「原因はある、だがそれが悪いとは限らない」
責任とは異なる前置き。
えー、今回は、Star Vlastaさんところのフリーゲーム「Alice mare」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
フリーホラーゲームとありますが、後から作者さんが「テンションさげさげー」と評しているように、恐怖より鬱展開の要素の方が強いです。そうです、鬱展開です。やったね。
ウディタ製、全コンプに2時間ちょっとかかりました。ただ、謎解きで遠慮なくチートこと攻略丸読みをした結果なので、実際のところはもっとかかるかなーと思います。
では、まず良かった点を。
童話モチーフの鬱展開
オリジナルストーリーと、童話を元にしたエピソードが良い感じに混ざりあって、メルヘンダークな雰囲気になっています。私みたいに童話が好きな方は特に楽しめるかと。
可愛い少年少女達が絶望に追い込まれていく様は大変に萌えますね、はい。
解釈をプレイヤーにゆだねて終わり、といったエンドもあるので、考察しがいがあります。まあ、この辺の詳しくは追記で語るとして。
可愛いキャラクター
これはサイトの方を見てもらえばわかるかと思うんですが、作者さんが絵の方面で色々活躍しているのもあって、キャラデザがとっても可愛いです。台詞枠の右側に出てくる皆が可愛くて、ついつい色々話しかけにいってしまったり、変わってしまった姿にぞくぞくしたり。
出てくる子たちは皆、心に闇を抱えています。これがまた良いスパイスとして、キャラを魅力的にしてくれてる気がしますねぇ。
てとリス
はい、某有名パズルゲームが楽しめます。すごい!
落ちてきてすぐの時に回転ができなかったり、本家と比べると多少不具合は感じるところもあります。とはいえ、おまけ要素ですし、ちょっとした暇つぶしには最適です。
ちなみに自分は30レベルまでいって、褒められました。特にアイテムとかは無かったんですが、これより高レベルになるとどうなんでしょう。最大何レベルまであるんでしょうね?
なんにせよ、斬新なおまけでしたw
続いて、惜しいなあと思った点。
操作性
ウディタは斜め移動もあって、操作キャラがけっこうぬるぬる滑って動くんですよね。なので、半マス分の移動がよく起こるんです。でも、ゲーム内では「狭い道を進む」とか「一マス一マス確かめる」とかいったことがちょくちょく出てくるので、それで妙なやりにくさを感じてしまいました。
当たり判定を広くすればまた変わってくるのかなあ。
エンディングのぶった切り感
ED1~5はどれも少々唐突で、「えっこれで終わり?」となってしまいました。まあ、トゥルーじゃないと考えればこの感じも仕方ないのかも。
施設に戻ってきてからの動きを全部オート化にするとかしたら、あの間延び感はなんとかなりそうかなー、なんて。
あっでも、エンディング絵が全て違うのは素敵です! 物語性のある一枚絵になっていて見惚れました。
指示が紛らわしい
例えば、「右側の本棚を調べて」という時に、右下にも右上にも本棚がたくさんあってどれを調べればいいのかわからなかったり。「小さい順に入力」というので、一つずつ入れるのかと思いきや、小さい順に並べて入力という意味だったり。
細かいようですが、こういうあいまいな指示が多くて戸惑いました。私の察しが悪いだけといえばそれまでですけれども。
無駄なマップがちらほら
広めの設定にしてあるのに、使われていない部屋や、広さのわりにイベントの少ない場所があって、もったいないなあと思いました。
挙げるなら、ROOM101がまず気になったのですが、結局解放されないままという。今後のアップデートに取り入れられるのかもしれませんけど、うーん。シロウサギに会う前の、クローゼットの通路にしても、あの部分必要だったかなと思うんですよねぇ。あのクローゼットがチェシャのものとかだったら面白かったんですが。
あと、扉がすんごいわかりづらいです。おばあさんの家とかな。
マップチップの色合いやデザインが素敵なぶん、本当に惜しいです。お菓子の家住みたい……。
とまあ、こんな感じで。
雰囲気とキャラは最高、ストーリーは鬱展開好きには嬉しい、システム面はちょっと残念。といった印象でした。
といってもやっぱり鬱展開好きとしては楽しめましたし、メルヘンダークが好きな方には全力でオススメします。
さて、追記では各キャラクターの感想や考察をつらつらと書いていきますね。興味のある方は下記よりどうぞ。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ一切気にしていないので、未プレイの方は注意です。
考察というより、解釈、思考メモ。
キャラクターについて
アレン
サスペンダー素晴らしい。なんだかんだで謎の多い子です。せっかくなら彼の台詞もたくさん聞きたかったけど、記憶喪失で空っぽって言われてましたし、仕方ないかなあ。
結局アレンの記憶は明かされないままなんですよね……。
「おとうさん おかあさん」と呟いていたから両親がいるのはほぼ確定です。チェシャエンドでもヒントとして、アレンの人生録的な絵は見れますね。両親が居て一人息子で、家族仲は良好そう。
先生のセカイの日記では、「あの事件の時、この子は外に出かけていた」との記述。でも肝心の「あの事件」って多分、ゲーム中では出てきてません、よね?
