うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「わたしのお名前なんですか」感想

「あとで食べれるとわかっていても、つまみ食いはやめられない」

叱ってくれるのはきちんと見ている証な前置き。

 

 

えー、今回は栖王ヴァルハラ3丁目およびほーむorあうぇいさんところのフリーゲームわたしのお名前なんですか」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐有、全クリして数十分くらいの恋愛探索ゲー。1マップで難しい謎解きやアクションはなし、二人の会話劇をひたすら楽しむ作品です。

 

というわけで、良かった点など。

起こるイベントやエンド内容など、軽く察せれる程度には書いてしまっているので、未プレイの方はご注意ください。

 

 

 

ミニチュア感がかわいいワンマップ

 

家探しをして記憶喪失の手掛かりを探そうというのが本作の目的です。で、注目したいのがこのマップの緻密さと生活感でした!

なんというか、置いてある細々とした家具やアイテムがすごくかわいいんですよ! ミニチュア箱庭って感じが好き! 少し雑然とした物があったり、置き方がざっくばらんになってる場所があったりするのも、二人の生活がぼんやりと想像できて楽しかったです。

探索ゲーとしても広すぎず狭すぎず、家探しが捗りました。

 

 

 

これでもかと詰み込まれた会話差分

 

室内のものは全て調べられると言っても過言ではないくらい、ありとあらゆるものに台詞反応が仕込まれています。タルにはとりあえず話しかけたくなる方や、宝箱を二回調べたくなる方は必見です。

一番驚いたのが、椅子が調べられること。探索ゲーで棚や鏡を調べる発想はあっても、謎解きの絡みなしで純粋に椅子で何かあるってけっこう珍しい気がするんですよね。なので、気づいた時は嬉しくて飛び上がりました。「ここにも!?」という驚きが常にあります。

 

ただ調べるだけじゃなくて、主人公のスキルを使ってちょっとしたお遊び事ができるところも好きです。ウディタだからこそできる要素。思いのほかやれることが多くてにこにこしちゃいました。説明文がどれも面白いんだよなあ!

あとすごく好きだったのが、本を読む演出について。プレイヤー側の操作を挟むことで、ちょっとずつ区切って、噛み締めながら読むことができます。一つ一つの思い出や、一ページに込められた想いを大事に大事に開いていくようで、すごく好きだったなあ……。

 

 

 

 

おちゃらけ×クールのテンポよさ

 

単純に、掛け合いがめっちゃ面白い!

本記事を一言でまとめるとこれに尽きます。だって笑うよあれは。RPGあるあるなメタギャグも交えつつ、打てば響くテンポの良さでさくさくとプレイヤーの腹筋の耐久実験をされました。ごちそうさまです。

 

主人公がかなりクールなんですが、拒絶するタイプの冷たさじゃなくて、なんだかんだ言いつつ真顔でノッてくれるのがすごく良いんですよね……。ツッコミみせかけたボケになるところも好きです。インベントリネタ数日ツボでした。

謎(既知)の男性のほうも、愉快なお調子者かと思いきやなんだかんだで優しい人だなと思う訳なんですよ。しっかり者というか生活面ではしっかり者にならざるをえないというか、二人とも良い具合にバランスが取れてるなー、なんて。あのキャラで含蓄深い掛け合いができるところも、ずるいなーと思います。ずるい。良いキャラだ。

クリア後のおまけ要素にもぎゅぎゅっと掛け合いが詰まってて、隅々まで二人の相性の良さを感じさせられました。

 

 

 

 

微笑ましい想いの通じ合い

 

興味深いのが、記憶喪失という設定でありながら説明的な台詞はほとんどなかった点です。いや、説明自体はあるんですが……。ほとんど二人の会話と一人称で進んでいって、思わせぶりなモノローグみたいなのはありません。それでも、二人の気持ちがすごく伝わってくるんですよ! 特に乙女ゲーをよくプレイする身としては、心理描写≒ポエム≒モノローグという印象があるので、新鮮さがありました。掛け合いや思い出を横から覗き見しているだけでも、十分気持ちは伝わるんだなあ。人間を描くのが上手いって言うの、こういうことだろうなあと思います。片方は耳長だけど!

