うそうさ〜第二号室〜

フリゲ!鬱展開!ヤンデレ!万歳

フリーゲーム「セカイノミカタ」感想

「人を人たらしめる要素は二つ脚で歩けることではない」

証明のために車椅子を出してみた前置き。

 

 

えー、今回はSuGicomさんところのフリーゲームセカイノミカタ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道のミステリノベルゲーム。ふりーむ紹介文の「すべてが誰かとつながる」通りの一作です。

そしてとにかく美しい一文が多い。一つ素敵な言い回しがあればそれだけで幸せになれる私のような人向けです。

 

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

日常ミステリから群像劇へ

 

一応お話は章ごとに区切られていますが、チャプター選択等はなく地続きの一本道です。

それでも分けられているのには明確な理由がありまして。

ずばり「日常ミステリ短編連作」なんですよね! 一章ごとにちょっとした謎かけが用意されて、そして主人公の傍らには頭の回る探偵役がいて、各章内では解決しない一匙の謎がラストで一気に表題作へとつながっていく感じ。

ノベルゲームと小説の書き方は異なるとよく聞きますが、本作は小説の構成をノベルゲームの文体でやっているような印象でした。これがまたすごい楽しいんだ。

 

そして、最終章を越えて真相編では視点主すら変更されます。回答編になると形式が変わるのもすごくミステリっぽいイメージ。

そもそも「絶対に嘘をつかない」というキャラクターが用意されている時点でミステリ叙述トリック万歳ですもん。大好きですこういうの。

 

元々この方の作品は『ドブネズミアクターズ』から入ったんですが、あの作品で感じていた秀逸な群像劇要素はすでにこの処女作から始まってたんですねえ。私、群像劇書ける方ははちゃめちゃ頭がいい方だと思います。

 

 

 

透明感と圧倒的オーラを感じるグラフィック

 

すごいな、と思うのが、キャラのカリスマ性をしっかり立ち絵で判らせるところ!

本作はけっこう登場人物が多く、どのキャラにもオリジナル立ち絵がつけられている豪華仕様です。そんな中でも、どことなく人を引きつけるタイプのキャラがぱっと見てわかるんですよ。カリスマオーラ。さすがです。

立ち絵だけでなく、フォントやメッセージウィンドウにも注目したいところ。使われているフォントが独特で初めは読み慣れなかったんですが、次第に慣れた頃にはこれこそが本作の雰囲気を表しているなあと思うなどしました。なんだろう、透明感とか、おしゃれでピュアな感じがものすごくタイトルに合うんですよねぇ。

 

 

 

必ずどこかにある胸を打つ言い回し

 

とにかくこの作品で一番熱く推したいのが、文体、美文名文です。

あのね、読んでて思わず手が止まる一文がほんとうに多いんです。はっとする。ああこの言い回しだなあ、この言い方が一番言いたいことにぴったりとハマるなあ、と思う。大好きなんです。グラフィック描けて筆力もあるってもう最強ですよね。

 

例えば作中で繰り返し使われる、マスクの掛け方の理由。推理とはどのようにしてなるのか。引用したいけどもったいない、でも言葉に出して沁み渡らせたくなるこの感じ!

私みたいに合う人は必ず心のあちこちを文で揺らされます。ストーリー構成ではなく言い回しでここまで揺らされた作品はとても久々で幸せでした……!

 

 

 

キャラクターの語る思想

 

少し漏らしたように、キャラクターは親近感のある人から人間離れしたカリスマキャラまで様々です。中でも私が好きなのは嘘の付けない彼でした。この作り物っぽい性格の彼もクリア後にはかなり人間らしく見える不思議。

どのキャラも、初めの内はそれこそよくいる誰かという感じなんですよねぇ。ですが、読み進めるうちにどんどん深層が覗けて、親しかったはずの人が致命的に理解しえない誰かになったり、あるいは理解出来るからこそ意外な一面を持っていることに驚かされたりします。とても独特な感覚でした。

 

語られる話も、喫茶店のちょっとした不思議から、警察沙汰の事故、宗教的思想と段階を踏んでどんどん話は重たさを増していきます。順を追ってのめり込ませるのが上手い。

 

その中で私、各キャラの思考の語りがすっごく好きなんですよね。運の悪さの話や、生き方死に方、ヒーローになるということなどなど。色んな考え方、思索が好きな方にはぴったりだと思います。

推理とはどのような道筋で作られるか、の宝のあの一文が大好き……。

 

 

 

 

難点として

 

真相を見逃しがち

 

読み終わったら???編へ。プレイ予定の方は要チェックです。

いやあ、単純に私が見逃しかけちゃったんですよね。はっはっは。本編がきちんと区切りをつけて終わるからなおさら誤解しがち。でも、???編でこそ見られる諸々があるのでやっぱりここが見逃されるのは惜しいなあと思います。

???はそれこそ起動画面に組み込んでしまうほうが、見逃し防止になるんじゃないかなー、なんて。システム関係で難しいのかな。

 

 

コンフィグがない

 

音量、オートモード、文章速度などなどノベルに欠かせないシステム面がどれも調整できません。できない、はず? 少なくともReadmeには載っていません。

Aキーを押せばオートにはなりますが、ページ送りと文字送りが同じスピードなので体感速度はかなり早め。文字を読みなれた人向けかなと。

自分で文章を咀嚼しながら読める、と言い換えることもできるんですけれどもね。

 

 

謎が謎のまま残ることも

 

あの人が宗教を設立することになったきっかけや、トレードマークがリュックの理由、某人物の相似、宝がボトル拾いに誘われた理由など、一部の謎や関係性についてはあまり明示されていない……ように感じます。

タイトルに関わる部分は回収されますし読後感も良いので、あくまで私の挙げた点は舞台設定・マグガフィンと割り切るべき点なのかも。でもこう、本編に登場するほとんどのものに関係性が備わる精緻な作りをしていたので、やっぱり明かされない部分は気になってしまうかな、と思います。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

まとめると、システムは少し難ありですが、それらを全無視して飛び越える勢いで文章が好きな作品です。ストーリー構成も練られたうえの読みやすさを感じるので、気になった方は是非。

 

 

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shiki3.hatenablog.com