「永遠に終わらない鬼ごっこで逃げ続ける」
虚しさの由縁かもしれない前置き。
えー、今回はshirokuroさんところのフリーゲーム「missdeather」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
尖った難易度とドライな世界観、そして狂いながらも心貫かれる台詞回しが魅力のRPG。いやあ、一言で言えば、好みドストライクでした!
人を選ぶ鬼作という言葉がありますが、まさにこの作品はこの言葉が当てはまると思っています。勝手に。おすすめはしにくいけどハマる人はガチ勢になるだろうなあという。
前置きはさておき、特徴など。
序盤が超難、終盤は(わかれば)ぬるゲー
序盤は敵の攻撃を1発喰らえば死ぬ、という尋常じゃない難易度です。アイテムをケチった時が命の尽きる時と言っても過言ではありません。一方で、きちんと試行錯誤するだけの余地も用意してありますし、むしろ初見即死してからが醍醐味でもあります。
何せこちらはただの少年なのに対し相手は強化兵だの悪魔だの殺戮玩具だのなわけですから、即死も当然と言えば当然。初期の無力さを感じているからこそ、終盤で金を湯水のように使い超強化していくのは爽快感があります。
かく言う私は序盤ですっかり難しくて投げてしまっていたのですが、あの独特の陰鬱な世界観がどうしても忘れられず、一ヶ月寝かせてからまた再開してしまいました。そしてそれは正しかった……!
金で命を買う緊張感
ストーリーをざっくり書くと、モノクロ世界で少女の延命のために人を殺して金を集めるゲーです。
私の好みに嵌り込んでいるのがよくわかる。そんなわけで、このゲームでは“余命”なるリミットが存在します。
すぐに詰んでしまうのではとドキドキしてしまいそうですが、実際プレイしてみると意外と余裕がありました。なにせ私はチキンなもので、初回プレイ時は敵を1匹倒す度にホームへ戻ってセーブしたり金稼ぎのために何十回も同じマップを行き来したりしてましたが、稼いだ金のぶんで賄っておつりができました。このバランス感覚は上手いしありがたいなーと。
そんなわけで、普段攻略見る派の私のような人も、初回は心の赴くままにふらふらしてみることをオススメします。
実績解放の真相と深読みしがいのある世界観
ストーリー上の目的は上記の通り延命なのですが、ゲームとしての目的は「実績解放」の一言に尽きます。特定の条件を満たすと世界設定やキャラ設定などを閲覧することができ、じわじわと世界観が紐解かれ、最終的に頭を鈍器で殴られることになるこの流れ。最高でした。
なので、断片的な情報から考察を進めるのが好きな方や、フルコンプなどに燃える方向けとも言えるかもしれません。コンプ情報を見るのと見ないのとでは魅力が段違いです。
また、ゲーム上の死がかなり軽く、ゲームオーバーは勿論のことボス敵もさらりと死んでいくこのドライさも、ストーリーとの絡みを考えると興味深く思えてくるから不思議なものです。
これ世界設定とシステムとどっちを先に思いついたのかなあ。
お話とゲームプレイによる実感とが相互に絡む作品は総じて好きです。
必要最小限のイベント、独特の言語センス
人を選ぶなあと思った要因の一つが、実はここ。この文章面の尖りっぷりです。
軽薄に人が死んでいく中、主人公は台詞も無く黙々と進んでいくので、一見硬派なのですが。ともすればシリアス一辺倒になりがちなこの雰囲気を軽々しく破砕するのがそう、この文体。もっと言えば“顔文字・w使用”です。
いや、そこまで頻繁ではないですし、見たところかなり使いどころを厳選してあえてああいう物言いをしているんだろうなあと思うんですよ! このおちゃらけた感じと言うか、命を重視する目的を踏まえたうえで小馬鹿にするこの皮肉っぷりがむしろ大好きなんですよ!
とはいえ合わない人もいるのだろうなあとは思います。抵抗がなければ逆にこの味を楽しんで頂きたいです……!
劇的なイベントがあるわけではなく、説明もイベントも本当に“必要最小限”なのも悩ましいところ。このドライな距離感こそが私は好きなのですが、一方であっさり済まされてしまう感じも受けます。なので腰を据えて世界観に浸れるだけの余裕を持ってプレイしてほしいなー、なんて。
他にも、アンビエント(でいいのかな)な長時間聞いていたくなる自作BGM、モノクロとシルエットで進む退廃的なマップチップ等々、魅力的な点はたくさんです。
何より世界観と言語センス! 良い意味の雰囲気ゲー!
