うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「幻想乙女のおかしな隠れ家」感想

「疑心暗鬼にうなされて柳も鬼に成り代わる」

甘いものだけが頼りな前置き。

 

 

 

えー、今回はブリキの時計さんところのフリーゲーム幻想乙女のおかしな隠れ家」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐ありの探索ダークファンタジー。ホラー要素、追いかけっこ要素あり。

以前こちらでも感想文を書かせて頂いた、『クロエのレクイエム』の作者様の作品です。やったー!

 

公開自体は前々からされていたのですが、じっくり寝かせてプレイしたためver3の感想となります。バージョン変更で仕様もかなり変わっているとのことなので念のため。

 

 

というわけで、良かった点など。

ほんのりとネタバレ匂わせているかもなので注意です。

 

 

 

じわじわと色濃くなる不穏さ

 

真っ先に着目すべきはここ、作品全体に終始漂う不穏さだと思います。

冒頭からしてダークな語りから始まり、一方で初めに辿り着くのは甘ったるいお菓子の家。もうこのギャップからして不信感ですよね。

日を追うごとに目新しくなるマップや、アンジェを取り巻く妖精たちの変化、ベルントの挙動不審など。怪しい要素は膨らんでいって落ち着かないのに真相はつかめない、この拠り所の無い不安感がすさまじかったです。

 

一転、区切りを終えて新たに始まる展開では、また別種の不安感が味わえます。見つかってはいけない、一人で全てこなさなくてはいけない、ピリピリに張り詰めた不安感。

“不穏さ”だけであればよくある異空間や心象風景の探索ホラー系でも楽しめますが、頼るものがじわじわと削られ、真相がわかってなお精神がガリガリすり減っていくこの感じはやはりこの作品特有かなあと思います。

 

 

 

子どもなりの一生懸命を噛み締めるストーリー

前作クロエでも感じたのですが、この作者様は子どもの視点を描くのがすごく上手だなあと思います。

子どものできる精一杯で頑張った結果、挫折や葛藤とぶつかって、でも認めたくはなくって。大人の妥協や一歩引いた目線というのにどうしても馴染めなくて、一生懸命頑張るんだけど、お話は悲劇へと転がっていく、そういう展開。大好きです。

吸血鬼や魔女など、ファンタジックな要素もありはしますが根底にあるものは誰でも共通して感じるものじゃないかなー、なんて。

 

初めの語りやメタ視点を持つキャラがいることで、プレイヤーは観客の立場なのだと一線引かれるのも良かった点だと思います。“自分なら”もっと小賢しくできたり適当に放ってしまったりできるのかもしれないけれど、この作品は“彼女らの”お話であるからには彼らの選択は誰にも覆せないというか、尊重したいというか。

ベストと言い切れないけれど精一杯頑張った、そんなみんなの想いを大事にしたくなる構造だと思いました。

 

 

 

カラフルなマップチップや夢見心地の動画演出

初めにどんと出てくるお菓子の家にまずときめきました。マップチップからしてもう可愛いし美味しそうだし! 調べるとちょこちょこセリフが出てくる他、一度調べた場所も日が変わると反応が変わるので、探索も飽きずに楽しめます。ひっそり居るお顔との会話にはぞくぞくきました。

 

また、一日の区切りに挟まれるパーティの動画もすさまじかったです。金曜日はもう必見ですよね。ああいうぽわぽわ夢見心地な動画はわかっちゃいるけどぞくぞくして大好きです。

おまじないのように繰り返し唱えられるあの合言葉も好きなんですよ。喋っているわけでもないはずなのに、なぜかかなり耳に残ります。

 

加えて、時計や木で過去の回想を示したり、意味深な反応を後に繋げたり、視覚面での演出力は流石の一言。文字色や話しかけた時の化け物顔のアクセントなど、ホラーな展開もかなりのものでした。

 

立ち絵の可愛さ・かっこよさにももちろん注目したいところ。スチル閲覧機能や立ち絵閲覧機能が是非ともおまけに欲しかった……!

 

案の定というかなんというか、ベルントが顔を背けて流し目してる立ち絵が好きです。伝わるかな。あの、ちょっと冷たく見える感じにときめきます。草食系だというのにこの、イケメンめ……!

 

 

 

 

 

一方、気になったところも書いておくと。

 

 

 

 

 

追いかけっこのキー判定の悪さ

追いかけっこ時に特定のキーを押すアクションがあるのですが、どうにも反応のタイミングがわからず四苦八苦しました。相手のほうを見て、ある程度長押ししないといけないのかな? 体力に余裕はあるのでアクション苦手な自分でもなんとかクリアはできますが、こう、「難しい」と「反応が悪い」とはまた別物かなあと思います。

 

 

 

雑多な印象の残るモチーフやワンマップ

タイトルやパンくずはヘンゼルとグレーテル。メインとなるのは吸血鬼と魔女。一部の謎解きやシステムのオマージュはマザーグース。と、羅列だけすると少しオマージュやネタ元がバラバラな印象です。

 

また、特に序盤はゲームとしての動き方もわかりづらかったところがありました。たとえばパンくず集めが残っていてもアンジェが眠たいと言うので、どの誘導に乗ればいいか困惑した覚えもあります。

なんというか、妖精もベルントもシンシアも気になるんだけどどこのフラグから解決していけばいいのかわからないみたいな。いっそイベントが残っていたら先に進めないような構造にしても支障はなかったんじゃないかなー、なんて。

 

謎解きの解決方法やキャラとの交流イベントなど自体は面白く、ダークさが深まるという点では良点でもありました。だからこそもう少し、と言いたくなるのはなんともプレイヤーの欲深さってやつですね。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

