うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム 「僕とあの子の箱庭絵本」感想

「良い子はおうちで幸せに暮らしたのです」

出ると悪い子になってしまう気がした前置き。

 

 

えー、今回は馬鹿げたホノオ。さんところのフリーゲーム

「僕とあの子の箱庭絵本」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

いやあ、とにかく世界観とテキストがすごく好みなゲームでした! 

探索重視の一本道RPG

物語が胸を打つ、ほどよい長さの一作です。

 

 

というわけで良かった点など。

 

ぬいぐるみたちとプリンセスのお話

 

一応、系統としてはダークメルヘンなのかな?

鬱シリアスで、時には血みどろだったり陰鬱だったり暗い執着だったりも交えつつ、最後には綺麗に輝いていく印象でした。お喋りするぬいぐるみや、少年少女と人外キャラ、お菓子で回復したりお料理できたりするシステムなどにピンと来るならきっと合うはず。

幽霊も狂信者も農家も木こりもいます! やったね!

 

一方で、「いいえ」ループや人の家のタンス云々、MIDIチップチューン曲?などなど、昔懐かしなRPG要素もしっかり踏襲してくれていたのも楽しかったです。

 

 

文体を変えて様々に語りかけてくるテキスト

 

「読まなくてもいいけれど読むとぐっと深みが増す」文章が非常に多かったなあと感じます。

 

筆頭はサブキャラのセリフですね。物語が進行するごとにセリフが変化していくのですが、それぞれのキャラごとにテーマを感じる内容でした。哲学的な疑問も混ざっていて、あちこちでふと手を止めて考えさせられるお話だったように思います。

 

あちこちの探索ポイントの反応文もそう。同じ鏡でもバリエーションがあったり、ベッドの持ち主によってクスッとなる一言が入ったりして細かいなあと。

主人公視点の「○○するのはやめておこう」みたいな意思表示の文と、「君はこの先の空間に拒まれていると感じた」みたいなゲームブック風の文とが使い分けされているのも上手かったです。

また他にもラクガキ帳やオルゴールなど、ちょっとしたところに響く一文があって、本棚の中から本を選ぶ時のようなわくわくがありました。

 

 

あちこちで補給しておうちを彩る収集要素

 

探索ポイントが多く、前述の通り反応文もまた詩的で美しいので、あちこち調べるのがとても楽しかったです。例えば同じ窓というオブジェクトでも、調べる場所や時期によって文章が違うんですよ。この細やかな差分が本当に好きでした。

 

また、探索で手に入るアイテムが多いのも嬉しかったです。実用性も兼ね備えている感じがお得で素敵。戦闘の難易度はそう高くないので集めなくても詰むことはありませんが、つい蓄えたくなるこの感じが楽しかったです。

幼少の頃の宝物って野原や公園で手に入れたもんだよなあ、としみじみ。

探索で手に入れたアイテムを使用するギミックも多く、そういう意味ではADV風な進行方法だったようにも感じました。

 

そして、お家ですよ我が家!

ただでさえおうちを買えるRPGってだけでもわくわくするのに、色々と置けるのがもう嬉しくって! 空っぽの箱や籠に自分の手で置く物を選ぶ、置いたらドット絵がにぎやかになっていく、この工程が「私のおうち」って感じで本当大好きでした。拠点を作り上げていくこの感じ。わくわくがいっぱいですね!

また、プレイヤーの愛着に加えて無限補給ポイントが出来上がるという、ゲーム効率として利点があるのもポイントです。

 

 

細やかなドット表現とスタイリッシュなキャラグラ

 

寝る時に目を閉じる動きと、起きた時に目をぱちぱちする動きがすごく好きなんですよ。さりげない丁寧さが素敵。お泊り会の選択肢には小躍りしたくなりました。

他にも、噴水を調べたら吹き出すギミックとか。ジーザスがお座りしたり怯えたりでよく動くところとか。チイのおうちからダンジョンに潜る時、二人がひょこひょこ付いて来てくれるところとか。冗長にならないよう、歩く途中までのところでシーンが切り替わってくれるのも良いですよね。

 

あと、キャラデザインとしては初めにドドを見た時、足元がきっちりケモノしてて思わず唸りました。立つと踵がグッと引き上がっているあの歩行グラ、まさに「わかってらっしゃる」と言いたくなるデザインで実に良いです。

 

ステータス画面などで見られる全身絵や、顔グラもかなり個性的です。ぬいぐるみキャラにこういうかっこいい絵柄をハメるのは新鮮でした。これはこれで味があって好きですねぇ。カインについても、無口気味の主人公ってぽやんとした表情の印象があるので、凛々しい顔つきで意外でした。思わず惚れそう。

 

 

言わずして物語る敵キャラ

 

お話としても衝撃的なシーンが多いんですが、何より心を抉られたのは敵キャラでした。

なんというかね、見た目からして心を刺してくるキャラが多いんですよね……。特に最終ダンジョンではラクガキ帳を眺めながらしみじみと感じ入るものがありました……。

こういう、メインのテキストだけでなくて、零れ話的に一目見ただけで察せるストーリーを組み込んであるのも巧みだなあと思うんですよ。

一方で、ほのぼのとさせられる敵も多いです。そのほのぼのの理由もよく考えてみると、やっぱり思わされるところがあったり。

そんなわけで、ラクガキ帳を集めておくと物語の理解が深まって楽しかったです。

デッサンドールファイターのコメントが好き。

 

 

惜しかった点

 

どうかなと思ったところも素直に書いておくと、

  • 状態異常の種類に対して使う/治す機会が少ない
  • アイテムを使用するタイミングが少ない
  • テレポテトの範囲が狭い

辺りでしょうか。

 

アイテムが多く手に合いるしいろいろ作れる、これ自体はとっても楽しかったです。一方で、せっかく色々作ってもあまり使う機会が無かったのは惜しいなあと思いました。

状態異常も併せて考えると、もうちょっとバトルの難易度を高めても良かったかも?

