「愛は悲劇を救うのです」
地球ほどではないにせよな前置き。
えー今回は、ブリキの時計さんところのフリーゲーム「クロエのレクイエム -Con amore-」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。公式サイトだとダウンロードリンクが繋がっていない(?)ためふりーむさんのリンクもつけておきます。ぺたぺた。
さてこの作品、タイトルからもわかると思いますが同名タイトル『クロエのレクイエム』の番外編となっています。この関係からクロエのレクイエム自体のネタバレを含む可能性があるので、まだ未プレイの方はお気を付け下さい。
本編と異なり、ホラー・恐怖・鬱展開の側面が薄められ、代わりに救いや感動の路線が強まっています。
というわけで、魅力的な点をあげていきましょう。
以下一部では、『クロエのレクイエム』は「本編」、『Con amore』は「番外編」と略して書かせて頂きますね。
『クロエのレクイエム』を救済する物語
全体を通して、この番外編は救済の物語だなーと感じました。
元々本編のキャラクターはどのキャラも悪い面や自業自得な面があり、それこそがキャラクターの深みを増していると思っておりまして。詳しくは追記で書きますが……。
ともあれ、本編はこれらの魅力的な短所が絡み合って悲劇を形作っていると考えています。
一方で、番外編はキャラの良い面や反省などに物語が向けられ、嫌な気持ちや辛かった過去を解きほぐしていくような話になっています。言ってしまえば、感動路線です。
さて、それこそが好きだという方には大変失礼な書き方をするのですが、まず私は「おばけや元凶側にも実は未練や事情があったんだー僕たちがそれを許すんだー浄化されたよやったー」みたいな感動路線が出てきた途端冷めてしまいます。ゆえに、この番外編でも本編の悲劇的な側面が薄れてしまうのではとハラハラしつつプレイしていました。
が。
いやあ、プレイして良かった!!
確かに感動路線ではありましたが、キャラクターの苦悩やエピソードがしっかり表現されていたので満足です。本編の良さをさらに深める見事な番外編でした。本編の悪役であるアランにも同情する要素があることを匂わせはしていますが、過剰な飾り立てはせず、あくまで解釈をプレイヤーに任せてくれている部分もあります。ありがたい、私みたいなひねくれ思考してしまう奴にとっては本当ありがたい。
他にも本編のキャラクターの良い面を掘り下げてくれたり、ストーリーの裏面を覗き見ることができたりと、本編ファンの嬉しい要素がたっぷり詰まっています。
猫の立場を生かしたギミック
プレイヤーが操作するのは猫です。猫です!!やったね猫派!
作者さんのブログで堂々明かされているので書いてしまうと、立ち絵は擬人化です。猫が人間の言葉を理解して人間的な思考をします。なのであくまで猫というよりノワールというキャラクターと書くべきかな。本編で大活躍してくれたあの子の裏事情が伝わってきてしみじみします。
扉が開けられないので周りの人に開けてもらう、机の上に飛び乗る、クローゼットを調べるとつい爪をとぎたくなるなどなど。探索要素はおまけ程度、と必読にはありましたがとんでもない。謎解きなどは少なくても調べた時の反応は多くて嬉しかったです。
探索には直接関係ない部分にも遊び心があって楽しいです。鏡を見た時の反応がお気に入り。
がっつりメインのクラシック
今回は番外編ということもあって本編の時ほどクラシックは出てこないのかなーと勝手に思っていたのですが。
有難いことに今回も健在でした、クラシック解説!
しかも番外編ではキャラごとに曲が決まっているので、メリハリがついているのも良かったです。知らなかった曲をキャラのおかげで気にいってしまう、なーんてこともあって、プレイ後はクラシック系のフリーサイトを巡りに行きました。ふふふ。前回も書きましたがサティが好きなので、犬のぶよぶよ~にも触れられていて嬉しかったです。
メインテーマのアレンジもされていました。……よね? (あまり聴き分けに自信がなくて申し訳ないです)
トゥルーというか、要素を全て集めきった時のエンディングで、楽器が3つに増えた時に思わず泣いてしまいました。
可愛い立ち絵と細かいドット絵
アイテム装備中はなんと、お口にくわえて移動できます。超可愛い! お人形くわえてるドット絵とかもうあまりの可愛さに天を仰ぎたくなります。
で、こういったドット絵もさることながら、立ち絵のほうも可愛くってもう!
特に後々、立ち絵が初めて出てくるキャラのデザインには惚れぼれしました。かっこいい……!相変わらず私は闇のあるキャラに弱いです。初見で悶えていったんセーブして終了して動悸を整えました。
どうしても途中で悲愴な展開になるのですが、その時の主人公の弱った表情も凄いです。見ていて苦しさが伝わってくるあの目元、ね……。
ノワールちゃんマジ天使
と書くとネタみたいになりますが。
いや、前述した通り、救済の物語にふさわしい役どころだったと思います。たとえ酷いことをされてもその裏にあるであろう愛を汲み取って耐え、仮に辛いことがあっても、自分だけがと僻まず私が助けようと頑張る……番外編の立ち位置を体現する良い主人公でした。
キャラクターとしても健気で可愛いです。すき!
