定が昭和大正だからこそという気がしますね。読む人に寄ってはカチンとくる描写でもありそうで勝手にハラハラしていましたが、時代設定に忠実で良いなあと思う気持ちもあります。徹底してわざとらしく“変態”を強調されているので、反語的に読める気も。

どの登場人物も悪人ではなく、ただ聖人がいないだけというところもポイント。教会・告解室・クリスチャンなどの設定をシニカルに突くようで好きでした。

終盤で見れる美子の、差別用語を含む自虐のセリフが大好きです。

 

 

 

田舎の事件

 

気持ち悪いなあと思いつつも留まらないといけない、というのが因習村の一番の肝だと思うんですよね!

同作者様の別作『鬼ヶ島』もそうなんですが、この方は陰鬱で不気味で閉鎖的な世界観を描くのが実に上手。

オチはああいった感じでしたが、同じようにあの村のほとんどの住人がああいう、諦観や脅しで加担しているのではないかなという妄想が広がり、暗澹とした気持ちになれました。

 

 

 

幽霊怪談

 

こちらはサスペンスっぽい雰囲気?

ここまで様々な形の異常さを見せてくれたぶん、この話だけ『告解』と被ってしまっているところは惜しまれましたねえ。けれども、冒頭で仲の良さをしっかりと語り、合わせて姉のちょっとした頭の良さを見せてもいるところは構成の妙を感じます。ここがあるのとないのとで説得力と後味の悪さ段違いですもんね。

 

 

 

ヒトガタ奇談 川田小吉

 

せむし男と美女、サーカス、純朴な恋と打算だけの関係などなど。世界観といいますか、雰囲気が一番好きなお話かもしれません。内気で弱くとも芸は秀逸だった小吉が、恋を知りどんどん転落していく様も、人間の生々しさや業深さが感じられる気がします。

サーカスシーンの、キィキィ、の音もかなり不気味で印象的。

 

 

 

ヒトガタ奇談 木塚佳枝

 

恋に恋するという意味では『少女遊戯』に近いですが、人の心を弄ぶ、という点をより深く突っ込んでいくお話だったように思います。

人形師と佳枝のスタンスが重なったり離れたりすることで、自然と麗の存在も揺らぐように見えるところが、とても、唸りました。人間かヒトガタか? 麗をあっさりと改造・改修してしまう始まりからして、答えは少しばかり見えていたのかも。

俗っぽい感想も言っておくと、奔放なお嬢様とヤンデレ(にならざるをえなかった)美男子って良いですね。好き。

 

 

 

 

 

と、こんな感じで。

 

作者様と自分は少女という生物に対するイメージが近いようで、その少女がメインのお話はかなり水が合いました。恋に恋して、おぞましくも愛らしくもなれる感じ。

そんなわけで、

  • 『告解』
  • 『少女地獄』
  • 『ヒトガタ奇談 木塚佳枝』

辺りが3トップでお気に入りです。

 

 

 

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フリーゲーム「星の寄り道」感想

「>>1000なら今日から本気出す」

意外とゲトしちゃう前置き。

 

 

えー、今回は2003を全力で応援するサイトさんところのフリーゲーム「星の寄り道」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ジオシティーズ閉鎖に伴って大慌てでプレイした作品です。なので記事を投稿する今現在は……入手についてはどうかな……。

 

 

モナーRPG、という、雑に分けるとスターシステムなジャンルの作品です。

 

大型掲示板のキャラクターをキャラ化して、掲示板の雰囲気やあるあるネタをメタった一つの物語を作る──感じ? 大枠としてはVIPRPGに重なるかなと思うので記事にもそのタグをつけてみますが、寡聞ゆえ不適切ならコメントやら何やらで教えてください。

AAキャラはまだまだ知らず、ネーノとガナーもこの作品で初めてそういう名前の子だと認識した(たぶん見た事はあるはず)んですが。それでも皆の会話だけで関係性はばっちりわかります。

 

よくわからん人のために

本作は短編一本道RPGです!

 

というわけで良かった点など。

 

 

1-1000まで仲良したっぷり

 

とにかくネーノとガナーがひたすらいちゃいちゃしてます。

このいちゃつき方が可愛くってですねえ! もう初めっから終わりまでにやにやしっぱなしでした。隙あらばじゃれ合うからもう! 好き!

