うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「厨二のセカイ」感想

「カッコイイと信じていたことはいつから恥ずかしいことになったんだ?」

揶揄されたって背負っていたい短剣符な前置き。

 

 

えー、今回はアンジュ工房さんところのフリーゲーム厨二のセカイ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ウディタでシステムはRPGですが、公式ではADVと称されている通りストーリーやキャラの掛け合いがメインの作品です。

これを書いている現在はVer1.07が出ているんですが、私はうっかりイベント改修前の1.05版でプレイしてからセーブデータを置き換えたという事故を起こしてしまっているので、一部最新版と齟齬があるかもしれません。ご承知おきを。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

厨二病のロマンを熟知した設定

 

仲間のスキル厨二病を駆使して、学園を襲うシャドウを倒す!

この時点でDLしました。わくわくじゃん!

厨二病といっても昨今は多種多様。俺に近寄るな暴走系、†≪漆黒の堕天使≫†系、組織陰謀論最強ポジやれやれ系、デバイス駆使のSF二丁拳銃使い系、ぽえぽえおっとりが覚醒系などなど、色々あろうかと思います。人によって定義も違うでしょうし、キミの信じるカッコよさこそが厨二だと言っても過言ではないくらい広いです。

そんな中、本作は広義の厨二をカバーしつつ「これぞ!」と思うツボをしっかり押さえてくれるんですよ!

こういうツボってこだわりや細かい部分の積み重ねになると思うので、いざ言おうとするととても難しいのですが……。厨二病を愛する私にとても馴染む、カッコイイがたくさん詰まった良作でした!

 

 

立派な大人を目指す物語

 

さて、世間一般において厨二病なる属性は既に荒波に立たされています。

厨二は恥だという流れがすでにネット上で構築されているからです。とうに厨二は卒業している人達のほうが多いからと言えるかもしれません。まあ、そりゃそうですよね。

しかし、本作は圧倒的にこの厨二病を肯定してくれます。理解できないと首をかしげることはあっても、誰も厨二病を馬鹿にしません。本作は子どもの世界だからです。

今更ながらあらすじを解説しますと、本作は記憶喪失になったロクが記憶を取り戻すため、立派な大人になることを目指すのが第一目標です。大人になる、ということは、この世界は皆がまだ大人になり切れていない世界なのです。

 

本作は色んなキャラクターが登場します。どの子にもツッコミどころがあり、未熟であり、見ていてやきもきするシーンも時には起こります。キャラに理想の動きを求め、ストレスを排したいプレイヤーには向いていないかもしれません。

でも、一方で彼らは皆、自分の思うカッコよさを信じています。優しい大人でありたいと願い、憧れの人を求め続け、カッコイイと思うものを臆面なくカッコイイと言える人達です。

子どもだからこその短所、子どもだからこその長所、そしてまるっと含めて「大人を目指す、子どもから卒業する」とはどういうことか。これらを語りかけてくれるところが一番の魅力だなあと感じました。

ピーターパンシンドロームな私にはグサグサ刺さるところもありましたが……そこを含めて大好きです。

 

 

ドロドロ人間関係

 

ここは闇属性が好きな本ブログだからこそ推せる点になるんですが、作中の人間関係がそこそこドロっとしています。公式CPあり、三角関係あり、ヤンデレ(メンヘラ)あり、愛憎幼児退行私怨殺傷事件などなどの暗いシーンもあります。

いやあもうあのラスボスが大好きなんですよね!!! 詳しくは追記で語ります!

とことん「子ども」という属性に向き合ってる作品だと思うんですよ。窮地に立たされがちな子どもという弱者だからこそ、動揺するし混乱するし不安になるし。なのでダークなものが好きな自分には実に水の合う作品でした。

といっても、基本的にキャラ同士の掛け合いは明るいのでご安心。ある意味ご都合主義的なところもあり、未来に希望を持つという意味での子どもらしさも保証されています。

 

 

細やかな会話分岐と伏線

 

さて、本筋のみならず寄り道が楽しいのも魅力の一つです。

メインキャラが絡むイベントはアイコンがついていて見つけやすくなっていますし。クリア後のちょっとした会話がたくさん見れるのも嬉しいですし。取り逃し防止用にクリア後でも情報を買えるのもプレイヤーに優しい仕様。

そして語りたいのが例のパンダのイベントですよ! あれもう楽しかったですね、セリフで作者様に見透かされていることがわかって爆笑しました。そのほかにも個性的なモブキャラがいっぱいいて、NPCに複数回話しかける派の私はもうめちゃめちゃ嬉しかったです。

