うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「幽霊探偵~最後の事件~」感想

「二日間って何日間?」

水曜日って何曜日な前置き。

 

 

 

えー、今回は、睡眠忘街 -眠らない街へようこそ!-

さんところのフリーゲーム「幽霊探偵~最後の事件~」(http://suiminbougai.web.fc2.com/yuurei/index.html)の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

RPGツクール製の探索重視なSFサスペンスゲー。あらすじは公式サイトで見て頂くとして。

 

探偵・事件とあるのでミステリと誤解されがちですが、いわゆる犯人当てのようなことは起こりません。探索ゲーらしくパスワード推理や少しの謎解きはありますが、意識せずともストーリーさえ進めれば最低限の真実は明かされます。

 が。この真実こそが曲者です。なんてこった。

 

このゲームはストーリー上のネタバレを一切見ずにプレイするのが良いと思うのですが、一方で、公式サイトの雰囲気だと絶対に伝わらないであろう点があるので、ネタバレ野郎と罵倒を受ける覚悟も踏まえてこれだけ書かせて下さい。

 

鬱 展 開 好 き は 是 非 と も。

 

 

さて、では魅力的な点を挙げていきますね。

 

 

 

明るく救いのないエンディング

エンディングは全部で3つ、のはず。はず、とわざわざつけたのは、それだけびっくりするほど救いがないからです。勿論当ブログでは褒め言葉です。

いや、序盤のノリがかなり明るく賑やかだったので、もしかするとなんて希望を抱かずにいられないくらいなんです。これは凄い。不穏な仕掛けは随所にあるのに、それを意識させないストーリー回しが凄まじいです。

終わり方としては3種共に見事な締めで、どれも異なる意味で震えがきます。生き生き会話するキャラクター達に愛着が湧いた頃を見計らって叩きこまれるのでなおさら心にきました。

 

 

 

思わず頷く構成力

舞台は別惑星に向かう宇宙船内。

ストーリーの構成が時系列通りではなく、キャラクター達が宇宙船に乗る経緯や自己紹介のシーンは回想の形で後回しにされています。キャラも6人と多めなので、プレイ初めの時にちょっと混乱したのは確かでした。

しかしながら、情報はキャラクタープロフィールやスキットシステムのおかげで整理できるようになっているので、プレイヤーのフォローはばっちり効いています。

そして、わざわざこの初めのシーンを後回しにするのにもきちんと理由があるのです。時間軸弄られると読みづらいんだがなあ、なんて偉そうに考えていた自分が浅はかでした。これはもう、上手い!

他にも、トゥルーエンドでは悲劇が悲劇だとわかりやすいように、かつラストにぐっさりと刺さる伏線が仕込まれていたり。些細な会話に見えるシーンが後々かなりの毒を持っていると発覚したり。とにかく構成が上手いです。やられました。

 

 

 

随所に散らばる小ネタと真相の手がかり

媒体にツクールを選んでいるだけあって、探索ポイントはとても細かく設定されています。同じ場所でも時期が違うとコメントが変わったり、見つかるアイテムに変化があったり。キャラの会話もちまちま変わるので、声をかけにいくのが楽しいです。

一方、これにはデメリットもあります。何よりアイテムをかなり見逃しやすい! 中には何もない場所を調べなければならないこともあり、時期限定のものが多いので、難易度はかなり高めです。とはいえ幸い有志の方が攻略ページを作って下さっているので、そこさえ見ればコンプ自体はできます。ありがてぇ。

そして、見つかるアイテムは苦労して集める甲斐が十分すぎるほどあります。なんてことないインタビュー記事等がどう繋がるのか、わかった時のぞくぞく感はたまりません。ただでさえぐっとくる真相の魅力が倍増します。これからプレイする予定の方には是非とも隅々まで艦内を歩きまわって欲しいところです。

 

わかっているのに震えてしまう、驚異の演出力

さて、さんざん書いてきた真相の凄さについてですが、それでもおそらく勘の良い人には先が読める展開かと思います。これは隠し方が下手とかではなくて、とてもシンプルにどんでん返ししてくれるからこそです。

じゃあこれが悪いのかというと、むしろ逆。演出面での巧みさがこの先読みを見事に増長してくれます。「なんとなく嫌な予感がする」このざわざわ感が嫌ってほどに盛り上げられちゃって、正直、トゥルーエンドではわかっていながら恐怖で泣きました。