(追記:フィオナの世界の新聞記事がありました。やっちまったー!)
チェシャエンドの絵では、二つに割れた猫がにたぁっとしてる部分がその事件に当たる箇所だと思うのですが……。二つに割れている猫=セカイへの扉、とも少し考えました。ただ、それだと誰がセカイの夢を見ているのかなーっていう。わたし、気になります。
レティ&リック
キャラの過去としては、この二人が一番好きです!レティのセカイの、最後のリックの台詞にはぶわっと涙があふれましたね……そしてその後の絶望……。たまりません! あれだけされても、オカアサンが大好きだったんでしょうね。見ているこっちとしては悔しいような、もどかしいような。
彼女達に関しては、特に疑問点なく、すんなりと受け入れられたように思います。最初の施設での、リックの「おやすみしてる」発言で、二重人格とすぐ気付けたのも嬉しかったですねぇ。
レティエンドの手帳で、リックは自分がいなければと言うのに、レティの方はリックを否定せず一緒に強くなりたいと思っているところで、これまた涙がぶわっと。抱きしめたいキャラナンバーワンです、はい。
チェルシー
初見で「かわいい!」と叫びかけたキャラです。たくさんのクマさんに何か狂気があるのかと思いきや、ぬいぐるみはあまり関係がありませんでした。早とちりてへぺろ。
チェルシーのエンドの独白で「ゆるせない」と言っていたのが印象深かったです。あれは後に続く文からしてもお父さんを許せないってことなんでしょうけど、でも、殺さないとチェルシーが死んでいただろうから、もやもやとします。そういうの全部ひっくるめて、「認めるのを放棄」した子なのかなあ。
おかあさんの面倒も見ていたし、優しい分、何かと繊細なのかも。
チェルシーのセカイでのイベントでは初め、「オオカミさんに犯された…!?」「いや、おとうさんに……」などなど邪推をしてしまいました。いかんいかん。フィオナのセカイの本を読む限り、単純にチェルシーは殺人現場を目撃したショックであんなふうになってしまった、ということでしょうね。
ジョシュア
一人で行き詰まってぶっ壊れそうな危うさが愛しいです。「いれたくない」と言っている彼の扉に踏み入るのはすごくためらわれました。でも、入れてくれるんですよね……。良い子や……。
彼のセカイ、展開としてはオオカミ少年で問題ないんですが。
先生のセカイでの日記帳、ジョシュアに関する記述で、「母親の様子からこちらに引き取る事を決めた。」とあるんですね。ということは、この段階でまだ母親は生きていて、引き取るよう連絡してきたのもその母親本人だと思われます。ただ、ジョシュアのセカイを見る限り、彼は母親の死に際を見ているようです。
となると、時系列は「母親がジョシュアの引き取り先を見つける→自殺する→ジョシュアが引き取られる」になっちゃうのでおかしいな?と。彼が先生の施設に引っ越すまでの間に当てつけのごとく自殺した、ということでしょうか?
