うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「Retro Reflection」感想

「星空へ手を伸ばす君に、この指先はいつ届くのか」

光で敵わぬなら声で振り向かせようかな前置き。

 

 

えー、今回はSinilintuさんところのフリーゲームRetro Reflection」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

舞台は現代日本、攻略キャラは二人、選択肢分岐ありの恋愛ノベルゲー。天文学とフレッシュ大学生活と憧れの大人の裏の話。

一応ぼかすつもりではいるのですが、作品の雰囲気とかはもう伏せる自信がなかったため書きます。ゆえにネタバレ注意です。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

 

ビターで大人な恋愛模様

 

大人な恋愛、というとRがついたりバイオレンスだったり危うい印象がつきがちですが、本作はまっとうな意味合いでの大人の恋愛を描いた作品だったなあと思います。

優先順位の相違とか、何かに対する妥協とか、そういうものときちんと話し合って前を向いていく感じ。魔法や愛の力ってやつであなたを受け入れるのではなく、損得勘定やら親愛感やら刃物やらを通じて言葉の力でなんとか二人がくっつくような、そういうの。

 

価値観の違い、という重さにしっかりと向き合ったうえで夢を見せてくれる、誠実なお話でした。

 

あと単純に、キャラの年齢層がざっくり大学生辺りなのもポイントですね。将来のことを見据えたり、今後の生活の土台を作っていったりする時期。キャラ設定とお話とどちらが先かわかりませんが、彼らがこの年だからこそできたお話なんだろうなーと思います。

 

 

 

彼らなりの形を探すリアルなエンド

 

公式の、ルート分岐ありでED分岐なし、という説明文がピンと来なかったんですが、プレイしてやっと理解しました。

要は1キャラ1エンド。といっても選択肢分岐が用意されているので一本道感は薄めです。わざわざ但し書きしてある辺り丁寧だなーと思ったんですが、別エンドを見たい!みたいな声が上がりそうな展開ではあるので納得ですね。

つまるところ、お気楽ハッピーエンドな作品ではありません。一方で、幸せな未来を見つけられる結末ではあります。この塩梅がすごく好きでしたね~。

 

全体的に明るい雰囲気ですし、主人公もそこそこガッツがある子なので、安心して見守れはするんです。それでもぐらつくところはあるし、テンプレ的な幸せではなく彼らなりの幸せを探すためにどうすればいいのかと考え出すとかなり途方に暮れます。

なので、作中で出してくれた解がすごく気持ち良かったです。彼らにはこういう、こんな形がいいよなあって。確かに収まるべきところに収まってるんだけど、そこに至るビジョンが見えなくてハラハラしてたから、良い具合の形を見つけてくれて本当に良かったなあと思いました。祝福する!

 

 

 

一癖あるキャラクター達

 

公式の書き方が巧みなのでここで明かしてしまうのはもったいないのですが、前述でもピンと来た人はいるでしょうし、書きます。

全登場人物に、ちょっと一癖あります。

「青のアウェアネス」もそうなんですが、公式サイトの説明書きだけだと本作には出会えなかったかもしれません……。そのくらい、当ブログにおいてピンポイントにもうなんかこう伝わって欲しいそういう設定が、潜んでいました。ここ本当上手かったなあ。ネタバレは追記でがっつり書きます。

 

 

 

星々とキャンパスと絵になるキャラ達

 

グラフィックに独自の強さがあるのは言わずもがな。

この作者様の絵柄は星や輝きといったイメージがよく合うなあと前々から思っていたので、まさにまさにのプラネタリウムや天体観測がメインモチーフでとても嬉しかったです。

抜け感、っていうのかな。スチルも立ち絵も全体的にオシャレな雰囲気で、ナツキさんの職業とか今時な年代とかにしっくりくるんですよねー。

 

ナツキさんはモデルさん、立夏先輩はサブカル系雑誌の街で見かけたあの人的なポジションのイメージ。

ついでに言うとヒロインは教室だとちょっと注目されるけどミスコンには出ないタイプっぽい(妄想)。

 

あと、さりげないところだとプラネタリウムの背景画像! 