 

あと嬉しかったのが、バッドエンドについて。少々ネタバレ掠ってしまうかもしれないんですが……。

私はバッドの回収が最後だったのもあって、少しハラハラしていたんですね。なまじ二人の気持ちの変化を知ってしまった状態だったので、また初期の二人に戻ってしまうのは寂しいよなあと。だから、こう、塩梅が良かったといいますか……。シャットダウンしてしまうのではなく、ちょっとした希望も残ってて嬉しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

タイトルが、“わたし”のお名前なんですか、なところも好きです。あっちが言ってるんだなあ。ふふふ。

さくっとクリアできるお手軽ゲーなので、探索好きさんは是非。

フリーゲーム「ロスト・ヘリアンサス」感想

「悲しみを乗り越えるために痛みを思い出そう」

強くなるために忘れたものをまた拾い直す前置き。

 

 

えー、今回はtettoets/縁さんところのフリーゲームロスト・ヘリアンサス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

クリアまで1時間くらいのRPG。分岐はあるけどエンドは一つ、のはず。ワンマップフェス、というマップ一つ縛りの企画に参加されているフリゲです。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

地続きからふと色を変えるBGM

 

戦闘に入ってもBGMが地続きなところが好きです。こういう、切り替わらずにずーっと同じBGMで進み続けるゲームって、世界観を重視されてる作品が多い印象。この曲もまた、幻想的で良いんですよねえ。

一方で、ボス戦になるとついにBGMが切り替わります。戦闘曲ではあるんですが、どことなく悲壮感があってすごく好みな選曲でした……! ボス戦前の口上も素晴らしいんだこれが! 

世界観の濃度を高めるのはBGMだと固く信じている人間なので、その点しっかり使いこなされてて素敵でした。

 

 

良い具合に甘めのステータス

 

レベルを上げて自分でステータス振りをするタイプのシステム。こういうゲームだと私はつい極振りしてしまうタイプなんですが、本作は私の腕にちょうどよく甘めのバランスでした。無駄なレベリングは不要だけど、軽く遊ぶ程度に雑魚戦はしておいたほうが良い感じ。

あと、きちんと頭打ちになるポイントが設定されているのも上手です。攻撃ばっかり上げたがる私のようなプレイヤーさんは、たぶん向日葵で立ち止まる、はず。一方で魔法型のプレイヤーさんは、二回攻撃してくる敵に立ち止まることになるんじゃないかな。この辺りのレベルデザイン好きです。

自分のプレイを思い返すと、魔法のステータスを魔法攻撃のためでなく敵の魔法を軽減するために上げていたように思います。優先度の低いステータスはあるけど、無駄にはならないような印象でした。

 

 

 

段階を追って解放されていく要素

 

レベルデザインといえば、マップの開放の仕方も好きです。単純に通せんぼしてる障害物と、この先に向かうかどうかの選択を迫られる標識、二種類あるところがさりげなく斬新だなーと思ってまして。なまじ標識のほうは横をすり抜けられるデザインだからなおさら、先に行きたいけど行けない、進むことへのためらいを感じるんですね。ここがストーリーの根幹に触れるような良いプレイ感を生んでるなあと思います。

記憶の開放も面白くて、敵の情報とか対処法がこっそり載ってるんですよね。そういうものだと思って疑問視していなかったゲーム内の存在と、改めて向き合う感じがします。世界を端々まで味わえるゲームでした。

NPCの扱いといい、ちょっとした要素を綺麗に束ねて世界観を作っていくのが上手いなあと思います。

 

 

 

薄ぼやけた記憶の中で、明確に伝わるテーマ

 

ストーリーはふんわりとぼかされていて、強くなって手に入れた記憶をプレイヤーが繋いだり補完したりしてピンとくるようになっています。このお話も、考察というほど小難しくなく、一通り要素を全部拾い集めればすんなりと理解できる構成です。

で、私、この作品の“強くなる”の意味がとても好きなんですよ!

軽くネタバレに触れてしまうかもしれないんですが……結末は同じでも選択肢によって分岐があるのが良いなあと思ってるんです。決別でも、感謝でも、どちらでも通じるところが優しくて好き。

 

何かを大事に思う方法とか、痛みにどう立ち向かうかって人によって本当にたくさんやり方があると思うんですね。その可能性を、狭めずにいてくれたのがありがたかったです。

まとめると、テーマがはっきり伝わってくるけど回答はプレイヤー次第なところが好き。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

繊細で、幻想的で、郷愁を感じる世界観が魅力的な作品でした。

 

フリーゲーム「精霊の庭」感想

「恵みの満ちた森で私はただ生命を続けさえすればよかった」

快楽なるものは全て余分であった前置き。

 

 

えー、今回は茶番nuさんところのフリーゲーム精霊の庭」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐有、性描写有、BLノベルゲー。

ファンタジー要素も含みますが、民話・神話に近い雰囲気で、不思議とストイックな印象を受ける作品です。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

無表情アクティブ主人公、エディハ

 

顔グラ差分は豊かですし、驚いたり困ったりもするんですが、何故か無表情クールの印象が強い主人公です。

で、好きなポイントの一つが、作中でエディハはめったに笑わないところ! 地の文の描写もそうですし、顔グラもそう。

そして作中で誰も言及しないから、プレイヤーだけがハッと気づくんですね。“あの”エディハが笑った、と! 

