うそうさ〜第二号室〜

フリゲ!鬱展開!ヤンデレ!万歳

フリーゲーム「灰の森」感想

「五十の瞳が私を苛み、七つの四肢が一人を包んだ」

何本生えようと君は一人な前置き。

 

 

えー、今回は茶番nuさんところのフリーゲーム灰の森」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

こちら、マシュマロ経由でおススメ頂いた作品になるんですが──

もう、すっっっっっごく私好みでして!!!

出会えて本当嬉しいありがとうございます泣く。

 

概要としては、人外系のR18BLノベルゲー。といってもケモや羽根角系ではなく、人の形を保った、言ってしまえば奇形や人体実験が主です。人外だからこその展開が楽しめるうえ、どのルートも一つは鬱展開があり、濡れ場もあり、がっつり長編で心行くまで味わえた名作でした……!

 

というわけで、前置きが長くなりましたが良かった点など。

 

 

人外ならではの展開

 

本編の始まりは、人体実験施設からの脱走から。登場するキャラも多腕、巨人、結合双生児などなど多種多様です。

で、こういうのってやっぱり見た目のインパクトで持って行かれることが多いと思うんですよ。実際スチルもグッドで立ち絵差分も多いから、ビジュアル面でも嬉しくはあるんですが、そうじゃなくて。

私が何より推したいのは、描写に人外ならではの要素がたっぷり詰まってるからなんですね!

もうすっごいんですよ、言動が自然なんです。特に人外組、ぽろっと零れ出る言葉が根本から違うんですよね。あ、これは本気でこのキャラが“生きて”るからこそ出てくる言葉だな、って思うんです。具体的にはネタバレになっちゃうので追記に伏せますが……。

“普通じゃない”と呼ばれる人たちも“普通”にご飯食べて寝て仕事して過ごさないと生きられないということを改めて突きつけられるような気持ちでした。

 

 

 

仄暗く君を思うエンド

 

どのルートにも暗いエンドが1つ、あるいは2つ以上含まれているんですが、これがまたとても私好みで……本当に好みで……出会えてよかったです。心から。

私常々書いているとおり、こう、自分の境界線や存在が薄ぼやけていくような展開が大好きでして。つまり、大好きでした。

 

描写や設定がとても緻密なんですよね。惹かれ合う理由にも、全てをかける動機にも、きちんと納得がいくストーリーなんですよ。だからこそ悲劇も映えるし、やるせなさがまたよく沁みるという……。ただ鬱なだけじゃなくて、一瞬希望とか、これからの未来とかも見れるからこそ、先の暗さがよくよく感じられて好きです。

さらに言えば、一見都合の良いハッピーエンドでも経緯や設定を開示してくれるので、鬱大好きな私でも明るいエンドを前向きに受け入れることができました。

まとめると、どのエンドも満足感がある! 

物語の骨格がよくできてるなあと思います。

 

 

 

知的で話が早いキャラクター達

 

けっこう全体的に、よく周りを見ることのできるキャラが多いです。クールだったり飄々だったり。おちゃらけてたり脳筋だったりするキャラも気遣い屋さんだったり演技だったりして、とにかくお話の進み方がかなりスマートでした。

主人公自体、天然+冷徹みたいな性格をしていて、とらえどころがない感じなんですよねえ。この性格付けにもまた理由があって、いやもう、あちこちが繋がって本当面白かったです。

お気に入りキャラはナバト! 出てくるたびにどんな意外性が飛び出してくるのかとドキドキしながら読み進めていました。

でも、どのキャラもルートに入れば魅力的に見えて、やっぱりどのルートも好きなんですよね~。そして、キャラに性格はあっても属性じゃないというのも強く感じました。行動理念が本当きちんとしていて、生きてる感じがします。

 

 

 

事前知識として入れておきたい点

 

さて、最後に読み進めていて意外だった、ちょっと事前に心構えが欲しかった点について記載していきます。合わなかった点では断じて無いので、誤解なきよう!