2週目になるとスキップ機能が追加されたり、必須の探索ポイントは白く光ったりと配慮もあるのでエンド回収もしやすいです。

吸血鬼、お菓子の家、闇堕ちっぽい展開などにピンとくる方向け。

 

追記ではネタバレだらけのエンド感想や考察未満の解釈など。

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

 

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

まずエンドについて、たどり着いた順に書きますね。

 

<バッドエンド>

順当に流れてこのエンドを初めに見ました。

思ったのは、ベルントの子どもゆえの視野の狭さが本当に上手に描かれているなあというところです。

結局あの隠れ家的逃避行って、他人の力や運で成り立っているところが大きいんですよね。アンジェのご飯は親の物、住処は人の物。

もちろん、ベルントが懸命に考えていたことや彼の頑張りは大いに認めたいけれど、やっぱりそれだけじゃ厳しいという。ホラゲにありがちなご都合主義な展開が、回りまわってベルントの挫折というか、無力感につながるのが素晴らしかったです。

 

このエンドだとアンジェが二人の未来を早めてしまった結果になりますが、仮に二人で逃げ出すまたは引き籠るのが成功していたとしても、このルートのベルントに未来は無いと思います。

 

ああーでも、最期までアンジェに呼びかけて怖くないよって言ってあげるベルントはめちゃくちゃ優しいんですよね!優しい良い子なんですよ彼は……。ほどよく心を抉られました。

 

 

 

<ノーマルエンド>

大人らしいエンドだなあと感じます。

うまくいかない葛藤、憤り、自分の無力さを受け入れるエンド。

だからこそ私としては、「アンジェが強がりさんだとわかってるんだからあの別れのシーンではもっと、もっと粘ってほしい」という気持ちもあったりして!

 

でも、「アンジェが、死んだ」「あれは吸血鬼だ」というセリフを見るととてもそんなワガママは言えません。二人の決意は固いし、踏みとどまったとして先がないのはバッドエンドが知らせてくれているので。

 

バッドエンドが二人ともが自分のことしか見ていないエンドだとするのなら、こちらのノーマルエンドはアンジェとベルントが互いの未来を想い合ったからこその結末だともいえる気がしています。

 

ああーでも寂しいなあ!このエンドが一番寂しいです。

 

 

 

 

<サンデイエンド>

 

「永遠に!」もうこれは忘れられません。

後々のDの語りを聞くに、やっぱり順風満帆な未来とはいかないんでしょうし、アンジェが自分の性質に苦悩することやベルントが不器用に失敗することは目に見えてるんですが、それでも応援したい気持ちです。ノーマルエンドで感じた「諦めんなよ!」の想いを叶えてもらえて嬉しい限りでした。

 

ベルントが見えていなかった妖精やシンシアがはっきりと見えるようになった、理屈自体は謎です。が、アンジェと同じ世界に両足突っ込む覚悟を抱いたから、アンジェと同じ幻想に触れることができたという解釈をしてとりあえず納得。

 

タイトル画面に出ていたアンジェのイラストの全貌がようやくここでわかるというのも涙を誘います。強気な子の泣き言って本当心に揺さぶられますよね。

 

「その言葉を待っていた!」「さあ助けに行こう!」と気持ちの盛り上がるエンドでした。

 

 

 

<シンシアエンド>

 

わぁい百合だ! ベッドで目覚めるとぴとっなスチルにきゅんと来ていたので、彼女のエンドがあって嬉しかったです。

 

他の妖精さんたちと違って、シンシアだけが幽霊かつ人間体としてしっかり存在しているのは魔女的な要素が絡んでいたのかなあと思ったのですが、作中で明言はされませんでしたね。魔法をいろいろ習ってる~みたいなセリフから、幽霊として残ってアンジェのために寄り添える魔法みたいなのを使ったのかなあと妄想もしました。

でもこのエンドを見ると単純に、優しくて大好きなアンジェが心配という未練でこの世にとどまっていると考えたほうがすんなりいく気もします。

 

余談、魔女裁判での啖呵には惚れ直しました。反論しまくるのが楽しかったです。

このエンドだとアンジェの結末自体はあっさりしたものでしたが、アンジェの懺悔やシンシア達被害者の想いのほうがメインなんだろうなあと思います。

 

 

 

 

と、エンドについてはこんな感じ。

好きなのはやっぱりサンデイエンドです! やっぱり今を生きて楽しく笑っていてほしい……。

 

 

 

 

<Dについて>

 

ついで、ちょろっとDについて。

スカボローフェアのイベントが強制終了させられることと言い、Dとシンシアの魔女は恋仲だったんじゃないかなあと思うんですよね。で、アンジェとシンシアにさせられたのと同様のことが行われたんじゃないかなあと。

 

そういえば吸血鬼はすぐ狩らねばならない一方、魔女は吸血鬼に殺させるというのがちょっと疑問でした。どうやって処刑人を確保し続けるのかなーと。クォーターでも子飼いにするには危険みたいだし……?

ここら辺はふんわり流したほうが良いのかな。

 

また、パーティもなかったのに月曜妖精のダレンだけがいなかったことや、ダレンが初めから凶悪な目つきだったのも気になってまして。見た目は全然違うけどD=ダレン……?と深読みをしたこともありました。でもDは純潔らしいので違うでしょうね。ははは。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

小説化しているそうなので、わりととんちんかんなことを書いている可能性もありますが、とりあえずゲームをプレイした限りでということで悪しからず。

 

色々と妄想が捗るくらい、一日丸々どっぷり浸かって楽しめた一作でした。