この、気づいてこそ強く伝わってくる実感がたまりません。しかもその笑顔もまた、エンドによって複数意味合いを含んでいるのがすごくて───ゾクゾクします。

 

あと性格的な面だと意外にアグレッシブなのが印象的。真顔で自壊していく姿は、時に不安にもなり、時に天然で微笑ましくもなります。このギャップが素で起こる辺りが、本当にこう、キャラ以上に一個人として息づいているなー、なんて。

 

 

 

忠義の男と好奇の男

 

さて攻略対象はと言うと、こちらも良い具合にパッキリと個性が分かれています。

 

特に、キールが攻めっていうのがすごくツボなんですよね……。前線に突っ込んでいくエディハの手綱を握りつつ、あっさり逃げて適材適所。後衛タイプって何かと受けに配置されがちなので、本作はそういう属性に囚われず二人の関係上自然とキールが上になる感じが生々しくて萌えました。

キール、狡猾ってわけでもないところが好きなんですよ。享楽寄り、でいいのかな。研究者だなあとは思うんですが、下手すると何も知らない子どもの様にも見えます。でも頭は良いから、不和は自覚できてるんですよね。そのうえで享楽にレバー入れてる感じが好きでした。

 

さて、もう一方の攻略対象、レウドも忘れられません。THE主従と言わんばかりのキャラで、すごく常識人なところに驚きました。なんというか、前作で出会ってきたキャラが皆癖があったり内的な欠損が見事にシナリオのテーマと絡んでいたりしていたので、ここまでしっかりガッツリ優等生なキャラが出るとは思っても見なかったんですよね……。

ネタバレ絡むので詳しくは追記に入れますが、レウドが優等生だからこそできた展開もあったように思います。

 

また、サブキャラにもちょっとしたCPがいまして、こちらの関係性もすごく萌えました。心底同調するわけじゃないんだけど、離れないし離れられないしみたいな、この、想いに差はあるし形も違うけど傍にいる関係性が響くなあと思います。

 

 

 

精霊に守られる幻想的で腐臭のする世界観

 

精霊と言われるとこう、光というか、清らかで自然に根差していて恵みをもたらす何者かというイメージを受けます。そして実際、本作の精霊は確かにその通りです。……一つの側面だけ見れば。

いやあ、精霊と言ってあれをお出ししてくるの、初見時ほんと衝撃だったんですよ。女神についてもかなりえげつないことが起こってますし、心底、民話や儀式の世界だなあと思って震えあがったんです。こういう世界観本当大好き。

キャラの関係性や恋愛だけでなく、世界全体として、一つのお話としてもかなり味わいがいのある内容でした。

 

なお未プレイの方への説明として、血がブシャー、みたいなグロはありませんし脅かし要素もありません。ただ、想像するタイプの方や、精神的に削られるのがしんどい方はけっこうキツイ気がします。例の監禁シーンとか……。

なお私は大好きなのでもろ手を挙げて喜び、心を痛め、震え、味わいました。

 

 

 

エンディングの選曲

 

私エンディングを迎えてあの曲が流れ出した時、本気で身震いしたんですよ。あんな、あの曲をこの展開に選ぶのか!という。

もうこれは是非ともプレイして感じて欲しいんですけど、エンドの雰囲気に対してすごく曲の印象が違ってて、でもガチっとハマってるんです。戦闘曲をエンドロールに持ってきたり、カジノでデスメタルが流れてたり、なんかそういう型破りの意外性を感じました。

行く末に暗黒しか見えないエンドにあの勇猛な曲を選ぶことが、本当に、震えるほどセンスを感じるんだ……。

大好きです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

泥と闇の中で真っ直ぐに立っているような印象の作品です。神秘的な世界、常識感覚のズレたキャラ、友とも恋とも呼び難い関係性などにピンとくる方へ熱烈におススメしたい所存。

 

追記ではネタバレ感想など。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

続きを読む

フリーゲーム「デュオストーリア」感想

「見た目が全てではないけれど加算がされないわけでもない」

プラスはもちろん頂いておきたい前置き。

 

 

えー、今回はZIBETA.labさんところのフリーゲームデュオストーリア」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

シスコン弟と絶対零度ショタコンな姉がゆく、一本道短編RPG。ノリはギャグまっしぐら、難易度は二種類あるのでサクッと派の方もがっつり派の方も楽しめるかと。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

生成術と錬金術

RPGとして面白かったのは、生成術および錬金術のシステムです!

