「旅行の計画だけは一人前」
実際行くとなると躊躇われる前置き。
えー、今回はスパイスキャットさんところのフリーゲーム「四人の王国」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エンド分岐と会話分岐が多数のウディタ製アドベンチャーゲーム。追いかけっこやゲームオーバーはなく、物語を通して濃密な対話をするような、独特の味わいがある一作です。
というわけで、さっそく魅力的な点など。
現実と理想のギャップを叩きつけられるストーリー
まず、この作品の物語は厳しいです。それは難解であるとか鬱展開であるとかそういう意味ではありません。現実でも直面しそうな痛々しさや生活を営むしんどさ、夢を追い続ける徒労を遠慮なく叩きつけてきます。
詳しく語りすぎるとネタバレになってしまうので、追記に片付けますが。
知人がやらかした時の気まずさや、自分の失敗談を掘り起こされるようなむず痒さ、挫折を味わうやるせなさなどが込み上げてきます。
だからこそ。ぜひとも、腰を据えてプレイすることをオススメしたいです。
私がプレイした時も先が気になり、一緒に終着点を見届けたいと思って寝る間も惜しむ勢いでプレイしましたが、一方で辛すぎて中断もしました。剥き出しの心に触れてくるような作品です。
プレイヤーの選択を肯定してくれる世界
もちろん辛いだけではありません。1週目では本当に心から、深くのめり込んでプレイして良かったなあと思わされました。
ゲーム開始時にプレイヤーは主人公の設定をします。名前等の基本的なところから、好きな季節などの日常会話になりそうなところまで。そしてこれらの設定は、半分以上が表に出てきません。
でもこのOP、一周した後でしみじみと、大事な導入だったなあと思いました。こういうのを考えるのと考えないのとでは物語への没入感が段違いなんですよね。そして何より、このゲームに唯一求められた、「ありのままのあなたとしてプレイしてほしい」という旨のお願い。これが一番だと思いますし、実際ありのままでプレイしようとするとかなり葛藤したり困ったり苦悩したりするんですが、それでもそうやってプレイして良かったです。
私は特に感情移入しながらやるタイプなので、リアルに胃が痛くなりました。
選ぶ選択肢によって、キャラからの評価や印象が変わるのも面白いところ。本筋は変わりませんが、随所随所でぽろっと零れる言葉に、「ああこんなふうに見てもらえてるんだなあ」とにこにこしてしまいます。
初回プレイはネタに釣られずとにかく自分らしくを目指したので、「まじめで優しい」と言われ続けました。せやろ。へへへ。なので、ガラッと変えてみた2週目での評価のギャップが面白かったです。カーくんの呆れ反応好きです。どうもコメディアンでした。
終盤になればなるほど、選んだ選択肢に対して辛い反論がきます。冷たい反応がきます。厳しいことをたくさん言われます。
でも、どれを選んだとしても、その意思を最後まで尊重してくれる、とても優しいゲームだと思います。
選択に対してストーリーが答えてくれると、本当にゲームをプレイしているという実感が持てて良いですよね。
嫌なところも良いところもあるキャラクター達
多くのキャラクターが登場します。
初めは嫌な奴だなと思ったり、不審な奴だなと思ったり、かわいいなと思ったり優しいなと思ったりします。その第一印象は多かれ少なかれ変わるはずです。主人公も含め、心からどの面も素敵だと思える聖人君子のようなキャラは一人もいません。
そう、たとえサブキャラであろうとも、長所と短所があるんです。人間はだれしもそうですが、それをキャラクターでやろうというのが物凄いと思います。どのキャラにも見せ場があるのもまた、色々な側面を知れる良い機会となります。
私がプレイして一番ギャップがあったのはセイでした。まさかあの場に出てくるとは。
一方、良くも悪くも長所も短所も全部ひっくるめて予想通りかつ印象深いのはクーフィアです。この書き方でもう私が彼女に対して並々ならぬ想いを抱いているのは伝わるかと思います。伝わるかなあ。深くは追記に流します。
とにかく、ストーリーだけでなくキャラクターも深みのあるリアルな造形をしています。
音や光、時間が反映するマップ
ストーリーも勿論ですが、マップや操作面でも熱く良さを語りたい一作です。
まず驚かされたのが、序盤のテラスでの月光! ほかのマップでもそうですが、光源や光の差し込み具合がものすごく凝っていて、見ていて飽きないんですよねぇ。歩くと揺れる草や、暮れていく日、不穏な闇の中の瞳など、細かなところの演出がこだわり抜かれています。ただ行ったり来たりするだけのイベントがあっても随所がこだわり抜かれているので飽きませんでした。風の音や草をかき分ける音、不穏な水音など、SEも自然。
