「恨み事は言わないし殴りもしないけれど」
見知らぬところで地獄に落ちてほしい前置き。
えー、今回は晴れ時々グラタンさんところのフリーゲーム「あなたと私のワールドエンド」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
分岐あり短編ノベル、仄暗い雰囲気がたまらない一作です。というわけでさっそく良かった点など。
冷めた心と終末世界
タイトルからして終末を感じさせるこの作品。DLページからわかる通りゾンビが徘徊するようになってしまった町が舞台となっています。とはいえいわゆるB級ホラーめいたパニックやバトル等の騒動はありません。どちらかというと、理不尽に対する困惑と諦めのほうが強いです。
主人公が戸惑いや怒りを感じるシーンも勿論ありはするのですが、それでもなお強く「冷めている」印象を受けるのは、虐められっ子という立場も含めやはり「どうにもならない」という部分が根底にあるからなのかなー、なんて。
倦んだ感じというのかな。「どうしてこんなことに!」と憤ることすら無意味とわかってしまって、そういった段階を通り越してもう立ち尽くすしかない……そんな雰囲気が大変好みでした。
ノイズと血糊の画面構成
文字も立ち絵も堪能できる二分割型の画面構成。お話の展開が良く生きる立ち絵の使い方をされていて、シンプルな短編だからこそ効く演出だなと思わされました。
どことなくノイズ交じりに見える画面も終わる世界が意識されてよいものです。クリア後の起動画面にはくすっときました。
とまあ、こんな感じで。
ゾンビ・ドライな憎愛・鬱展開等にピンとくる方へ、強く強くオススメの一作でした。
追記ではネタバレがっつりの感想など。
同作者様の他のフリーゲーム感想記事↓
フリーゲーム「昼の国、夜の国」「今日は魔界もハロウィンです!?」感想
ネタバレ注意!
<助けるルート>
前向き、ではあるんですが亮の家族を(ある意味)見捨てて去っていく話にもなる、このビターな味わいが好きです。なんだろう、ぱっと見は爽やかだけど、よく考えると先が黒しかないというか……。
いや、なんだかんだでなんとかなってハッピーエンド!になるという解釈ももちろんできるのですが、私の好みとしては結局のところふっとあっけなく終わってしまう虚しさを妄想したいところでした。
<助けないルート>
死んだ町、死んだ王様~のくだりがほんっっっとうに大好きです。大好きです。震えました。
憎愛なのか復讐なのか自暴自棄なのか、どの言葉も合いそうで合わないこの絶妙さが本当ね、たまらないんですよ……!!
告白にすらもすぅっと冷めたまなざしを向けて、でも許すわけではないし報いは受けるべき。そういうシビアな視点がやるせなさと鬱展開に拍車をかけていて本当、心が揺らされました。
「どうしようもなくなってしまった」みたいなのが本当好きです。
こういう、虚しさでいっぱいのお話大好きなんですよ。この作者様の作品は、いつもほどよい距離感でそっと登場人物たちを突き放してくれるので、こちらも何とも言えないやるせなさをしみじみと感じ入ることができます。
余韻が素晴らしい一作でした。