うそうさ〜第二号室〜

フリゲ!鬱展開!ヤンデレ!万歳

フリーゲーム「ヒューミニアの花婿」感想

「誇りとは振りかざすものではなく携えるもの」

さあ今日も背筋を伸ばしていきましょうな前置き。

 

 

えー、今回はThunderSonia(サンダーソニア)さんところのフリーゲームヒューミニアの花婿」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ボリュームたっぷりヤンデレがっつりの、恋愛ノベル乙女ゲー。サブキャラにもボイス付き。

別作の話をしてしまいますが、『うそつきあくまとわたし』のヤンデレ具合がとても気に入っていまして。公開情報を聞いた時は「あの作者様のヤンデレゲー!」とテンションが上がったものです。

 

というわけで良かった点など。

 

 

ヤンデレに正面から向き合うストーリー

 

ヤンデレ乙女ゲーというと今までは2パターン出会ったことがありまして。初めから終わりまでヤンデレ尽くしのマルチバッドエンドものと、特定のルートでヤンデレエンドに向かうもの。

この作品はそのどちらにも当てはまらない、病みに至る経緯もしっかり書き上げたうえで堕ちルートから更生ルートまで用意してある、まさにヤンデレ好きのための一作でした! シリアスにここまでしっかりヤンデレと向き合っているのは本当に嬉しかったです!

 

私はやっぱりヤンデレは過程が重要だと思っているので、恋が病みに染まる流れがきちんと見れたのがもう萌えました。ある種のギャップ萌えみたいなものですよねこれ。エンド分岐する前からがっつりヤンデレ言動が混ざり始めるのも大満足でした。

各キャラがそれぞれの事情で各々別のタイプのヤンデレになっていくのも丁寧で良いです。

 

 

 

女王の誇りと貫く愛

 

このヤンデレと向き合うガッツを有しているのが、我らがヒロインもとい主人公のイヴリン女王様です。乙女ゲーというと攻略対象に注目しがちですが、この作品では彼女の魅力があってこそという部分も多くありました。

女王という肩書がしっくりと当てはまる、誇り高さで芯が通っている方です。

設定負けしていないのが本当にすごい。

「もうダメかもしれない」という時に、弱いヒロインとして嘆くのではなく、国を背負う者としての責務で一度は立ち上がる――心から応援したくなる主人公です。

 

こうして踏ん張れるヒロインだからこそ、時には体当たりでぶつかって叩いて説得してヤンデレと向き合う展開が光るんですよねぇ。

 

一方で、両親を亡くして、という事情もあり、時には年相応の少女らしさや心の弱さも垣間見えます。ちゃんと弱いところもある、っていうのが本当にツボなんですよ。弱さを知ったうえで苦難に立ち向かえるヒロインは本当に強いと思います。そして、ここまで気高くあってなお心折れる展開も萌え的な意味では心が躍ります。

 

共感もできるし、物語のキャラクターとして応援もしたくなる、乙女ゲーの距離感として絶妙なヒロインでした。

 

 

 

力の入ったボリューム感

 

さらにストーリー面で特筆すべきは個別ルートの長さです。

一応、前半が共通ルート、後半が個別ルートとなってはいるのですが、かなり早い段階から攻略キャラを選択して二人きりで話を進めることができるので、実質ほぼ全編個別ルートです。なんて贅沢なんだ!

 

メインキャラだけでなくサブキャラのエンドもあるので、それこそフルコースなボリューム感です。しかも頭からつま先までヤンデレいっぱい、夢のようですよね……!

サブキャラ相手でも中には想いがメインキャラに向いているエンドもあったりするので、通じない片思いや横恋慕も楽しめます。これもまた新鮮なストーリー構成だなーと感じました。

 

 

 

豊富な病み立ち絵とキュートなケモミミ

 

視覚面で「おお!」と思ったのはアイキャッチです。初めはアルシオンルートから入ったんですが、個別ルートに入ってあのアイキャッチを見て、今後の期待に思わず声を上げて喜びました。

また、立ち絵もハイライトが消えるものから不穏に微笑むものまで多種多様です。ストーリーのボリュームに負けず劣らずスチルも多め。かわいい絵柄で攻略対象も年下っぽい属性の子達が多いので、不穏な展開でのギャップも楽しめます。

 

獣人と言っていいのかな、いわゆるケモミミな攻略対象ばかりなのでそういう意味でも需要を狙い撃ちしている作品です。しっぽ動いたり耳が立ったりするのも微笑ましい!