仲良し相棒関係っぽいペア以上カップル未満が好きな自分としては終始にこにこしっぱなしでした。ふふふ。

 

ガナーちゃんは守られ系のヒロインなんですけども、おんぶにだっこだけじゃないところが良いんですよね~。二人ともに機転を利かせて活躍するシーンがある──コンビものだとかなり気を遣うところだと思うんですが、見事にそこがクリアされていました。

片方がくじけそうになったらもう片方が叱咤して、っていう相互に支え合っている関係性がすっごく微笑ましかったです!

 

 

 

守り守られ大勝利!

 

バトル中の二人のスキルも関係性を表すかのような作りになっています。

本作の戦闘の基本は、かばう! 

ネーノが防御を選択している間にガナーが詠唱して魔法をぶっ放すというのが基本戦法になります。ネーノの習得スキルが「防御中に発動可能」という点も本作ならでは。この仕様や、道中のチュートリアルのおかげで、推奨されている戦い方が察せられるのも良かったですねえ。

 

 

 

雑魚はスルーしちゃってもなんとかなるバランス

 

バトル自体は時間経過でゲージが溜まった順に行動できるシステム。いわゆるATBってやつですね。

どうしても待ち時間はできてしまいますが、サイドビューで大きめのキャラが動き回ってくれるのでグラフィックは見飽きず楽しめます。

 

ここで注目したいのが、戦闘の難易度ですね!

雑魚がけっこう多かったのでほとんど逃げ回りながらプレイしたんですが、それでもラスボスに勝てちゃうくらいなんですよ。勿論楽勝ってわけじゃなくて、回復タイミングにはちょこっと気を遣わないと危うくなる感じ。

雑魚を避けまくってもいいし、ちょっと詰まったら軽くレベル上げしたらいい、短編にぴったりの難易度でした。

 

 

 

光と影と緑が美しいマップグラフィック

 

もちろん、魅力は二人のじゃれ合い以外にも盛沢山。

中でもやっぱり印象的なのが、光の表現です。

光を盗まれちゃった世界から取り戻せ!というあらすじの通り、マップは全体的に仄暗め。ですが決して見づらいわけではありません。むしろ、「光を集める=光が道案内の役目を果たしてくれている」というやり方のおかげで、探索しやすいマップでした。

 

マップ自体がとても綺麗なんですよねえ。影の中でふわふわ揺れる草花や、暗がりの中で粗雑に突き刺さるスレ看板などが、ロマンティックな廃墟を想わせてくれます。ほんのりと灯る光と、ガッと辺り一面を照らしてくれる光、両方が表現されているところも魅力的。

 

また、光を集めると特定のSEが鳴るのですが──これがね、終盤すごく良い演出になるんですよ!

展開の熱さはもちろんのこと、見た目でも、音でも盛り上がりを感じさせてくれる、めちゃくちゃ気持ちいい作品でした。

 

 

 

動くグラフィック、魅せる構図

 

マップだけにとどまらず、戦闘中のグラフィックやらメッセージウィンドウの場所やら、どこもかしこも良い具合に動き回ってくれるのが本作のもう一つの魅力でもあります。

顔グラの種類自体豊富なんですが、加えてもちもちほっぺが伸びた時にはもう悶えましたね! かわいい!

かと思えば終盤は一枚絵のような熱い構図で魅せてくれますし。

光を灯す時の、ガナーの儀式みたいなうにょうにょした動きもかわいい! 魔法使いはやっぱり詠唱してなんぼですよね。そういう、ポイントをよくよくわかってくれてる感じが嬉しかったです。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

謎解きもありはしますが、住人がヒントをくれることもあり、基本的には易しい設計。誘導に従ってやることをやっていったらクリアできるので、初心者さんにも安心のRPGだと思います。

 

かわいい掛け合いと明るいキャラクター、幻想的なマップ、ほのぼのした世界観で目指せハッピーエンド!

