うそうさ〜第二号室〜

フリゲ!鬱展開!ヤンデレ!万歳

フリーゲーム「アイシャの子守歌」感想

「どうか僕のことは忘れて幸せに、幸せに、幸せに」

幸せにならせてくれないかな前置き。

 

 

えー、今回は共食いうさぎさんところのフリーゲームアイシャの子守歌」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道探索フリゲ。鬱ややるせなさがメインのホラー。驚かし要素や血の表現などはありますが、追いかけっこはなく、終始淡々としている雰囲気です。だからこそ、クリアして理解した後は、ぞわっと鳥肌が立つはず。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

明滅するライトとパソコン画面

 

本作は戦争後の施設が舞台。コンクリート張りで薄暗く、板で打ち付けられた扉や剥き出しの操作盤など、何かとダウナーな雰囲気です。

といっても明るさはプレイに十分で、雰囲気を楽しみつつ探索のための視界は確保されている、ほどよいマップ作りでした。横スクロールな画面なので、探索ポイントがシンプルに絞られているところもありがたいところ。

主人公も無口、会話相手も登場せず、BGMもノイズ音のみ。手記やメール、意味深な画像データなどを通じて少しずつテーマを掴んでいくような作品です。

静かに不安感を掻き立てられるようなプレイ感でした。

 

 

 

ふと幻覚が交錯する演出

 

作者様の他作品でもそうなんですが、本作では特に、現実と幻覚の境があいまいになっている表現が多かったです。駆け寄ると消えてしまう兄、挟み込まれる回想シーンなど。

で、上手いなあと思うのが、何かの区切りとなるタイミングをあえてずらしてこういった演出を入れてくるところ。例えば扉を開いて直後だったらこちらも構えがあるんですが、本作は扉を開いて少し進んだ先でふっと変化が起こっているんです。

区切りなく、自然な形で混ざり込んでくる、幻とも過去ともしれない兄の影。ここがすごく良い演出でした。

あったはずの扉がない、など、今自分が立っている場所の確証が揺らいでいく感じが好きでした。

 

 

 

本筋を理解しやすい時系列表示

 

ストーリーについてはちょっと捻りが必要。探索ホラゲによくある、手に入れた資料から読み解く必要のあるお話になっています。少なくとも作品の方から積極的に訴えかけてくるタイプの話ではありません。

が、どの資料にも丁寧に日付が記され、大筋については日記という形でいつでも読み返すことができます。この時系列表示ほんと助かりました! やっぱり雰囲気ゲーであっても考察は繋がる材料があるからこそ捗るものだと思います。

 

実際、並べ直してみるとすんなりと理解がいってすっきりしました。

ついでに驚くのはテキストの少なさなんですよね……。これだけプレイヤーに大きな、大きな受け取り方の違いを感じさせておきながら、語る言葉は最低限というこの塩梅。うまいな~と思います。

アイシャのセリフが冒頭とエンドだけなのもまた拍車をかけてますね。まったく同じ言葉なのに感じ方が変わってしまうこの感覚、大好きです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

兄妹、気持ちのすれ違いとやるせない鬱展開、静かに狂気を感じる雰囲気などにピンとくる方へおススメです。

追記ではネタバレ込みの考察解釈など。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

納涼! 短編ホラーフリゲ8作品感想(『幸せなエミリー』『Rumor』)

フリーゲーム「カルィベーリ」感想

フリーゲーム「AMANI」感想

 

 

 

 

 

ネタバレ注意。

 

 

 

時系列とあらすじまとめ

 

とりあえず資料を時系列通りに読み進めれば、大筋は理解できます。

書き記すとこんな感じ。のはず。言わぬが花を枯れさせるスタイルで失礼。

本編のプレイ感、どんでん返し感がまったくなくなって味気ないものになるので、未プレイの方はブラウザバックしてね。

 

兄妹で生きていくことになった

兄は妹を守りたくて頑張る

妹は兄の役に立てなくて泣く

(兄の日記2~3、妹の日記1~2)

想いすれ違い

兄が妹を重荷に思ってしまう

(兄の日記4、張り紙)

兄は戦争が始まったと言ってアイシャを残して出ていってしまった(妹の日記3)

しかし実際は終戦

戦争はアイシャを置いてけぼりにする方便だった

(兄の日記1、子守歌のノートなど)

アイシャは(兄の手で)倉庫Bに閉じ込められる(本編開始)

 

 

 

本作のループ演出について

 

パスワードでアイシャの名前の綴りを見て、さらに本編のエンド後のワンシーンを見て、あまりの徹底っぷりにゾクゾクしました。

Aisha aでまた終わりから始まりへ戻る……。

張り紙や小説にある、死体の山のくだりや現実と妄想の区別のくだりからも、ぼんやりとループものだということは察せましたが、ここで確信できました。匂わせたうえで解答を明示する構成がうますぎる。

 

で、気になるのはやっぱりオープニングです。

本編開始時点でドアをガチャガチャしても全然開かないじゃないですか。あれが急に開いたのって、なんていうか、時系列が逆転しているのではないかなと思うんですよね。現実では、扉に鍵をかけられる→ガチャガチャノブを回す→開かないままずっと閉じ込められる、という流れ。本編ではその逆を辿っている感じ。

施設の入り口でエンドになってオープニングに戻るのも、本編は実際現実で起こったことの逆再生が起こっているからなんじゃないかなあなんて。で、逆再生して戻るからループになるみたいな……。

上手く書けないよぉ! 伝わるかな! 伝わってくれたら嬉しいです。

 

とにかく演出が徹底して繋がるところが好きですという話でした。

 

 

本編のドンデン返しとは?

 

つまるところ本編の魅力って、アイシャに対するイメージの反転にあると思うんですよね。

プレイヤーはたぶん、「ずっと兄と再会したがっている妹」という設定に対して、早くここから出してあげたい、っていう同情的な気持ちを持つと思うんですよ。これがクリア後だと反転してしまう。クリアして脱出の夢を見せることでむしろ、せっかく閉じ込めたこの子をここから出していいのか、再会して二人は本当に幸せになれるのかという問いを投げかけてくる。妹視点でプレイしていたはずのプレイヤーの気持ちが、いつのまにか兄視点にシフトしてしまうこの感覚ですよ。

 

健気でぼっちで一途な弱者を無条件に守るべきものだと思ってしまう、主人公は報われるべきだと思ってしまう、そんなプレイヤーの無意識に勢いよく足払いをかけていくというね。いやあ、ものすごく面白かったです。

こういう、メタ用語を一切表に出さないメタ展開大好きです。

 

 

その他小ネタ

 

FORGIVE ME や画像ファイルなどについては、同作者様の他フリゲ感想でも語っている通り、テーマを匂わせるための演出くらいで留めておくのが良いかなと思っています。兄の叫びとか親御さんが何故いなくなったのかの理由とかなんだろうなあ、とぼんやり。

世界観自体はカルィベーリと繋がってるのかなあ。全体的に少年少女に向けて過酷な世界が描かれがちですよね。

 

 

何にせよ、後から考えれば考えるほど、構成力に唸る作品でした。