それにきちんとマップを探索したり歩いたりすることで主人公がひたすらにあこがれ続けた“冒険”を体感できている感じがします。
長く歩くと日が暮れて、疲れたら歩みはゆっくりになって。そんな当たり前が体感できるのは改めて嬉しいことですね。余計な道や不要な帰還ポイントはばっさり切ってくれているのも迷子になりがちな私としてはありがたかったり。
さりげないところでは、好きな食べ物。初回はカレーでした。嬉しかったです。
また、会話イベントの起こるタイミングだとキャラがこっちを見てくれたり、ぴょんぴょん飛んでアピールしてくれたりするのもポイントです。クーフィアだけ歩幅が短いのか、歩行グラがちょこちょこぴょこぴょこしてるのもとてもキュート。
とまあ、こんな感じで。
本当、呻いて苦しんで楽しんで感動して、心をぐわんぐわん揺さぶられた一作でした。
問いかけてくるような作品が好きな方、キャラクター重視の方、理想と現実のギャップに悩む方、夢見がちな女の子が好きな方にオススメの一作です。
追記ではネタバレがっつりの感想など。
核心まですべてネタバレ注意。
あといつになく長文なのでそこもご容赦下さい。
【キャラクター】
これ絶対尺というか文字数が足りないので特に印象に残った人たちだけ。
なお、ゲーム内のアンケートはこんな感じで回答しました。
好きなキャラ→クーフィア・カシュー・ドレ
嫌いなキャラ→リーフィア・ミエル・ジャックス(後ろ二人は嫌いというより無関心が近いかも)
主人公
最後まで喋れないのがとてもよかったです。
この手のキャラって、最後に障害を解決してハッピーエンドってなることが多いんですけど、この主人公は話せないことが個性でありそのアイデンティティを大事にしてくれているのがとても素敵でした。
表情グラが変わらないのも良いですよね。無表情で、言葉もないけど、決して無個性ではない、斬新な主人公でした。
クーフィア
とんでもない子です。好きですが好きと言いたくないですし認めたいですがそれはお姫様としての彼女ではなくクーフィアとしてのクーフィアを認めたいです。ぶっちゃけ主人公よりカシューとくっついてほしいです。
なんていうのかなあ、彼女の根底の自己嫌悪とか調子乗っちゃうところとか人見知りとかは、自意識過剰なこと書くと私の嫌なところと被るところがあって、クーフィアが叩かれてるシーンってダイレクトに思い当たることがあったりして本当辛いんですよ。見てられない。しんどい。もっとうまく立ち回れよと思う。しんどいです。
でもだからこそ共感できるところもあったりして、嫌いになれないのも確かなんです。
あと、たとえ下心があったとしても純粋に慕ってくれるのは可愛いし健気で良いです。
たぶんクーフィアって、
ダメ人間なわたしが好かれるはずがない
↓
お姫様なら王子様に愛される
↓
誰かに好かれるためには自分を犠牲にしてお姫様にならないといけない!
という行動原理があると思うんですよね。愛に飢えている子なんです。断言。
だからこそ、あの物語の中で、王子候補であった私がクーフィアとくっつくわけにはいかないなあと思います。ありのままのクーフィアを肯定したいがゆえに。
でもクーフィアって自己嫌悪の強い子だから、カシューの好意なんて気づかないし、気づいたとしても認めないと思うんですよね。一方で誰もクーフィアをかばってくれないから自己弁護には長けていて、だから夢見がちになっちゃったり、夢を否定されたら火のように食って掛かって自分を守る夢を見続けるんだと思うんですよ。
愛したいけど、クーフィアの求める愛し方では愛してあげられないなあと思います。
だから、終盤の選択肢でグイグイ性的なアピールをされたり、ちゅーで舌入れられたりするのはもう言葉を選ばず書くとつらかったです。クーフィアは「あなたの好きなわたしになります!」って言ってくれますけど、それをこっちにも求めてくるじゃないですか。それはとても無理なんです。でも滾々とそれを説き伏せたって絶対聞く耳は持ってくれないと思います。複雑です。これは外から何を言ったって、本人が気づかないと絶対に意味のないことだと思うので、複雑です。
そして、「クーフィアはお姫様じゃなくてもっと素のままで幸せなクーフィアとしてあってほしい!」という私のこの想いは、まんまリーフィアに重なるんですよね。だから、私が私として交流したらたぶんクーフィアは私のこと大嫌いになると思います。それを見越してつらい現実は彼女に言わず夢を見させるような選択肢ばかり選んだ小ずるい自分もいました。嫌だー!好きな相手には誠実でいたい!辛い!大好きだけど大嫌いだ!
