うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

短編ノベルフリゲ5作感想

「人ひとり感動させるために果たして何分必要か?」

きっと刹那で十分な前置き。

 

えー、今回は、短い中にぎゅぎゅっと良さの詰まったノベルゲーを5作取り上げて感想文を書いていきますね。一部レビューっぽいかも。相互に関係性はなく、作品の雰囲気も別々です。

ではさっそく。

()内は作品傾向等々です。

 

 

 

『虹のくじら』(暗め・メルヘン・学生)

https://www.freem.ne.jp/win/game/11996

 

女学校に押し込められた、クラスで浮いている二人の話。

ジャンルはノベル、プレイ時間は30分くらいの短編。

淡いタッチで描かれた立ち絵と、澱んだ色のメッセージウィンドウ、きらきら綺麗な虹色。ぱっと見で物語の雰囲気が伝わってくるグラフィックです。

 

ストーリー、かなり痛いところを突くリアルさがあります。

嫌われているわけではないけれどどことなく浮いている主人公と、明らかに嘲笑の対象になっているちょっとズレた不器用な子。意地悪なシーンもありはするのですが、「絶対許せない!」と義憤にかられるよりも「こういうこと、あるよなあ……」としみじみ諦めてしまうような方向性です。それでも“どこか”を探さずにはいられない。なんともいえない気持ちです。

ただ暗いだけで終わらず、救いのような何かをちらりと見せてくれるのもまた、魅力的な点でした。プレイ後の感覚が真っ黒でもなく、虹色でもなく、もうあのメッセージウィンドウみたいな雰囲気なんですよね。既プレイの方には伝わって欲しい……!

 

ラストの匙加減が本当に好きなんです。

彼女たちの問題自体が解決したわけではないし、その後に起こるであろう噂話や彼女の境遇を考えると暗く陰鬱な気持ちにもなります。でも、そこは主題ではなくて、ただ虹のくじらでお話は終わる……ワンシーンはどれもリアルな一方で絵本のように幕を閉じるのが、苦しくも大好きでした。

 

余韻たっぷりであとがきをクリックしたところ、作者様からのコメントでさらにじんわりと込み上げるものを感じました。私は、佐々木さんが心底羨ましいと強く感じる一方で、小杉さんがこれからどうすればいいのかと途方に暮れてしまったところもあったので……。改めて自分がどう感じたのかを実感させられた思いです。

最後に雰囲気ブレイクしてくれるのも、悲しくなりすぎずちょうど良いところ。あとがきまでを含めて一作だと思います。

 

閉塞感を書き上げている一作。息苦しさ、輝く虹と絵本の世界、いじめ、女学校、などが気になる方向けです。

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  →(多すぎるので「晴れ時々グラタン」で検索どうぞ!)

 

 

 

『ピーピングプール』(暗め、現代もの、学生)

http://knr.webcrow.jp/

 

現代モノの一本道ノベル。百合未満、男女恋愛の要素もありはするのですが、なんだかとても気になってしまうあの子という概念はまさに百合だなーと感じます。

まるで空気みたいだったあの子は、知らないうちに私より先を行っていた――――そんな妬み交じりの作品です。

スクールカーストまではいかないものの、一段下の立場だからこそ庇護欲を掻き立てられるみたいな、いやーな感情が終始作品を取り巻いている感じでした。

鬱鬱ではないんですよね。生々しい? お風呂に浮く毛の話とか。覗いておきながら正面からぶつかることはしないところといい、なんというかじっとりとした視線を感じます。

キャラクターの反応自体はけっこうさっぱりしてて、オチも彼らの中では一区切りついたことになっているのがまた、独特ですよね。読後感も全体的な作品の雰囲気も爽やかなはずなのに、ざりざりと舌に残る砂が忘れられない。なんともいえない後味でした。

 

スチルや背景画像はどれも透明感があって綺麗なんですよねぇ。だからこそまた、話が映えること映えること。むっちゃんのキャラデザが、今まで気づかなかったけどよく見ればかわいい女の子って感じで素敵です。