あれがついてる時と消える時とできちんと差分があって、なんだか絵本の内側にいるみたいな、すごく味のある背景だったんですよー。あれも手描きなのかなあ。それとも加工の具合かなあ。立ち絵があるとついそっちに注目しがちですが、今作はそういう背景にも目を向けたくなる魅力がありました。

 

それぞれのお部屋の背景が見れるのも好きなんですよね。ナツキさんのモデルルーム感よ。

先輩はこう、一見人間味ある感じだけど生活感なさそうな感じがなんかもうすごく彼らしくて、展開も合わさって「うぇっへっへ」みたいな声出ました。ごめん。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

攻略対象ときちんと向き合ってお話する作品というイメージが強く、響く台詞もかなり多い作品でした。

追記ではネタバレ込みの感想。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「青のアウェアネス」感想

フリーゲーム「リレガトゥーラ」感想

フリーゲーム「蝶」感想

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

 

 

 

ルートについて

 

私はナツキさん→先輩→+αで攻略しました。

余所の攻略情報でタイトルが変化したら+αに突入可とあったので血眼で探したんですが、タイトルの変化は二回ありましたね! ……ですよね? お探しの方は、先におまけを見てから探しに行ってみてください。

 

私の攻略順だと着々と人の深層と内情に踏み込んでいく形になってますよね……。改めて見ると理解しやすい通り方でコンプしたなぁ、なんて。

色々知れる+αのルートが一番好きではあるんですが、衝撃度という意味ではやっぱり先輩ルートが忘れられませんし、セリフや恋愛に対するスタンスはナツキさんルートが合うなあと思ったので、要は全部好きです。

 

 

 

キャラクター

 

未央ちゃん

 

過保護な家の一人娘というあまりに悪意に弱そうな印象の子だったので、終盤だとどのルートでもガッツを見せてくれて安心しました。先輩にちゃんと怒れる子で良かった……! そしてこれはナツキルート限定ですが、序盤のミーハーに見える言動が、しっかり地続きでナツキさんへの好きに繋がっていくとこが好きでしたねー。憧れが愛っていう形に名付け直されたような感じ。変わったんじゃなくて。

 

あとは、回想シーンが予想外に熱烈で重くて驚きました。

こういう経験をしてるといっそ行き着くところまでスレてしまいそうな気もするけれど、そうならなかったからこそやっぱり庇護の中で不動産詐欺に騙されたり先輩にかどわかされたりしたんだろうなあとも思います。

 

 

 

ナツキさん

 

いやあ、情報の出し方、上手くないですか!?

お姉さんはオネエさんなのかなーって誰しもが思うじゃないですか。あのキャラ紹介の書き方は本当に絶妙。

 

創作物で「愛せない」というと強がりだったり誤魔化しだったりする展開も多く、それはそれで萌えるものとも思いますが、ナツキさんの場合本当に字義通りだったのが興味深かったです。いや、興味深いって書くと失礼なのかなあ。でも、新鮮だったんですよね。

ナツキさんはじゃあどこまでなら恋愛できるの、という話に飛ぶんじゃなくて、ナツキさんはナツキさんだし一緒に生きれたらハッピーじゃないですか!で締めるところも潔くて好きでした。

立夏先輩の揺さぶりを上手いこと躱すと言うか……いや躱してすらいないかな……彼女たちの間にそういう「結婚」「子作り」「核家族」みたいな規定概念は的外れだよって方向に行くのがすごく、良かったんです。「違う!」じゃなくて「この形がぴったりだって思うので一緒にやってみませんか」みたいな感じが、すごく好き。単に、良い形を見つけられただけなんですよね。必要十分って感じ。

