「嬉しいって言ってくれるから、嬉しいって言っただけなの」
罪作りは素直さからできている前置き。
えー、今回はKANATA-PORTさんところのフリーゲーム「虹の果ての青」およびその前日譚「君を彩るための前日譚」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
この作者様のサイトで公開されている作品はどれも一連話が繋がっている、短編連作なシリーズものになります。
さて、前置きはここまでとして。
まずは前日譚に当たる小説のほうから。
『君を彩るための前日譚』
前の小説は世界説明中心でしたが、今回の小説は次作品のイメージフックという印象でした。鳥と鉱石、すばるさんの青。そういえば、ホワイトクラウンのほうで烏がすばるさんのことを闇の同族みたいな認識してたのがとても気になってるんですよね……。彼女の過去にも触れたいな。
さておき。
ちょっと意外だったのは3人の距離感かな。てっきり毎日遊ぶ勢いで仲良くなっているものと思っていたので、交流自体はゆるく間の空いた関係なんだなーと。逆に彼らがリアルに生活している感じが出て良いとは思いつつ、リオのちょっと寂しがってる気持ちに同調もしてしまいます。リオだけ常磐さんの転校事情も知らないからなおさら。うーん、一仕事終わったら3人でいっぱいわいわいしてほしいなあ。
全体としてはすばるさんの好みにも触れつつ、次の話がどんな展開なのか期待の膨らむお話だったように思います。
私は、惑い~のほうですっかり常磐に惚れ直した身ですので、常磐さんの「今後の俺に乞うご期待」がなんというかもう勿論ですとも!って感じでした。ふふふ!
続いて本題、フリゲのほう。
『虹の果ての青』
選択式マルチエンドノベルゲー。すごろくのミニゲームや時間制限、お金やポイント稼ぎなど、固く言えばリソース管理ゲーに入るのだと思うのですが、基本はゆるくほのぼのと楽しめる一作です。
では良かった点から。
絵本な雰囲気のパステルカラーのグラフィック
プレイを始めてまず目に入るグラフィックがとっても素敵でした!
全体的にパステルカラーで、やわらかいフォントと星のモチーフがちらちら見えて、登場人物たちも淡くかわいいタッチで描かれます。
タイトルに「虹」と入り、さらにストーリー上出てくるのは様々な色のヒスイ、その中からたった一つの「青」を探すゲーム。色のテーマをさらに強く感じさせてくれる、グラフィック面に力の入った作品でした。
シリーズ前作までがけっこうパキッとした色合いだったのでなおさら、この柔らかい雰囲気が映えるんですよねぇ。リオのほえっとした表情とか、常磐さんのにやりと輝く顔とか、すばるさんのどうあがいても無表情――ながらもうっすら伝わる微笑みなど、どれも魅力的でした。トゥルールートで見れるリオの驚き顔がなんだかとっても微笑ましくて好き。
すごろく開始時の、シャッフル&リスタート!な吹き出しが動きも合わせて好きです。とにかくかわいい!
海で探してお菓子を食べる、子どもの里帰り
ゲームシステムがすごく、よいこの里帰りって感じがして、とってもほのぼのな雰囲気でした。おじいちゃんおばあちゃんのいる田舎へ行く感じと言えば少しは伝わるかな。
海や町に行って普段見ないものを見て、地元の大人に優しくしてもらって、おやつとお小遣いを握りしめて出かけて、ご飯の時間になったら帰る。素敵なお土産を持って帰って、おうちでにこにこ思い出を話す。……そういう、いつかのどこかでやったかもしれない懐かしさが込み上げてくる作品でした。
携帯どころかスマホで何でもできちゃうこのご時世ですが、あえて公衆電話に入れる小銭を数えるのもオツなものですよね。作中のミニゲームもボードゲームっていうんじゃなくて“すごろく”なのがなんか好きです。子どもも大人も楽しめる、昔ながらのお遊び。
リオ自身がまだ精神的には幼いのもあって、子どもの絵日記を見てるプレイ感がありました。
また、シリーズの例に漏れず、少し不思議なことが起こるのも魅力の一つです。
魔法と不思議が噛み合って、優しくてあったかい展開へ進んでいってくれるのも、なんだか絵本みたいでいい雰囲気だなあと思いました。疲れた心によく沁みる……。
やり込んでも良し、ゆるくても良しのポイント制
拾ったヒスイはポイント換算されるほか、おまけとして自己スコアランキングの閲覧もできます。ポイントは低くたって全然ストーリーに影響しない(はず)なんですが、それでもこういうのがあるとついついやってみたくなっちゃいますよね。瀬戸さんのポイント報告にわくわくするのも楽しかったです。
公式サイトに一連の攻略があるので、さくっとクリアしてしまいたい人もうってつけです。
ちなみにこの手のリソース管理ゲーっていうと、一か所に長くとどまって時間いっぱい成果を出してから次へ移動するのが効率的な印象だったので、この作品は真逆で驚かされました。でもこういう、何度も顔を出して親しくなっていく感じは主題に合ってるなあと思います。
あと演出上で良いなと思ったのは、ステータス面の数字をふんわり濁しているところです。元気具合とか、ラッキー度とか、そういうのって数値化するとすごく事務的なものに感じてしまうんですよね。なので、ハートマークでふんわり溜まり具合を測れる感じが、作品の雰囲気をさらに演出してる感じがしました。
ちょっとだけ/じっくり休む、とか、水筒の中身の表現も好きです。
惜しかった点
- ゲーム中の期間が短い
- ある程度攻略が限られている
ここは勝手ながら惜しかった点として、二つ挙げてみました。
というのも、できることの多さに比べて、トゥルーエンドへの道のりがけっこう固定化されている気がするんですよね。一本道じゃないだけで既に素晴らしくはあるんですが、特定の期間に特定の場所へ行って、逃せば終わりな感じがどうしても少し惜しくって。
せっかくならこう、高ポイントだとヒスイ博士エンドとか、電話をいっぱいかけると電話番エンドとか、お菓子をいっぱい買うとラストでお菓子パーティになるとか。そういうおまけっぽいエンドや実績もあるとさらに良かったなーと思いました。
ただまあ、技術的なあれこれもあるでしょうし製作の大変さはプレイヤーが考える以上でしょうし……。
何より、このゲームがとっても気にいったからこそついつい「もっとプレイしたい!」が出てきてしまっているのかなーとも思います。
とまあ、こんな感じで。
気になるすばるさんサイドのお話もちらりと見えて満足。シリーズがのんびりと続いてくれたら嬉しいなあと思う、優しい一作でした。
一連のシリーズが好きな方はもちろん、ほのぼの、星と宝石とパステルカラーな雰囲気にピンとくる方なら楽しめる作品だと思います。
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