うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「シュレディンガーの西瓜」感想

「吐かれるばかりの種ならばと身を引いてみたらば」

撒かれ広がれと背を押すあなたがいた前置き。

 

えー、今回は夜宵空ノ果テ。さんところのフリーゲームシュレディンガーの西瓜」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

1時間強くらいのアクション探索RPG。クリアだけを目指すのならもっと早め、のはず。

同作者様の他ゲー『シオン』『春壊譚~しゅんかいたん~』と絡む要素がありますが、諸々の思わせぶりな台詞を無視できるのなら、大筋は本作だけでも追えるつくりです。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

アクション苦手はアイテムでカバー

 

アクション要素有の記事のたびに再三と主張しておりますが、当方は実にアクションが苦手です。追いかけっこイベントで大抵死にます。ガードがあっても使えない民です。

が、本作はアクション苦手でもなんとかなります

アイテムや装備などいくつか救済措置があるのもありがたし。探索をすればそれだけバトルも易しくなっていくという構成も、ゲームとして好きですね。その他、同梱ファイルに戦闘の指南書もありますし、軽い攻略情報も記載されています。

 

同時押しは最悪Dキーと矢印キーだけですし、Xキーで疑似ポーズもできる仕様。私は通常攻撃中心に脳筋ガチャプレイで殴り勝ちましたが、アクションに自信のある方はスキルを多用してスタイリッシュに楽しんでこそ真髄が味わえるかと思います。

スキルを乱発してもいいように、早々にMPチャージ技を覚えられるところもポイントですね! スキル→チャージor攻撃でコンボ繋ぐ→スキルでテンポよく戦えるのが魅力かなと思います。……出来る方は!

 

 

夏を感じるマップ

 

夏を取り戻そう! ということで、マップやグラフィックは全体的に夏を感じさせるものばかり。清涼感だけでなく、祭りの屋台や髑髏などの納涼ホラー、暑さを感じさせる太陽など、まさに夏が盛りだくさん。

魅力をマップごとに切り取りながら、それぞれ違った夏のテーマを見せてくれるところが好きでした。

 

驚いたのが、NPCもマップにいるところ。OP的に話せる存在は主人公一人だけなのかと思っていたんです。淡々と探索するだけだとどうしても物寂しくなっちゃうので、色んな人がいてくれて嬉しかったなあ。お店やヒントとしても有用ですしね。

初めのマップの種が小粋な彼っていうのも良い構成だと思います。暗いマップだけど明るい。

次のマップへ移動する時の演出も好きです。どぷん、と深海へ飛び込む感じ。

 

 

 

探索すればするほど嬉しい装備

 

さて、これらマップはもちろん景観を堪能するだけでも十分に満足できるんですが、きっちりプレイヤーに実利としてのご褒美を用意してくれているのも嬉しい点です。

探索すればするほど装備が増え、使えるスキルが増えていきます。

欲を言えば基本的にSP2倍かエンカウント率調整で装備スロットが埋まってしまうので、スキル用にもう一つ装備スロットが欲しかったところですが……。エンカ調整をできるだけでも平伏して感謝を述べたくなるほどありがたいのでね。

閑話休題。ワープ機能のおかげでマップの行き来もやりやすいですし、ゲームとしても楽しい探索が多かったです。

 

 

 

わかりやすいマーク

 

加えてアピールしたいのが、探索ポイントのマーキング。

特定のアイテムを持っていると、アイテムが取得できる場所に矢印マークがつくようになります。これだけでもかなり探索が捗るってもんですよね!

そのうえ、とあるマップには隠しアイテムや種の置き場所を教えてくれるキャラがいます。取り逃したかも、という心配をしなくて済むのは大変ありがたい! 要求される対価もかなり安めで利用しやすく、さらには一捻り効いた演出もあって実にグッドでした。

こういう、色んな仕様やシステムが相乗効果で楽しさに繋がっている作品好きなんですよねえ。

 

 

合わなかったところ

 

最後に、合わなかった点。

まず、テキスト表示中のSE。耳に痛いタイプの音で続けて聞くのは辛かったです。

続いてゲームオーバー後について。タイトルロゴの演出をスキップできる機能が欲しかったです。あるいはコンティニューや会話スキップなど。特にラスボスは何度も挑み直したので、その度選択肢を選んで会話するのがちょっと手間でした。

ただ、あのタイトル画面の演出すごく好きなんですよね!! スタートロードエンドで背景が変わっていくのも美しいですし、タイトルロゴもオシャレですし。

アクションゲームとしてはイージーに作られている(はず?)ので、もしかするとリトライするような腕のプレイヤーがいることをそんなに想定されていなかったのかもしれません。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

夏を感じたい方、手軽な長さのアクションゲーをやりたい方にオススメ。

 

余談。

エンド分岐はありませんが、エンド前の演出が変わるので、全部集めるだけ集めきってからラストに進むのをおススメします。

レベルアップ画面の彼の立ち絵がすごく好き!