まず姉弟のキャラクター性がゲームシステムとして生きているのが素敵。そしていつでもどこでもアイテムや装備が作れるこの仕様、作品のボリュームとの相性の良さも感じます。

 

というのも、短編RPGってスキルを覚えたりアイテムを手に入れたりしても使いきる前に終わっちゃう印象が強くありまして。そうなると特に道具屋やお金、ドロップアイテムは言葉通り宝の持ち腐れになりがちなんですね。

でも本作は必要なものさえ作ればいいし、余ったマナは仲間の入れ替えに使えるしで、色々とお得な感じがありましたねー。それに回復魔法使えない姉弟にとって、特に生成術はかなり重要になります。

きちんとオリジナルシステムが重要なものとして機能しているという点がかなり好きでした。

 

 

 

おいでませイケメン召喚獣 

パーティメンバーは姉弟が固定ですが、この他に2名の召喚獣をお好みで呼び出すことができます。

獣といっても人間体、これがまたイケメン揃いなんですよ! 個性もしっかりあって、しかも連れ歩くとちゃんとレベルアップしてくれるのでどんどん愛着が湧いてきます。

 

嬉しいのは、一度パーティを解散して再度呼び出しても育てたレベルは維持されるところ! てっきりアイテムみたいな扱いなのかと思って、レベルリセットになるのではとドキドキしてたんですよねえ。なのですっごく嬉しかったです!

また、最終戦に連れて行った召喚獣には一言コメントをもらえたり、初召喚・再召喚・帰還の3パターンに分けて台詞が用意されているので、会話差分も細やかです。

キャラとしてはガーディアンが好き!! わかっちゃいるけどときめいちゃうんです、実際強いし!

 

 

 

全力シスコンナルシスト弟

さて、ストーリーとしては、漫画的に言うと連載物の読み切り版って印象です。今までもこれからもこの姉弟は旅をしてきていて、弟の問題の区切りがついたら良い感じに平和にまとまってくれるんだろうなあというのが伝わってくる感じ。

 

私の嗜好としてはストレートにバカップルな両想いが好きなので、ネシカのツンツン冷たい対応はちょこっと合わないところがあり……。謎の少年のおかげでエルマノが一見当て馬っぽくなるところも併せて好みではないなと思います。

が、ネシカ→ショタの反応とエルマノ→ネシカの反応のシンクロっぷりは好きです! こういう似てるポイントが見れるのは姉弟ものとして実に萌えです。あと、エルマノのネシカ大好きっぷりや、自信たっぷりポンコツ感も好き。実力のあるナルシスト(ただしうっかり屋)みたいな。隙があるキャラは微笑ましくて良いですよね。

 

あと、姉のほうがパワー系で弟のほうが魔法使いタイプなところも好き。魔法使い男大好きです。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

お互い大事なんだなという絆はしっかりと伝わってくるし、明るいプレイ感で楽しい話でした。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「僕彼彼女彼女とコバルトブルー」感想

フリーゲーム「メリースウィート&ビター」感想

フリー版「ビハインド・ワンズ・バック」感想

フリーゲーム「空と白おばけ」感想

「あの空の様に、高く遠く包み込む何かでありたかった」

人は透き通るには余分を抱えすぎている前置き。

 

 

えー、今回はTwilight.◆さんところのフリーゲーム空と白おばけ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

一本道、探索あり、会話差分等確認しつつクリアまで2時間くらい。謎解きや追いかけっこは無しで、動かす読み物に近い雰囲気です。

 

で、前置きとして、私的な総評はマイナス寄りでした。なのでちょっと批判気味、閲覧注意です。ネガティブ見たくない方は赤字までスクロールして頂くと良いかも。

一応後味が少しは良くなるように、まずは合わなかった点から。

 

 

 

あなたのせいではなく誰かのせいなお話

 

一言でいうなら本作は泣きゲーです。

探索→回想→探索の短編連作のような形式で進んでいくんですが、どの物語にも涙があり、傷があり、喪失があります。この展開自体は好きです、誰かの心に触れて一つずつ浄化していく展開、キャラ重視ADVの王道ですごく良いよな~って思います。

 

