うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム&web小説「アキトDATE」シリーズ感想

「美しく整えればどんな些細なものも黄金へと変わる」

お掃除上手は魔法使いな前置き。

 

 

えー、今回はFBIさんところのフリーゲーム「アキトDATE ショート ~尾のない黒猫~」「アキトDATE 第一話 ~凶行の違和感~」およびカクヨム小説「8%の悪意」「カフカの証書」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

特定の作品の感想だけ読みたい方は目次から↓

 

 

ひとまずとっつきやすいものからということでフリーゲームの2作のみに言及しますね。

 

全てシリーズもので、フリゲのほうは時系列の間にシェアウェアの「不完全な神の部屋」を挟みます。

ノベルと操作を交互に挟むミステリゲー。推理ゲーってなんとなく敷居の高いイメージがあるのですが、この作品はほどよくギャグも交えてとっつきやすい印象でした。

 

というわけでさっそく良かった点など。便宜上、「尾のない黒猫」のほうをショート、「凶行の違和感」のほうを1話と書かせて頂きますね。

 

 

 

シリーズ共通の見どころ

 

アニメのように細かく動く一枚絵

 

紹介文に「コミックを読む感覚で」とあるように、とにかく一枚絵が動きます!

特にショートのほうではプロローグの時点でぎょっとさせられました。アニメだこれ!?

ただ話しているだけの場面でも、調書に目をやったり向き合ったり、微妙に顔を逸らしたり、細やかな動きが丁寧に描かれています。何百枚どころか何千枚の勢いで描かれたのではないでしょうか。ひぇぇ……!

また、このさりげない動きが推理やちょっとしたヒントに絡むのもポイントです。

推理ものやミステリ系のゲームは“見て”気づくギミックが多いと思うのですが、ことこの作品は随所でその“見てわかる”ヒントが隠されていて、実に凝った作りだなあと思わされました。

 

 

明るいキャラとシリアスな展開

 

そしてグラフィックのみでなくストーリーや推理のほうも勿論引けを取らない出来です。

ギャグちっくに進む物語は佳境に近づくとグッとシリアスさを増し、なんのかんのと言っていた主人公も引き締まった発言を見せてくれます。理詰めで責める立ち回りはまさに名探偵さながら。けれども本人は変に気取らずあくまで等身大なのがまた魅力的でした。

硬派な推理はシリアスに、導入や幕間の展開は軽快に。上手に緩急つけて引き込ませるストーリー作りだなあと思います。

また、登場人物にわかりやすいキャラ付けがされているのも好印象。複数キャラを憶えづらい自分にはたいへん助かりました。

 

 

 

何回も試したくなるクリッカブルモード

 

推理ゲームといえば探索と考察がつきもの、特にこの作品は探索が楽しかったです!

重要なものからどうでもいいものまで、とにかくテキスト量が半端じゃないんですよねぇ。連想ゲームのごとくぶっ飛んだ方向へ話が進むものもあり、アキトの反応を見たいがために探索してるようなところもありましたw 最終的に結論だけしか表示されなくなってわけわからんテキストになる、あの一連の流れがほんっとツボで大爆笑です。

また、ちょこちょこメタな視点でプレイヤーの正気や意図をうかがわれるのも面白いところ。ついつい手を出してみたら突っ込まれることもしばしばで、行動を読まれる楽しさを味わえました。

何に対してであれ考察ボタンを押せば真剣に考え込んでくれるアキトが好きです。

 

 

推理が苦手でも手を取ってくれるシステム

 

私はこの手のゲームの証拠品提示がどうにも苦手でして。こうだと思う!っていうのが輪郭しかできてないので、肝心の根幹の推理を求められると詰まってしまうんですね。

しかしこのゲームではありがたいことにほどよく唸りながらも進めました。その理由がアキトからの絶妙なヒントです。

推理を間違えた時に、「どこからどこまで」が合っていて足りないピースは何なのかをきちんと教えてもらえるんですよ。そこはわかってるんだけど導き方がわからない……みたいなもやもやを抱えずに済むんです。これは本当にありがたかった!

推理ができない、うまく説明できないプレイヤーの気持ちに寄り添うようなヒントの出し方でほれぼれです。

最悪の場合はアキトに頼って助けてもらうことも可能という親切設計でした。

 

 

 

 

 

続いて、各作品ごとの感想など。

 

以下、推理やミニイベントのヒント的なところまでは言及しているので、ネタバレ注意です。

 

 

 

 

『アキトDATEショート 尾のない黒猫』

 

他所で「番外編的な立ち位置」と書かれていたのでこちらからプレイしたのですが、時系列としてはむしろこの作品が最新でした。あっちゃー。けれども、前作との絡みやちょっとしたあらすじは全て主人公が説明してくれたので一安心。むしろ過去作に興味が出たので良かったかもしれません。

 

[探索面]

ベランダのブツに気付かずしばらくうろうろしてはいましたが、そこ以外は特段引っかからずに進めました。

もうねー、あっちこっちの探索テキストが楽しすぎるんですよ。勉強部屋で何度ベッドぴょんぴょんしたことか。ゴミ箱をしつこくしつこくしつこく狙った時の狂いっぷりも好きです。

 

[推理面]

途中までは自信度MAXで進んでいたのですが、ラストでは大いにやり直しになりました。いやぁ、あやふやな推理ではいけませんね。

どうやらカードと考え方は合っていたようで、アキトの反応がなんか楽しかったです。おおうと来た。推理の証明の仕方があのさりげない行為に絡んでいるというのも、気持ち良くカタルシスが味わえました。

 

[ストーリー・グラフィック面]

真っ先に言いたいのが換気扇!