 

 

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フリーゲーム「シオン」「春壊譚~しゅんかいたん~」「咲乱行進曲」「LL」「SEED」感想

「季節をつかさどるものこそ四季折々を感じずに」

常春は秋を知り得ない前置き。

 

 

えー、今回は夜宵空ノ果テ。さんところのフリーゲーム「シオン」「春壊譚~しゅんかいたん~」「咲乱行進曲」「LL」「SEED」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

明言されているものとされていないものがありますが、全体的にふわっと繋がりを感じる作品が多いです。

「シオン」「春壊譚」はキャラが続投しつつもストーリーは別物の作品。

「LL」「SEED」は世界観が通じていそうな感じ。

「咲乱行進曲」は単体、のはず。

 

 

というわけで順番に感想を綴っていきます。

どれも30分~1時間未満でクリアできるはず。

 

 

 

 

『シオン』

http://nanos.jp/yayoihate/page/17/

 

[ストーリー]

エンド前に分岐があるものの、大筋は一本道の短編RPG

お兄ちゃんとの約束を叶えに、お月見に来た少女イトラの物語。……と見えて、タイトルからもあるとおり、物語の核を握っているのはシオンです。

展開自体は序盤から予想できる通りなのですが、終わらせ方がとても好みでした! 約束に約束を掛ける、メルヘンな呪いのようなお話。イトラが徹底して純粋無垢で、無知な少女として描かれているところがとても好きです。

 

[バトル・システム他]

RPGとして見ると、諸々のバランスはかなり大味。

  • イトラのTPが一切活用されない
  • シオンの家を境目に敵の強さが急上昇する
  • エンカウント率と攻撃のミス率が高めでグダる
  • そのわりにボス自体は弱い
  • 村や家が極端に広い

など。

それでも同作者様の他作品に比べれば許容範囲です。

まあRPG要素はあくまでストーリーのためのおまけと思う方がいいかも。

でも演出面は良いんですよ!

 

[演出他]

面白かったのはBGMの選出。この曲をこの場面に使うか、と驚かされることが多かったですし、ばっちりシーンにハマってるんですよね。どの曲も良曲ですし。夜のバトルやフィールドの曲が好き。

敵の名前もさりげなくウィットに富んでます。こげいもの畳みかけはずるいわぁ。思わず笑いました。

最後にはタイトル画面ですっと引き締めてくれて、苦い後味と優しいヴェールを感じさせてくれる作品でした。

 

[一言]

総括、粗削りだけど私は好き!

 

 

 

『春壊譚~しゅんかいたん~』

http://nanos.jp/yayoihate/page/19/

 

[ストーリー]

一本道短編RPG

「私は春を壊しに来た」。この一言だけでもう、どんな物語なのか、わくわくが無限大に集まってきやしませんか! 

特段アピールされているわけではありませんが、キャラクターとしては『シオン』の続編となる、はず。それらしいセリフもありますしね。『シオン』既プレイの私は、お月見という秋からなぜ春に執着することになったのか、という謎もあって二重に楽しめました。

最低限の設定だけ明かして想像しやすく、かつ熱い場面ではバシッとスチルを使って盛り上げてくれるところも良かったです。短編のボリュームにしっかり合ったストーリーでした。

 

[バトル・システムなど]

大いに評価したいのが、マップの改善!

前作と比べるとかなり、ものすごく改善されていて嬉しかったです! 

景色がどんどん変わっていくので、歩くのが楽しいというのが一点。ただの行き止まりではなく滝や橋などを通して見た目としての美しさも見せてくれたのが一点。さらには少しずつ変わりゆくマップ自体がストーリーともしっかり絡み合っていて、とても良い演出でした。

 

一方、バトルは相変わらず大味な面も少々。以下羅列すると、

  • 属性相性の説明が一切ないにも関わらず魔法が他属性に分かれている(弱点属性も設定されているらしい?)
  • 雑魚敵がスタン睡眠混乱を乱発してくるのでハメ殺されるうえ、状態異常防止の手段が存在しない
  • 一人旅なのでディスペルハーブやキュアがほぼ機能しない(せいぜい毒のみ)
  • シンボルエンカウントが消えるまでラグがあるせいか、連続して敵に当たると倒したはずの敵が倒されていない判定になる時がある

辺りですね。

この作者様のRPGはどれもいまいち戦闘の難易度が掴めないなーと感じます。難易度が楽だろうが鬼畜だろうが一貫していたら馴染みやすいんですが、毎回違うルールのじゃんけんしてる感じがしました。

とりあえず、状態異常持ちの敵複数登場させるのはかなり練らないとグダる、ということは言いたいかな。

 

 

[キャラ他]

個人的に、イトラのイメージがガラガラガランと崩れてしまったのが寂しかったですねー。前作の流れ的にイトラはツンケンした強さではなく、兄がいないという辛い事実に向き合える柔らかな強さを持った子だと思っていたので。前作のオチがああだったので、性格が変わるのも理解はできるんですが……寂しい。

まあただこれは、侵入者の分際で人の家に放火するという導入に驚かされたから-イメージがこびりついてしまっているだけな気もします。放火自体は後からフォローが入って、むしろ良い伏線として生かされましたし。インパクトもあるし、いや本当あそこは感心しました。

それに、人知を超えたもの、現象や概念に対して喧嘩を売りに行くという発想と勢い自体はとても好き!

 

[一言]

さくっと数十分、何よりあのキャッチコピーにピンと来たなら。

 

 

『咲乱行進曲』

https://www.freem.ne.jp/win/game/11797

 

[ストーリー・キャラクター]

一本道一時間くらいRPG

季節人、という主人公達四人組が雨をもたらすためにちょっくら遠出するお話です。咲乱梅雨前線行進隊、もそうなんですが、この作者様ってキーワード作りがすごく上手いんですよね! もうこのタイトルだけでワクワクしません? このタイトルに当て字をするのが好きなんだよなあ!