ただそこで合わなかったのが、慰めの表現の仕方について。

ほとんどのエピソードに明確な元凶や雑な悪がいて、なんというか、正義の圧が凄まじいんですよ。すごくすごく意地悪い言い方をすると、「私達は黙って耐えるけど、あいつらが悪いって、プレイヤーさんはわかってくれるよね?」みたいな圧。「あなたのせいではない」という慰めが優しさではなく「あいつが悪いせいだ」にすり替わってしまうような展開が多く見られて、正直不気味でした。

なんだろうな……。表面上は、皆が皆を許し合って慰め合う温かな世界に見えるんですが、本質が真逆なんですよね。傷を受け入れるっていう展開のオチで、逆に傷が消されてしまったり。同情や共感で涙しがちなキャラが、最後の最後で痛烈に相手を拒絶したり。綺麗な物語を作ろうという意識が強いのか、逆に、悪や傷を一切許さず歪めて消して排除していく攻撃的な作品に見えてしまいました。

 

なので、感動ゲーとして作られているのであろうことを踏まえたうえでも、「優しい話」とは思いづらいかな……。

 

 

流した涙も三度重ねるとお腹いっぱい

 

ゲームとしてのテンポは良く、各種進行の気遣いもあってさくさく進みます。ここは後述するとして……。

一方で、テキストのテンポはかなり間延びしています。まず、重複するやり取りが多い点。例えば「一緒に行こう」「うん」が「行こうか」「そうだね」「一緒に行こう」「うん」になるみたいな。もちろん、じっくり時間を取って噛み締めさせたい時には大いに良いやり方だと思うんですが、常にこんな感じで話が進むのでダレがちです。

 

続いて、回想について。本人が過去を語る→回想シーンが入る→本棚でエピソードが語られる、と同じ話を三回見ることになります。特別な別視点や知られざる伏線はなく、同じ展開を言い換えだけで三回繰り返します。まあ最後の一回は探索をガン無視したらいい話ではあるんですが……。

まあこれは流石にそれ昨日も聞いたよお爺ちゃん、みたいな気分になってしまうのは許して欲しいところ。

一枚絵を入れたいなら本人が語り出したところで回想に転じたり、主人公の反応を入れたいなら回想の途中でシーンを区切ったり、最後のエピソードはポエム的に三行でまとめて思い出の一頁としたり、それこそ色々やりようはあったかなと思います。

 

まとめると、説明過多で反復がくどい。

グラフィックにかなりのパワーを感じる作品ですし、顔グラ変更だけでもずいぶんとプレイヤーに感情は通じるものだと思っています。なので、何でも説明しようとするのではなく、多少の想像の余地や遊びを設けておくとより心に響いたのではないかなー、なんて。前述の圧も減るかと思いますしね。

 

 

 

 

 

と、マイナスな話題はこのくらいで。

要はテキスト面が合わなかったな~って話でした。

 

続いて良かった点について!

 

 

 

 

しっかりした誘導と配慮

 

まず感じたのが、ゲーム進行がしっかりしていてとっつきやすいこと!

本作の世界は白黒と青空で構成されています。こうやってマップの色数に制限をつけると、普通だと通行可能な場所や調べられる場所がわかりづらくなってしまって、ちょっとしたところで詰まってしまうパターンが往々にしてあるんですね。

しかし本作はここが違います。白い鳥の示してくれるポイントを調べればよい、というシンプルさ、これがものすごく効いてるんですよ! 鳥のいるポイントがまた上手くて、明確に調べるべきものが伝わるような位置にいてくれます。鳥がぱたぱた羽ばたくことで視認性がぐっと上がっているのも素晴らしい。

色を絞りつつ、進行はさくさく。プレイヤーへの配慮が行き届いている有難い設計だなと感じました。

 

 

会話合間のセーブや豊富な会話差分

 

長めの会話や回想の合間には、操作可能のタイミングを設けてプレイヤーの休憩時間を作ってくれます。会話自体は前述の通り少々間延びしている印象が強いんですが、こうしてセーブするタイミングを作ってくれるのはとても助かりました。

ツクール製でメッセージログが見れるのもさりげなく超技術。細やかな気遣いが光ります。

あと嬉しかったのは、寄り道のタイミングが分かりやすい点。会話分岐や差分を集めるのが好きなので、羽根を拾うごとに、あるいはそれ以外のタイミングでもみんなの反応が少しずつ変わっていくのが楽しかったです。

毎回飲むものが違うあの子が好き。

 

 

 

幻想的なグラフィック

 

さて、最後に上げるのはやっぱりここ。圧倒的なグラフィックのセンスの良さです。タイトル画面やスクショを見て、透明に遠く響く青空にぐっと心を掴まれた方も多いのではないでしょうか。

私、喫茶店が一番好きなんですよー! 