 

ナツキさんルートを初めにプレイしたからこそ、クリア後に見られる部分で明かされた通院シーンはかなりドスンと重さを感じました。

そうだよなあ、そんな簡単には受け入れてもらえないよなあ、という……。

 

わかるんですよね、病院勧める気持ちも。私たぶん、価値観としてはナツキさんのご両親寄りの人間なので。

ナツキさんが変だからとかじゃなくて、すごく勝手な話、不安定に見えちゃうんです。定まらないほうが本人にとっては自然なんだけど、定まってるほうが自然なこちらとしては、つい見ていて心配で定めたくなってしまう。そんなの本当に、本当に勝手な話なのにね。

まあ作中の描写を見るに、ご両親は上記のような考えではなく世間体とか自分の価値観の押しつけとかいう側面が大きそうなんですが。それはそれとしても、こういう、無理解な社会もきちんと描写していく辺りがとても誠実だなあと思います。

 

 

 

立夏先輩

 

わかる~~~!!ってなったキャラです。いや、勿論私は彼ほど深いわけでもなければ濃いエモを持っているわけでもありませんが、つい感情移入してしまうキャラでした。

なんだろうな、典型的に?喧嘩のできない環境なんですよ! 

ワガママ言ってやって暴れて向こうが怒ってくれればやっと始められるのに、相手がナツキさんなもんだから、もう喧嘩になってくれない。理不尽なこと言うのも、いらないもの欲しがるのも、奪いたいからじゃなくて喧嘩したいからなんですよね(一個人の解釈です)。

本人は復讐って言っていたけど、たぶん先輩は復讐のもう一歩向こうを求めていて、だから無事にナツキさんや未央ちゃんと喧嘩できたエンドならお話は無事に終わってくれるんじゃないかなって。

 

だって先輩ナツキさんのこと好きじゃん! かっこつけしいってことも、懐に入れる子が気になっちゃうのも、ナツキさんのことよくよく見てないとわかんないじゃん! 好きだけど反転して憎いしどうすりゃいいのかわからんのですよきっと!

 

でもナツキさんなかなかなかなか怒ってくれないんですよ。

わがまま言って相手が言いなりになったらもっとイライラするんですよ悪循環わかる。リアルでよくやる! 喧嘩してくれよ~~~って思うんですよね、でもこっちから殴りにかかれないんですよ、殴りかかったら相手が黙ってサンドバックになってしまうので! 生身でぶつかってはくれないのを知っているので! 縁を切りたいと思って切れる程度の関係なら楽だけどそう割り切れないからこそああいう傷つけるやり方しかできないし恋愛じゃないんだけど憎愛みたいな切っても切れぬ的な、うあああああ~! やめてくれ! やめないで!

 

つまり叫びたくなるくらいにはこう、感情移入をしたくなる、生々しい行動原理が描写されている、感じのキャラでした。

 

 

これだけだとあまりに私情が混ざり過ぎているので、そのほか好きなところなど。

 

・ふあふわくるくるりんの髪型

 外見が、少なくともあからさまなチャラ男じゃなくて周りの人が油断しそうなところが好き。あと俯いたら目元が影になって映えるんだろうなあと思います。

 

・ふてくされたみたいな可愛い顔のスチルの直後にキリッと男らしい顔を見せてくれるところ

 この人のことを子どもの男性だと思っている理由の五割がこの二連スチルだと思います。

 

・ナツキをおにいちゃんと呼ぶところ

 男でも女でもないナツキへの嫌がらせだ、と本人は意識して思い込もうとしていそうですが、その実昔の家族だった時に執着している気持ちのほうが大きいのではないかなあと思っています。

 

 

 

 

 

 

と、語りたいことはだいたいこの辺り。

とりとめもなくいつも以上に自分語りをぎっちりと詰めてしまった……。

星がモチーフなのに地に足ついてて、色々と響くものの多い話でした。