 

さてさて絶賛する一方で、設定の見せ方は弱い印象もある本作です。

とりあえず素朴な疑問として、天候人じゃなくて季節人なのは何故なんでしょうね?天候を通じて季節が決まるから、ということなのかも。単純に季節人のほうが語感良いですしね。

で、こっちが本題、物語の根幹に関わるネタバレを含むので、以下文字色薄くして伏字。

一つの設定に対して誤解されやすい言い回しが多いんですよね。「(街の人との会話)季節人なんてたくさんいる」→「皆雨の季節人でニワカは元晴れの季節人」→「晴れの季節人はテルマ以外いない!」とか。この流れだとニワカとテルマが何か重要な関係を持っているのかなと思えそうですが、実際はなんか……ニワカが昔同業だっただけみたいな……消化不良感あります。

終盤になって「ニワカは晴れの季節人です」ということを強調していたのに、また「今は雨の季節人だ」と掌くるくるするところも、話についていきがたいですし。

また、街の人との会話で季節人なんて大した存在じゃないって言ってたのに、季節人の裏事情はかなり前時代的でおどろおどろしいんですよね。せっかく街があって一般市民の反応が回収できるんだから、季節人を皆が拝み倒すとか、あるいは儀の風習について触れるとか、宗教めいたことを見せてあると良かったかも。現状説得力があまり感じられませんでした。闇のある設定好きなのでなおさら! 惜しまれる……。

まあごちゃごちゃ書きましたが、作者様の脳内での設定が先行しているというか。プレイヤーにキャラの魅力を伝えよう、世界観を知ってもらおうという気はあんまりなさそうだなあと感じる描写でした。

自分は考察ゲー好きなのでそういうキャラ先行型の創作全部を否定する気はないんですが……。置いてけぼりになった、というのが正直な感想です。

でもお話の勢い自体は良いんですよ! 前述の通り、キャッチコピーにかなりの求心力がありますしね。作者様のこだわりも感じますし、「やりたいことをやりたいようにやった!」という達成感は伝わってくる、フリゲらしい作品であるとも思います。

 

[バトル・システム]

前述と被るところもありますが、この作品、キャラゲーなのにキャラゲーしてないのがすっごい勿体ないと思うんですよね。しかもキャラの会話ねじ込む隙間が十分にあるからいっそう、いや本当に惜しい。

例えばEXボスについて。倒したらご褒美にキャラ四人の軽い掛け合いが見れる、なんてことがあったら、めちゃめちゃ推してました。だって過去が気になる子多いし、四人がどういうキャラなのかもっともっと知りたかったもん!

でも現状は、戦闘難易度のゆるさもあいまってダンジョン探索がただの作業ゲーになってしまっているところが残念です。

まあ無茶な戦闘バランスを投げられるよりは良いかも。状態異常の予防手段や回復手段が複数取れるようになっているところも、改善を感じます。

その他、マップも作品の長さに見合った広さでしたし、街の行き来がしやすくなっているなど、作品を重ねるごとに技術がブラッシュアップされている印象は受けました。

 

[グラフィック・演出]

本作で嬉しいのは、カットイン!

バトルで必殺技使うと、なんとボイス入りのカットインが見れちゃうんですよ。しかもパートボイス付き。TP技なのでバンバン使えますし、皆かっこよくて楽しかったです。

主人公がデバフ係というのもフリゲではあるあるですが、鞭装備というのはけっこうレアでグッときました。サミダレ自身はけっこう陽キャっぽい雰囲気だから、鞭っていうこう、武器のチョイスにギャップがあって良いですねえ。

 

あと、私一番、何よりも一番推したいのが本作の起動画面なんですよ!

起動画面の構図と、行進曲というタイトル、雨のイメージが持つ繊細さと、曲調からくる前向きな明るさ! どれもがすごくぴったりで、クリア後もこの起動画面でずーっとBGMにしてるくらいにはお気に入りです。曲だけじゃなくてロゴとか画面とか全部好きだから、ゲームごと起動して聞きたくなっちゃうんですよね。

 

[一言]

例の敵が言う、雨の季節人らしくて○○しい、という表現がとても彼らにぴったりで大好きです。

 

 

 

『LL』

 

[ストーリー]

一本道探索ゲー。暗くてダークな雰囲気ではありますが、ホラーではないです。追いかけっこもなし、時限イベントもなし。ただ怪物的なものは登場するから、どんな些細な要素でも怖いの無理って方は注意かな?

お話自体は散らばった日記を読んで背景事情を察するようなつくり。自然災害による終末、科学実験っぽい世界などが好きな方にはしっくりくるかと。

 

[システム・グラフィック]

調べるポイントにしっかりマークがされていて、それさえたどれば自然とエンディングまで見られる易しい仕様です。視界制限があるのでマーキングはとても助かりました……!

どことなく不気味な要望の主人公や、静かに機械が駆動するばかりのサイバーSFっぽいマップなど、無機質な圧を感じられる雰囲気です。

 

[一言]

短い中でラストにインパクトをくれる良質短編ゲ。

 

 

 

『SEED』

 

[概要]

エンド分岐ありの短編探索ホラー。分岐自体はアイテムの有無、取得ポイントは光るし見逃しやすそうなところはドアの変化でプレイヤーが立ち止まれるようにしてあるので、難易度は易しめ。

この作品だけブラウザゲ(RPGアツマール)なので注意。

短い距離の追いかけっこあり。

 

[ストーリー・キャラクター]

主人公大好きなんですよ! 

スレて自己中心的なところと、人並みに怯えるところ、両方がバランスよくてとても人間味を感じました。食堂での扱いを見るに、元々勝手な人間なのではなく周りから疎まれてそうなったっぽい印象。

きちんと焦ってくれて、かつ進行に支障をきたさないところがいいんですよね。危機感も生まれるし、キャラ萌えとして見ると怯えてる反応がかわいいし。

あのキャラだからこそ、あの無慈悲なエンドに納得感が生まれてる気がします。エンド分岐があるにしてもどちらにせよ……というオチも含め、とてもホラーらしくて素敵。

 

[グラフィック]

探索モードに切り替わる時の画面演出、最高でしたよね!!