屋内で見える圧倒的な空、本当に綺麗で、マップ入った瞬間に思わずスクショ撮っちゃいました。大好きです。

 

やっぱり感動ものって演出、グラフィックがものを言うジャンルだと思っていまして。その点本作はかなり“強い”作品だなと感じました。小難しく考えず、画面を見ているだけでも呑まれてうるっと涙しそうなくらい、上手い雰囲気作りがされています。魅せ場となるスチルもあり、おまけ絵もあり、プレイ時間に比べて枚数としてもなかなかのもの。グラフィック面は満点って感じでした。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

泣きたい気分のときに泣ける映画を探す、みたいな感じで、ライトに感動ものを探している方には合うと思います。

フリーゲーム「姫の復讐」「姫さまは薄幸がお好みっ!」感想

「Shall We Dance なんて無粋な人ね」
舞台は自分で作り上げるものではなくて? な前置き。

 


えー、今回はおにぎりと四葉のクローバーさんところのフリーゲーム「姫の復讐」「姫さまは薄幸がお好みっ!」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。


どちらもオリジナルのバトルシステムが採用されている、前進のみのノンフィールドRPG。目押しゲー、アクション寄り。

時系列としては『姫の復讐』→『姫さまは薄幸がお好みっ!』、前者が陰鬱暗めなのに対して後者は前向き明るめ。
なお『姫の復讐』のほうはエンド分岐有ですが、トゥルーの条件は体感かなり厳しめ。アクション慣れしてる人向けだと思います。

 

 


というわけで、各作品の感想など。

 

 

 

『姫の復讐』


柔らかな童話タッチと黒塗り背景のギャップ

タイトルからしてちょっと物騒な本作。こちらの期待に応えるように、背景無しの真っ暗な画面からオープニングはスタートします。
なのでてっきり油断してたんですね。戦闘画面に入るまで。
和やかなタッチで案外明るく終わるのか、はたまた可愛いお姫様がクールに無双するのか? ゲームのシステム自体が先の読めない作りになっているように、お話のほうもどことなく先行き未明の不安感を味わえました。

 

 

ある程度ゴリ押し可能な目押し

本作のバトルはオリジナル、タイミングよくキーを押せば大ダメージや華麗な防御が決められるシステムです。
実は初見時かなり戸惑いました。公式サイトからDLしたらreadmeがなかったもので……へへへ。防御時も目押しできることにラスボス戦で気づき、ハイスコアに至ってはクリアした今でも未だにどういう機能なのかわかっていないなど。回復薬使って全快になったはずだけどスコアは999とかじゃなかったんですよね。道中でいかに攻撃を受けずに倒せたかが鍵ってことなのかなあ。


ともあれ、説明無しでもなんとなく掴めるデザインなのは上手いなーと思います。説明入れると一部ネタバレになる気もしますしね。

あと嬉しいのが、最悪ゴリ押しでもなんとかなるところなんですよ! アクションがかなり苦手なので、ラスボスで詰まってしまいまして……。初めは、ここまで来たのにクリアできないのかな、としょんぼりしてたんですね。でも光明はあります。連打です! 


まあそれでもトゥルーは厳しいですが……。でもクソ雑魚プレイヤーとしては一応のエンドに辿り着けるだけでもありがたいので……。仕様かどうかはわかりませんが、連打が可能というのをあえて残しておいて頂けたんだとしたらありがたいなあと思います。 

 

 

 

本作についてはだいたいこんな感じかな。

 


『姫さまは薄幸がお好みっ!』


合わないなーと思う点もあったので、まずそちらから。


BGMがノーツの妨害をしてくる

リズムゲーというより目押しゲーです。コマンド式バトルな時点で当たり前な気もしますが、音ゲー×RPGなものを期待しているとかなりズレを感じます。
単純な話、BGMに引きずられちゃうんですよね! はっはっは。アクションが苦手なのもあってラスボスはBGMミュートにして戦いました。選曲自体は良いBGMがたくさんあったので惜しまれる気持ち。

 


