「あとで食べれるとわかっていても、つまみ食いはやめられない」
叱ってくれるのはきちんと見ている証な前置き。
えー、今回は栖王ヴァルハラ3丁目およびほーむorあうぇいさんところのフリーゲーム「わたしのお名前なんですか」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エンド分岐有、全クリして数十分くらいの恋愛探索ゲー。1マップで難しい謎解きやアクションはなし、二人の会話劇をひたすら楽しむ作品です。
というわけで、良かった点など。
起こるイベントやエンド内容など、軽く察せれる程度には書いてしまっているので、未プレイの方はご注意ください。
ミニチュア感がかわいいワンマップ
家探しをして記憶喪失の手掛かりを探そうというのが本作の目的です。で、注目したいのがこのマップの緻密さと生活感でした!
なんというか、置いてある細々とした家具やアイテムがすごくかわいいんですよ! ミニチュア箱庭って感じが好き! 少し雑然とした物があったり、置き方がざっくばらんになってる場所があったりするのも、二人の生活がぼんやりと想像できて楽しかったです。
探索ゲーとしても広すぎず狭すぎず、家探しが捗りました。
これでもかと詰み込まれた会話差分
室内のものは全て調べられると言っても過言ではないくらい、ありとあらゆるものに台詞反応が仕込まれています。タルにはとりあえず話しかけたくなる方や、宝箱を二回調べたくなる方は必見です。
一番驚いたのが、椅子が調べられること。探索ゲーで棚や鏡を調べる発想はあっても、謎解きの絡みなしで純粋に椅子で何かあるってけっこう珍しい気がするんですよね。なので、気づいた時は嬉しくて飛び上がりました。「ここにも!?」という驚きが常にあります。
ただ調べるだけじゃなくて、主人公のスキルを使ってちょっとしたお遊び事ができるところも好きです。ウディタだからこそできる要素。思いのほかやれることが多くてにこにこしちゃいました。説明文がどれも面白いんだよなあ!
あとすごく好きだったのが、本を読む演出について。プレイヤー側の操作を挟むことで、ちょっとずつ区切って、噛み締めながら読むことができます。一つ一つの思い出や、一ページに込められた想いを大事に大事に開いていくようで、すごく好きだったなあ……。
おちゃらけ×クールのテンポよさ
単純に、掛け合いがめっちゃ面白い!
本記事を一言でまとめるとこれに尽きます。だって笑うよあれは。RPGあるあるなメタギャグも交えつつ、打てば響くテンポの良さでさくさくとプレイヤーの腹筋の耐久実験をされました。ごちそうさまです。
主人公がかなりクールなんですが、拒絶するタイプの冷たさじゃなくて、なんだかんだ言いつつ真顔でノッてくれるのがすごく良いんですよね……。ツッコミみせかけたボケになるところも好きです。インベントリネタ数日ツボでした。
謎(既知)の男性のほうも、愉快なお調子者かと思いきやなんだかんだで優しい人だなと思う訳なんですよ。しっかり者というか生活面ではしっかり者にならざるをえないというか、二人とも良い具合にバランスが取れてるなー、なんて。あのキャラで含蓄深い掛け合いができるところも、ずるいなーと思います。ずるい。良いキャラだ。
クリア後のおまけ要素にもぎゅぎゅっと掛け合いが詰まってて、隅々まで二人の相性の良さを感じさせられました。
微笑ましい想いの通じ合い
興味深いのが、記憶喪失という設定でありながら説明的な台詞はほとんどなかった点です。いや、説明自体はあるんですが……。ほとんど二人の会話と一人称で進んでいって、思わせぶりなモノローグみたいなのはありません。それでも、二人の気持ちがすごく伝わってくるんですよ! 特に乙女ゲーをよくプレイする身としては、心理描写≒ポエム≒モノローグという印象があるので、新鮮さがありました。掛け合いや思い出を横から覗き見しているだけでも、十分気持ちは伝わるんだなあ。人間を描くのが上手いって言うの、こういうことだろうなあと思います。片方は耳長だけど!
あと嬉しかったのが、バッドエンドについて。少々ネタバレ掠ってしまうかもしれないんですが……。
私はバッドの回収が最後だったのもあって、少しハラハラしていたんですね。なまじ二人の気持ちの変化を知ってしまった状態だったので、また初期の二人に戻ってしまうのは寂しいよなあと。だから、こう、塩梅が良かったといいますか……。シャットダウンしてしまうのではなく、ちょっとした希望も残ってて嬉しかったです。
とまあ、こんな感じで。
タイトルが、“わたし”のお名前なんですか、なところも好きです。あっちが言ってるんだなあ。ふふふ。
さくっとクリアできるお手軽ゲーなので、探索好きさんは是非。