あの、カシャッという音がまた良いんですよ。画面の切り替わりもかっこいいし、取得アイテムもわかりやすいし。顔グラがまばたきしてくれるところも細やかですごい。

追いかけてくる例のあれのグラフィックも、かなりおぞましくてグッときました。ああいう寄生みたいなのに原型が残ってるのすごく好きなんですよね。お部屋によってベッドや部屋の汚れ具合が違うのも凝ってるなあと感じました。

 

[一言]

グラフィック重視もストーリー重視もきっと満足できる完成度の高い短編。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

まとめると、

  • 完成度が高くて好きだしオススメ→『SEED』
  • 作者様の傾向が掴みやすい入門編→『シオン』
  • 決め台詞が一番好き→『咲乱行進曲』

でした!

 

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フリーゲーム「ロボットと過ごした五人の話」感想

「YESとNOだけしか与えられない君は果たして人と言えるかな?」

人為らざりが主人公とは滑稽な前置き。

 

 

えー、今回はRED HOSTILITY さんところのフリーゲーム「ロボットと過ごした五人の話」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

とても深淵に触れる作品であると思うのですが、だからこそ語りづらい。とても雑にひっくるめて一言で言えば、哲学ノベル。心身問題などに関心のある方はピンとくるかもしれません。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

第一問目をあなたに投げるストーリー

 

さて本作は、薬物中毒者が出てきたり人殺しが起こったり、なかなかにサスペンスな雰囲気を醸し出しています。五人の話、とタイトルにあるとおり、色んな視点でそれぞれの話に謎が仕込まれてあるので、読みごたえも抜群です。

そしてこれらの謎の横で、プレイヤーは誰かの目を通して間接的に問を投げられます。与えられた選択肢ははいといいえのみ。じわじわと厭な予感を抱かせながら、メインストーリーの傍ら、謎の質問は静かに進行していきます。

 

美しいピアノの音色がまた、良い具合に焦燥感を煽ってくれるんですよ。このプレイ感がもう最高でしたね!

セーブロード機能がないわりにけっこうな長さの作品なんですが、それでも全然OK、むしろ本編の流れ的に制限があるのは納得です。

本編も気になるしこの質問も気になる、腰を据えて読みたくなる求心力がありました。

カチッと全てが一つのテーマに集結するのが気持ち良かったんですよねえ。

 

 

 

混じりけの無いひずみを感じるエピソード

 

どの話も、なかなかにエピソードがえげつない。

ジャネットの話があまりにも、あまりにも暴力的でしんどくて大好きなんです。あの話に登場する兄妹二人とも。あの真相を明かす場面の演出も、とても……とても好きでした。

かみさまの話も、おそらくは混じりけのない思考回路から産まれ出たはずだろうに、とても歪みを感じてすごくグッときます。

 

どちらのエピソードでもこう、やらかした元凶の彼らは、俗っぽく分類するならヤンデレになるとも思うのですが。

一般的にイメージされる過激派暴力集団的ヤンデレというよりは、澄んで澄んで冴え切った歪みのような……独特の想いを感じます。なので、ヤンデレと言えば刺さるそうもいるしヤンデレだとも思うんだけど、ヤンデレと言いたくない何か一点がある気がしてなりません。タグはつけますけどね!

 

 

 

命令通りに感情を動かすヒューマノイド

 

本作品は未来SF的で、ヒューマノイドが人々の生活と共に在る世界観です。作品紹介ページのパトリシアからしてわかりやすいですね。

彼らは高い知能と、美しい容姿と、変幻自在のプログラムされた感情を兼ね備えています。そして悍ましいことに、エラーを起こします。

本作はこのエラーが本当にエラーなのか……エラーとクリアの境目はどこか……もっと言えば、とある致命的な一点について。五人の話を通じて例を重ね、迂遠にプレイヤーへと問いかけてくれます。

ネタバレを避けようとするとどうしても抽象的になってしまいますね! はっは。プレイさえしてもらえればわかる!

とにかく、認知を狂わされる感じ、土台が崩壊する感じがとても興味深かったです。

 

 

 

映画とも漫画とも言い難い、個性的なワンシーン

 

ゲーム画面が全体的にオシャレなPVみたいなんですよ。

何と言えばいいのかな。どこを切り取っても絵になるし、コマ割りのようにキャラが登場する時もあれば背景画像だけで魅せてくれる時もあるし、漫画の扉絵みたいにパキッとした構図を取っている時もあるし。

五人の話がばらばらに始まって一つのテーマに繋がっていく、というお話の構成が、ゲーム画面を通じても感じられたように思います。

 

もちろん、グラフィックに合わせてテキストの表示の仕方もくるくる変わります。

同作者様の他作品『Margot』の感想記事ではテキストのフォントが読みづらいことを取り上げてしまっていまして、本作もそこまでフォントサイズは変わっていないはずなんですが、いや不思議と読めるんですよね。むしろ読みやすい、よく画面に馴染んでいる印象。

これぞという表示形式を突き詰められたのだろうなあと感じます。

 

 

 

あって嬉しい読了特典

 

一通り読み終わると、チャプターセレクトおよびエンド回想のできるおまけが解放されます。没グラフィックや制作過程などが比較的多めに見れて興味深いところ。あれだけバシッとハマってる画面デザインに辿り着くには、やっぱり色んな試行錯誤が必要なんだなあとしみじみしました。プレイヤーに解放されているのは氷山の一角でしょうしね。

 

なお、公式サイトではクリアした方向けのネタバレありエピローグも読むことができます。

特にフレデリカサイドの話はとても感傷を揺らされるものなので、既プレイの方は是非。最後のベルのセリフが胸に詰まります。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

哲学問題や、人間とロボットの話というワードでざわっとした予感がする方には、強く強くおススメしたい一作です。

 