各種コマンドのバランスが悪い

道中、宝箱に出会ったんですが、大半は開けられませんでした。作中のTIPSを見てニーズヘッグに頼るようにして初めて数個開けられたかな、くらい。宝箱自体あんまり旨味を感じなかったのもあり、期待するだけ損な印象がありました。これなら無しにするか、初めからニーズヘッグ頼りの選択肢一つだけで良かったんじゃないかなー、なんて。
併せて、「ゆっくり進む」も必要性が薄く感じられました。HP温存用かと思いましたが、それでも所詮HP1かHP2の違いしかありませんし、「何か探す」で十分補えちゃうんですよね。「探す」がまったく先に進めないコマンドだとしたら「ゆっくり」にも価値が残ると思うんですが、「探す」でも勝手に進行してしまうことが多々あったので、むしろ上位互換な気がしています。
他、ロード直後に敵と会うことがあったり、HP回復=敵との遭遇率向上のせいで回復できず積みになったり、色々と大味な印象が強かったです。

 

 

と、マイナスな話はこの辺にして。
一方で良かった点

 

 

憧れが本物になる少女の成長物語

可哀想なヒロインになりたい! から始まる元気いっぱいの大冒険。
動機こそ一見ミーハーですが、その奥にはしっかりとしたテーマがあり、等身大の悩みがあり、ステラなりの確固たる結論が導き出されます。
冗談みたいに響いていた薬草取りの話が、最後にはグッと真に迫るお話になってくれるんですよ。もうねー、ラスボス手前のニーズヘッグの語りが大好きだ!!


一方ラストの、ギャグとシリアスがしっちゃかめっちゃかな展開は少々置いてけぼりになりましたが……。正直ウェイトとかシーン区切りとか欲しかった気持ち。でもまギャグ作品として明るく整えたかったのかな、という方向性みたいなものは受信しました。
挫けることはあっても折れることはない、一貫して明るい作品です。

 

 

レベル上げでなんとかできる!

アクション苦手な私にとって大変嬉しかったのが、レベル上げができるところ!
その前に「休む」コマンドについて。HP回復は微々たるものなのに敵にはガンガン会って逆にHPが減ってしまうという具合で、初めはかなり困っていたんですね。でも違うんです、このコマンドの真価は無限にレベリングができるという点にあるんです。序盤にレベル上げはしっかりやっておかないと詰むのは確かなんですが、それでも打開策があるのはすっごくありがたい点でした。


RPGってこう、スキルが問われないというか、音痴でも運動下手でも反射神経無くてもクリアできるジャンルの一つだと思ってるんですよ。そう信じたい! なので、ゴリ押ししようと思えばできるつくりなのは本当に助かりました。感謝。

 

 

ポップでキュートなデフォルメ絵柄

恐るべき魔竜ニーズヘッグと、その名轟く魔王の娘ステラ。と肩書を乗せると強面に見える気がしますが、その実見た目はとってもキュート。『姫の復讐』の戦闘画面も可愛らしい雰囲気でしたが、今作もデフォルメかわいくて微笑ましかったです。
前作ではギャップとして良い具合に使われていた絵柄が、今作では逆にお話と合わせて統一感あるものとして使われていたように思いますね。こう、おんなじ絵柄でも受ける印象がだいぶ違うってところが興味深かったです。
要は、タイトル画面のキラキラわくわく可愛い感じがすっごく素敵!

 

 

 

とまあ、こんな感じで。
どちらも毛色は違えどまとまりの良い作品でした。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

フリーゲーム「万妖夏祭り」感想

「夕闇、提灯、金魚の尾びれ、ほのかに貴女を導くものよ」
どこへ行くかはわからぬまんまな前置き。

 


えー、今回は児戯ズムさんところのフリーゲーム万妖夏祭り」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

というわけで、良かった点など。

 

二分する共通ルートとわかりやすいルート分岐

興味深いなと思ったのはルート分岐の仕方です。
乙女ゲーというと、攻略対象決定→エンド分岐な印象がありますが。本作は逆で、エンド分岐→攻略対象決定な構成になっています。

なので攻略も簡単。初めと、ラスト前を数回調整するだけで全て回収できます。選択肢自体は多めなゲームなので、攻略に悩むことがなくて助かりました。


で、さらに嬉しいのがテキスト量がかなり増えること!
エンドを目指すだけならさくっと短編仕様。でも、お気に入りキャラとの会話を網羅しようと思うとじっくり遊べます。ただの反応差分じゃなくて、がっつりイベント自体変わるのが嬉しいんですよね~。エンド回収した後もついつい全部の選択肢を回収してしまいました……!

