うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「青のアウェアネス」感想

「上書き保存で消えてしまう想いに価値を残せるか」

あの時は輝いていたとそれでも言いたい前置き。

 

 

えー、今回はSinilintuさんところのフリーゲーム青のアウェアネス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

プレイ時間数時間の、乙女向けノベル。お姫様と愛のある政略結婚と不思議な魔法。年齢制限あり、ダークな設定あり、でもキャラの前向きな面を見られるシーンが多いので全体的には明るく王道な雰囲気です。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

瞳に宇宙が潜む美しいグラフィック

 

この作者様の作品はいくつかプレイさせて頂いているのですが、かなり独特の画風をお持ちだなあと毎回感じます。お絵かき詳しくないから具体的に述べられないけれども、こう、きらびやか? 星が似合う感じ。

特に今作は、薔薇と異国文化、ファンタジー風の舞台なので、キラキラした絵柄がいっそう似合うなあと。単純にローブや重ね着でごてごてした服装だけじゃなくて、ロクスみたいな中華?アジアン?の服装も交えてあるのがいいんですよねぇ。どこか架空の異国って雰囲気を出してあるのが素敵でした。

 

あと、好きなのが瞳の描き方! ロクスは作中の描写とイラストがぴったりで、説得力が凄まじいですし。エミリオ様は瞳の中で星が瞬いてるみたいな、ふっと目を離せなくなる美しさがあって本当好きなんですよ~!

なお、ヒロインも顔グラこそありませんが、スチルで外見が見られます。THEお姫様って感じのふわりんくるりんで美麗な見た目なので、そちらにも思わずほうっと見惚れてしまいました。

 

 

各ルートが一つの真相へ結びつくストーリー

 

勿論ストーリー面も大注目。

一言でいうとね、構成がかなり興味深い作品です。

私は乙女ゲーというと各ルートが個別に切り離されている、攻略対象と一対一で向き合う構図が多い印象だったんですが、本作は全く異なる構成がされていてとても新鮮でした。

 

なんというのかなあ、お目当てキャラのエンドが他キャラの真相の伏線になっているんですよ。エンドを見れば見るほど数珠つなぎで謎が増えていって、全クリして見事、パチリと一つの絵を作り上げてくれる感じ! 各キャラと向き合って想いを深める王道の流れを踏まえつつ、その先の対局を見せてくれる楽しさがありました。バッドエンドもきちんと本筋に向けて積み重なってくれる感じ。

 

こういう、全部のルートひっくるめて一つの作品って強く感じられるお話、大好きです。

 

 

 

独占欲と仄暗い展開にぐっとくるエンド

 

ちょっと堅苦しい話をしてしまったので、俗に萌えについても触れますね。

あのね、萌えました。ほとんどすべてのキャラクターにこう、ヤンデレ風の、愛が重いエンドが用意されてるんですよ。ほんと、ほんっと嬉しくて!! 追記で語ります!

 

公式には「大好物だ! と仰る方にはご満足頂けるようながっつりとした描写ではありません」という謙遜があるんですが、ヤンデレ大好き鬱展開大好きの私にとっては大好物な作品でした。なので同好の方にも見逃がさずプレイしてほしい作品だなあと思います。

……こういうプッシュをしてしまうと、作者様の予防線をびりびり剥がしてしまっている気がして申し訳なくもあるんですが…………。それでも主張したい、だって萌えたから! 「私は萌えました!」なプレイヤーの声だと思って受け取っていただけると幸い。

 

 

 

魔法と魔術をめぐる深い世界設定

 

上手いなーと思うのは世界観の見せ方です。

説明をだらだらーっと連ねるんじゃなくて、世間話のついでに差し挟まれたり、講義の形で進められたりするので、すんなりと頭に入ってくるんですよね。

それにメインはあくまでキャラの掛け合いという印象もあります。説明はあくまで設定に深みを与えるためのもの、みたいな。色々と細かい部分がある、または付けようと思えば肉付けがいくらでもできるんだろうけど、キャラに関係しないところはさくっと区切ってくれてる感じがしました。

 

それでいてまた、設定がおいしいんですよねこれが!

具体的に書くとネタバレになるのでまた追記に入れるんですけども、すごく、好みの設定でした。

 

 

 

善の心とおちゃめでおてんばな一面を見せてくれるヒロイン

 

主人公もといヒロインちゃんもすごく好感が持てました。強気のお姫様ってキャラクターを好感持てるキャラとして描くのってすごくすごく難しいと思っているので、それができる作者様は無条件で信頼してしまいます。まったく別の作者様の作品を引き合いに出してしまうんですが、『ヒューミニアの花嫁』とか。人間像を描くのが上手いんだろうなあっていう信頼。

 

閑話休題

本作のヒロインの何がすごいって、「かわいくて」「おてんばで」「良い子」の三点が矛盾せずに満たしてあるところなんですよね。なんかね、見ててすっごく応援したくなる!

