うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「星光少女」感想

「何にだって値段はつけられる、人にも虫にも平等に」

肌の色から想いの深さまで杓子定規で測れればな前置き。

 

 

えー、今回はAONEKOさんところのフリーゲーム星光少女」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐あり、鬱展開、見世物小屋が舞台の乙女向けノベルゲーム。恋愛というよりは執着の要素が強め。

先んじてまとめると、

とてもとてもとてもとてもとても好みでした。

 

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

悄然とする見世物話

 

「全編バッドエンド・悪趣味で不謹慎」と公式サイトに書かれているとおり、終始淀みのあるお話が綴られます。ええ、大好きなんです。こういったお話を世に出すのは(私の好きな作者様たちを見ていると)とてもしんどくて難しいのだろうなと思うので、こうして公開してくださってとてもありがたいなあと心底思います。

「全員、屑」という注意文言はありますが、なんというか、そう思えないんですよねえ。いや予防線としてそう言っておかないと製作者側が大変なのかもしれないんですけども。人なら当然持っている弱音、黒い部分、貫きたくても貫ききれない揺らぎがしっかりと描かれていてとても素敵でした。

 

どのエンドに辿り着いても、ままならない人の気持ち、立ち行かない苦しさが込み上げてきます。エンドのみならず、サブで聞きかじれる話でも静かに心が痛んでいきます。

だからこそ、だからこそ大好きです。その子がその子のナマの言葉で痛みを訴え、最善を求めて、落ちて、千切れていく姿が見られます。人の痛みに誠実な話です。

 

 

 

つい読みたくなるサブキャラの話

 

メインキャラの愛憎も本当心から掛け値なしに素晴らしいと言いたいところなのですが、もうここはネタバレ無しで語れないので追記に格納します。

 

で、他ストーリーとして推したいのが、サブキャラクターの話です。

本作は探索中にメインキャラとは関係ない他の団員ともお話ができるんですが、彼らの話もこれがまた、すごく、痛ましくてとても響くんですよ。文章量自体はサブということで少なめですが、4回×2と話しかける頻度が多いところは嬉しいですし、各人のドラマがあってとても読みごたえがありました。

彼らの口を通じて、見世の雰囲気やアングラの世界観がより深まります。好きだったのは獣男、綺麗な女、双子の話でした。どうしようもなく行き詰っていて、とても好き……。

 

 

 

お金を払って解放していくおまけ要素

 

続いてシステム面。

本編を読み進めると自動的にお金が溜まっていき、おまけ部屋で支払って様々な要素を解放するという斬新なシステムになっています。課金やソシャゲシステムではないので誤解なきよう。

選択時のスポットライトの演出もそうですが、こういうシステム面で見世物小屋という舞台設定の没入感を高めてくれるところ、最高ですよね。

全開放してもけっこう余ったので、おそらく攻略通りエンド直行で読み進めても最低限必要なお金は集まるようになっているんじゃないかな。やろうと思えば初めから攻略を解放できることといい、プレイヤーに対して優しい仕様でとても助かりました。

 

ただ一点、難点として挙げたいのは「100%開放」という単語について。パーセント表示だったので開放の経過具合も表示されるのかと思っていたんですが、例えばスチルを途中まで開放していても一律で「未開放」になります。できれば「未開放」「全開放」だとわかりやすかったなー、なんて。

 

 

 

アングラな雰囲気と美しい光が見られるグラフィック

 

まず、ダークな面から。

背景画像は常に閉塞的で、どのキャラも闇が感じられる表情をし、目立つ下卑た色と静かに沈み込む色がまさにアングラ感を醸し出しています。探索中に右上へ表示されるカウントダウンも、どことなく焦燥感を煽られる感じ。見世物や芸の描写もありますが、輝かしいというよりは、色々なものをさらけ出してしまうスポットライトの厭らしさを感じます。そしてそこが良い。

 

一方で、鮮烈な光の面にも注目したいところ。

タイトルにもある星光少女の描写や、某スチルの上気した身体の熱が見て取れる切ないシーンなど、あちこちにはっと目を引かれる美しいグラフィックが仕込まれています。

さりげないところでは、セーブロード画面! 