換気扇です!

あの、煙が換気扇に吸い込まれていくあの一枚です!

すごくさりげないけど、めちゃくちゃ重要じゃないですか? ストーリーのヒントにもなってるし描写としても上手だし……。もう驚愕物でした。特筆されないのがまたニクイ、絵師様の観察力がよく伝わってきます……!

面白かったのはエアコンの考察。室外機、勉強になりました。

また、ごうんごうんと回り続ける洗濯機が随所で伏線として絡むのも上手いところ。暴くことの虚しさといえばミステリにはつきものですよねぇ。アキトが言えば言うほどあの三人に責められたのもまた、重さを感じさせる展開でした。

そこをぱっと明るく終わらせる、読後感に気を遣った構成も素敵です。

 

 

難点は某所でエラーが出ることかな。いっぺんセーブした後ロード画面からロードし直すと普通に進むはずなので、同様の現象になった方はお試しあれ。

 

 

 

『アキトDATE 第一話 ~凶行の違和感~』

番外編を先にプレイしてしまった、ということで改めて1話をプレイ。黒幕が後に引きずる、ということもなく、これ短編できっちり完結しきってくれていたのがとても嬉しかったです。追加コンテンツよりフルパッケージで遊びたい派なので……。

 

[探索面]

事件開始前から探索パートが挟まれるので、少し冗長に感じるところもありました。早く話を読み進めたいのに間違い探しみたいな虱潰しをしなければいけないこのもどかしさ。この辺りを改善したのがショートなのかもしれませんね。

数は少ないながらもアキトが面白反応を返してくれるのは健在。ついついループするまで調べまくってしまいましたw 田中の名札と冷蔵庫の反応が好きです。

 

[推理面]

かなり序盤からキーアイテムの表示があることや、ブツを調べなければ先に進めない=需要アイテムの察しがつく辺りから考えると、ショートよりも難易度は優しかったかなあと思います。心なしかドヤ顔ができました。

けれども、きっちり一つずつ説明していく手順や、犯人の行動を詰めていく流れはこちらのほうがシビアかもしれません。少なくとも一部だけわかってる状態の自分では、思わぬところで引っかかることがありました。この冷たい視線、これだから推理ゲーはやめられないぜ!

おまけのほうもなかなかにハイテンションな挑戦状なので、気楽な気持ちで是非に。

 

[ストーリー・グラフィック面]

ひょんな一言やちょっとした会話が終盤にカチリと嵌まり込む、この構図の上手さはやっぱり1話から発揮されていたんだなあとしみじみしました。

犯人役が取り乱して小物感を出すことで、最後のシリアスなモノローグにいっそう哀れみがでるというのも良いところ。ショートを知っているおかげか、アキトの内面の変化がいっそうわかりやすくてしみじみします。

イラスト面も、過去作の方が古めなのは当然ではありますが、動的なイラストは当時から上手だったんだなあと思わされました。かなりの枚数使ってるであろうところも変わらずの良点です。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

私はアキトデート読みがしっくりくる派です。

 

へろへろ推理力な私でしたが、サブタイトルや冒頭の回収、伏線の撒き方が上手なおかげで両作とも最後まで楽しく一気プレイできました!

現代もの、ヤンキー風でキメるところはばっちりキメる主人公、グラフィックの動と推理の静、辺りのワードにピンとくる方へおススメです。

 

 

 

 

 

余談。

アキトシリーズはカクヨムのほうでも活動されていて、こちらではweb小説でアキトの活躍を見ることができます。文体は台本調なのでノベルゲ慣れした人にも読みやすい形式。媒体は変われど味は安定です。

というわけで、そっちの感想もちょこっと。

 

 

 

8%の悪意

タイトル回収のセンスが今回も冴えてました。8パーセントという小さいような大きさを終盤に上手く意識させているのが素敵。

だておにーさんは年下集団に紛れた異物なわけですが、このメンツの中だと彼のなんだかんだの面倒見の良さが光るなあと思いました。

 

 

カフカの証書

ビターな読後感は安定の良点。前作でラスボスめいた立ち位置だったクドケンが、また違った見方になるのも興味深かったです。

8%と比べるとやや読みづらい印象があったのですが、これはキャラの語り口と前提となるトリックの解説がややくどかったからかも。

でも、読みやすいトリックの裏に読みづらい意図を隠して、簡単と思わせて捻った切り口にしていあるところは実に面白かったです。

 

 

 

 

カクヨムのほうはタイトル回収の巧みさが特に光りましたねぇ。

 

そしてやはりシリーズ共通して、謎を暴く爽快感よりも、秘密を晒し上げることへの抵抗感や、人が言葉にせずあえて回りくどく隠す気持ちのほうを強く意識させる構成だなあと思います。

 

この、どうにもならない感情をタバコの煙と共に押し込めるような世界観が大好きでした。