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shiki3.hatenablog.com

フリーゲーム「間違い探しのクロニクル」感想

「君と出会ったことは間違いでも正解でもなく」

この手にある事実だけで前を向ける前置き。

 

 

えー、今回は夜宵空ノ果テ。さんところのフリーゲーム間違い探しのクロニクル」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道RPG。5時間以上10時間未満くらい。

まず書いてしまいますが本作、合わなかった点がかーなーりあります。私の文体はどうあがいても陰湿なので、マイナス意見が嫌いな方は読み飛ばして頂いた方が無難かもしれません。

代わりにと言っては何ですが、好きなところもしっかりある作品です。じゃなきゃ記事にしないのでね。好きと嫌いがパッキリ分かれているんだと思ってください。

良かった点だけ見たい方はスクロールして一番下までどうぞ!

 

というわけで、特徴的な点など。

 

 

新鮮な設定のスクランブル事故

 

まず本作のストーリーは、90年前に大災害を起こした堕天使が歴史改変により良きものだとすり替えられているので歴史一族である主人公が阻止しよう、というのが主な出発点です。

この設定自体はとても興味深かったんですよ。歴史一族という発想が良いですし、世界設定用語も「歴史一族」「能力者」「堕天使」とぱっと見てわかりやすいものばかりで取っつきやすい。この辺りはすごく良かった。

 

一方で、この動機が即捨てられちゃうんですよね。

物語中盤辺りからは、「歴史改変を阻止しよう」から「魔物の暴走を止めよう」になり、主目的がズレていってしまいます。一族の先祖が守った島を我々も守る、ということで自然な推移ではあるんですが、肩透かしな印象は否めません。しかも最終的に歴史改変や歴史を守るという言葉は物語中から消えます。

 

だというのに、ラストバトルでは思い出したかのように「歴史をかき乱した」というワードが出てくるんですよ。しかも歴史を改変しようと暗躍していた張本人に対してではなく別の存在に向けられる啖呵なので、カッコイイはずのセリフがどうも天然ボケに見えてしまいます。いやいやそれは言う相手がちゃうやろ、と。周りを鼓舞するためにしてもね。

 

もしかすると歴史改変は主題ではなく単になかなか動いてくれなさそうな主人公への動機付けだったのかもしれません。ただそれならそれで無理に歴史改変という大掛かりな話は出さず、人々の築き上げてきた歴史を再び壊そうとする悪を倒すぞ、くらいで留めておいた方が良かったんじゃないかな。

 

 

加えてストーリー上引っかかった設定など。

本筋じゃないので細かすぎる指摘やネタバレは文字色変えます。備忘録だと思ってください。

 

・死後の存在が「霊」「魂」「分身」など複数登場するのでどれが何だかわからない

→魔力を持たないものは霊に敏感、という点も、設定やそれを生かしたシルバーの活躍はとても良かったが以降一切その手の話が生かされなかったのが残念だった。

→墓守さんなんてせっかく立ち絵もあるのに、酒飲んで後日便利な装備くれるだけのおじさんだった。例えば初めに訪れるクロニクルの墓ではクロニクルを出さずに墓守さんが遺言を届けるということにしていたら、クロニクルが複数存在するという都合よすぎるような展開を避けられたと思う。墓守の存在価値も出て、代々続く稼業を続ける重みという点が歴史一族の姿にも重なってより深みを増したのではないかな。

 

・魔力持ちとそうでないものの扱いの違いが不明瞭

→「魔力を中途半端に持つ者や魔力の抵抗力がないものは歴史改変の影響を受ける」というようなことを言っていた(うろ覚え)気がするが、「魔力の抵抗力がないもの」と「魔力のないもの」の違いが不明。それに中途半端ってどの程度。作中の強さのランク付けが不明瞭なのと、一般人の一般的な魔力概念が一切提示されないので、設定のご都合ゴリ押しを感じる。

→ぶっちゃけシルバーやイユが歴史改変に巻き込まれていない理由がアバウト。

 

・魔界があるのに魔物が島に住んでいる理由が不明

→特に敵側はなぜわざわざ人間の住む世界に来ておいて「迫害された」「酷い目に遭った」と言っているのか? 魔界に住んでいれば巻き込まれなかったのではないか。

→島はありとあらゆる種族が住む中立地点だと仮定すると、今度は人間VS魔物の構図になるのが違和感。島が滅びるなら人間も魔物も共倒れになるから協力する魔物はいなくなるのでは? そもそも魔物がこれだけ暴れ回れるほど強いのなら、社会的弱者かのような態度が納得いかない。そこまでできるなら自力で滅ぼせ自力で。

 

・愚かな人間部分に説得力が少ない

→魔力をむちゃくちゃ持っているが故に迫害された人間とか、歴史一族の在り方に疑問を抱いた別の歴史一族とかが敵サイドに1人でもいるなら理解できるけど、最終的に魔物VS人間の構図になってしまうのであんまり人間の愚かさを感じない。なので敵の言うことが全部薄っぺらく感じてしまう。

→言われているのって過去の所業ばかりで、今マキ達の生きる時代で愚かさを見せた人間の行いって、「幼女にカツアゲする」「助けてくれたのに悪口を言う」くらいなので、あまりにパンチが弱い。もっとえげつないエピソードを持ってくるか、あるいは今のままで通して「歴史一族が言うのもなんだけどあんたら過去の人間の悪行にこだわり過ぎ」「レヴィックもマキも変わった、人は学んで変われる生き物なんだ、我々は歴史を大事にしてもう悲劇は繰り返さないんだ」みたいな方向性でいくなら納得できた。