こういう作品があるからフリゲ漁りは辞められないんですよね。最高でした。
とまあこんな感じで。
私の拙い感想文でもピンと来てくれる方がいらっしゃいましたら、強く強く強くオススメします。
追記ではネタバレ込みの感想や攻略など。
同じ作者様の他フリーゲーム感想記事↓
以下、ネタバレあり。
自分で奮闘して真相を掴み取るのが面白いゲームと思いつつも、序盤のしんどさにもかなり共感ができるぬるゲーマーなので、攻略情報含め色々隠さずダイレクトに書きます。
【序盤】
「アイテムは惜しみなく使うこと」
この精神だけでなんとかなる場面は多く、一方でもったいない精神持ちの私が苦労したところでもありますw
まず買うものはグレネード。先手を取って殺すことが基本なのでAGIは大事だけど、比較的序盤でAGIアップのアクセサリが手に入るのでとりあえず使い捨て武器アイテムを集めるところから始めると良いんじゃないかなーなんて。
【お金集め】
序盤~中盤は軍事施設を行ったり来たり。
通常攻撃で兵士をワンキルできるくらいまでドーピングできたら、武器アイテムは買わずに仲間とドーピングの力を借りて通常攻撃で戦う形に変えると良いかもしれません。悪魔の巣窟に行くと敵がわんさかいるしコイン売れば金になるしで効率がいいかなと思います。
HPの目安はだいたい「兵士30・少年兵80・悪魔の重装兵450」くらいじゃないかな。少女がいると即死が入ることもあるのでそれに期待するのもいいかも。
ステータスについては防御力はあってないようなものというか、攻撃を受ければ死ぬ世界と言っても過言ではないので、速さか攻撃に極振りするのがオススメ。
【仲間と周回プレイ】
強さとしては強キャラ1人=弱キャラ3人なイメージ。イオニアスと二人旅でも十分戦えると思います。弱いキャラも育てる楽しみがあるといえばありますが、何せ序盤のほうがきついので、お金を溜めてガツンと強キャラ雇っちゃうほうが楽な気はします。
ただ終盤はダメージがインフレしてくるので手数を増やすために弱キャラ雇用するのはアリ。実績を考えると自然とパーティは固定になる気がしますけれども。
ちなみに少女は「4日」、ステラは「ガム」です。ステラの条件にしばらく気付けなくてうろうろし続けたのは内緒。
必読にもありますが、周回プレイの時に注意すべきは仲間の装備品について。
周回プレイを始めると雇用している仲間は一度パーティから外れるんですが、装備品は装備したままなので、うっかり外すのを忘れていると持ち逃げされます。2周目以降でも再度雇用したい仲間なら装備しっぱなしでも問題ないとはいえ、何せ金が命を握るゲームなので無駄遣いは控えたいところ。念のためセーブ分けるなどしておくと安心です。
【ミスト】
特にイベントもなくスルーされがちなあの街にひっそり居ます。
てっきりあのマップだけランダムエンカウントに変えられているのかと思っていたんですが、うろうろした感じだと敵シンボルが透明に設定されているだけのような気もします。なので、見当違いのところをうろついているとまったくエンカウントできずに何時間も経つなんてことも。
マップに入った初めの段階では、画面左下辺りの工場みたいな横開きの扉の前に敵シンボル設置されているようなので、1匹倒して落とさなければマップに入り直して倒して……を繰り返すと比較的楽かなあと思います。
で、ここからはストーリー面やキャラについての感想など。
実績解除するうまみがなくなってしまうくらい赤裸々なので未プレイの方は注意。
【世界観について】
あのね、もうこの皮肉と嘲りに満ち溢れた世界観がすごい好きなんですよ!!!
実績コンプした時に見られるあのエンディングでもうぞくぞくしました。最高でした。なんともいえないやるせなさが残ったその後、起動画面に返ってきて見つめるタイトルの重さと言ったらもうね。辛いです。好きです。
そんな中で黙々と少女のため、まさに文字通り命を燃やす主人公の姿が実に良いです。喋らない系主人公なのもまた想像力を掻き立てられます……。意地悪い部分だけだと露悪的で重たく感じてしまうんですが、この作品はほどよくプレイヤーを突き放してドライな反応を返してくれるので、自分のペースでのめり込むことができました。ありがたい。
好きなマップは断然フォールヘヴンです。あそこのボスが「天使」という名前でああいう場所に居てあんな造形なのがもう素晴らしい。全てが皮肉に満ち満ちていて最高でした。
あと入口の本棚に書きこまれているメッセージの数々が痺れます。
一番脳髄をやられたのはコンプ後のおまけダンジョンでした。
コンプすることでこの世界の生命設定を知らしめておいて、なお隠しボスがあれっていう。だから私はタイトルとゲーム内容がシンクロする作品が大好きなんです。戦い終って、隠しボスについて語られた本を調べたところで、どうとも言い難い余韻で胸がいっぱいになりました。忘れられないと思います。
【キャラ】
イオニアスとステラの設定だけでも長編ができそうな気がするんですがどうなんでしょう。この厚みのある設定をさくっと数行で終わらせてしまう贅沢さ……! 想像が膨らみに膨らんでしまいます。実績系のゲームはこういうところが良いんですよねぇ。
敵のキャラグラやイベント等を含めると、ノアとノールがお気に入りです。この二人くらいカラッとしているのがこの世界で健やか(?)に生き伸びる秘訣なのかもしれないなー、なんて。一方で彼らも少女と少年のように片方が欠けてしまっていたのなら同じ末路をたどることになったのかも。
白衣の男はあれですね。お薬のくだりね。泣きました。
シルエットだけのキャラばかりで、台詞もほとんどないのにここまで魅力的なキャラも珍しい。少女はそのミステリアスさが逆にキャラ立ちしてる感じがしますしね。
語り過ぎるとどうしても悲劇になりがちな世界観だからこそ、こうやって情報を絞っているのかもしれません。この渇いた距離感が好きでした。
ああ、本当に好みだった。
プレイして良かったです。