開いて思わずほうと息を付いてしまいました。綺麗……。

 

色々プレイし終わって改めて起動画面を見ると、はっとさせられることも。あれも隠喩的で良いですよねぇ。滲みが広がる中に綺麗なものがたくさん。とてもこの作品らしいなと、クリア後にしみじみと思いました。

 

また、細やかなところではメッセージの表示のさせ方なども注目したいところです。

スチル、立ち絵も勿論好きですが、こういった端々まで凝っている作品だなあと感じました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

見世物小屋、全バッドエンドと聞いてピンと来るならもう何がなんでもオススメです。

追記ではネタバレ感想。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「魔法使いと銀の塔」感想

フリーゲーム「星光少女 曙光譚」感想

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意。

 

 

 

 

灯実

 

[グラフィック面]

 

煉が言っていたのを見て初めて、灯実の表情がとても固いことに気付きました。デフォルトがああだと思うと何も感じないんですが、お綺麗なところにいる純然とした女の子なら、もっと柔らかな表情をするはずなんですよね。なるほどなあ。

光の表現が独特で、これは確かに人も寄るだろうなあと納得しました。

 

 

[プレイ中・キャラ性]

 

彼女自体は個というより、ヒロイン役と調整役という要素を半々に感じていました。なんというのかな、シナリオに合わせて動く子という感じ。決まった灯実という型がなくて、プレイヤーの動きに合わせつつ、でも無個性と呼ぶには我が強い……。

こう、とルートが決まるまではふらりふらりとしていて、決まった後は本来の灯実が姿を見せてくれていたなあと思います。

各団員との話の反応を見るに善人ではあってもお人よしではなさそう。このライン上手いですよね。

お金を盗んだり、公式不審人物を罵倒したりはできるところが、興味深いです。馬鹿だ馬鹿だと言われてはいますが、団員に言われたから素直に見世に出ますというほど従順ではないようですし。便利なシナリオのための人形ではなく、揺らぎがあるところが人間らしくて良いよなあと思います。

 

 

 

 

[グラフィック面]

 

まず立ち絵の雰囲気にぎょっとしていたんですよ。まったく光がない瞳、顔以外べたりと張り巡らされた黒いテクスチャ。あまりに異様、と言うのも申し訳ないのだけど……死人のよう、でした。黒のあれは薬という名の毒で壊れていってる身体を表現してるのかな、等々。

 

会話シーンだと各キャラとの血色の違いが顕著です。灯実は健康的な桃色寄り、宗弥も色白な感じだけどあくまで人の肌の色、煉はどことなく血の気がなく見えるけどきっとあまりに瞳の赤が鮮烈だから。

要は、暁って土気色なんですよね。

なんとなしに見ていたはずが、ふと、暁のあの異様な雰囲気は肌の色のせいかと気づいて、ざわっと心が震えました。身体を使って芸をするから、不調や影響の全部が体に出てしまうんだろうなと、思って……壮絶さよ……。

 

 

[プレイ中・キャラ性]

 

初周では暴力系かと思い、彼が怖くてびくびくずっとお部屋にいたのですが、蓋を開けてみれば本当にどうしようもないくらい姉想いの子でした……。部屋を出た瞬間にゲームオーバーかとおどおどしていたので、意外と探索は許してもらえていて、プレイヤーとして安心しました。いや本人は烈火のごとく怒っているんだろうけど。

こういう仕様を思い返すと、物理的にどうこうという問題はさておいて、灯実の好きにさせているところもあるんだなあと……色々と込み上げました。縛りたいわけじゃない、むしろ解放したいんですもんね。ああ……。

 

