「子どもは親の慰み者」
手玉に取られてたまるものかな前置き。
えー、今回は水中庭園さんところのフリーゲーム「ハンスとグライフ」「ヴァルターの憂鬱」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
前者が本編、本編の別キャラ視点な番外編です。
「ハンスとグライフ」
分岐ありの短編R-18BLノベル。「ヘンゼルとグレーテル」を意識されている作品とのことで、兄弟愛や女装ネタが多く含まれます。
というわけでさっそく魅力的な点など。
ほんのりとネタバレを含むので気になる方はご注意ください。
耽美な絵柄と独特の画面構成
絵柄は少女漫画風、って言っていいのかな。後半の淫靡な雰囲気にぴったりの絵柄です。
特に素晴らしいと思ったのは某スチルの、グライフの身体つき! あまり体型にこだわりは無い派だと自分では思っていたのですが、彼らの境遇を感じさせるこの貧相さにはやられました。言葉なくして語ってくる悲壮さ、実に良いものです。
他、背景にカットイン風の小物や家具等の画像が入るのは新鮮だったかなあと。さりげなく雰囲気が出る構図でした。
ただ画面構成という意味だと、引きの立ち絵が離れすぎているように思えて気になったところもあり。腰元にメッセージウィンドウが来る感じの乙女ゲに慣れているせいもあるかもしれません。
想い合いを利用される鬱展開
ストーリー後半の展開が本当に好みでした。
萌え的な意味だと「いいぞもっとやれ」って感じでしたし、感情移入的な意味だとどんより辛い鬱展開な感じでした。とても楽しかったです。女主人ありがとう。行為を強制されるうちにどんどん目覚めていく過程が丁寧でぞくぞくしました。
前半でお互いの依存を描き、そして不穏な空気から怒涛の濡れ場に展開するというこの、二人をきっちり閉じ込めていく感じが良いです。
特に宿へ入ってからは、濃密で息切れしそうなほどの空気が読むこっちにまで伝わってくるようでした。異常な状態で頭が淀んでいく感じ、好きです。
とまあこんな感じで、お話もグラフィックもしっかり押さえてある印象。
一方、引っかかった点として挙げたいのがウェイトの長さ。
私は短編ゲームでも細切れにプレイしてしまうタイプなので、起動のたびに待つのがちょっと手間だったり……。光溢れるあの雰囲気は素敵だと思うんですけどね。
ともあれ、性癖にぴったりと合致する良作でした。
「ヴァルターの憂鬱」
続きまして関連作品について。
こちらはタイトル通り、本編でサブキャラだったヴァルターが主人公。兄の立場では決して見れないであろうグライフの一面を覗き見ることができます。
ぶっちゃけてしまうと本編のエンドロールで見れるアレがそのままノベルゲ化された感じでした。個人的にはむしろその先が見たかったかなとも思ったり……贅沢な要望ですけれども!
こう感じてしまうのはエンド2が特に好きだったからかもしれません。
とまあ、こんな感じで。
耽美・鬱・共依存。これらのワードにピンと来る方にオススメです。
追記ではネタバレ込みの各エンド感想など。
ネタバレ注意。
すでに書きましたがやはりエンド2が大好きです。
“面倒を見てあげる”っていう行為が逆転するところにすごく業を感じまして! 奉仕している立場の方が主導権を握っているこの間接的なSMっぽさが実に良かったです……!
序盤で世話焼きお兄ちゃんなシーンがたっぷりあったぶん、なおさら(良い意味で)鳥肌の立つ鬱展開でした。
何より貴重なのは達磨化ですよね。ありがとうございました。
一方、選択肢分岐で見れる「やっと掴み取った幸せ……!」なエンドもぞくぞくきました。正直、この方向で来るとは予想していなかったので痺れました。全てが始まりに戻る展開っていいよね!
また、おそらくトゥルーエンドと思われる、2周目以降に解放されるエンド。こちらはエンド描写の塩梅がとても絶妙でした。
ハッピーエンドと素直に受け取ってもいいし、穿った見方をしてもいいし。何より、あのエピローグにヴァルターを出してくるのが上手かったです。
「ハンスとグライフ」の二人は誰にも手の届かない二人きりの世界に行ってしまったんだろうなあということが感じられて……とても……BLでした……。
久々に濃度の濃い鬱展開を味わえて幸せでした。ありがとうございました。