「私のためを祈ってくれるなら、君のために応えよう」
だから君を捨ててみせる前置き。
えー、今回はPwamineさんところのフリーゲーム「トロイ=メライ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ツクール製探索ホラゲー、プレイ時間数時間、短い距離の即死鬼ごっこ有り。舞台としては軽くファンタジー寄り、夢の世界をふらふらするゲー、でもきちんとストーリーは明言される感じ。
なお、私がプレイしたのはリメイク版のver1.4です。
というわけで良かった点など。
1周目は新聞、2周目は小説なプレイ感
周回ではなくフラグで分岐するタイプなので、攻略さえ見ればおそらく初見からハッピーエンドにも行けはします。が、お勧めするプレイ順やおそらく想定されている道のりを鑑みて、1周目2周目という書き方をさせて頂きますね。
1周目だけだと正直、輪郭だけをなぞって終わるプレイ感になります。本番が2周目で、あらゆる真相がわかるようになるのもそっちなので、当たり前ではあるんですが……。
興味深いなと思うのは、1周目だけでもきちんとお話として成り立っているところ。
“足りない”感じはあったとしても、よくある真実を隠蔽するタイプのホラゲと違って、“一見あらすじはわかる”。ここ、すごいな~と思うんですよね。1周目で辿り着くであろうエンドの展開も併せて、すごく深さを感じます。この辺詳しくは追記でも語りますが。
事実だけを先に見れるのが1周目。感情移入がしっかりできて本当の意味で理解できるのが2周目。そんな感じの印象でした。
不幸が折り重なっていく、遠くの世界の話
ざっくりと言えば、3つのエピソードを見てから主人公の境遇に切り込んでいく構成。エピソードに出てくるキャラクターはそれこそ他人であり、マチちゃんが無口主人公寄りなのもあって、どことなくお話は遠くに感じられる印象でした。
誤解無きよう、恐怖がないわけではありません。むしろ淡々としている分、圧倒的な画力と共に、どことなく不安定になる怖さがあったように思います。そもそもエピソード自体が暗く、エンドも鬱展開ですしね。
なんと書けばいいのかな……。それこそ見世物みたいな感じ? プレイヤーは一緒になって慄くのではなく、既に定まっている悲壮な決意を見届ける立ち位置に居るみたいな……。ともあれ、演出としては心が不安定になる一方で、落ち着く距離感でもありました。
まさにアートなグラフィック
印象的なのは全体的な色使い。錆びた鉄格子とか、乾きかけの血液とか、黄ばんだ羊皮紙とか、そんな感じの雰囲気が伝わってくるマップが多めです。彩度低めって言ったらいいのかなあ。
前述の通り、お話自体がこちらに迫ってくるものではなく覗き見るような構造になっているので、物静かな恐怖によく合うマップだったなあと思います。調度品や外装のきちんとした質感と、子どものラクガキのような雑多さが両立してるんですよね。
マップとしてはやっぱりキルトと話せるあのお部屋が好き。
ゲーム始めた頃はかなり遅めの歩行スピードに焦れることも多かったのですが、マップをじっくり見れるという意味では良かったのかもしれません。
メニュー画面もまずぱっと絵で見せて伝えてくる感じ。エピソードの理解度が図で測れるシステムすごく良かったですね~。埋まっていくのが単純に嬉しいですし、これまたどことない不安を掻き立てられますし。絵柄が硬派?しっかり人物してる?ところも、雰囲気が出てて素敵でした。
惜しい点
個人的に合わなかった点も挙げますね。主にゲームオーバー関係。
・人名が多い
例えば星座の部屋の彼らや、著者の弟など、出番少なめのキャラはいっそノーネームのほうが読みやすかったかなー、なんて。私の脳の出来の関係な気もする……。
・セーブやフラグがやや不親切
これは初めの扉限定。視界が狭まるうえに、セーブポイントや鍵のフラグがややわかりづらいマップチップに多かったため、多少難儀しました。狭いマップなので、特にセーブに関しては絶対にぶつかる・絶対視界に入ってくるところに配置して欲しかったと思います。即死鬼ごっこ直前のあれとかね!
・即死の兆候が薄め
謎解きが総当たりできるものも多い一方で、クイズ以外はそこそこシビア。厳しめなこと自体はOKなんですが、ゲーム内での即死判定基準がブレている印象でした。「あっちではセーフだったのに何故!?」みたいな感じ。
死ぬなら容赦なくどこでも死ぬ、即死の難易度を緩和するなら念押しの選択肢やヒントを間に挟むなど、ある程度一貫性が欲しかったかなーと個人的には思います。
あ、でも、ゲームオーバー画面はシンプルにぞわっとして好きです。
あと欲を言うなら、一枚絵の類をもっとじっくり見たかったですねえ。サブリミナル的にぱっと出て消えてしまう演出が多かったので、せめてもう数秒ウェイトが欲しかった…。
とまあ、こんな感じで。せっかくなら「これが好きなら」という形で属性を挙げたいんですが、挙げた瞬間ネタバレになる類のあれなので追記に伏せます。
どうにもならない心苦しさと、陰鬱としたアートな雰囲気などを存分に感じられる作品でした。
追記にはネタバレ感想など。
以下、ネタバレ注意。
双子とかイマジナリーフレンドとか自分が自分を殺すとかそういうの大好きなんですよ!! はぁこれをとても言いたかった、とても好きな展開でした。好きな人多いでしょ、言いたいけどネタバレになるから言えないと思って追記に隠しましたが、ネタバレOKな人には押していきたいポイントです……!
エンドについて
ルートとしてはhappyのほうが色々とわかりやすいし勿論好きなんですが、オチだけ見るとunhappyが好きです。永遠に終わらない展開って大好きなんですよね……! このエンドだと二人が永劫に蹴落とし合うような構図になってしまうのも、胸につまされて良いなあと思います。
それに、1周目だと各扉の物語のあらすじしかわからないという構成が、お母さんに気付かれないままマチにもキルトにもなれるあのオチによく繋がってていいなあと思って……。
表面は理解できるけど中身がどっちでもわからない、根っこのところは隠れたままみたいな。構成がお話の説得力に繋がってていいなあと思いました。
Happyエンドはこれにハッピーとつけるセンスがすさまじいなと思います。確かに悲劇の原因は去り、とても大人らしい方法で決着をつけた、のだけれど……。
こういうしこりの残る結末、大好きなんですよね。エンドの一枚絵も併せてすごく好きです。開いた彼女の瞳の色でキルトを想起させられる、そういうところ。
演出について
一番ぞわっとしたのは、赤い髪の魔女と星座のところ。あの、ベッドで寝るあれです。ヒントの出し方がもう、お話と絡んでるじゃないですか。あれがすごく心をザワザワさせられたんですよね! あんなふうに何度も寝てきたんだなあっていう。プレイヤーが、覗いてる? 加担してる? 感じがぞくぞくきました。
全体的な話としては初めの扉の話が好きだなあ。
屍病という設定がまずもう好きですし、サーカスとかその手の話はつい食いつきたくなりますし。初手でかなりパンチのある話を持ってきてるなあと思います。
アイテム説明文が見れるところも良いですよね。最後の最後に手に入るアイテムの、説明文を読んでしみじみと、覚悟を決めた覚えがあります。
ネタバレ込みで語りたいところはだいたいこんな感じ。
なんだかすごく独特のプレイ感だったなあ。
やることは決まっていて、プレイヤーにできることはなにもなく、それでも没入感はあって、全てが成し遂げられた解放感と一匙の呪いが残るみたいな感じ。良い世界観でした。