そういえば作中、灯実を抱いた等々の話が灯実から持ち出された覚えがあるのですが、ベッドでそういうことを為したのでしょうか。灯実の見世に対するイメージとか思うに、性的なことへの知識はなさそうな気が……? ど、どうなんだろう。

 

 

[エンド]

 

エンド2がとても、辛くて、心が痛くて好きです。エンド名を見た瞬間に息が止まるかと思いました。そうだよね。そうだよねぇ……。

余談ですが、エンド2で灯実を買いに来た人は煉ということで良いんでしょうか。外に出されていないのに知っている、買うだけの金があり糸目をつけない、店主と知り合いらしい物言い、とくれば思い当たるところが一点のみ。作中では明かされていない(はず)ですが、こうしたところにもお話の整合性がとってあって素敵でした。

 

閑話休題

暁は何か、何か報われて欲しいという気持ちは確かにあります。でもそれ以上に報われることを暁自身が拒んでしまいそうな気がして、そうなってしまったら最後もう本当に暁はどこにもいけなくなってしまう気がするのでとても怖くなります。

見えなくなっていく光を追いかけながら、ぶつかって消えてしまうのが、彼らしい気がします。自分で自分の希望を捨てるのってとてもしんどいと思うので、それなら救いなんてないほうがよっぽどましな気がするのです。とても酷いことを書いているけれど……。でも後日談とかほんのりとそんな感じだなあ、なんて。

 

 

 

宗弥

 

[グラフィック]

 

エンド3のスチルが一等好きです。全スチルの中で一等。

特技は計算で共感覚持ち、身体も清らかときて、インドアっぽい彼だからこそですよね。ああいうスチルを見せてくれるところがすごく、展開も併せてどきどきしました。痛くもあるけど……。

 

 

[プレイ中・キャラ性]

 

読めないように仮面をかぶり続けて、自分自身でも忘れてしまった、みたいな印象です。一番毒が少ない人というイメージもあります。相対的にですけども。

手を汚したがらないというより汚し方を知らないんじゃないかなあ。外に出た時に汚れていてはならないという心情も含め、色んな意味で上層階級の人。飢えを知らなさそうなんですよね。

最下位なのに生き延びられたのは店主に気に入られたからなんだろうけど、その気に入られるための手段も気になるんですよね。灯実のように騙しやすい相手ではないでしょうし。

 

他にも色々と気になるところの多い人です。持ってたメモは自分の家のことに関するものかなあ。あと、借金してまで本を買っていたのはどうしてかとか。心を豊かにする何かを持っていないと外の世界に戻っても自分が保てないと思った……? 自分はお前たちと違うという気持ちを本に託したかった……? 算術芸の練習用? 

薬は自分用かもしれないけれど、痛がっている少年などなど、誰かに恩を売る用に持っていたのかも。

 

 

[エンド]

 

後日談がね、ずるい!と思いました。

まず後日談自体は良いと思うんですよ、彼の倒錯やどうにもならない感情を描写したうえで、彼らしくもったいつけた理屈でもって、決着をつけてもらう。最後まで人任せなところがひどく彼らしくてとても好き。

 

でも一方でとても悔しいです!

ずるい!手放すことで執着も憎愛もよくわからない感情も全部捨ててしまう、捨ててしまえる、間接的とはいえそういう手段を選べる彼がとてもずるく感じます。好きなんですが好きというのがひどく悔しい! 