 

・他キャラの登場率はまちまち

攻略対象は4人いますが、ルートによって他キャラが登場する比率はまちまちです。特に序盤は主人公合わせて5人で行動するので、ルート入りしてからは他のキャラも気になりがち。単独行動中などは特に、今他の彼らはどうしてるのかな、というふうに意識が余所に飛んでしまうことがありました。

詳しくは書けませんが、どのルートでも良い具合にやってます。やってるはずです。やっててほしいなあ…………。

まあこの感覚は、特に他キャラの登場シーンが少ないナバトルートから始めたせいかも。彼のルート、とても好きですがちょっと異質でもあるので。彼らしくて好きですが。

ともあれ、べったりいつまでも仲良しこよしな関係ではない(そしてその距離感がとても良い)という点には触れておきますね。

 

・サブCPあり

詳しく書けないのが難しいところなのですが、とりあえず原則は主人公が受け固定です。ただ、受至上主義の方には向かないと思います。CPの話というよりは、一人の人間が誰とどう折り合いをつけていくかの話として読むのが合う作品。伝わるかな……。

ふわっとしたことしか書けず心苦しいですが、とにかく自分はこの要素があるからこそ好きです。深みとえぐみと良質な設定を堪能できました。

 

・おまけやスチル回想は無し

もしかすると私が見つけ切れていないだけかもしれませんが、少なくとも全エンド見た感じ、おまけ要素などはなさそうです。作品自体かなり昔のものにはなるので、致し方なくはありますが、EDやスチルなどの回想ができないのは惜しまれるところ……。

幸いセーブスロットはエンド数に対して多めに用意されているので、これからプレイしようかとお考えの方は特に、回想用データを作っておくのをおススメしておきますね。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

もっともっといっぱい語りたいところがあるんですが、どうしてもネタバレに触れてしまうので続きは追記で!

 

とにかく、多腕や奇形、鬱展開、恋の一言では片付けられない執着や情念などが好きな方に強く強くオススメします! 公式サイトに完全攻略フロチャートもあるのでご安心!

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

 

 

 

ネタバレ注意。

 

 

 

まずは全体的なところから。

 

 

変わりゆく物語のステージ

 

実験場から脱出して全てが終わり、だと思ってたんですよ。

盛り上がりと言えば一番のポイントですし、達成感もありましたし。

でもそうじゃないんですよね! むしろ彼らにとっては抜け出してから何を為すかが始まりで、やっとここから第一歩踏み出したところなんですよね……。彼らにも生活があって、当然ながら日常を歩むし仕事もするしご飯も食べる、そんな当たり前のことを言われて初めて気づいたと言うか……。

この作者様は真摯に彼らの人生の1頁を描いて魅せてくれるんだなって思って、無限に信頼が沸き起りました。

 

世界の広がり方もうまいんですよね……。

狭い狭い箱庭から脱出して、列車や町を出して全体的な世界観の解説をして、人の生活と人喰いの生活にちょっとずつシフトしていく。プレイヤーが飲み込みやすい順番で出してくれているように思います。

カイゼルの正体なんかは流れから行くとけっこう超展開な設定だとも思うんですが、思いのほかすんなりと飲み込めたのはこの構成のおかげだとも思いますねえ。

 

プレイ初め、どうしてこのタイトルなのかなと不思議だったんです。まさかここまで終盤に回収されるとは……。終わってみると、ぴったりなタイトルだなあとも思います。作品の世界観や雰囲気も含め。

 

 

 

各ルートやエンドについて

 

 

共通・バッドエンドルート

 

さりげなくこのバッドエンドめちゃくちゃ良いなあと思っていて!

何も知らない状態でこのバッドエンドに入ると、確かになるほど、ゲームオーバー的なエンドなんですよ。ああただのバッドね、で終わってします。でも色々わかってからこのルート辿るとすごく、納得感があってすごいんですよね……!

だってあれだけ人を愛して人と共にしか生きられないと語られていたからには、そうでしょう。すごいなあ、後になって理解できるカタルシスが気持ち良かったです。

 

 

 

ナバトルート

 

一番気になるキャラだったので最初にルート入りして一番好きなキャラになりました。

 

バッドエンドになるのかな、人喰いの王になるエンドが一番好きです。もうね、あのね、オチが好きすぎる。どうして名前を、という理由までは明かさないところが大好きなんですよ。言わぬが花のお手本。あまりにも美しくやるせない……。カイゼルはずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとナバトを想っていたんだと、たった一言でわかって心がぐちゃぐちゃになりました。大好きです。

 