 

 

 

見て楽しめる妖怪変化の祭り

夏祭りを楽しんでいたはずが、ふいに妖怪たちの祭りに紛れ込んでしまった──というのがざっくりとした導入になります。


ここで面白かったのが、世界観について。黄泉戸喫といったメジャーなものから、小豆洗いがタイヤキ屋なんていう斬新な設定まで多種多様。まさに妖怪ものの趣をじっくり味わえます。ややテンポは間延びしているものの、説明をしっかりしてくれるので、和風作品初の方も安心かと。
ところどころで出てくる小物のカットイン(?)がすごく印象的なんですよね! 射的屋さんの景品がめちゃめちゃ可愛かった……! 目で見るからこそわかりやすいというか、現在日本でも見慣れた屋台に近いからこそ、違和感が強烈に不気味で愉しく感じられます。金魚すくいの人魚の稚魚のくだりとか好きだったなあ。


中には物騒なワードが出てきたりよくよく考えると非道な状況だったりする場面もあるのですが、攻略対象二人ともがなんだかんだで悪用はしないだろうなあと思える人柄なので、怖いことにはなりません。妖怪らしくほんのりと恐ろしい雰囲気を楽しみつつ、ほのぼのとマイルドに整えてある印象でした。

 

 

 

二人のこれからに心躍るお話

攻略対象は二人、とサブキャラが何人か。
公式では恋愛要素は薄めかもというふうな書き方がされているんですが、好意自体ははっきり見せてくれます。そしてお話としてはこう、進展も見られる雰囲気で終わるので、糖度は感じる展開でした。どちらのルートも今後の課題が残るので、続編というか、今後の生活の妄想も捗るかと。


ただ一点自分が合わなかったところとしては、ヒロインの性格および扱われ方ですかね……。かなり良い子で真面目な性格をしているんですが、冗談や軽口を真面目に捉えすぎて呆れ顔をされるという場面が何度かあり、共感性羞恥的なものを煽られがちではありました。こう、なんだよあいつノリ悪いな白けるわー的な……。


といっても、作中では誰もヒロインの真面目さを責めない、どころか気に入ってくれるので悪しからず! 仄暗い雰囲気の妖怪がテーマだからこそ、悪い気を起こさせない純性なヒロインが当てられているのは良いなあとも思います。

 

 

 

顔良し口調良しで気遣い上手の攻略対象

そして何より一番の魅力はここ!
攻略対象がカッコイイ!!
これ乙女ゲーとしては基本であり最重要なポイントですよ。良い……。


まず先にエンドを見た飯綱さんから。いや~、たくさん食べるけどまったく食えない人で実に魅力的でした! 

口調の独特さが好きなんですよね……。「~なこと」といった、古めかしい感じの言葉遣い。飄々としつつも柔らかな優しさが根底に感じられて和みました。雪洞に謝ってる時の全く謝意を感じない言い方が一番ツボだったやもしれません。


続いて雪洞君。彼はね、とにもかくにも見た目がたいそう好みなんです! まさに提灯を感じられるキャラデザが本当に見飽きなくて、おまけで全身絵が見れた時には狂喜乱舞しました。

アシメ髪とか、保守的に見えてピアス(?)がシャラリと付いてるお洒落なギャップとか、あちこちくすぐられます。好きです。


比べると、軟派な男前と硬派な男前と言いましょうか。どちらも誠実で優しい、魅力的な攻略対象でした。男を見せる場面がしっかりあるのもすごく良い……。
某ルートの特別な立ち絵も必見です。どちらもカッコよく決まってて叫びそうになりました。惚れる。

 

 

グッドなキャラデザインと斬新な立ち絵の使い方

まず驚かされたのが、立ち絵の差分の使い方について。

雪洞君が話している間に飯綱さんが煙管をふかしたり、飯綱さんが話している間に雪洞君がため息ついてたり丁寧なんですよ。話し手だけじゃなく色んな人が色んな動作をしながら会話するっていうの、リアルでは当たり前でもノベルゲーでは珍しいと思うんですよ。
かといって数が多いとプレイヤーの視線も散らかるので、攻略対象二人だからこそできる芸当な気がしますね。頻繁に行うのではなく、片方が長めに話すシーンだけの演出なのも素敵でした。


あと、キャラデザについて。サブキャラ、特に屋台の皆さんの見た目がすごく好きでした! 特に射的屋さんが好きだな~。ギザ歯やメカクレなど、どことなく異形キャラにあるあるな要素が多くてにやにやしました。好きです。

 

 

 


とまあ、こんな感じで。
和風ものが好きな方、総愛されのほのぼのした雰囲気が好きな方向けの作品でした。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

 

同作者様の共同制作ゲー感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com