とまあこんな感じで。
逃げ・追いかけっこイベントもありますが、アクションが致命的に苦手な私でも両手の数ほどのリトライで無事クリアできたので、かなり難易度は易しめかと。次の目的地や必要アイテムなどの誘導も直接的ですし、エンド分岐条件も同梱ファイルに載っているので、攻略で困ることはないと思われます。
本編が好きな方、ハッピーエンドが好きな方はもちろんのこと、私みたいに感動路線に抵抗がある方もとりあえず試しにやってみると幸せになれるかもしれません。
追記ではキャラクターに関する突っ込んだ感想です。
興味ある方は下記よりどうぞ。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレがっつりです!
伏せ字はありません。ダイレクトネタバレ注意です。
ノワール
かわいかったですね!!
他のメインキャラと比べてノワールは暗いところがちっともなくて、この性格も作品自体を救う存在としてよくできてるなあと思いました。まあこれさっきも書いたんだけど!それだけ印象的だったんだ!しつこくてすまない!
好き、大好き、愛してる、等々。たくさんの愛の言葉を、たくさんのキャラに向けてくれたのも印象的でした。いやもう本当ストーリーの象徴みたいなキャラよなあ。そんなノワールが私も好きだよ!!
ミシェル
ピエールが語ってくれた彼の、(無自覚ながら)傲慢なエピソードについ笑ってしまいました。いや、ピエールからして見れば笑い事じゃないんだろうけど! なんだかすごくミシェルらしいなあと思うと微笑ましかったのです。
本編では根は良い子ながらもつっけどんな面も描かれていた気がしますが、こちらの番外編では対猫のデレっぷりが存分に楽しめました。
背後に立っていた呪いを見た時は思わず息を呑みましたね……。
ピエール
本編プレイ中は、彼だけ積極的に自業自得な要素がないというか、周りのためを思ってでも徹しきれなくて振り回されて報われない不憫な子だなあと感じていました。
一方番外編では、意外にも辛辣というか、やっぱり彼もただの被害者じゃなくて彼なりに悪いところもあったことがわかってある意味で安心した覚えがあります。実は自分のことばかり考えていた、というところにも思わされるところがありました。
シャルロット
番外編のプレイ初めでは良い子な面を推し出されている印象があって、うーんと思っていたのですが。本編で悪い部分を強く描かれていたのも彼女ですし、実際私も本編プレイ当時は厳しい目を向けがちだったので、その辺りのバランスを取った描写と考えると納得です。
ミシェルを擁護するのも恋は盲目ゆえと解釈していたので、ピエールとのいざこざを描いてくれて嬉しかったですねー。ああいったエピソードがあるならミシェル寄りになるのもわかります。本編の理解が深まる良い番外編だよなあ本当。
話がちょっと飛びますが。
本編でのミシェル・ピエール・シャルロットの3人は、どの子も良い子でありながら至らない面もあって、それが嫌な具合に噛み合ったからこそあの悲劇が起こったんだと思っています。なので、本編が配布された頃はピエールだけ・シャルロットだけが叩かれる感想をたまーに見かけてやきもきすることもありました。
で、今回番外編をプレイして、この「皆悪いし皆悪くないよ!」みたいなところを、改めてものすごくバランスよく表現してくれたなあと感じたのです。
本編で悪く描かれすぎたキャラは魅力的な点も見せ、良く描かれすぎたキャラは反省も踏まえつつ。ノワール以外のキャラは徹底して良い面と悪い面の両方を見せてくれるおかげで、ものすごく人間らしい、リアルなキャラ作りがされているなあと思います。
ノワールはいいのだ、だって救世主だもの。
クロエ
やっぱりクロエも可愛いなあ!
本編では、得体の知れない甘えたな子がどんどん愛しい健気な子に変わっていくのを楽しんだ覚えがあります。
今回の番外編では裏事情として、彼女が自分の家で抱えていた堪え切れない不安を漏らしてくれて、胸が痛くなると同時にその優しさにグっときました。ノワールに何度頬をなめてもらったことか。
彼女に想いを届けた時のエンディングも、想像が広がって良いですねぇ。なんとでも解釈できるエンディングがこれほどまでにありがたかったことはありません。
ブラン
かっっっっっっこよかったですね! ! ! ! !
いやあまさかこんな好みのタイプだとは思っていなかったので震えました。震えました。なんという伏兵…。
鋭く尖った一面を見せつつも、ブランの世話を焼いてくれる良いところもあってこれまた魅力が増してくれます。他のキャラなら何事もなくスルーすると思うのですが、あのクールな彼が「ふかふか」と言うのもなんかツボでした。
本編でクロエが「ちょっくら」って言った時にも思いましたが、たまーにキャラが意外な言葉使うのに凄く萌えます。
あとすみません、私が男女CP萌えするタイプなので、どうしても語ってしまうんですが、軽率にブラノワで萌えました…。
ノワールの愛はそれこそ作品全体を包み込むような、ものすごく懐の大きい愛である一方、ブランの知ったあたたかさ(愛)はノワールがもたらしてくれた唯一のものなわけで、この辺りを突き詰めていくとなんというかたまらなくなりますね……!
ブランに言葉が通じなかった時のノワールの悲痛な呟きも印象的でした。“また”って苦しいですよね……。事前に二人の言葉が通じるシーンを入れてあったのも良い伏線でした……。
ラストの一枚絵がもんのすごく好きです。幸せになろう!
東洋人のEさんの※※※※など、随所の細かい台詞にも印象に残るものがあって、ストーリー・キャラクター・ギミック共にやっぱり完成度の高い作品だなーと改めて感じました。
プレイできて良かったです!