きっとむっちゃんも、話してみれば想像以上に普通の子で、ただ誰もそこまで近寄ろうと思わなかっただけなんだろうなーなんて。

 

私の環境のせいか、exeファイルとreadmeが文字化けしてたのには驚いたかな? でもティラノ製だとよくあることなのでまあまあ。

こういう、しこりの残る話が好きです。

 

 

 

『ヴァンパイア・アンダーザムーン』(秘密)

https://www.freem.ne.jp/win/game/11552

 

スッと読み終えれる、けれども衝撃度はなかなかのノベルゲー。

監禁状態から始まるけれどもとにかく主人公が饒舌なので陰鬱さは少なく、流れるように読みやすい文に乗りながら展開に翻弄されているうち、「ああ!?」と驚かされる一作でした。なるほどエイプリルフール作品。

ギャグと見せかけて人外の恐ろしさも感じられる、いやあ吸血鬼って深みがあっていいですよね。

あっさりした後味ながらも鈍器で殴られる味わいがある一作でした。

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shiki3.hatenablog.com

 

 

 

『六姉妹の華麗なる埋葬譜』(ミステリ)

https://www.freem.ne.jp/win/game/11658

 

タイトル最高じゃありません?

起動画面からも察せられる通り、オシャレなビジュアルノベル

実写を上手く絡めつつ赤と黒で構成されている画面構成や、犠牲者を花弁で隠す演出、ぱっと状況が察せられるシルエットなど、あちこちにハイセンスで上品な趣が漂います。

 

一方で文体はかなり軽やかに、姉妹たちが淡々と貶し合う、このギャップも愉快なところ。軽い気持ちで読み進め、拍手で終わる気持ち良さがありました。

 

特に着目したいのは作中要素の徹底した無駄の無さです。立ち絵は猫が代理し、名前は全て番号、死因はどちらがどちらでも、等々。どこまでも個性を殺したうえで「犬みたいな顔」という強烈な個性を叩きつけてくるのが本当、よく効くんですよね! 予想できるというより、予想がつくように作られている印象です。

 

先が読めるという意味ではミステリらしからざる構成ですが、むしろわかりやすくして起承転結+一転くらいを狙っているのではないかなあと感じます。種のわかっている手品をいかに楽しく読ませるか、という感じ。猫たちの写真のトリミングがきっちり良い演出になっているところもグッド。

 

情報の濃淡の付け方が上手ですよ、本当!

まさにタイトル通り、「華麗」な作品でした。

余談、後で作者様の名前見て椅子から転げ落ちました。プロの犯行だった! B.A.D.好きです!

 

 

 

『perception』(哲学・アート)

https://www.freem.ne.jp/win/game/2368

 

作者様が「ノベルアートシアター」を名乗っている通り、スタートすると自動的に文字と音楽と絵が再生される、不思議なプレイ感のノベルゲーム。ノベルゲーと称されることは作者様としては遺憾かもですが、わかりやすく俗化させて頂きます。

 

文章はとにかくリズムと字体重視。テンポが合うとより楽しめるはずですが、私はつんのめる時もありちょっとズレてしまったかなー、なんて。この話は何だったの、と問われると答えに窮すところもあり。

しかし、解答を出したり感想を捻りだしたりするものではなく、正しく字義通りの意味で考えるな感じろ系のゲームなのだろうと強く主張いたします。

 

個人的な話ですが、私は幼少期に植物図鑑を黙々と舐めるように眺めていた(読んではいない)時期がありまして。なんだかその頃の気持ちを思い出しました。考えることすらせずにぼんやりと眺めて、でも無為ではなくてどこか遠くへ入り込んでいる感じ。何だったんだろう、と感じつつも時折開きたくなるゲームだなあと思います。

呪文のように繰り返される印象的なセンテンスや、静かに閉じる二人の世界、花畑を眺める静かな気持ち、等々にピンとくるのなら合うはずです。

 

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以上5作品!

どれもかなり印象に残る、世界観や雰囲気の構築が上手い作品でした。