「精一杯がんばろう、というと途端に嘘くさくなる」
転びかけたら立て直すくらいが自然な前置き。
えー、今回はみずのみばさんところのフリーゲーム「病名・チュパカブラシンドロームサエジマ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ぼかそうと頑張ったんですがどうしても書きたいところが多くて、記事全体がネタバレっぽくなりました。伏字もないので、未プレイの方は注意です。
というわけで良かった点など。
尖りまくった道化なセリフ集
物語は終始、チアキちゃんの妄想の中の一人芝居で進んでいきます。その妄想がまた奇天烈で、飛び出るセリフもそれこそパワーワードと言わんばかりの魅力と勢いに溢れた文ばかりです。美術1の闇、わかるぞ……!
ところで響きと勢いとセンスに溢れるセリフってついスクショしたり口ずさんだり写経したりしたくなるの何故なんでしょうね。余談。
そして、カオスなセリフでギャグゲー電波ゲーかと思いきや、根幹のストーリーはかなり重たいです。シリアスだからこそ、道化になって誤魔化すしかない悲壮さも見え隠れしてきます。そこがいい。
一人の世界で一人が動くストーリー
世界の危機っぽいことが起こりはしますが、奇跡は起きませんし魔法はありませんしオーディエンスも使えません。もっと言えば主人公の状況はプレイ初めからクリアまで何一つ変わりません。
でも、「プレイしてよかった」と思える感動が確かにあります。
なんというか、絶対にあり得ない理想論な展開じゃなくて、信じれる範囲の中での少し変化した未来って感じが等身大で好きです。どちらのエンドにおいても。
説明なしでもなんとなくわかるルール
りーどみーに書かれている操作方法は最小限で、けっこう手探りで進んでいくところもあります。が、システム自体は単純明快なので、試していくとなんとなく察せられるような作りです。
私はやってわからせるゲー(と勝手に呼んでいる)に少し抵抗があるほうなのですが、ことこの作品においては短編でとっつきやすいこともあり、するする進むことができました。
ラストのあれはやっぱりちょっと詰まったものの、あの手ごたえがあるからこそクリアが輝いて見えて好きです。
そして、ルールを掴んできたところでこのシステムの演出面が生きるんですよね!!!
この、文字や色の使い方、引き返せないところ、コマンド名の変化等々、あちこちにストーリーを示唆するニクイ演出が仕込まれていて震えました。
とまあ、こんな感じで。
あえて書くなら、セーブ不可かつ各章構成というのが戸惑ったかなー、なんて。とはいえ短編ゲーですし、ある意味よい区切りができているので、構成としては文句なしの満足です。
演出重視の方、照れ屋でちょいと愉快な女の子を応援したい方、フリゲならではの尖った作品と聞いてピンとくる方へ強くおススメします。
追記ではネタバレ込みの感想など。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレあり
「辛い!辛いって言いたい!耐えられない!
でも悲劇のヒロインに成り下がるのはプライドが許さない!
私みたいな立場の奴がプライドなんて言ってどうするんだ?それで生きていけるわけでもないのに?
じゃあ生きるってなんだ?逆に死ぬってなんだ!ああああ!」
そんな感じの、夜中によくやりがちなメンタル弱めな思い悩みとガチンコバトルする作品だなあと思いました。
私、チアキちゃんのプライドや在り方が本当に強いなあと思うんですよ。心から強い人じゃなくって、弱気になりがちな自分をちゃんと認識したうえで、空元気にも近いやり方でも踏ん張ってるのが、すごく強いなあって。憧れます。そうありたい。
私なんてすぐポエマーになりがちなので、彼女のある意味照れ屋で自分に酔いきれないところが本当に尊いと思います。等身大というか、ありのままの自分に向き合おうと誠実であるというか。
ハッピーエンドが無理やりの救いじゃなくて、ああこうだったらいいな、このくらいだったらできるかもしれないな、と思えるような救いなのも良いですよね。その“このくらい”はささやかなんだけど、千秋にとってものすごく頑張って死に物狂いで獲得した“このくらい”なのがまた良い。
ラスボスで2回やり直したのもいい思い出です。妄想がわかってなかった&事故死。
ラストは素直に泣きました。
タイトル画面の変化が本当に、シンプルに全てを訴えてきてくれて、大好きです。クリアして良かった、という気持ちでいっぱいになりました。