そんな感じのノリが好きなあなたに、おススメです。

 

フリーゲーム「Retro Reflection」感想

「星空へ手を伸ばす君に、この指先はいつ届くのか」

光で敵わぬなら声で振り向かせようかな前置き。

 

 

えー、今回はSinilintuさんところのフリーゲームRetro Reflection」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

舞台は現代日本、攻略キャラは二人、選択肢分岐ありの恋愛ノベルゲー。天文学とフレッシュ大学生活と憧れの大人の裏の話。

一応ぼかすつもりではいるのですが、作品の雰囲気とかはもう伏せる自信がなかったため書きます。ゆえにネタバレ注意です。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

 

ビターで大人な恋愛模様

 

大人な恋愛、というとRがついたりバイオレンスだったり危うい印象がつきがちですが、本作はまっとうな意味合いでの大人の恋愛を描いた作品だったなあと思います。

優先順位の相違とか、何かに対する妥協とか、そういうものときちんと話し合って前を向いていく感じ。魔法や愛の力ってやつであなたを受け入れるのではなく、損得勘定やら親愛感やら刃物やらを通じて言葉の力でなんとか二人がくっつくような、そういうの。

 

価値観の違い、という重さにしっかりと向き合ったうえで夢を見せてくれる、誠実なお話でした。

 

あと単純に、キャラの年齢層がざっくり大学生辺りなのもポイントですね。将来のことを見据えたり、今後の生活の土台を作っていったりする時期。キャラ設定とお話とどちらが先かわかりませんが、彼らがこの年だからこそできたお話なんだろうなーと思います。

 

 

 

彼らなりの形を探すリアルなエンド

 

公式の、ルート分岐ありでED分岐なし、という説明文がピンと来なかったんですが、プレイしてやっと理解しました。

要は1キャラ1エンド。といっても選択肢分岐が用意されているので一本道感は薄めです。わざわざ但し書きしてある辺り丁寧だなーと思ったんですが、別エンドを見たい!みたいな声が上がりそうな展開ではあるので納得ですね。

つまるところ、お気楽ハッピーエンドな作品ではありません。一方で、幸せな未来を見つけられる結末ではあります。この塩梅がすごく好きでしたね~。

 

全体的に明るい雰囲気ですし、主人公もそこそこガッツがある子なので、安心して見守れはするんです。それでもぐらつくところはあるし、テンプレ的な幸せではなく彼らなりの幸せを探すためにどうすればいいのかと考え出すとかなり途方に暮れます。

なので、作中で出してくれた解がすごく気持ち良かったです。彼らにはこういう、こんな形がいいよなあって。確かに収まるべきところに収まってるんだけど、そこに至るビジョンが見えなくてハラハラしてたから、良い具合の形を見つけてくれて本当に良かったなあと思いました。祝福する!

 

 

 

一癖あるキャラクター達

 

公式の書き方が巧みなのでここで明かしてしまうのはもったいないのですが、前述でもピンと来た人はいるでしょうし、書きます。

全登場人物に、ちょっと一癖あります。

「青のアウェアネス」もそうなんですが、公式サイトの説明書きだけだと本作には出会えなかったかもしれません……。そのくらい、当ブログにおいてピンポイントにもうなんかこう伝わって欲しいそういう設定が、潜んでいました。ここ本当上手かったなあ。ネタバレは追記でがっつり書きます。

 

 

 

星々とキャンパスと絵になるキャラ達

 

グラフィックに独自の強さがあるのは言わずもがな。

この作者様の絵柄は星や輝きといったイメージがよく合うなあと前々から思っていたので、まさにまさにのプラネタリウムや天体観測がメインモチーフでとても嬉しかったです。

抜け感、っていうのかな。スチルも立ち絵も全体的にオシャレな雰囲気で、ナツキさんの職業とか今時な年代とかにしっくりくるんですよねー。

 

ナツキさんはモデルさん、立夏先輩はサブカル系雑誌の街で見かけたあの人的なポジションのイメージ。

ついでに言うとヒロインは教室だとちょっと注目されるけどミスコンには出ないタイプっぽい(妄想)。

 

あと、さりげないところだとプラネタリウムの背景画像! 

あれがついてる時と消える時とできちんと差分があって、なんだか絵本の内側にいるみたいな、すごく味のある背景だったんですよー。あれも手描きなのかなあ。それとも加工の具合かなあ。立ち絵があるとついそっちに注目しがちですが、今作はそういう背景にも目を向けたくなる魅力がありました。

 

それぞれのお部屋の背景が見れるのも好きなんですよね。ナツキさんのモデルルーム感よ。

先輩はこう、一見人間味ある感じだけど生活感なさそうな感じがなんかもうすごく彼らしくて、展開も合わさって「うぇっへっへ」みたいな声出ました。ごめん。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