カシューやジャンに対する、ちょっと雑で偉そうで、自由気ままな姿が素のクーフィアなんだろうなあと思います。そしてたぶん、主人公がそんなクーフィアの姿を見せてもらうには長い長い時間がかかるんだろうとも思います。
本当にクーフィアのことがこの作品の中で一番好きなキャラなんですが、すんごい難しいです。
一途だし、プレゼントくれたり思いやってくれたりするし、つらい時も大丈夫だと不器用なりに励ましたりしてくれていじらしいし、本当心からとてもかわいい子なんですけどね。
クーフィアに対してはこういう素直に好きと言い難い好意を抱いているので、某イベントで負傷して「おえっ」ってえづいているシーンはちょっとムラッと来ました。また、2週目でふと好奇心に駆られて全力助走からの腹パンをかましてみたところ、あまりの勢いに大爆笑でしたし、クーフィアの反応も生理的に気持ち悪くて最高でした。思わず全反応試しました。楽しかったです。
ちょっと魔が差して「クーフィアのこと好きなの?ねえねえ?」って突っついてみたらまさかのガチで喜びの声をあげました。
わりとはっきり、クー隊長>>>王子っていう方針を示してくれるのも良いです。ある意味一番信頼できるキャラでした。で、私もクー優先な認識は当然だと思っていたので……終盤でカー君が王子のこともきちんと気にしてくれて、大丈夫ですよって言ってくれるのが、めちゃくちゃ嬉しかったです。ああ王子のこと“も”好きだと思ってくれてるんだなあと。
そもそもこういう損しがちな頭脳タイプ好きなんですよね。ジャンの村でうだうだ悩み合ったからこそ、その後の潔さが男らしく見えました。「嘘はつきたくない……」ってしょんぼり顔するところにきゅんときました。
1週目では宿屋の猫イベントをうっかり見逃してしまったので、2週目で回収。プロフに追加された一文がかわいらしくてまた和みました。
まかり間違って他のチームに入ったとしても、ライツやジャックス以外であれば上手いことやってのけそうなキャラでもあるなあと思います。ディモルダーと意外にウマが合ってたのが興味深かったです。
ジャン
普段のふるまいが心優しく控えめだからこそ、イタマ村でのイベントでは驚かされました。あのジャンがここまで主張するからにはもうめちゃくちゃ嫌なんだろうなあと。思わず「紋章ええから次行こ!」と言いたくなるほどでした。
リンチされかかってるのを止めた時、私のプレイとしてはかなり珍しく(たぶん初めて?)命令形の選択肢を選んだんですが、「行くなって言ってくれて嬉しかった」と言ってくれて、ああ選んで良かったなあと思いました。キツイ言葉もちゃんと通じてくれてたんだなあと。
無理に前向きになる必要はないけれど、優しい視点を教えてくれるキャラだったような気がします。言葉一つ一つが沁みたのは彼かも。
サトミ
そつなく何でもこなすキャラ。彼女とのこそこそ話は、秘密を共有してる感じが増してどきどきしました。
作中一二を争うかっこよさ。初回プレイでは、引き止められ引き止められ引き止められ、辛い現実を叩きつけられたうえでのあの言葉だったので、涙ぼろぼろで画面が見えませんでした。
他エンドを見ると、他人へ勝手に理想を託して勝手に満足してるキャラ、とも言える気がします。折り合いをつけるのが上手な人なんだと思うので、うらやましいなあとは思うんだけど、できないなあとも思います。
リカ
ずるい子だなあという印象です。クーフィアとは別の方向性で女々しいのにそこと向き合おうとしない感じがして、サバサバ女子を自称するジトジト女子の気まずさを感じます。
加害者になった時に潔く謝れることは美徳だけど、じゃあ忘れましょって言っていいのは被害者のほうじゃないですか。その境界を軽く踏み越える、押しつけがましい正論の怖さを感じる子でした。きちんと償いや反省もできる子だと見えはしますが、それすらもちょっと、エネルギーに溢れすぎていて怖い。戦車のようだ。
自覚はあるようだけど、自分にこそ利や正義があると信じてる時に使う言葉が本当に強すぎるんですよね彼女。正論の武器の強さを知らないというか。女だから・昇進欲が高いから、以前の気質としての問題で敵を作りやすい性格だろうなあと思います。
まっすぐでいたいけど周りの環境がそうはさせないし、嫌な意味で女性らしい感情的を爆発させたりツンデレしたりするひねくれ者っぽさも確かにあると思うんですよ。女だけど騎士として大成したいというのも、ある意味めちゃくちゃ矛盾の生じてる夢なわけで。カシューが本編で自分のことを正直であることに固執していて~的なセリフを言ってたと記憶してるんですが、ことリカにおいてはカシュー以上にまっすぐであることへ固執しているなあと思います。