→堕天使「魔物は協調性がある」って言ってたけどそれならそれでそういうシーンをはっきり見せて欲しい。むしろ好奇心で殴りかかってくる鬼のイメージが強いんだが。変に理由付けするとボロがでるから勢いで圧したほうが良かったと思うし、それで納得させられちゃうくらい膨大な演出力は持ってる作者様だと思う。

 

 

ただ、クリアしたからこそスッキリした謎も確かにあります。

  • キリアーデが全世界ではなく島限定で滅ぼそうとした理由
  • 彼女が分身として残り続けてきた理由

が主な点ですね。予想を超えてしっかりと回収してくれた謎でした。しかも大筋の部分だったので、ここが解決してくれたのはかなり物語として熱かったです。

なので【細かいところは良いから熱くなりてぇ!】って方はもう全然OKなストーリーかも。

 

 

 

王道の良さを見せてくれるキャラクター

 

クールだけど冷徹なわけじゃない、情でもって動く主人公マキ。彼女を始め、どのキャラクターも王道かつ魅力をしっかり押し出してくれて素敵でした。キャラが気に入ってたからクリアまでこぎつけられたくらいです。

一番好きなのはセドリックですね! 魅せ場も多いし、出てくるとぱっと場が明るくなるし、台詞の勢いが楽しいし。脳筋かと思いきや戦い方も多彩でカッコイイ。ドットが動き回るので、天真爛漫さが見て伝わってくるところも好きでした。

 

そうそう、立ち絵有りのキャラクターとたくさん戦う機会があるのも本作の魅力だと思います! バトルグラフィックが遠景のキャラもいれば迫力満点に斬りかかってくるポーズのキャラもいて、そういう違いも好き。あの狭い画面に違和感なく全身絵が収められている点にも絵師さんとしての力量を感じます。

 

立ち絵で言うとチェルシーの泣き顔差分がめちゃめちゃ好き。

顔差分もかなり多くて、くるくる変わる表情で展開を盛り上げてくれました。終盤は驚きの演出もあって、ドット絵バトルグラ立ち絵、どこをとっても好きです。タイトル画面の幻想的な雰囲気も大好き!

 

 

また、キャラクターの動かし方もグッド。

個人的に好きなのはこの辺です。

  • セドリックとちょこちょこ絡むイベントが後々効いてくる展開。終盤の飛空艇の疾走感もう最高。
  • ケイの某セリフ、そこからエンディングでのエピソードに至る自然さ。彼女の動機や性格が設定ではなく物語として描かれているところ。好戦的な部分と弱気な部分の見せ方がほんっと上手くて、かなり魅力的なキャラでした。
  • イユがどうやって魔法を使っているか。ファンタジーならではのロマンがありますし、イユが何でもできる超人じゃなくて隙があるというところも人間味があって好き。

 

ただ嫌いなところもあります。

特に、出会う人がどいつもこいつもシルバーに「こいつお前の彼女?」って聞いてくるところ。シルバー何も悪くないのに、マキは言ってきた相手じゃなくてシルバーに対してキレるし。理不尽だわあ。

 

 

艱難辛苦の伴うバトルとシステム

 

システム面とバトル関係は擁護しようがなく、ストレスフルです。

 

  • マップが異様に広い
  • わりに街中に宝箱はなくNPCのセリフも汎用的で探索する楽しみを感じられない
  • なのにNPCとの会話がフラグのサブイベントが起こる
  • イベントシーンで登場退場するキャラのスピードが遅すぎる
  • あちこち何度も行ったり来たりするのにルーラ(ワープシステム)が一切なし
  • 村長への報告というテイで何度も引き返す羽目になる(わりに反応は薄い)
  • バフデバフで威力が激変するのに、バトル途中で仲間が加入してくるイベントが何度もある(スキルを使い直す手間が増える)
  • ボス前回復が全くない
  • 重要イベントが起こる地点にある〇マークが視認しづらい
  • バトル中に選択しているスキルと選択対象になる仲間のコマンド枠が非常に見づらい
  • なのに戦闘ではスキルを多用することが推奨されているような耐久設定の雑魚敵が出てくる
  • 3歩歩いて敵、酷い時には1歩歩いただけで敵と遭遇する

 

思い当たるところだけでもこのくらいかな。

シンボルエンカウントにできるなら初めからそうして欲しかったというのが正直な気持ちですね。

総プレイ時間8時間のうち4時間はカットできる移動と戦闘だったように思います。雑魚敵もっと逃げまくっても良かったなこれ。

 

なお、バトルの難易度は易しめと書かれていますが、実際弱いのはボスだけです。雑魚敵はそこそこ固くて魔法のみ有効の敵もいるというRPG慣れプレイヤー向け。つまり、雑魚戦では異様に時間がかかるがボス戦は楽々で達成感が一切感じられないという、誠にもったいないことになっています。

 

 

 

項目立てすると、以上。

まとめると、演出良! キャラ良! ゲームのテンポ激悪!

となります。

 

ううーーーどうしてもこき下ろす記事みたいになってしまう。

いやでもやっぱり演出とキャラはめちゃめちゃ良いんですよ~~!!