攻略対象ときちんと向き合ってお話する作品というイメージが強く、響く台詞もかなり多い作品でした。

追記ではネタバレ込みの感想。

 

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フリーゲーム「青のアウェアネス」感想

フリーゲーム「リレガトゥーラ」感想

フリーゲーム「蝶」感想

 

 

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フリーゲーム「鬼ヶ島」感想

「鬼はなく蛇はなく怨霊はなく人ばかり」

鬼は元より人だと誰かが言った前置き。

 

 

えー、今回はdydyさんところのフリーゲーム鬼ヶ島」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

エンド分岐多数の、和風ノベルゲ―。

公式サイトはどうやら閉鎖(?)しているらしいのですが、Vector様に一部作品が残っているので無事に会えました。なんと初期はコミックメーカー製のフリゲだったとのこと。つまり十年以上前のゲームですね。

 

マシュマロ(誰でも匿名でコメント送れるシステム)に他薦で頂いたフリゲだったんですが、これがもう見事に好みでして! かつ、自分で探そうと思ってもなかなか出会えないタイプのフリゲだったので、この場をお借りして感謝します。ありがとう!

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

地主の息子たちが織り成すお家騒動

 

舞台は昭和を意識した和風もの。因習村、で通じるのかな? 閉鎖的な島での息苦しい人間関係が魅力のドロドロサスペンスです。

主人公の零二は地主の不義の次男。もうこの時点で、厭らしいからかい声や虐げる人々の目線が見えてくるような設定です。

いやあほんと、雰囲気作りが上手いんですよねえ。人が陰でこそこそ言ってる感じ、旦那様の目をかいくぐったりお伺いを立てたりして悪意が常に息を潜めてる感じ。人を長年幽閉するなんていう狂気がすんなりとまかり通る世界。読んでるだけで逃げ出したくなります。粘ついた感じがとても好みでした。

 

 

 

扉を蹴破る度胸を持った登場人物達

 

さて、これだけ陰鬱な世界観であっても、メインキャラクターはけっこう度胸があります。主人公の零二からして、嫌われ厭まれすぎたあげく開き直ったかのような性格の悪さっぷりです。兄に対して好き放題、女にだらしなく金遣いも荒い、好きな女を力で手籠めにしようとする選択肢まで出てくるほど。

こういう突き抜けたキャラクター、好きなんですけどね。それによくよく読んでいくと、そうせざるを得ない事情や、自分自身理解しきれていない愛情みたいなのが見えてきて、すごく味わいのある主人公なんですよ。

 

やることやるのは主人公のみならず、どのキャラもそれぞれの場面でけっこう派手なことをやらかしてくれます。皆に事情はあるのだけれど、誰しもを良い人だとは言うに言えないこの空気。だからこそ、誰が事を起こしてもおかしくない、サスペンス・ミステリ的な楽しさも味わえました。

暗い世界観に対して、殺伐したシーンがかなりハイテンポなのもポイントですね。激情やら必死さやら何やらを勢いよく振り被ってくるような印象でした。

 

 

 

中弛み知らずの読ませる文章

 

文体自体は癖がなく、一人称視点故のキャラの性格からくる毒はあれど、基本さくさく読める文章です。

これ、実はさりげなくハイクオリティですよ。これだけ陰鬱な世界観を前にしても、内省や心理描写に頼らず話をグイグイ進められるのって、さりげなく凄まじいスキルだと思います。

そのうえ中盤以降は展開も加速し、バッドエンドの数もざくざく増します。複数の犯人候補を出し、勢いよく人が死んでいってなお、エンドまで失速しないまま走り続けられるこのテンポは必見です。

 

さらに、クリア後には違った視点で物語を俯瞰出来たり、パラレルワールド的なものを楽しめたりします。前述の登場人物の味がここで活きてくるんですよね。同じ場面を流していても、視点によって見え方がずいぶん異なる面白さ。

こうだったかもしれない、というIFに想いを馳せたくなるし、そのIFが本編内でバッドエンドとして回収されることもままあります。視点の違いや複数のエンドを重ねることで立体構造を作っているお話でした。

 

 

 

レトロを肌で感じられる演出

 

最後に、この時代にプレイするからこその良さなど。

登場人物は全員シルエット、背景画像はレトロでセピアな色合い、等々、全体的に硬派なノベルゲームを思わせるグラフィックです。

ここで好きだなあ~と思うのが、殺伐としたシーンの演出の仕方! 

