うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「僧正の朽ちゆく魔柩」感想

「一対一が等価とならない例は往々にして存在する」

価値観の違いって便利な言葉だよねな前置き。

 

 

えー、今回は、*coelacanth*さんところのフリーゲーム「僧正の朽ちゆく魔柩」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

前に紹介した

斬首人が連れていく」「獄主に捧げる降霊術

と同じ世界観の、18禁BLノベルゲーム。

 

メインキャラ自体は異なりますが、他2作との関係がかなり濃いのでそちらを先にプレイしてから読み進めることを強くおススメします。BLCPとしては本命がほぼ決まっているうえでの総受け傾向かなと思います。愛されより性欲が強め。

 

 

 

というわけで良かった点など。

一部、おまけ要素のほのめかす程度のネタバレ等も含みますのでご注意ください。

 

 

 

首切り協会と反魂の儀式

 

やっぱり一番好きなのは舞台設定。

暗殺者同士の殺し合いを生き残り、他の奴らの首を集めて反魂の儀式を成功させる――というのがざっくりとしたあらすじなのですが。もうこれだけでわくわくしてしまうほどに設定が好みでした!

《十二鐘》の設定も大好きなんですよ! キャラが多数登場する物語で、それぞれ何かが割り振ってあるのってテンションあがりませんか。各キャラに称号や肩書がついてるのもすごくこう、そそられます。今作とは毛色が違いますが異能力バトルものもそういう理由で好きです。

キーンの肩書がめちゃくちゃお気に入り。コンプ欲を刺激されるオシャレなBellページとBishopページも必見です。

『獄主~』ではホラーな雰囲気を感じていたのですが、こういう設定面を見ると今作に関してはデスゲームものの感覚に近いかもしれません。

 

 

 

ズタボロ姿で血反吐を吐きつつ踏ん張る主人公

 

そして、過酷な舞台の中で主人公が弱者側というのもまた熱いところ。

身体中ズタボロになりながら生にしがみつく主人公って良いですよね。主人公が積極的に殺す側に回るのではなく、無力ながらに這いずり回るのもこう、状況の厳しさや異常さが見えて真に迫りました。

いつ殺されるかわからないスリルってたまりませんよね!

 

また主な視点が二つに分かれるおかげで、デスゲームの渦中を駆け巡るハラハラ感と、一部とはいえ盤面を俯瞰的に見れるクールタイムとを両方楽しめたのも大きいです。特に私は気になるところがでてきてしまうと話にのめり込みきれず考え事に走ってしまうタイプなのでなおさら。

前述の通り、主人公は(あの集団の中だと)弱いので即死エンドもそこそこあるのですが。初めはピンとこなかった死亡エンドも、他エンドを見ると深々と頷けることもあり、そういう意味でも面白かったです。

真相と謎のバランスが良いというか。隠すべき謎は最後まできっちり伸ばしつつ、プレイしていくうちに枝葉の部分を少しずつ整理整頓してくれる構成だなあと感じました。

 

 

 

女キャラも活躍する、ストーリー重視BL

 

この作品に限ったことではなく、女キャラが恋のエンジェル的な舞台装置として動くのではなくきちんとキャラとして個性立ってるBLゲーってすごく、すごく良いですよね。

そんなわけで、か弱い乙女であるレダがかなり重要なポジションにいるのがすっごく好みでした。彼女がメインスチルに入るエンディングも好きです……!

勿論、想いの一途さ、執着にも似たどろどろとした感情などなどのBL的な心理描写も、18禁を冠するにふさわしい濡れ場シーンや血生臭いシーンも大満足。ですが、それ以上に俗っぽい萌えを抜きにしても、土台が一本しっかりと打ち立てられているストーリー面に大注目したいところです。

 

 

 

 

過去作プレイヤー大歓喜のappendix

 

真相がわかる、という意味でも全クリを強く推奨したいのですが、さらに嬉しいのが過去作の彼らにもそれぞれピリオドがつけられる点です。数年越しの伏線が回収されたり、過去作の設定が今も生きていたり。シリーズ追ってきた身としては感慨深かったですねぇ。

以前の感想でも書きましたが、元々首切り協会サイドの話は見たいなあと思っていまして。そんな中、首切り協会視点の過去作キャラ達が見られるというこの特典は実にご褒美でした。過去作だとすんなり受け入れられていたところが、この特典だとひどく歪に見える時もあり。箱庭の外から見ないとわからないこともあるよなあ、と思わされました。

 

それぞれ主人公を見比べると、私はやっぱりアーシェの(なるべくしてなった)未熟さが一番萌えるなあと思います。

あとイングラム! 