 

個人的には包帯男君に名前が欲しかったなあ! 彼大好きなんですよね。登場するだけで場が明るくなりますし、何かと微笑ましいですし、気にかけてくれますし。メカクレギザ歯って刺さる方多いでしょ、知ってるんだぞ。

あと、あちこちに出没する奇行の彼も好きです。

 

 

スタイリッシュでクールなグラフィック

 

起動画面を見るだけでもう伝わるこのスタイリッシュさよ。スタートボタン押した時の演出がシンプルに強いですよね。気合が入りました。

現代異能学園ものらしい、今時のスタイリッシュさを強く感じます。

メニュー画面のデザインや、会話シーンで時々出てくるスチルなど、スタイリッシュに差し込まれてクールに決めてくれる演出が多かったです。特に戦闘画面をよくよく見ると、デフォの面影もありはするはずなんですがそれを感じさせないんですよ。ポイントを抑えてオリジナル感を見せてるのがすごい。

敵グラが上手いんですよね~。仮面で見た目からしてカッコイイし、パネル型にする発想が素敵。カットインも好きです! いやあもう好きキャラの顔が良いことをしみじみと感じさせてくれました。眼福!

 

 

みんなの味方、ゴーレム・チャン!

 

RPG的な機能として好きなのがゴーレムシステム!

これ全RPGに搭載して欲しいとのたまいそうになるくらいには素晴らしいシステムでした。というのもこちら、ストーリー上で加入できないキャラもゴーレム人形という厨二病によってバトルに疑似参加できるようになっているんです。

つまり、キャラのレベルが極力均等になってくれるんですよね! 嬉しすぎる! 

ゴーレム・チャンのゆめかわポップに奇天烈な見た目もあいまって、すっごく好きなシステムでした。ツインテ変人キャラはいいものだ!

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

中二病のロマンと、次に何が起こるのかというワクワクとドキドキ(闇)を感じられる作品でした。

追記ではガッツリネタバレ感想。

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

おおっ!?っとなる展開なので、本当出来ればネタバレなしでプレイしてから読んで頂けると嬉しいです。

 

 

 

 

ストーリー

 

びっっっくりしましたね!!!

厨二病できゃっきゃうふふしながら諸悪を倒して万々歳、みたいな明るい話なのかと思っていたんですよ。包帯男君のイベント楽しかったし微笑ましかったし。堂々とデートしてるキャラがいるし。

だから、卒業という言葉の重みとか、子どもだけで構築された世界の不安定さとか、そういうところに切り込んでくれて驚きました。

厨二病をテーマにしているからこそできる展開ですよねえ……。

キャラがさくさく退場していくのもまさに異能バトルって感じで良かったです。

 

何より私ああいう箱庭世界や子どもの楽園みたいなのが好きで……。

そして本ブログの性癖傾向説明記事にも載せている通り、代替可能ドッペルゲンガークローン入れ替え子的な展開が大好きで…………。心からぶっ刺さりました。もう好き。

 

商人から手に入れる手紙のくだりとか、思わず言葉を失いましたもんね。えっ?って。そしてよくよく看板や張り紙を見ると、きちんと全部そうなんですよ。伏線があまりに巧みで興奮しました。

伏線と言えば、エレベーターを調べた時の反応の違いが好きです。ロクは知ってるからエレベータだとわかるし、ルルナは知らないからわかんない。そういうところ。見つけて背筋が寒くなったのも記憶に新しいです。

 

 

キャラクター

 

たくさんいるので特に語りたいキャラと好きなキャラだけ。

 

ロク

全力で厨二病をやり、全力でカッコイイを信じ、理想を貫く姿が大好きです。見た目が好みだったのでそんな彼が主人公というのがもう嬉しかったですね。

 

ナナ

わかるんですよ~、ルルナにカッとなるところ! 強い自分でいたいのになりきれないとことか。なまじルルナがナナと似てるからイラっとしちゃう、この流れがもうわかってしまってあまりに辛い!