楽しければそれでOKな戦闘狂キャラ、みんな好きじゃん! 私は好きです! 仮面付けてたりお洒落な文様ついてたりミニハットつけてたり、キャラデザがどれも素敵で魅力的だし。

それに仲間枠4人に対してメイン仲間キャラが5人というところを、上手いこと視点変化や離脱イベントを挟んで自然にやりくりしていた点はものすごく良いと思うんです! 演出としても熱かった、あのキャラが意外なところで、みたいな驚きもあって楽しかった。

 

ワンシーンに注目すると本当熱くなれる王道ファンタジー作品です。エピローグのね、各自が各自の道を歩んで日常が──みたいな展開も本当好きでね……。

 

 

 

はい。

というわけで、多大なシステム面の難と細かな部分にはどうしても言及せざるを得ません。ですが、クリアしたからこそ良さがわかると言いたくなる作品でもあります。キャラクターとしては好き、演出もグッドな作品でした。

 

 

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フリーゲーム「Margot」感想

「誰もが湖に引き込まれ、全てが沈んで闇になる」
足を取られたばっかりにな前置き。


えー、今回はRED HOSTILITYさんところのフリーゲームMargot」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

一本道の、短編ノベルゲー。恋愛ものでサスペンス、人間のドロドロとした感情が味わえます。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

多視点で紐解かれていく事件

 

本作は一話終わると視点が交代し、それぞれの内心を本人の見え方に合わせてなぞっていくような構成になっています。いいですよねえこういうの。物語の中心にいるマーゴッとはすでに死体というのもまた美しい。

物語の初めからマーゴットの死は提示されていますが、ただ過去を追うだけのお話ではありません。現在進行形で悲劇の坂道を転がっていく不気味さを楽しめるのも本作の魅力です。

起こったこと、今起きていること、どちらも掛け合わせて悲劇になるところが本作の構成力の秀逸さを表していると思います。

 

 

どうしようもなく身勝手な人々

 

さて、鬱展開といえど種類はいくつかあるものですが、本作は身勝手な人々が折り重なって生まれた鬱です。つまり、かなり自己中心的で陶酔的な人々が多く登場します。

いやでもこれ、この露悪的な感じがすごく好きなんですよね。リネットとか見てられないもん。好き。

三者から見ればぞっとするお話ですが、それぞれの価値観からすれば、彼らはどれも“本当に誰かを愛していた”のだとわかるところも素敵です。皆が皆冷めているところがあって、それでもこれは愛なんだと定義している感じ。気持ちの揺れ動きだけは言い訳なしに本物なんですよね。だからこそ後味が悪い。はぁ素敵。

特にハドリーなんかは最後までプレイすると見え方がガラッと変わる人でした。ネタバレになるので追記で。

 

 

静かに引き込んでくるグラフィック

 

グラフィック面に関しては良点難点併せて。

 

まず難点、フォントと文字区切り。フォント自体細めで大きさも小さく、単純に読みづらさを感じます。さらに各チャプターの序盤は一段落の中に複数の話題が混ざりがちで、ノベルゲーとしては読みづらさを感じました。心理描写して室内の描写して心理描写して行動宣言の流れが一息で行われる、みたいな感じ。

ただ、前述の通りお話の構成自体は読ませる力を感じますし、短編でもあるので気にならない方は気にならないレベルかと。

 

続いて良点。立ち絵はないんですがそれを感じさせないほどに雰囲気作りの上手な作品でした。ドプリと深くに沈み込むような効果音や、ぱっと目を引く背景画像、シンプルに漆黒で締めるメッセージウィンドウなど、どれもが良い具合の暗澹を演出してくれます。

キャラクターの外見描写自体は多いので、見た目を想像しながらプレイしたい派の方も満足ではないでしょうか。

リネットの描写が本当好きです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ドロドロ人間関係、ヤンデレにも似た陶酔的な愛、謎と回答が絡み合う構成などにピンとくる方向けのお話でした。

 

 

追記ではハドリーについて数文だけネタバレ。

 

 

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フリーゲーム「怪盗ドルチェのゲーム2」感想

「犯人は現場に二度現れ、怪盗は警官に幾度となく姿を見せる」

エンターテイナーは人目について然るべき前置き。

 

 

えー、今回はKIJI-N-CHI(きじんち)(kiji)さんところのフリーゲーム怪盗ドルチェのゲーム2」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

前作の感想はこちら↓

shiki3.hatenablog.com

 

システムは前作同様、短編連作風に章立てされたノベル寄りの謎解き探索ゲー。あの締め方でつづられる続編、そりゃ期待もしますよって。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

ギーグ&ガールな新キャラ

 

前作の時点でもサブキャラを数えればそこそこの人数が登場しましたが、今作はさらに準レギュラーのキャラが増えます。その正体はなんと、パパラッチ!

機械好きなダウナー弟と、ドルチェ大好きなお転婆姉。コンビとしての凸凹具合も抜群。二人の会話がものすごーくリアルな姉弟らしさで、見ててにこにこしてしまいました。セリフの端々から力関係が見える感じとか、なんだかんだでお互いの理解者なところとかがすごくきゅんときます。

お話の本筋としても、警官とはまた違った立場からドルチェを追いかける新鮮さがありました。この二人の前衛・後衛な動き方がなんかすごく好きなんですよね。

 

一点惜しむらくとしては、アイリーンの過去やドルチェへの執着のきっかけに関するエピソードがあまりなかったところでしょうか。カーコさんなどなど、エピソードを経て知り合っていく子が多かったので、なおさら気になりました。カカオ研究家の彼女の話があるのなら、それより先にアイリーンのお話にもう少し切り込んで欲しかったかな。

といっても、続編で彼女たちが中心になる可能性もありますし!

もしかしたらそのために伏せられているのかも、しれないし!

 

カノンからのギルへの評価が好きでした。この二人の絡みもいっぱい見たいな。妄想は自由!

