「笑って欲しいなどという要求は最も非生産的で非合理ですので」
生命活動を継続してさえいてくれれば問題はない前置き。
えー、今回は大人の道楽(サイトはR18)さんところのフリーゲーム「セカイヲトメテ」(こちらは全年齢)の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エンドまで数分、全クリまで数十分ほどかかる探索脱出ゲー。
もうあちこちいたるところがぴったり好みにハマる作品でした。トゥルーエンドをクリアしてここまで満たされた気持ちになったのは久々です。
本作は何も言わずに語ろうとするととてもとても難しいので、一部ネタバレします。
ご了承ください。
というわけで特徴的な点など。
変わらない部屋と、変わる反応
基本的にマップは短編のボリュームにふさわしいコンパクトさ。ですが、その中にあるオブジェクトの至るところに反応ポイントが仕込まれています。
こういう、どこを探しても反応が返ってくれるタイプの脱出ゲー大好きなんですよー! 色々なところを調べなければいけない探索重視だからこそ、反応してもらえるとモチベが上がりますよね。
しかも、進めれば進めるほど、マグナの反応やちょっとした室内の変化が、がじわじわと効いていきます。同じと見せかけて全て反応が違うところ、凝っていて好きです。
薄ら寒くなってくるけど本人は渦中にいるからなんともどうにも知覚できないああいうの、本当好きです。
モノクロームに覆われた演出
全体的にゲーム画面はモノクロ、主人公の姿すらシルエットです。
そんな中、変わらない景色をふらついては行きつ戻りつ、ただなにか良くない方向に物事が進んでいってることは伝わってくるどことない不安感……。最高でした。
ホラーというわけではないんですよね。不安。
マグナがほぼ監禁されている状態から始まり、唯一の話し相手であるキリエは冷たい態度、せめてキリエの顔が見たい────そんなシナリオ運びも不安を膨らませてくれます。世界観とシナリオのかみ合わせがとても良い作品でした……。
トゥルーへの攻略難易度はかなり高め
こちらは人に寄っては難点とも言えるかもしれませんが、トゥルーエンドへの道のりはかなり複雑です。いわゆる謎解き要素は無いんですが、アイテムの取得順がやや捻ってある点や、フラグが一手で折れてしまう点から、難易度が爆上がりしている印象でした。
といっても、作者様のサイトに完全攻略を載せてくださっているので、難易度に関してはご安心です。視覚的な演出のおかげで、マグナ自身は何も気づけないけれどプレイヤーには訴えかけられている感じも、ある意味では謎解きと言えるのかもなーなんて。
とまあ、こんな感じで。
ネタバレガッツリの感想は追記に仕舞いますね。
私のブログの常連さん(居たら嬉しい)ならどことなーく通じそうな、好みの作品でした。
同作者様の他ゲーム感想記事↓
ネタバレ注意。
トゥルーエンドのネタバレ書きます。
私あの温度感が大好きなんですよ!!
明確にマグナ→キリエの矢印は見えるし、キリエもマグナを何よりも大事にしてるんですけど、完全にすれ違って平行線で終わるあの感じが大好きなんです。
鬱展開ってこうだよなあって思って、ほんとう泣き叫びたくなります。
キリエは延々とそれこそトゥルーエンドに至るまで、彼女の思考回路を崩したりブラしたりすることなく、彼女の生まれ育ちに即してるんですよね。
それにマグナが最後に動いて終わらせた理由も、例えばキリエへの“愛”とかを想定してもいいんでしょうけど、私個人はやっぱり彼の継続してしまうことに対する“絶望”が彼を動かしたんだと思っていまして。
愛は確かにあるけど、それが双方向に結ばれる形としての奇跡にはならないところがシビアで好き。
ZIPフォルダ名がキリエになっている辺りも意味深で、なんというか、主人公はマグナだけど誰よりもキリエに対して誠実なエンドだったなあと思いました。彼女を歪ませずに、ただ、ありのままで成し得る一番マシなところを目指した感じ。
キリエと一生一緒だひゃっほーい、とは思えないように、丁寧に丁寧にマグナが孤独で病んでいく姿を見せておいてくれるところも、上手いなあと思います。
結論好き!
距離感好き!
かなり絶妙なバランスで成り立つ好みの鬱展開を見せて頂けて、感無量でした。