まだリカルートに入っていなかった頃に、クーフィアと本質的なところが一緒だから衝突するんじゃないかなと思っていたんですが、某エンドで本人が似たことを発言してて驚きました。
壁に衝突して葛藤した時に折れてしまうであろうクーフィアと違って、きっとどこまでも強くなれるキャラなんだろうとは思うんですが、あなたは一人でも生きていけるくらい強いと本人に言ってしまうとめちゃくちゃ怒るし独りでボドボド泣くタイプだろうとも思います。
ダン
とにかくカリスマがすごい。このカリスマを、作中できっちり表現しきってるのもすごい。言葉を選ばず書くと、お山の大将タイプなんだろうと思います。
何もできなかったーってしょぼくれるマーガに、お前も頑張ったと上っ面の言葉をかけるんじゃなくて、次はやれよ!と声をかけるあたりに彼の人好きされる本質を見た気がしました。
自分のできないことをしっかり認識しているのも良い。向き合うことを一切恐れない人、なのかと思いきやドレにはためらっている面もあって、深まりのあるキャラです。
彼も言葉が強い人ですが、リカと違うのは「俺はこうやる!お前は好きにしろ!」な面なんでしょうかね。裏表無く自分のできる範囲は自分で責任取るイメージが強いぶん、見捨てられるのが一番怖い人でもあると思います。彼にはついていきたいけど、たぶん現実の私なら、もういいって見放されるのが怖すぎてついていけないのが目に見えました。彼がそうそう人を見捨てないであろうことは、五人の帝国エンドや道中のイベントでなんとなく伝わってはくるんですけどね。
ドレ
初めは誠実で良い人だなーと見ていたんですが、まさかのうっかりさんにきゅんときました。それで良いのか王国最強!かわいいなおい!
もちろんかっこいいところも見せてくれて、「暴れてこい!」からの流れには思わず立ち上がりました。拍手喝采ものです。かっこいい!!あこがれる!!
ダンへの忠義に一直線なところと言い、わりと融通聞かないところと言い、真面目一本調子って感じがとても愛おしいです。そんなんだから、トラウマに対しても真剣に思い悩んで向き合ってしまい、どんどんしんどくなっていってしまったんだろうなー、なんて。“考え込まない”をダンに教わってほしいなあと思います。
当然女性だと思い込んでいたので、2週目の某選択肢で性別不詳とわかりとても驚きました。ボイスがついてほしいキャラナンバーワン。
セイ
上司には持ちたくないけど、友人にはなりたい人です。
献花イベントの察しはついていたんですが、触るなと言われて素直に部屋物色をせずに1週目は終えてしまったので、2週目でようやく見れました。見て本当に良かったです。
偲ぶことと記憶することは違うのかな、とか。純粋な悲しみが執着や義務になってしまうのは避けがたいしすごくつらいけど、認めなければどんどん醜くなっていってしまうのだとも思って、なんだかがんじがらめな気分です。
彼の差別に対する考え方にはとても共感でき、もやもや抱いているものを言語化してもらえた気がしました。
また、彼の「人生を豊かにする戦い」というワードが本当に印象的で、初めは彼の実直すぎるが故の攻撃性を表しているのかなと思っていたのですが。後々クーフィアも同じことを言っていて、このワードは作品共通のテーマなんだと気づかされました。
ライツ
違う世界の人という認識が強く、彼から意地悪をされても優しくされてもなんだか役者を相手にしてるみたいな気分で選択肢を選んでいました。妙に距離感があるというか、感情的になれないというか。
私と同じような気持ちを、あの世界の人達みんながライツに対して感じていたのだとしたらと思うと、なんだかむなしい気持ちになります。できる人は距離を置かれる、みたいな……。だから主人公を同じ独りぼっちにして、自分はこいつよりましだと思って自分を慰めたかったのかなぁ。
彼にとっての主人公は体のいいサンドバック、フラストレーションのはけ口、本音を言えるお人形、と見せかけて憧憬も混ざっているんだなあとあの屋上での会話で感じました。主人公に嫌がらせをしてきたのも、リカをいじめたのも、まぶしいくらいの愚直さが憎らしくもうらやましかったんだろう等思います。
某エンドでの「友人」呼びも印象的。でもあれは本気で友情を感じているというよりは、慕う人を手に入れている主人公の輪に下心無しで入りたくて、仲間に混ぜてっていう気持ちで口走った単語なんじゃないかなあと思っています。