たぶん、溜めや間の使い方が上手いからこういう恐怖感が演出できているのだと思うのですが。他にも、探索面の項目であげた小ネタなど、色んな箇所にさらっととんでもない演出が混ざっていてもう最高でした。

 

とまあ、こんな感じで。

他にも、透明感のある絵柄で惜しみなく入れられるスチルや、驚きのムービーなど見どころはたっぷりです。ツクールでムービーって作れるんですね……。OPは公式サイトでも確認できるので、気になった方は是非に。

 

探索ゲーが好きな方、心抉られる展開に覚悟がある方、メリバがお好きな方に超オススメの一作でした。

 

ネタバレありの感想は追記から。

 

 

 ネタバレ注意!ハッピーエンドは特に初見で迎えてほしいので…!

 

 

 

 

 

いやあ、なんというか、想像以上に容赦なく救いのない展開しかなくて、震えましたね!!!!!ありがとうございました!!!

 

本当、これ前述しましたが、あれだけ明るくハイテンションな会話が多かったぶん、どうせハッピーエンドなんだろうなあとか実はお涙ちょうだい系なんだろうなあとか勝手に思って舐めてかかってたんですよ。馬鹿でした。浅はかでした。ごめんなさい。なんてこった!!

というわけでハッピー?エンドでは頭を抱えました。

あの時点で真相に至る情報も十分そろっているんですけど、「どこかに本当のハッピーエンドがあるのでは」、「どっかしらで大々的に一イベント起こるのでは」と思って、希望に縋るように探索をしてですね。そして見つかるモニタールームとイヅナさんのお部屋の絵本的ムービーですよ。崩折れました。まさかここまで丁寧に潰して下さるとは。惚れました。その容赦のなさに惚れました。

 

実際、ここまで端から端まで希望の芽を潰すのって生半可な作品だとできないと思うんですよね。どうしても手を加えちゃうしどうしても感動路線に走っちゃう。そんな情の部分にしっかりブレーキかけてたのがもう最高でした。本当にありがとうございました。

 

 

 

 

さて、以下は無粋ながら各エンドに対する考察解釈や感想など。

 

 

 

 

TRUEEND

 

こっち先に書くほうが後々楽そうなのでまずトゥルーから。

レイ君がガイストシャッフ内の真実に気づき、亜柚さんの見せてくれていた優しい仮想世界から脱出するお話ですね。このエンドに入ったあと見られるムービーで、亜柚さんが132号の脅威を退けてくれたこともわかります。だから腕だけねぇ。

悲しい別れではあったけれど、これでレイ君も安全に……とプレイヤーが安心したところで畳みかけてくる絶望。はっはっは。怖すぎて泣きました。132号の言葉の設定はあれ凄まじいですよね。ぞっとします。

ハッピー?エンドで見られる絵本的ムービーを参考にすると、何故事務所に亜柚さん()がいるのかの謎も解決するかな。

 

 

HAPPY?END

こちらはやったねレイ君亜柚さん幸せだよエンド。メリバ。やったぜ。

あちこち調べるのがとてもとても楽しかったです。ぞくぞくしました。BGMが終始和やかなのも上手いです。心が抉られます。メニュー画面の目的の項目も朗らかに毒が効いてて最高です。

亜柚さんが言っていた奇跡とは、上記のトゥルーに行きかけた時のレイ君のことでしょうか。亜柚さんの作った仮想世界に耽溺するレイ君、やっと我に帰ってくれそうになったけれど、彼は真実より亜柚さんを選んでしまった……。たまりませんね。

お茶を調べた時のメッセージや、亜柚さんの「時間が経ちすぎた」発言を見るに、132号が暴れて外に放り出されてからかなり時間が立ったものと推測されます。その間にレイ君は勿論どんどん衰弱していくわけで。たぶんこのあとレイ君が我に帰ってトゥルーへの道を歩もうとしても、身体が持たないんだろうなあ。何十回目の今日を迎えたんだろうねレイ君。考えてると心抉られますが鬱展開萌えとしては興奮するのでどうしようもありません。

 

 

WRONGEND

最後に、何度も到達しましたこちら。

初めこのエンドに到達した時は、亜柚さんに擬態した132号が“救助”されてしまう皮肉なエンドだと思っていたのですが……。上記二つのエンドを踏まえると、132号がガイストシャッフから救助されるというのはちょっとおかしい。彼(?)はすでに船外に居ますし、後々自力で帰ってくるはずですからね。なので、救助されたのはあくまでレイ君なのかなと。