 

 

 

いちゃいちゃも会話分岐もたっぷり

 

今作でも二人はラブラブ。ツンデレカノンをドルチェがからかう、というお決まりの流れが今回もたっぷり見られちゃいます。デートスポットも会話分岐も多めで、どこにいってもオシャレな空気が漂います。

ドルチェもカノンも形は違えどたっぷりしっかり相思相愛なところがもう、大好きなんですよね~! どこにいってもノロケとラブと信頼と親愛の嵐、にやにやです。

クリア後も前作同様、いやそれを越える勢いでたっぷりですよ! 未プレイの方はお楽しみに。

二人の関係性もまたワンステップ変化するのですが──ここは追記にて。

 

 

 

謎解きもパワーアップ

 

さて、本作は謎解きの演出もパワーアップしています。

前提条件や問題文を、図式化してぱっと見やすくするうえに、ノベルゲーとして目を引く美しさ。11章の謎解き演出はもう考えることすら忘れて、息を呑んでのめりこんでしまいました。色の演出が美しいんだよなあ……。

ヒントも直球なものが増え、詰むことはなくなるようになったように思います。公式攻略もありますしね。ただ、ヒントや間違った時の会話がみたくてつい回答を先延ばしにしてしまうのはご愛敬。

 

残された謎や回答が、その章のテーマに直結するところもグッド。ここは前作から共通した良点ですね。自然な混ぜ込み方が本当一流だなと思います。

 

 

 

スライドインしてくる各種情報

 

システム面もよりプレイしやすく、見やすく、オシャレになりました。

どこでもセーブできるのが本当に嬉しい……! 謎解きはじっくり時間をかけたいんですよね。BGMも曲名が一目でわかり、素材元をたどりやすくなっています。

また、残りクリック数表示のおかげでどの程度の文量かがわかるので、区切り時を決めやすいのも良点。文庫本を読んでいるような趣もあって素敵でした。

バックログがないのと、ウィンドウ外をクリックしても選択肢クリック判定になっていまうところは難点ですが、もうここはウディタ製ノベル恒例のものなので致し方なし。

むしろノベル専用ツールでもないのにここまで使いこなされている技術力がすごかったです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

前作が楽しめた方なら本作も必見もの。どこまでも続くドルチェの物語を是非。

追記ではネタバレ感想。

 

 

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フリーゲーム「Rerererebirth りりりりばーす」感想

「あなたのために僕は在り、世界すらもひれ伏した」

ゆえに逃げ道は塞がった前置き。

 

 

えー、今回は夜宵空ノ果テ。さんところのフリーゲームRerererebirth りりりりばーす」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド二種、直前のバトルで分岐。そこまでは一本道短編RPG。起動時の注意書きにあるとおり、流血やホラー要素を含みます。

 

  • 演出はものすごく好き!
  • キャラやグラフィックもツボ。
  • システムは大嫌い……。

という好みが極端に分かれる作品でした。

 

いっそADVで良かった……と言いたくなるほど粗はあります。それでもこの話はRPGだからこそ成り立つものだとも思うので、かなりジレンマ。

とりあえず合わなかった点から。

 

 

合わなかった点

 

マップの広さ

歩き回らせることで拠点への愛着や平和さを印象付けたかったのかもしれませんが、プレイヤーとしてはあまり有用さを感じられませんでした。アイテムもなし、セリフも汎用的。ワールドマップも暗転ワープで良い気がします。滅んだ村の印象は冒頭OPで十分根付いているので。

 

雑魚戦

雑魚戦についても同様、必要性は薄め。全て逃げてもクリア可能なうえ、スタンさせてきたり逃走失敗が起こったり。

ただバトル自体は重要な伏線がありますし、ここを伏線にしてくる演出力は高く評価されて欲しいところ! 物語終盤のシンボルエンカウントの発想はとても良かったと思うので、できれば彼の単独行動時も同じシステムだと良かったかなと思います。それかイベント雑魚戦のみで済ませるとか。

 

ノイズ演出

音量演出でじわじわと狂いを表現してくれるのはグッド。でも、同じ演出を片手数見せられてしまうと流石に飽きがきてしまいました。立ち絵の変化はもう少し進んでから初めて出すくらいでも良かったんじゃないかなー、なんて。

 

理不尽即死イベント

RPGでホラゲ的な追いかけっこや即死イベントをやらされるとは思っていなかったので、やや裏切られた感。でもアクションの難易度が易しいところは救いでした。

 

 

好きな点 

 

一方で好きな点! ここは生き生き語っていきます。 

 

 

見てぞっとさせるグラフィック

 

マップの場所名称の表示とか、増えているアレとか、急に異彩を帯びる画面とか。「おや?」という違和感から「あっヤバイ」と総毛だつ恐怖までバリエーション豊かに感じさせてくれるところが大好きです。

 

 

どうしようもない不穏に詰んでいく展開

 

詳しく語るとネタバレになってしまいますが……。

どうしようもなさと、わかっていても逃れられない展開と、八方塞ぎ感に震えました。本人が言った通りの展開になるシーンが多かったんですよね。だからこそ心に刺さって、楽しかったです。

例の彼は区切りごとに記憶の共有も起きてるのかなあ。例のあれを自分で作ったのかなと思うと微笑ましい、かもしれない。

 

 

おまけ部屋

 

クリア後おまけで見れる未使用立ち絵がすごく嬉しかったです。ああいうの好き。作者様の思わぬ嗜好も聞けて、しかも近しい好みで驚きました。とてもそうだとは思っていなかったし全く情報なしで触ったゲームだったのでなおさら。スタンド使いは惹かれ合うってことなんでしょうね。違うね。

エンドによって聞ける情報が異なるのも嬉しい。ただ、おまけ部屋の選択肢を全て読むと追加情報を何度も聞くことになる点だけはちょっと気になったかな。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

キャラの見た目といい、展開の緩急といい、性癖はすごく合うんですよね……!

挙げた合わなかった点も、短編なので気にならない方もいると思いますし。裏表のある演出に惹かれる方にはおススメしたい作品でもありました。

 

 

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