こう、女を侍らしてるけど紳士的な仕事人って印象が強くて、そういう面がこのappendixでより見られてとても嬉しかったです……! マリータもね、かわいかったですよね。うん。うん……。

 

本編のappendixとして、がっつりお腹いっぱいのボリュームで、最後の大仕事として残された謎を明かしてくれたのも気持ち良かったです。

 

 

 

 惜しい点

 

一方で、過去作に引き続く惜しいなあと思う点は、

 

・BGMやSEなど音演出が一切ない

・文章スキップが既読でも効かない時がある

 

の2点ですね。前者はDLページにその記載があるので了解済みとして。

後者について、ソフト面詳しくないので無根拠な推測になりますが、たぶん既読未読の判定がシーンごとじゃなくて選択肢を選んだ順になってるんじゃないかなあと思うんですよね。

「選択肢1→選択肢2→シーンA」「選択肢2→選択肢2→シーンA」の2パターンがあるとして、たとえシーンAの文章に一切差異が無くても未読と判定してしまうみたいな。

なのでこの辺りはソフトの制限上どうにもならないのかもしれないなー、なんて。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

多少システム面のやりづらさはあるものの、やっぱり世界観がめちゃくちゃ好みで鬱展開も多いので、好みが合いそうな人にプレイしてほしい作品です。

仄暗い感情、人があっけなく死んでいく展開、などにピンとくる方なら、過去作含めて是非。

 

 

 

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

 

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

ネタバレあり。

 

 

キャラクターについて

 

メインキャラは多め、あとは気になったキャラだけさらっと書きますね。

 

 

 

エリアル

 

過去作の主人公と比較して見るためなおさら、というところもあるかもしれませんが、中庸な常識人ポジションだなあと感じていました。

経歴のわりに性へ奔放あるいは嫌悪というわけでもなく、一応半年は従者生活をしているわりに振舞はナチュラル。従者設定はほぼ仮面なので後者はともかくとしても、性嫌悪があるわけでないところは興味深いなーと思いました。ルートによってはヴィクターにだけ身体を許す感じなのもまた。

動きは狂信者というか、殉教者じみているはずなんですが……。あまりそういう熱や狂気を感じさせないのは、時折ふっと素に戻るシーンがあるのと、言動等顧みると頭の隅では常に冷静に見えるからかもしれません。

 

総受けゲー(に見える)なので、ほとんどのキャラから尻を狙われるキャラクターでもありますね。時々、かなり俗っぽくツッコミ入れてるところがあって笑ってしまいましたw モテる男はつらいな!

 

 

 

ヴィクター

 

過剰過ぎる愛が性欲として発露されているから、という前提を理解したうえで。

いやあ発情お兄さんでしたね!!

どうしても常に興奮しているイメージが強く、攻め様的なかっこよさより下半身が気になって仕方がないキャラでした。

自らだけでなく周囲にまでマイペースを通せるところや、弟のこと以外だと1ミリたりとも動じなさそうなところは、王の座を有しているなあと思います。

 

 

 

イングラム

 

斬首人のころから気になってました。

初回プレイではヴィクターを止めたのに彼が斬首してしまったほうの選択肢を選んでしまったのもあり、しれっと他者の上を行く強キャラ感がすさまじかったです。ラスボスと言われても違和感がない。むしろ頂点に立っていてほしい。

ここまで書いといてなんとなく私もソーン家の一員になれる要素があるのではと勝手にうぬぼれていました。マリータちゃん気持ちはわかるよ。間接攻撃寄りのワイヤー使いというのも知将らしくて惚れます。

あと細目キャラの開眼シーンは良いものですよね……。しみじみ。

 

レダとのフラグがかなり気になっていたので、追加部分でしっかり保管されたのもめちゃくちゃ嬉しかったです。こう、(二次創作ではくっつけられそうなくらい接点があるけど)決して恋人にはなりえない、不穏を感じさせる親しい間柄ってとても良いですよね。関係性が素晴らしい。大好きです。

 

ヴィクターとの関係も深いですが、CPとしての攻めというよりはモブ女やモブ男娼を粛々と犯して後腐れなく別れるような形で仄暗い短編に出てほしいキャラだなあと思います。推しへの注文が細かすぎる……。

 

 

 

レダ

 

物語上の彼女の動きが素晴らしく素敵だったということは前述で語った通りとして。

大人しい子が勇気を振り絞る“のではなく”、あくまで内気ながらも愛されたお嬢様としてのレダを貫き通してくれたのもポイントが高かったです。こういう、覚醒されがちなキャラがそのキャラクターとして一貫してくれるのがすごく嬉しくて。