「ダダーンッ」って大袈裟なSEが流れたり、流血シーンは背景が真っ赤になったり、ウィンドウが「ああああ」で埋め尽くされたり。このね、昔懐かし演出がほんっと好き!

 

当時にプレイした方なら肌身に合う演出なんでしょうし、今を時めく方々には古臭いと思われる危険もあるんですけど、こと私からするとすごい好きなんですよこういう演出。お約束がお約束通りに来る感じ! 「来る……ここであのダダーンッが……きたあ!!」みたいなあの謎のテンションの上がり方。

すっかり月日が経ってこれらの演出がチープと言われるまでに王道化したからこそ、なんだかにやにやと楽しくなってしまう演出の数々でした。こういうの、あえて狙って作る方もいるんだろうなあ。

 

 

 

続いて一点だけ、惜しいところ。

 

十年以上の月日を感じさせるシステム周り

 

どうしても古いゲームということで、システム面で不便なところはあります。ここはもう仕方がない。

それでも懐古するなら最低限、セーブロード枠が確保されていて文章ログが見れるだけでも上等でしょう。むしろ今でもこのゲームをプレイできることがありがたいって話なので、あくまで事前に覚悟しておくとプレイしやすいと思うよ、程度の気持ちです。

 

あっでも一点、あとがきが本編の直後に表示される点だけは、雰囲気ブレイクがもったいなかったかなあ。爽やかな余韻を感じる話が多かっただけに、ここだけは改ページを挟むなどしてもらえたらありがたかったなあと感じます。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

閉鎖的、昭和、ヤンデレ、因習、お家騒動などにピンとくる方向け。

追記ではネタバレ込みの感想少しだけ。

 

 

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フリーゲーム「Mogeko Castle」感想

「着慣れた制服で久しぶりの君を迎えよう」

あの頃の君に囚われたままの前置き。

 

 

えー、今回は海底囚人さんところのフリーゲームMogeko Castle」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

不思議なお城に迷い込んだ女子高生の、マルチエンドホラゲー。もとい、公式曰くバイオレンスギャグゲー。エログロリョナ要素有。公式サイト自体が15歳以上推奨。

 

 

実は記事書こうかどうか悩みました。

規約がゲーム同梱になった現在(20181219)は言及されていませんが、過去実況プレイが一律禁止だったことや作風的に、表立って取り上げるより密やかにアングラで愛でるほうがいいのかなあ等々……。

まあでも、当ブログがそこそこアングラ嗜好なことはいつも見てくださっている方なら周知の事実でしょうし、何より備忘録として書き残したいのでやっぱりいつも通り記事にします。

 

言い訳終わり!

 

 

 

ただ本作は、予期せぬところから衝撃を受ける楽しさがあるので、いつも以上の量を追記に伏せますね。

 

 

ネタバレ抜きで語れるところは一点、追いかけっこ要素やゲームオーバーについて。

 

基本的にゲームオーバーがエンド回収みたいなものですし、直後にコンティニューして再開できるのでかなり易しい仕様です。追いかけっこも、終盤の総当たりはやっぱり苦労しましたが、コンティニュー機能のおかげでやり直しに抵抗はありませんでした。

なのでアクションを懸念してる方は安心してプレイしてください。

 

 

残りは追記にぎっしり。

既プレイの方はどうぞ。

 

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フリーゲーム「灰色庭園」「園庭色灰」感想

フリーゲーム「大海原と大海原」感想

 

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フリーゲーム「ごめん、まだわかんないや」感想

「伸ばしきって保留され続けた余白はとうに」

千切れて燃え尽きていることにも気づかないなんてな前置き。

 

 

えー、今回は高野M明さんところのフリーゲームごめん、まだわかんないや」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

VIPRPG、選択肢ありノベル、シリアスエロゲ。攻略可能キャラは凸シェイドⅢ、ウォーターⅠ、ミルミ。そして顔グラは出ないけど一応ダー惚が主人公、でもよくいるナルシストダー惚ではありません。

VIPなノリも素材もあるので、その辺りは折り込み済みの人向け。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

さらっと伝えてくる重い設定

 

王からの依頼、世界情勢、この世界における魔法の価値、主人公の過去、ミルミとの確執、魔法具現化達との出会い、などなど、パーツだけ取り出して羅列するとかなり盛沢山。資料集もびっくりの分厚い設定をぎゅっと詰められていることが伺える作品です。

なんですが、これがまあ見事なことに読みやすい!