負けず嫌いというより、置いてけぼりが寂しい人なんだろうなーという解釈です。探し物の形がわかってないと、探しようが無いですよね。
【エンディングについて】
四人の王国エンド
初回プレイで辿り着きました。たどり着けて、本当に良かったです。ぼろぼろ泣きながらエンドロールを見ました。色んな辛い現実を見て、それでもその先を諦めきれない、勢いばかりの馬鹿な自分を馬鹿なりに素敵だよって言ってくれる優しいエンドでした。
クーフィアと結ばれるというよりは四人で仲良くやるという選択肢を選びたかったので、グイグイちゅーされてしまい動揺もしたのですが。エンドロールはあったかいし、コミカルな動きがあって、なんだかんだ仲良くやれてるんだろうなあと思えて本当に安心しました。
なにせ、直前までシビアな現実と直面しながら進んでいたので、こんな展開フィクションだからできるんだよって思う意地悪い自分がいたのも確かです。それでも、そういう不安もひっくるめて大丈夫だと言ってくれるキャラがいたので、たぶんあの世界の私は大丈夫なんだと思います。
理想をゆったりと認めてくれる素敵なエンドでした。
一人で旅に出るエンド
てっきり怒られたり止められたりするのかなと思っていたけれど、「あなたがそう決めたなら」と言って送り出してくれる人のほうが多くて、涙が出てきそうでした。
クーフィアとカシューへの罪悪感がやばい……。
エンドロールでメインキャラどころか宿の人みたいなモブキャラとすら会わないのは、“一人で”という意思がとても尊重されているなと思います。
私にとっては寂しさとこれからの不安でいっぱいのエンドだったけれど、これを爽快で最高のエンドだと感じる人もいるんだろうなあ。
王国を出るエンド
途中までの流れは上記と近しいけれど、途中のサトミの「幸福の期待値」の話はぐっと胸にきます。
そしてエンドロールから雰囲気がガラッと一変。上記の気楽/考えなしな旅と違い、明確な決意が感じられるシリアスなBGMに感じ入りました。しかもまさか、彼らが来てくれるとは……! 驚きと喜びで思わず叫んでしまいました。
彼らが来てくれないと、ただ小賢しいだけの現実的な寂しいエンドになっていたんだろうなあとも思ったり。
後ろから彼らを刺して帝国に捧げる、という仄暗い見方もできる辺り、本当に“賢い生き方”をする人向けのエンドなのかもしれません。
転職エンド
そしてこちらこそ現実的エンド。
ジャンが言葉を失ったのが密かにツボでした。そりゃそうだよね、何言ってんだってなるよね……。転職とか面接とかって心抉られるワード過ぎてなんか今までとは別のベクトルで辛いエンドでした。せめていいところを見つけられたのが救いでしょうか。
とはいえ、声が出ないうえでなおあんな良さそうなところを見つけて席を勝ちとれた辺り、この主人公はやっぱりポテンシャルがありますよね。こうやって成功例を見せられてしまうと他のルートへの未練も出て、「これに成功したんだから、本当は一人旅だってクーの救出劇だって、何でもやってのけれたのでは……?」と思わされます。それも作者様の計画のうちなのかな。
現状維持エンド
サトミとジャンの反応が一番冷たかったエンドな気がしています。
最後のあれは、努力が報われたと考えるべきなのか社畜コースの飴と考えるべきなのか、はてさて。素直に喜びきれないのが怖いです。
それでも、ゲームの想定されている方向性から真逆の選択肢を取っても、最後には褒めてもらえるというのは、優しい設計がされているなあとも思います。
このあと、ライツの云々に巻き込まれて濡れ衣で処刑されたりするんでしょうか。それとも傍でやっていくよう強要されたりするんでしょうか。そんな不穏さも残るエンドでした。
リカとトレジャーハントエンド
初めてのリカルートで選んだエンド。これはリカをどうこうというより、ライツに対する気持ちをよくよく考えて選んだらここに辿り着きました。
なんか、前述のとおり、ライツに強い感情が抱けなくて。彼からのイジワルは半分天災・半分私の自業自得みたいなものだと思いながら接していたので、リカのぶん殴ってやるという気持ちに共感しきれなかったところがあります。で、とりあえずライツを倒せばなんとかなるというリカの意見もどうせ叶わない結果になるだろうと達観してしまっていたので、叶わない夢に泣くくらいならと思って断り続けてたらこうなりました。
でもこの思考回路ってたぶんクーフィアに対するリーフィアの思考回路なんですよねー!
