「次なる探究のため彼女は走り出すのである!」
通り道で猫がばったばった倒れていく前置き。
えー、今回はEIN-CHEREさんところのフリーゲーム「過去への渇望」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
公式サイトはどうも繋がらない?ようですが、DLはふりーむからできます。やったね!
一本道の短編ノベルゲー。ほんのりと百合、ほんのりと未来な日本が舞台です。
公開当時は2014年で作中に出てくるキーとなる年代が202×年、さらには私がプレイしたのが2018年。なかなかいい時期にプレイできた作品でした。
というわけで良かった点など。
ハッと目を引く画力のスチル
基本的には背景画像に文字を全面表示させるタイプで、キャラの外見は要所のスチルで見られるようなシステムになっています。
意外だったのは音羽の外見かな。どちらかというと音羽のほうが慎重派でオタク気質に見えていたので、バリバリパリピギャルな感じのスチルが出てきて思わず二度見しました。
ともあれこのスチルのクオリティが高くてですね!
冒頭タイトル画面の、少し闇を感じるイラストと、一変して和気あいあいと女子学生二人がいちゃいちゃするイラスト。そして、見事な某スチル。さらには最後のスチルが綺麗に冒頭へとつながるあの構図。どれをとっても雰囲気がぴったりで実に良かったです。
某スチル本当に忘れられそうにありません……。
共感しやすい近未来世界
作中の舞台が2300年代ということで、常識もガラっと変わっている――――のかと思いきや、だいたいは共通しておりすんなりと読み進められました。
短くみて二百年後と考えてももっともっと技術革新はしていそうな気もするけれど……この作品が近未来を精緻に描くことを目的としていないことは、プレイしてみればわかるはず。なので、余計な枝葉へ迷い込まずに済むよう、あえて現代に近しい感覚の世界観が作られているのかもしれません。
タブレットを使ったり、アングラ掲示板があったり……この辺の基本的な事項が通じるぶん、油断しすぎて彼女たちが暗号と感じたポイントを掴み損ねて首をひねっていたのも正直なところ。ちょっと私の読解力的な意味でお恥ずかしいです、てへへ。
プロローグや展開は一貫しているので、言われてみればわかるんですけどね。
好奇心が魔を呼ぶ展開
主人公は気になることを調べ尽くすタイプ、しかも年頃のお嬢さんとくればエネルギーも余りまくりで、話はさくさくと加速していきます。何か謎に指先が届くようなわくわく感と共に、序盤はテンポよく読み進められました。
で、転換ですよ。
あの暗転して空気がガラッと変わるシーン、見事でした。ノベルのビジュアル面、文字を使った演出が上手いんですよねぇ。それまではベーシックにベタ打ちの文字ばかりだったのでなおさら、あの演出は効きました。
そして、ネタバレになるので深くは追記に隠しますが、最後の最後の展開も痺れました。
とまあ、こんな感じで。
少女同士の執着や禁断の恋、といった百合要素をお求めだと少々ズレてしまうかも。でも二人が常に共にある存在としてちょこちょこいちゃつきながら研究を進める姿はとても微笑ましかったです。
何より、忘れられない存在に成り代わることは確かですしね!
ぞっとする後味が好きな方向け。
追記ではネタバレ感想など。
ネタバレ注意。
伏字無しでオチまで書いてます。
いや、あそこまで丁寧に誘導してくださってるのに気づけない私が真っ先にどうかと思うんですが、オチがあっちに行くとは思ってなかったので驚きました。
辛口の意味がグラ生活だと通じない、ということも甘口の表現が出てきて初めて気づいた身でして。あの衝撃シーンの芋虫の噛み痕についても、こう。どうしても秘密組織に消されるということを強調され続けてきたので、初めはピンとこなくてですね。
下半身切断されたバッタ
↓
拷問のための見せしめ? 次はお前をこうしてやるという示唆
↓
もうすでに彼女の足も切断されている……?
↓
足がなくなってご飯を取りにいけなくなったから足の傷口にたかってきた蛆を食べていたということか!なるほど!
という思考で納得していたので続きを読むうちにあれあれと戸惑いました。まったくもってなるほどじゃない!
ん、あれ?
でも今書いてて気づいたんですがそしたら音羽のご両親はどうなっ
ああそうか音羽の研究レポートに人肉の記述もあるからには、両親をばらして食べたんですね。それで学校への連絡もストップしてしまったと。なるほどなあ。このなるほども違ってたらどうしよう!
音羽がなんで死んだのかがいまいち掴めていなかったんですが、グラによってほぼ退化し穏やかな栄養吸収ばかり教え込まれてきた臓腑が突然の異物や危険物でエラーを吐いて、血反吐結びぶしゃーってことなのかなと解釈しています。
音羽の持ってた雑誌の切り抜きを持って帰ったシーンでも、私は見当違いにも「いやいや生で持ち帰ったら危ないよ政府に消されちゃうよデータ化しないと!」って焦っていたので、なんというかミスリードを素直に信じすぎちゃった感がありますw
でもあの読んでる感覚楽しかったですね!
ずっとずっと怖いと思ってた政府が実は、ただの迂遠な恐怖であって、本当に怖いものは人の好奇心こそであるみたいな展開。ぐるっと認識が反転する感じがあって、いい具合にぞぞぞっとしました。
鬱展開好きとしていい具合に興奮する、ホラーノベルでした。