吹っ切れたあの真っ白な墓場のエンドも、勇気を出したというよりは破壊されて一周回って再構築されたという感じがして、虚しさが募って好きです。

他エンドで精神が崩壊してしまうのも鬱展開好きとしてはとても良き……。病んでたり生気を奪われていたりな展開とスチルが多く、可哀想萌えを心の芯まで味わえました。

 

 

 

キーン

 

数多の鮮血が映える環境で、あえて色盲という設定を入れてきたのは上手いですよね。彼にとってかなり影響があるだろうなあと思っていました。良かったとか悪かったとかではないんですが、彼を構成するうえでのかなり大きなキーになっているだろうなあという。

裏方仕事の非力な従者、という印象が強すぎたので、彼に殺されるエンドに辿り着くまで彼も《十二鐘》の一員だということが頭から抜け落ちていました。いやあ、びっくりした……。

他キャラが自分の感情に忠実というのもあってか、キーンさんは特に激情を内に押し込めている印象が強かったです。こういう、手を出すに出せないみたいなもだもだした感じ好きなので萌えました。

 

 

 

ルネ

狂信まではいかず、忠実でとどまっている印象です。たとえ凶行の刃を振りかざされたとしても。やっぱり冷静で自分を道具のように見ているところがあるからなんでしょうかね。

俯瞰的な視線を持っている人はまともに見えます。その内実がどうであれ。

自らを殺すというより、殺すほどの価値を見出していないという印象。切ない。応援したい子です。

 

 

カノン

初めは安心できるキャラだなあとほのぼの見ていたんですが、まさかの「尻を出せ」に腹抱えて笑ってしまいました。ごめん。ほんとごめん。グリアレおそるべし……。

 

 

 

 

 

各エンド・真相について

 

真相について

 

僧正のルールも、恥ずかしながら全然気づいていなくて、シンメトリーに表示されるあの立ち絵に思わずいい意味で鳥肌が立ちました。めでたしめでたしの裏に背筋が凍るような一雫、実に良き。

プロローグの前からすでに運命は定められていたのだ……的な展開も好きです。設定が綺麗に噛み合うの素晴らしいですよね。

 

 

 

各エンドについて

 

攻略面

 

まず第一の壁だったのがキーンルートに入るやり方です。どうあがいてもED6にばかり辿り着いてしまい、一週間くらいやり直した覚えがあります……。きちんとメモ取って総当たりしたほうが早かったかもしれません。

せっかくなので見直す時用にメモっておくと、

「初めの3つの選択肢でヴィクターとキーンどちらかに寄るか明確にさせる(中途半端に外しちゃだめ)」「ぶらして良いのはレダ関連選択肢だけ」「ヴィクターやルイーザの脅しにはきちんと従う」

あたりがポイントだったのかなあと思います。

 

そして最後まで解放できず苦しんだのはED4でした。キーンルートに入ってから横道にそれるということが思いつかなかったのと、バイロンの誘いを断るタイミングに困らされていたのが原因ですね。作者様に泣きついてヒントを頂いてしまう始末……でもおかげで追加シナリオ見れたので大満足です。

 

 

 

エンド内容

 

一番衝撃的だったのはED9でした。女体化、というより精神交換TSFの面が強いですが、かなりニッチな性癖を針でさくりと的確に刺されました。ありがとうございます。雌の悦びに目覚めてしまう元男って興奮しますよね……。

 

狂い具合が楽しかったのはED5です。タイトルからしてフィーバーしてるところがお気に入り。エリアルは死地でふらふらでも精神的には絶対揺らがないというのがプレイ初期でのイメージだったので、なおさら驚かされました。

 

あとゴア的なところでいうと眼孔姦?スカル?でしょうか。これまたニッチで。

イングラムの、穴が広がって~というセリフがすごく淫猥に聞こえました。一番えろく感じたのはこのエンドかも。

 

キーンさん関係のエンドも好きですねー。

なんかこう、どうにもならなかった、みたいな虚しさがたまらないなあと思います。キーンは昂るシーンや、守りたい気持ちがにじみ出てしまう展開が輝いてて。影の想いを募らせるタイプだと思うので、このエンドだと絶対にエリアルのこと忘れられないだろうなあと考えるだけで仄暗くにやついてしまいました。

 

 

 

 

とまあ、印象に残った点はこんな感じ。

シリーズ最終を謳うだけあって、ボリュームたっぷり鬱たっぷり、攻略対象の殺意も満ち満ちている実に好みな作品でした。