でも良いと思います! 好きです!! どうすれば!?(混乱)

ふう。他二人がどうあがいても手放すに手放せないまま死ぬまでずるずると光にすがっていそうだからなおさら思うんでしょうねえ……。

 

スチルで好きなのはエンド3と語りましたが、ストーリーとしても好きです。

ちぐはぐな行動をしている宗弥が好きなんですよ。それに、優しい知的なお兄ちゃんだった彼が男として、雄として見世に出されるところにもえげつなさを感じて好きなんです。もうどうしようもないな。二人で堕ちるところまで落ちて後は割れるだけ、みたいな。

観客のはやし立てるSEが入ってくるのも上手いですよね……。熱気を感じて、淫靡で、でも千切れそうなくらい苦しくて頭が焼けそうなあの雰囲気。大好きです。

 

また横道にそれますが、この作品って強制合意の和姦が多いですよね。私が好きと述べた綺麗な女の人もそうだし双子もそう。そういうシチュエーションが大好きなんです。人権も人の尊い好きという気持ちも何もかもがぐちゃっと潰される感じが、痛んで、好きです。

 

 

 

 

[グラフィック]

 

立ち絵の表示の仕方がめちゃくちゃ上手い!

初め、メッセージ欄に絵が被っちゃってもったいないなあと感じていたんです。でも、よくよく彼のルートを読み進めていくと、強い納得がありました。

煉って灯実だけを見つめている人なんですよね。一方で灯実は初めから煉を拒絶している、突っぱねる態度も多いです。だから、灯実が話している間はウィンドウが動いて煉の灯実へ向けたギラギラした視線が見れるけれど、煉が話している間は灯実が目を逸らしているみたいにずっと彼の姿は見えない――。

巧みすぎやませんか? 素晴らしいですよね。あのメッセージウィンドウの位置は絶対意図してますよ(豪語)。

 

目力の強いキャラが元々好きなので、初めて立ち絵が出た時にぴゃっと立ち上がりかけました。全員、瞳の描かれ方が異なっていて素敵。

 

 

[プレイ中・キャラ性]

 

灯実がざくざく彼を言葉で切っていくので、こういう一面もあったんだなあと驚かされました。こじつけるなら昔の記憶を思い出すのを嫌がって拒絶してるとか、単純に不審過ぎるからとか、色々言えそうです。個人的には、裏口で人もほぼ通らないし暁もいないしという灯実の気のゆるみ説を推したいなあ。対人で気を使っていない素の灯実の温度感はあのくらいなのかなとか考えてました。

煉のことを語っていないな? 

でも彼はなんというか、作中でも言動がかなり一貫していて、執着してはいるけど歪んではいない純度100%のヤバイ人という認識が強いんですよ。そうなってしまったというより、そういう星の元に生まれた人という感じ。純然たる悪。いや動きはヒーローなんですけど。

なので、本編が全てだなと思います。

 

 

[エンド]

 

どのエンドも宗弥と対称的ですよね。汚したいと言いながら愛していることを認めない宗弥と、光は綺麗であるべきだと言いながらまっすぐに灯実を求め続ける煉。やっぱり煉は一貫してるんだよなあ……。

監禁好きで睡姦好きな私にしては珍しく、エンド6のほうが好きです。

知ってしまった、あのシーンが好きなんですよ。灯実が自分の見られ方に気づいてしまったあのシーン。劇的なシーンだけど心情描写は抑えが効いていて、そこがすごく良い。諦めも効いていると言うか、黒いものに気づく時って、あのくらい頭の中は冷えているものですよね。

暁がこれまた体を張ってきてくれるところも好き。もう君は休んでいいんだ……そう言ったらすぐに潰えてしまうだろうけど……うぅ……。

 

煉本人が迂遠に直情なぶん、周りがばたばたと倒れていく様が光るなあと思いました。

 

 

 

 

と。

プレイ後の余韻に浸りながら書き散らかしていたんですが想像以上に長くなってますね? いやあそれだけ語りたい余地があった……素敵でした……。

 

ちなみにクリア済みの方、公式サイトのクリア済みページはご覧になられたでしょうか! とても幸せでしたのでぜひに!

タイトル案にあった

 

 

まとめると、

  • エンド2・3・6が好き
  • みんなどうしようもなくて好き
  • グラフィックから見えるキャラ性と世界観が最高

でした。

この後、プレイ予定の番外編も楽しみです。

 

(→プレイしました。

 

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。