でもなあ、部屋に閉じ込めるくらい面倒になっていた息子を遠くにやれるとなったら、自殺するよりむしろ喜んでしかるべきではと思います。その辺は歪んだ母の愛的なものなのかしらん。
んー、それとも、「母親の様子」というのが「母親の死に際」を指しているんでしょうか。じゃあ誰が電話してきたんだろ……クリフかなあ。
こういう感じで、時系列だけ謎です。
ステラ
街の人が病で死んでいく中、たった一人の生き残り。絵を見た感じ、注射を受けたからかな?抗体をもらったのかも。で、この病ですが、おそらくペストかなーと思いました。何故かというと、ステラのセカイのイベントで、墓からカサカサしたものがいっぱい襲ってくるびっくりポイントがあるんですよね。これってもしかして鼠じゃないか?という。ただ、虫が出てくるイベントもかなりあったので、虫関連……マラリア?とかかも。まあ、病が何かってのは本筋にさほど関係はないんですけどね。
ステラは、不死の白雪姫ってことでいいのかな。元のストーリーとかなり離れている感じがしましたが、キャラとしては厭世的で哲学的、とっても可愛いです。あと、りんごで心中エンドができるのも大変萌えました。
彼女だけ手帳の切れ端が絵なのも、彼女が少しイレギュラーに見える要因でしょうか。
ステラのセカイの台詞からして、××はたぶん「あい(愛)」かなあと思ってます。ステラは施設に来るまでの知り合いを全て失った=愛を無くしてしまった、のかなあと。生きていないものに惹かれるのは、喪う悲しみに耐えられないからかもですね。
先生
ある意味元凶、とはいえ憎み切れないのがまた……。
彼の名前は、あの日記に入力したものでしょうね。 彼のセカイで、自分は名前に見合わない人間だから~といったことを言っていたのが気になってます。日本名なら漢字のイメージと結びつきやすいんですが、英語圏の名前って由来が偉人にあったりするので、なんで「愛されるもの」なのかがわからないんですよね。英語圏の人ならピンときやすいのかしらん。
彼のセカイで、言葉の通じない影の人さんと「プレーゴ」の台詞が和みました。イタリア人なのかなー。
エンド7を見る限り、やっぱり人には愛が必要で、セカイに囚われた先生を助けるためには施設の皆からの愛(を綴った紙飛行機)を送るのが必要なんだと解釈しています。少し救いが見えるエンドですねぇ。
ただ、彼の手帳の切れ端での××は果たして愛でいいのか……。わるいひとだけ愛するっていうのはちょっと納得がいかないんですよね。切れ端の時だけは、「殺」という字が入るような気もします。
クリフ
マップでのドットがアレンっぽいので、てっきりアレンの成長した姿か親類かと思ったんですが、公式サイトのログ絵をみる限りだとかなり別人のようでした。早とちり良くないですね。
この終盤になって新キャラか―、という感じもしてしまったので、序盤の先生の部屋にクリフの写真立てを置いておくとか、思い出話が聞けるとか、何かしら事前情報があればより良かったのになあと思いました。
フィオナ
彼女のセカイに入るギミックは、カギに見えますよね。前のセカイで、彼女が自分を刺した時の鍵なのかな?
まとめられた手帳を読みたいとずっと思っていたので、ここで見れて嬉しかったです。彼女の立ち位置がわりと謎だったりもしますが……。前のセカイで自分を刺す→セカイに囚われる、ということでしょうか。ただ、あのセカイでのイベントでフィオナは解放されたっぽく見えるんですよね。
シロウサギ
で、いっちばん謎なのがこやつです。
見た目が先生に似てるのが気になって気になって。名前が勝手に変えられる、という辺りも、先生の名前嫌感が連想できるんですよ。んー。
(追記:本ブログお引越し前に他の方から頂いたコメントで「ゲーム制作者さんの絵のボキャブラリーが少ないからだと思っていた」というものがあったんですが、これだけ絵の分野で積極的に活動されている方ですしキャラデザにも強く意味合いは込めてあると思います)
先生は前にもセカイに来たことがあるわけですから、その時の姿をシロウサギが勝手に借りたとか、そういうことになるんでしょうか。チェシャが自分の存在を天使または悪魔的なものと言っていたので、まあ何でもありな気はするんですけどね。
シロウサギはチェシャ猫と違って、魂食べる欲みたいなのが見られないのも不思議です。
真相はファンタジー要素として割り切った方がいいのかも。
チェシャ猫
セカイに囚われたフィオナが堕ちてしまった姿、だと思っておりました。まあただ、フィオナのイベントをしてみたところ、前述のとおりフィオナは解放されたっぽく見えるので、違うかな―。
チェシャ猫エンドが一番ぞくぞくしますね。後日談を見たいものです。
その他気になる点について
あと気になるところと言えば、「おやくそく」にある動物とかですかねぇ。
アレンの部屋にうさぎが描いてあったので、てっきりアレンがシロウサギになるエンドとかがあるのかと思っちゃいました。
動物といえば、オープニングの「カエルはわるいやつだって、」の何行かが思い浮かびますが、ネコとウサギはともかく、カエルとアリは出てこなかった、はず…? これは、後半で誰にカギを刺すかのヒントとして出してあるんでしょうかねぇ。
部屋のおやくそくを見るとアレンがウサギ、つまり、アレンを刺すべき。ただ、シロウサギが先生に似ているのを考慮して、ウサギ=先生とすると、先生に鍵を刺すべき。みたいな。
初回プレイで「一番悪いと思う人に鍵を刺せ」と言われた時は、「皆悪くない!」と思ってしまいすっごく悩みました。同情の余地の出し方がね、上手いですよね……。
こういう犯人探し(?)みたいなのもぞくっとして素敵です。
とまあ、考察にもなってないよーな感想でしたが、色々と考えたくなるくらいに楽しめました。
ではでは、長々とお付き合いありがとうございます。