国によって特色が違うのもさりげなく興味深いところ。マジックアイテムや各国の情勢調整などなど、ファンタジー世界設定としても楽しめました。

 

 

 

声質ぴったりのパートボイス

 

なんと驚き声入りフリゲです。最近多くなりましたよねぇ。嬉しいことだ。

パートボイス、と書かれていたのでてっきり返事や数単語だけ喋ってもらえるタイプだと思い込んでいたんですが、実際は声を覚えられるくらいかなりたくさんボイスが入っていて驚きました。

声質もまさにハマり役な人ばかりで、演者さんの幅広さにしみじみします。

 

ただこれについては一方で不満点もありました。

まず、名前変換機能の関係でヒロイン名を二人称で呼ばれることがあるんですが、シーンによって違和感があったこと。上手い言い換えをしたり、絶妙な吐息でごまかしたりしている部分もありはしたのですが、そもそも名前を呼ばずに済むような場面もいくつか見られたので、テキスト自体を調整してもよかったのではないかなーと感じました。

次は、滑舌の関係。私の好みも勿論ありまずが、どうしても作り声が目立ったり鼻声かかったりで聞きづらい方がいたので、ちょっともったいなかったなあと思います。

おそらくは演技力>>>滑舌でオーディション?してるのかなー、なんて。逆に言えば「ボイスは演技力あってこそ!!」という方にはむしろ大満足な一作だとも思います。

 

実際、病み演技がうっとりするほど上手い方がそりゃもう多くって!

ボイスのおかげでただでさえ良質なストーリーが割り増しで響くことも多々ありました。

 

演技という意味ではティルツの中の人が飛びぬけて好みでしたねぇ。弱っている時と激高する時、恍惚な時、とにかく声の使い分けが上手なんです。それでいてちゃんと別人ではなくティルツの声だなあと思えるんですよ。ひょええ。

あとは、ロシェルの序盤と終盤の切り替えも良いですよね。ロシェルルート入った後に周回プレイで序盤のロシェルに合うとクスっとしてしまいます。このロシェルの未来の姿を知っている優越感的な。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ヤンデレ、ケモミミ、身分差や逆光源氏計画などに萌える方にオススメです。

 

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

 

以下、ネタバレあり。

 

 

 

アルシオン

 

俺様キャラだと思っていた時が私にもありました。俺様→ヘタレ攻め→自己卑下タイプMと印象が着々変わっていったキャラです。

ハッピーエンド後もあれはあれでイヴリンの顔色をうかがうような生活になるんじゃないかなあと思っていたので、後日談でまさかの内心を教えてくれてなんというか、なるほどなあと思いました。もっとここを本編でも見たかったというぜいたくな希望……。

 

対等になれない関係って興奮しますよね。イヴリンから言っても意味が無い、上の者から対等になりたいと言うととたんに傲慢な強制命令のようになってしまうジレンマとロマンが良いです……。

 

凶行を止めてほしい気持ちと独占欲で板挟みになってたんだろうなあと思います。第一印象は俺様っぽかったけどやっぱり本質はウサギなんでしょうねぇ。一見厳しめな王様なのにコルトがなついていたのも、その裏にある優しさ(チキンハート)を見抜いていたからなのかなー、なんて。

 

ふわふわの手錠と聞いて原料は兎の尻尾の抜け毛かな……とか呑気なことを考えてしまっていました。軍事国家だから怪しいお薬の開発もはかどったのかなあ、などなど。

 

 

コルト

 

彼のルートはイヴリンの想いがアルシオンに向かっているパターンや意識する前というシチュエーションが主だったので、付き合うというよりは侍従キャラとしての側面が強かったです。“これから”が期待できる、妄想しがいのあるエンドでしたねぇ。

特に「ご一緒させていただきます」が潔い。かわいいと愛でられる系のショタっぽいキャラですが、このセリフではビシッと男を見せていてかっこよかったです。

 

これだけきっちり主従関係がしっかりしているキャラなので、イヴリンを“あなた”という近すぎる呼び方をしている点だけがちょっと気になりました。ロシェルみたいに“陛下”だとよりキャラ属性に合っていて萌えたんですが。

あくまで彼にとっての陛下はアルシオン、ということなのかもしれません。

 

 

ティルツ

 

甘えたがりというキャラ属性が、背景事情から病み方に至るまで一貫していて、ブレが一切ないキャラでした。キャラづくりが秀逸。

脅しにかかってくるところはある意味メンヘラに近いですし、「俺を」「俺が」という態度は率直に言えば自分勝手なんですが、そこもまるっと含めて「甘やかされた子ども」なのが素晴らしいと思います。イヴリンが安易に怒ったりうんざりしたりせず、それでも彼と一緒に居たいという気持ちを表現してくれていたのも大きいですね。

 

どっちのエンドでも後日談の成長ぶりが光るキャラでした。

特に更生ルートの後日談は、この、元気いっぱいキャラなティルツがすっかり立派な補佐役として育ったんだなあと感慨深かったです。これだけ方向展開しているのに根っこが“ティルツ”だなあと思えるのも、やっぱりキャラの根幹がしっかりしているから。素晴らしい!

 

 

ルト

 

ネタバレになるので表では書けなかった、声の演じ分けがすごいですよね!?