これが同族嫌悪ってやつか……。
リカと隠居生活
「王子……」の真意に気付けたとき、喜びと必死さに肌がぶわっと粟だって涙出てきました。リカルートのはずなのに!ありがとう!愛してる! 全てを悟った彼女の言葉が重すぎて仕方ありません。そんなとこも好き。
なんだかなあ、ライツの言葉も本心だったんだと思うんですよ。リカには見えていないだけで。ライツは、本当に自分が叶えたいこととか、本当に自分のやりたかったこととかがわからないまま夢だけが先行してて、夢は叶ってるのに自分でも形にならないものを追いかけてるからいつまでも満たされないんだと思うんです。私は決まったレールを歩きたい派でしたが、それもそれで苦悩があるんだなあと。王がライツを恨んだり自分の選択を悔んだりしてくれたらライツも少しは報われただろうに、それをさせない辺りも残酷です。あの王も、強く一人で生きることを望むタイプの厳しい親ですよね。良い親だとは思いますが苦手です。
そしてエピローグ、村のために頑張らなきゃ!って張り切るリカがやっぱりなんというか、エネルギッシュで。走り続けないと生きていけない子なんだなあとしみじみ思いました。
リカとサトミと世界制覇エンド
たぶんあの3人自身はとっても幸せでわくわくするエンドなんでしょうけど、なんだか私には少しだけ空しいエンドにも見えました。このエンドを最後に見たというのも感じ方に影響している気はしますが……。
結局、主人公の「世界中を旅してトレジャーハントする」っていう夢って、何が何でも死ぬ気で叶えたい夢かって言われれば違う気がするんですよね。少なくとも私プレイヤーにおけるあの主人公にとっては違っていて。だから、第二の夢を追いかけたエンドと言う風には見れなくて。むしろ主人公の夢がリカとサトミの「本当にこのまま生きていて良いのか?」というぼんやりした不安からの逃げ道として使われているような気がするんです。
繰り返しますが本当にあの3人は楽しいんだと思うし、芯の底からリカは世界踏破に萌えていると思えますし、あの中に私が入り込みたかった気持ちはあります。でも、サトミの語る狩人の夢とかもそうで、あの二人はこの未来に現実味がないことをわかっている気がして。だから、リカがあえて自分を奮わせるみたいに「次は叶える」的なことを言ってるんじゃないかと思えるんです。
リカの初めの夢が叶わなかったことへの未練や後悔が一切見えてこないのが、空元気みたいな寂しさを残しているんだろうなあと考えています。違う夢を見ることは絶対に悪いことじゃないんだけど、ボロボロのリカを見守ってきた身としては、折れたのになお違った方向へ走り続けようとするリカが痛々しくも見えました。
結局のところ妥協の夢を追いかけたり逃げたりしてる、後ろ暗さが付きまとうようなエンドだなあと感じています。
ワンシーンが響いたのは、ライツを殴りに行くエンド。
その先を見てみたいのは、五人の帝国エンド。
いっぱい泣いて笑って大好きだなあと思ったのは、四人の王国エンドでした。
最後にこっそり宣伝。
好きすぎて二次創作しちゃってます。よければよしなに。