ただ物語重視なのもわかるので、戦闘をこのままいくなら回復量を減らす方向に行ってもいいかもしれませんねぇ。実際、雑魚からほどほどに逃げても進められる難易度はお手軽でやりやすかったです。

 

あと、テレポテトはリレミト系じゃなくて本拠地ワープにしても良かったかも。元締めの皆さんの位置が微妙に遠い時があったので……。

といっても、村とダンジョンはクリアするとワープでぴょんと行けるので基本的にはユーザーに優しいシステムでした。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ダンサンブルな動きをするお店の皆さんが好きでした。

 

箱庭世界、少年少女と人外、ダークメルヘンなどにピンとくる方へおススメです。

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

ネタバレあり

 

 

 

各キャラクターとそのテーマらしきものについてちらほら。

 

 

キャロライン

 

彼女の疑問が最も熱く心に残りました。

ここにいる意味は? ここで為す意義は? 私が私たる必要性は?

彼女が創られたものだからこそ映える話ですが、自分で選ぶものと押し付けられるものと思えば、色んな物事にも広く共通して響きそうな話だとも思います。

 

それと、彼女のダンジョンの「できそこない・???」と遭遇しないままイベントを終えてしまい、ラクガキ帳回収で初めて出会って後から驚かされました。こう、この子を作ってみたいと思うほどに縛られて、愛憎して?いたんだなあと……。そんなわけで初めに刺さった敵はあの子でした。

あと、あの癖のある喋り方が好きです。

 

 

トバルとチイ

 

トバルはわかりやすく狂信者。

魔法陣で目を瞑ってるシーンがすごく、あぶない魔法使いさんって感じで、好きでした。雰囲気出てる。初めは彼がヤンデレ枠だろうと思っていたんですけどもねー。

で、トバルを倒した後のイベントでのチイのセリフが一番ゾクッとしました。なのでチイもここに書くんですが。そうか、彼女はシのために生まれた子だから、シが怖くない(わからない)んだなあという今更の気づきでした。「シの手先なんて言わないであげて」の意味もようやくここで、実感をもってわかりましたね……。

 

 

ハンス

 

刺さったのはハンスの「ダメかなあ」という創作話。奏でること、作ることに許可や資格なんていらないと個人的には思うのですが、ツイッター等でも定期的に議論されているからにはやはり、その境界線が譲れないものである人も多く居るのだろうなあと思います。

 

 

フッチ

 

初めのほうで聞ける、外のことはそうなんだで終わる、みたいなセリフが好きでした。

彼ってドット絵もずーっと向こう向いてて、話しかけたってこっち見てくれないんですよね。他キャラは顔向けてくれたり吹き出し表現があったりするのに。

内にこもって内で終わるのはそんなにいけないことなのかな。と、普段ふと思う時があって、その一つの答えな気もしました。誰もいけないとは言わないけれど、そのままだと他の人から見た自分も「そうなんだ」で終わってしまうのかなー、なんて。

 

 

ジー

 

最後に、こんな親なんて放っておいて外に出ろ~、みたいなことを言ってくれるのが印象的でした。唯一の優しい言葉が、突き放すものなのかあって。なんていうのかなあ、上手く親をできていない苦悩、みたいな感じなのかなあ。

正しい親とか正しい子どもって言ったって、正しい形なんてたぶんないんでしょうけどね。でも、考えてしまうなあ。

ドロシーがチイのことには触れてくれないのもあわせて、鉛を飲むみたいな寂しさがありました。

 

 

ドド

 

チイとジーザス、トバルと影、レジーとドロシー、ジジとババ等々。自分の影というか補佐というか、嫌なところを受け止めたり弾き返したりして対になるキャラの取り合わせが多い一方で、なるほど確かにドドは終盤までずっと一人だったなあと気づかされました。

まさかの私の萌え直球な展開に驚き、シリアスにもかかわらず別方面で興奮しかけて大慌てだったのですが!

涙も知らなかったぬいぐるみが、ここまで育ったんだなあと思うと、感慨深い気持ちになりました。

 

 

ストーリー

 

全体を改めて思い返すと、プリンセスの歳や境遇に合わせて、彼女が知っている範囲の世界で構成されているんだなあと強く感じました。例えば武器名が「~ソード」とかじゃなくて「お仕事用の鎌」なところとか。追いかけっこが始まるダンジョンでの、あの、わんちゃん×3とかは……。ドドが見ていた彼女の姿なのかなあと思います。さみしい……。

 

あと、ネタバレ関係でラスト周りについてちょこっと。

 

停滞を望むキャラや、好きな子を独り占めしたがるキャラを応援しがちな私なのですが。

相手を論破しようとしたり全否定したりするのではなくて、「今この時は違うよ」くらいに留めておいてくれて、程よい距離感を置いてくれたのがありがたかったです。

それに、創作世界を置いたり置いてけぼりになったりするのも昔から怖いことなんですが、プリンセスの選んだやり方が一つ救いの形になってくれました。

 

だから、鬱展開や怖い演出はあったし、心に刺さるしんどい敵も多く居たんだけど、その痛さも怖さも含めて楽しかったし優しいお話だった印象です。

クリアできて良かったなあ。

 

 

 

常々抱いていた心の辛いところを少し引き受けてもらった気がする。

ありがとうございました。