ちょこっと偉そうなこと言う時ですらも、すごくかわいいんですよ。愛されて育ったんだろうなあって思わせてくれるし、周りがデレデレになっちゃう気持ちがわかる。

彼女がキツイこと言う時だって、お互いが茶化し合っている、甘えたじゃれ合いの延長線上っていうのが伝わってくるので、微笑ましく見守れるんです。いいですよねえ……。

 

あとね、本音で攻略対象たちとぶつかってくれるんです。やっぱり乙女ゲーなので複数選択肢があるんですが、どんな選択肢を選んでも、彼女が考えた彼女なりの理論をきちんと見せてくれる。すごく相手との向き合い方が誠実で、根が良い子っていうのがすごく伝わってくるんです。

弱っちゃうときや悩んじゃうときや、…………なことになっちゃう時もあるけれど、決してねじ曲がらずに真っ直ぐ強く咲こうとする姿を見せてくれる、素敵な主人公でした。大好きです。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

攻略順は出会った順に、エミリオ→ロクス→それ以降を推したいかなあ。公式ブログに詳細な攻略もあるので詰まった方は是非そちらをご参照ください。

 

ヤンデレ、独占欲や執着、仄暗ファンタジー設定、パワフルでキュートなヒロインなどにピンとくる方向けかなと思います。

追記ではネタバレ込みの各キャラ感想。 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「リレガトゥーラ」感想

フリーゲーム「蝶」感想

フリーゲーム「Retro Reflection」感想

 

 

 

 

 

ネタバレ注意。

 

エミリオ

 

攻略対象の中だと一番好きです。

 

別キャラのルートで出てくるエミリオとしては、ユーリルートが印象的だったかな。彼のルートだと、エミリオの寿命や生まれる経緯を多分フラミーニャは知らないままなんですよね。故郷に~って言ってたし……。

エミリオの事情をユーリは告げないんだなあとか、たぶんそこに触れてしまったらフラミーニャはエミリオとユーリの間で愛にせよ同情にせよとても苦しんでしまうだろうから黙っていたのかなあとか、色々と思わされるところがありました。

これはエミリオルートでのユーリにも同じことが言えて、本当に二人はどちらかしか選べないんだなあと、より心が苦しくなりました。

 

 

ロクス

 

よくある「悪魔」の立ち位置ですよね。願いを叶える、代償は求める、本人は何をされてもそんなにダメージを受けず、高次元で人々をせせら笑っている、みたいな感じ。表面上は!

過去を知れば知るほどどんどん彼の人となりが伝わってくるのだけど、その彼の壁をぶっ壊すまでがあまりにはるか遠い印象です。フラミーニャ様じゃないと攻略できなかったと思う。

 

フラミーニャ様が彼を拒む時も、恥ずかしいからとかじゃなくて、「もっと大切に自分の意志で気持ちを伝えたい」という理由なのがすっごく好きでした。

 

萌え的なところだと、あの喋り方が独特で印象的です。長髪なのもあって実は初めオネエさんかと思ってたんですが、がっつり雄な強引さを見せてくれて不覚にもときめきました。恋の呪縛の設定が大変おいしい……。

 

元凶と言えば元凶なので別ルートだとヘイトを稼ぎそうだなあとも感じて、勝手ながら不安にもなったのですが、ふりーむファンアート等拝見するにかなり愛されてるみたいで何よりでした。

 

 

 

ユーリ

 

髪型! 伸びてからの髪型ですよ!

エミリオと瓜二つであってもあのツンツン跳ねた髪型だけですごく印象が違って見えて、同じものであっても二人はまったく別人だなあって感じられて、とても嬉しかったんです。

激する代わりに行動で示すタイプ? 誘拐騒ぎのところといい、しれっとした顔でふっと激流へ身を投じてしまうような危うさがあると思います。フラミーニャ様には頑張ってブレーキ役になって欲しい。彼女のために生きて欲しい。じぶんだいじに!

 

外見情報のおかげで彼の真相自体はわかりやすいものだと思います。が、その裏へさらにフラミーニャ自身がカギをかけた秘密を絡ませることで、読み応えのあるお話になっているところがあまりに巧み。拍手喝采の構成でした。

 

 

 

アレンデール

 

いやあ、こう。ラスボスの風格ですよね。あまりに強い。

そっくりの二人という意味ではエミリオ・ユーリと同じ構図のはずなんですが、ここまでガッツリと違いを出してくれるところに、キャラづくりの手腕を感じます。

 

フラミーニャと彼の掛け合い自体、かなり好きなんですよ。序盤からちょくちょく場を和ませてくれましたし、フラミーニャの人の良さが見える会話が多いですし。市中引き回しのくだりとか、わかっていてもフラミーニャ様の善人ぶりが出ていて本当にこにこしてしまいます。

だから、素直に応援したくもあり……二人はこの関係でずっといて欲しい気持ちもあり……それを本人に言うと惨いだろうなという申し訳なさもあり……複雑です。

 

軽率に考えるのなら別エンド後に暗躍してフラミーニャ様を取り返す彼なんかも考えられると思うんですが、それをしなさそうなところがまた、強い。深みのあるキャラ像をしているキャラだと思います。

 

 

 

 

と、ネタバレ込みで語りたい部分はこんな感じ!

 

好きな要素や萌え別にまとめると、

  • キャラクター自身→エミリオ
  • シチュエーションや設定→ロクス
  • エピローグ→ユーリ
  • 会話劇→アレンデール

と、それぞれ別々の良さを感じる作品でした。