確かにナナは私怨から動いてるし元凶だしいざって時に弱いし、と短所を挙げればいくらでも思いつくんですが、それを補ってあまりあるくらい彼女が「子ども」であることを感じられる気もします。不器用な子ども。なので苦手なキャラだけど思い入れが強いキャラでもあります。

最後に良いカッコして退場していくところも絶妙ですよね。完璧な物語を見たいプレイヤーな自分からすると、おまえずるいぞ!って思うんですが、この作品が子どもによる子どものための世界でできてるってことを考えるとむしろ納得が強い。結論だけみるとロクをまんまと奪われた構図にもなり、因果応報ではあるかなと思います。心苦しくもありますがね……。

大人になりそびれた大人として見事なキャラだと思います。

 

ルルナ

しんどいくらいナナによく似てしまった子だなあと思います。カッとなった時の行動といい、一途で直情なところといい。ルルナこそずるいと言えるのかもしれない。

一方で、全くナナに似てない子だなあとも思います。素直すぎるところといい、周りを読めないことといい。ルルナこそ純朴さを利用された被害者と言えるのかもしれない。

決定的な違いは一点だけ、馬鹿かどうかだと思うんですよね! 酷い言い方してごめん! でもほんとココ!

ナナは賢いからプライドとか相手の負担とか周りを守りたいって気持ちとか色々なものを考えてがんじがらめになったんだろうなーとか。ルルナは単純だから親しい人に喜んでもらいたい理想になりたいって一心で頑張り続けてしまったんだろうなーとか。

ナナの想い人を奪い取るような形になってしまっていることを、ルルナは自覚しているんでしょうか。していないと良いような、自覚したうえでそこに立っていてほしいような。でも、トゥルーエンドの「ククク!」のセリフはすごくすごくあったかくて好きなんです。だから、印象を語りづらい…………見る面によってかなり好感度が変わる子でした。

 

ジューゴ

一番ヤバイの彼じゃないのかなって思ってます。

アンバランスさを感じるんですよ、創ろうっていいながらラスボスには優しく一人の人として接してる面もあって……。情を感じるのに致命的なところが抜けているような。

他二人がわかりやすく壊れたぶん、ジューゴは影で一人ばらばらと崩壊へ向かう、あるいは一部螺子が抜けていても気づかれないような子なんじゃないのかなと思いました。

……彼に対して「子」って表現を自然にタイピングした時点で潜在的に抱いている印象がだだ漏れですね。

 

キキョウ

ある意味かなりの不憫ポジ。

初恋は二度散る……。いや初恋なのかわかりませんが。

色々なものに振り回されている感じが、透明になりたいという気持ちとリンクしていて、切なさが込み上げるキャラでした。わりと自己保身しがちで図太いところも好きなんですよね。可哀想なキャラじゃなくて、成長の余地を持ってる陰キャみたいな。なんだかんだ生き残ってくれそうで安心します。

あと単純に片目隠しというキャラグラ自体がツボ。カットインかっこよすぎて思わず感謝を叫びました。好き……。バトルでも状態異常使えるキャラとして貴重だったので愛用してました。

弱さを知ってる人は誰よりも優しい人になれると言いますし、先生は天職だと思います。私も彼の授業を受けたい。

 

ゴーレム・チャン

見た目が好き。ノリが好き。そしてクリア後に明かされる性格も好き。

いやー、彼女と話してる時は楽しかったですね! 元気が出る! 包帯男君もそうですが、場を明るくしてくれるキャラはよいものです。

 

ラスボス

久々に「倒したくない!!」と感じたラスボスでした。

スーツ姿であの厨二な剣を振り回すというのもまた、見ようによっては滑稽でちぐはぐで、まさにこのキャラの存在自体を指し示しているようで苦しくなります。好きだけど……認められない……。

もういいよ、ここで暮らそう!! 俺達ここで全部終わろう!! そう叫びながらイベントを続けていた覚えがあります。私はこういう、怖がりでネガティブなキャラに弱いので……。

まごうことなく一番の不憫キャラですよね。彼が何をしたっていうんだ。ほんとだよ!!

彼が見せてくれる弱気な本音がとてもとても好きです。

 

 

おまけダンジョン隠しボス

 

余談ですがおまけダンジョンの隠しボスって、ver1.05だとそこそこ鬼畜に思われていたらしいんですよ。実際自己強化スキルばんばん放って来るのに解除技がパーティになかったもんでけっこう苦労しつつレベル25くらいで倒したんですが。

そこがVer1.07だと緩和されたらしく、うっかりとはいえわざわざ強い敵に挑んでしまった自分に苦笑しました。ふふふ。でもRPG慣れしてる自分には楽しい難易度でしたね。

せっかく倒したのに追加要素が増えたと聞いた時は焦りましたが、セーブデータ互換のおかげで猫さん報酬も見れました。安心安心ありがたし。キキョウの水着のカラーリング好きです。

 

 

 

 

 

と、語りたいのはこんな感じ!

熱い展開と暗澹たる気持ち、どちらも十分に感じられる良作でした。