ここでふと気付いたのが、亜柚さんとレイ君の名前が同じというところ。たぶんこれが繋がる、のかな? 救助隊が持ち物などを見て、“レイ”と判断する、そしてレイ君が亜柚さんと誤解され、救助隊はスターを救助するという考えに浮足立つ――みたいな。

ただ、いくら第三者とは言え、さんざんメディア露出している亜柚さんとレイ君が見間違えられるとは思い難いので、この説には疑問は残るところです。

そもそも救助信号がガイストシャッフから出ていると考えるから矛盾が出るわけで、亜柚さんに擬態した132号が亜柚さんの持ちものを使うなりなんなりして単体で救助信号を出せれば、初めに考えた皮肉なエンドの解釈で十分成り立つんですよね。

ちょっとまだこのエンドについての考えはまとまってません。見当違いなこと書いてたら恥ずかしい。

 何にせよ最終的に132号が擬態した亜柚さんが星を滅ぼす流れは変わらないと思います。

 

あと気になる点としてはなんでレイ君がこの時点で倒れてしまったのかというところでしょうか。このゲームが始まった段階で、レイ君が何度目の今日を始めたのかわかりませんが……このエンドだとレイ君の身体が持たなくなりましたよ、という、トゥルーエンドと比較できるパラレル的な扱いなのかもと思いつつ、うーん。

間違いなエンドだけあって、解釈も難しいです。

 

 

 

 

続いて、ハッピー?エンドで見られるパスワードムービーや、その他の情報などに関して。

 

イヅナさんの部屋で見られる絵本ムービー

いやあブラックでしたね。132号視点の後日談が見られます。

宇宙空間に放り出されてものんびり星へ帰れるとはさすがのバケモノである。また、レイ君だけが食べられずに助かった理由も明かされます。タカムラのイヅナさんへの想いが忍ばれてなりません。

なかなかほんわかと毒々しいこのムービーですが。こうして132号視点で見てみると、産み出されたものが悪いのではなく利用するものが悪なのだみたいなことを考えずにはいられませんでした。

 

 

 

PCで見られる情報

こちらでは博士とミコちゃんのいきさつが分かります。

まさか博士がそこまで情熱的な人だったとは思わず、意外さと過激さにどきどきしました。博士→ミコは家族愛に近いのかな。でもミコは尽くす愛って感じがするのでそれくらいの距離がちょうどいいのかもしれません。……と考えていたらまた切なさがじわじわと。

 

モニタールームで見られるキャラ解説

何よりもまずミコちゃんのストーキングの理由に泣かされました。そういえばミコは壁に激突してもピンピンしてましたしね……あれも伏線だったのか……。

タカムラの文章が一番グサっときます。好きです。いや本当彼は巻き込まれただけですよね……。

色つき文字が気になったのでググったところ、実在のミステリ小説から来ているようす。どれも読んだことが無いのでキャラとどの程度リンクしているのかはわかりませんが、あらすじを見たところ、少なくとも亜柚さんに関してはかなり的を射ている内容みたいです。

こうして見ると、OPのキャラ画像もかなり皮肉が効いてますよね……。イヅナさんのコップとか……。こういう視覚に訴えてくる絶望感たいへん好みです……。

 

その他ゲーム中で手に入るアイテムやスクラップについて

新聞とPBはレイ君、手紙はイヅナ、WBHはタカムラの事情が書かれている形ですね。恋愛探偵はキャラ全員かな。ちなみにイヅナさんのお手紙にある外国語は、ググったところ、「一度始めたことは最後までやりとげねばならない」的な意味だそうです。わーお。

私はさくっと攻略を見て1周目で回収してしまいましたが、これ全然集まってない人からすればエンド到達してもちょっと謎が残る形になるのかなと思います。

 

 

 

このゲームって断片的な情報はどんどん手に入るけど、大筋の直接的な説明はされないんですよね。探偵はいるのに解説役はいないというか。そのぶん“気づく”恐怖とか、ドラマではなくゲームとしての事件が感じられたように思います。こういうところすごく好きだなあ。

集まった内容を自分で繋ぎ合わせながら、ひしひしと嫌な予感を抱えつつ、最終的にハッピーエンドでうわああと絶望するプレイング。とても楽しかったです。