なんだろう、文章がどれもテンポよくて、会話だけでも序盤に最低限のところは把握できるんですよね。匂わせている関係性が仮に察しがつかなくても、きちんと途中から回想シーンを挟んで明言していってくれるので、色々と把握しやすいですし。

 

要は、よくこれだけの背景事情をこのボリュームに収めきったなあと!

 

 

厨二心が疼く文体

 

文体がかなり独特です。そして大好きです。

主人公はいわゆるやれやれ系ですが、見事なことにテンポは良いんですよね。特に終盤のバトルシーンの疾走感は、本当にヤバイ。脳汁出ます。ただ短文を連ねるだけじゃなくて、カッコイイ比喩や心にズガンと痺れる一節を交えつつ“熱さ”を出してくれるのがめちゃめちゃ素敵! もうねー、トランプのくだりとか、自然と体が動き出していた例のシーンとか、大好きなんですよ。

表向きクールでシニカルだけど熱いものは持ってるぜ、みたいなレグルスの性格が、文体にもう表れてる感じ。その熱さが恋の時もあれば自分の生き様の時もあり、世間に倦んだ暗い情炎の時もあるところがまたよいです。

 

 

 

闇堕ちもハッピーもお手の物

 

序盤から実はけっこう詰んでる状況なだけあって、世界観はダークです。展開も鬱寄り。

初回プレイ時は一途に愛を育もうとしたところで、魅惑的かつ明らかにアウトな選択肢がしれっと見えたので、思わずうきうきしながら選んでしまいました。結果は闇落ち一直線でした。やったね。

そんなわけで、鬱展開に陥る選択肢はもう見るからにマズイと分かるよう作られています。なので、厨二だけど女の子が可哀想になるのはちょっと……という紳士的な方にも楽しめるかと。

なお、フォルダ内には攻略テキストが同梱済み。エンドの種類も豊富でハーレムも純愛も家族愛も凌辱も味わい深かったです。

 

本作の主人公はダークサイドへ吹っ切れるルートも、輝く未来を諦めきれないルートもあるんですが、そのどちらに転んでも当然と思える主人公のキャラ付けが上手かったですねえ。落ちる時はとことん落ち、明るい時は底抜けに明るいところも魅力的でした。

 

 

 

汁だくギラギラみさくら

 

で、エロゲなのでR18なところも書きますが。

喘ぎ声はみさくら系。んほぉってやつ。画風は強調が強めと言いますか、出るとこは出るし出すものはどばどば垂れる豪快な感じ。あとは性感帯は尖れば尖るほど良い、みたいな。

シチュは二分されていて、ノリノリ発情エロと、シリアスダウナー凌辱のどっちかです。私は後者のほうが好きだったかな。性欲を煽るというより性行為を通じて人間の尊厳やら理性やら前向きで健全な精神やらをぶっ壊していく描写のほうが際立っていたように思います。まあどっちにせよえろいので一向にかまいません。

 

 

 

よくある設定からズラしていくスタイル

 

私自身がVIP作品はかなり後になってハマったので、順当に多作を追ってきている方から見れば異論もあるかもですが……物珍しい設定が多かったなーと思います。

特に嬉しかったのは凸シェイドⅢ。よくあるツンギレじゃなくてこう、くすくす笑いながらからかってくる感じだったのが可愛かったです。好きではいてくれるんだとわかる安心感。そこそこ隙が多いところもキュート。こっちタイプの凸も増えて欲しいなーなんて。

ウォーターⅠはいわゆるわてりとは真逆な感じ? 大人しくてナイスバディで桂言葉様系。ミルミもぽややん癒し系ではなくTHE糸目キャラって感じで楽しかったです。

そもそもキャラのラインナップからして独特ですよね。特に、ミルミは五郎、凸はダーブラという風潮が強い気がするので、新しい扉開けて楽しかったです。

 

 

とまあ、こんな感じで。

この作者様のゲームはどの作品も作品同士リンクしているんですが、中でも本作「ごめん、まだわかんないや」をシリーズ導入の起点とするのがわかりやすい(気がする)ので、作者様追いするプレイヤーさんは是非。

 

ネタバレ込みの感想は追記より。

 

 

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