シーンによる「陛下」「あなた」の使い分けも、女王に想いを寄せる男としてのルトと、女王の本音で語り合える良き友達としてのルトが感じられて絶妙でした。

女装に変な意味があるわけでなく、単に可愛いから好きというのも良いです。シンプルだけど大事。余計な設定が入らないからこそ好きです。

 

初対面でのイメージでは、てっきりティルツと対比して腹黒くイヴリンをかっさらおうとしつつも最後には改心するタイプかなあと勝手に予想していたので、友人に対して誠実かつ男前でうっかり惚れそうになりました。

 

後半ルートのルトはティルツとイヴリンに挟まれてさぞしんどい立場にあるだろうと思うのですが、本人は彼らのことが大好きだから辛いとは思っていない(思う時があっても二人への好意で相殺される)んだろうなぁと思ってました。良い人すぎる……貢ぎたい……。

 

 

ルーアン

 

率直に書くと、私にとって好きな面と嫌いな面が両方あるキャラです。

なのでルーアンが純粋に好きな人は次の項目まで飛ばしたほうがいいやも……。

 

でも誤魔化したくはないのできちんと書きます。

とにかく、話を聞いてほしい!これが一番でした。

先手必勝で先に自虐して相手が幻滅するように仕向ける気持ち、よくよくわかるんですが、それで相手が本気で取って嫌われちゃうと途端に自分は被害者になれるじゃないですか。これって結局のところ嫌っても嫌わなくても言質を取れるずるい手法だなあと思うので、もう!ってなります。

あと、他の攻略対象と比べて「ヒロインのために」という気持ちが伝わりづらかったところもあり……個人的に彼はヤンデレではなくメンヘラだなあと思います。

 

ですが一方で、病み方は好みなんです!

こういう性格ならそりゃこうなるよね、という流れが本当に上手! 全キャラに言えることですがルーアンは特にそう!

「見てるだけならいいだろ~」というあのセリフも見事に開き直っててすがすがしいです。ゆえに当然あのエンドが一番好き。他キャラが絡む展開も多く、マジックアイテムが登場するのも、世界観の一端が見れて面白かった点でした。

病み後日談のDVループを感じさせる展開も、先行きのどうしようもなさを感じられて萌えます。

 

 

サーシェス

 

彼のルートが最も平和で国も安泰なのでは、と思いたくなるほどの安定っぷり。

ルーアンにごめんよごめんよと謝る印象がとても強いです。そしてその他人行儀でぎこちない距離感がまたルーアンを苛立たせるんだろうなあとわかってしみじみ。

 

器用そうに見えて実は不器用というか、肝心なところで抜けてる辺りが乙女心をくすぐってなおいっそうモテるんだろうなあと思います。ヒーローだなあ。

 

ところで、前半共通ルートではメインキャラとサブキャラ両方が表示されるようになるのがデフォでしたが、サーシェスは選び続けるとルーアンが消えてしまうのがなんだかおもしろかったです。サーシェスを選んだ時点でルーアンルートは無理、という意思がひしひしと感じられました。ルーアンがあっさり身を引く(というかそもそも自分が花婿候補だと本気で思っていない)のも、控えめなサーシェスの後押しになっていて良い展開でした。

 

 

ロシェル

 

一推しです!

ボイスの棒読みと感情籠ってるのと使い分けが本当に上手で震えます……!

 

展開的に夜のお誘いが多めなのもドギマギしていいですよね。

他キャラと比較すると、状況から考えると何とでもしてしまえそうなアルシオンが意外にも性的な意味で健全だったので、まさか淡白そうなロシェルのほうでこの手のルートが見れるとは思っても見ませんでした。

やろうと思えばいつだってできるけどやらない、っていう、この、食べたいけど食べたくないみたいな境界線でグラグラ揺れるシチュ大好きなんですよ。

 

ロシェルもエンドによって成長具合がよくよく伝わってきて、「ここが引っかかったからこういう結末になったんだな」というのが一番わかりやすいキャラでもありました。

中庸エンドを見た後ハッピーエンドを見ると、魔法部隊の女の子を指導してたり飲み会行ってたり、きちんと他の人に目を向けられているというその一点の違いが本当に尊くて、ありがとうと言いたくなります。がんばってくれてありがとう。

 

 

クライド

 

前述の通りロシェル贔屓なので、彼の言葉にはもう抵抗しまくり嫌悪感丸だしな選択肢を選んでいったら、想像以上に好感度が稼げてしまい笑ってしまいました。この真性ドSめ!

 

クライドを好きなプレイヤーさんって、好きなように弄ばれたいっていうタイプと悔しいけど好きってタイプとで極端に分かれそうな気がします。なので前半エンドと後半エンドとで結末の余韻が全く異なる味なのもよくできてるなあと感じました。

後半エンドのどうしようもなさが好きです。魔術はやっぱり言葉から成るんだよなあ。

 

どのエンドでも一貫してどの言葉が本当でどの言葉が嘘なのか、わかりづらくしてあるのも上手いなーと思いました。解釈に迷いすぎないで済むように、どちらかというと本当寄りだと言外に教えてくれるのも優しいところ。

心からの悪い人ってうっかり良い人になりがちですが、この作品は本当、絶妙なところでブレーキかけてくれて萌え解釈がよくなじみました。

 

 

以上。

ヤンデレをどっぷりと供給できて、本当に、実に幸せでした。