ハッピーエンドはもうこれぞハッピーって感じで、安心しましたね! 二人ともが平然とし合ってるところも本当素敵。人と違って激情の波はないけれど、人と同じように穏やかな信頼や愛や情を育める感じが、たまらなく好きです。お前ら良いコンビだよ。

 

ナバトは隠し事嫌いで行動もあっけらかんとしているのに、読もうと思うと読めないキャラになってるところが、なんだかとても癖になるなーと感じました。五感全振りな感じも好き。

他ルートでナバトが出てきてくれる時も、セリフの端々が一人だけ違って見えてとても楽しかったです。初めに攻略してよかったなあ。

序盤の分岐で初めてナバトのスチルが見れる時の、触れたらもっとわかる、みたいなセリフが好きです。まだこの時点では私人喰いのこと何一つ知らなかったのに、「食われる」って感じましたからね。描写が巧み。

 

 

 

ヒューリルート

 

いやまさかこうくるとは思わないじゃん!?

ヒューリがめっちゃ気の良いあんちゃんだったので、カイゼルが何かしら悲惨な目に遭いつつも二人は前向きに手を取り合うんだみたいな流れになると思い込んでいました。甘かった。それで終わる訳がないこの巧みさこそがこの作品なんだよなあ!

こういう健全太陽属性みたいなキャラクターが負の感情を向けてくれるのめちゃめちゃ滾りますね。最高でした。

ただ前向きな記号だけで収めない、陰と陽や割り切れない部分にまで突っ込んで描写してくれるところが素敵。

 

「痛いのが邪魔だ」っていう台詞がめちゃめちゃ印象に残っています。一番好きかもしれない。傷ついた腕が邪魔、とか、失敗した、とかじゃなくて痛いという感覚自体が邪魔というこの発想、絶対人外じゃなきゃできませんよ。すごい、このセリフをしれっと一言で登場させて深入りせずさらっと流すところがまた、根本からの人外さと彼の自然な言動であることを示していて本当に凄まじいと思います。

ナバトルートの後にプレイしたからというのもあるかもしれませんが、元々のカイゼルらしさ、人とするには異様な感じがとくと味わえて楽しかったです。

……いや本当、振り回される側に見えたカイゼルがヒューリを振り回しまくってるのめちゃめちゃ楽しいな。好き。興奮しました。

そんなわけで、どのエンドがどうというより、道中や全体的な二人の動きが印象的でした。

 

 

二つ頭ことノーダスディニもお気に入りだったので、大活躍してくれて嬉しい限り。

単純な結合双生児という設定だけで終わるのではなく、どこまでの機能を共有しているのか、身体的な負担、などなどについて語られていたところがすごく好きでした。寝る姿勢とかそういう、日常的なあるある話聞くの大好きなんですよ。異文化コミュニケーションって感じがして。

あれだけノーダスが必死でもディニはマイペースだし、それをノーダスが言い募ったりはしないし、っていう二人の関係性もまた良いですよね。ノーダスはディニが本当に必要だけれど、それをアピールする必要なんてないんだろうなあ。すごく良かったです。

彼らのエンドも、苦しくはあるのですが、スチルの魅せ方が本当に彼らにしかできないやり方で目を見張りました。身体と身体の間に人を置く、本当に彼らにしかできないポーズ……。震えます。好きです。

 

 

 

バハンルート

 

心優しき巨人の物語の体現って感じがしましたね。

彼の物語が一番王道で読みやすい気がします。

カイゼルが一番ズタボロになって頑張ってるルートでもあるような気もします。

 

それまでは研究とか人喰いとかの半ファンタジーちっくな話がメインだったので、まっとうに(?)ヤク的なブツが出てくるとは思わず、驚きました。同時に、ここまでやってくれるのかという仄暗い喜びもありました。ありがとうございます……。ラリってる幻覚描写や薬を抜く工程の描写などがとても丁寧で、こちらのメンタルまでぐるぐると煮え立っていきそうな心持でした。

 

バッドエンドの、お互い想い合ってるのにどうしようもなく絶望しかない結末が、すごく……好きです……。

ある意味でグッドエンドの反面教師みたいな形ですよね。徹底的な裏表というか。バハンの自暴自棄な守り方で突き進み、バハンが彼自身を大切にできないと、大切な人まで巻き込んでしまうんだなという……。バハンは悪くない、悪いと言いたくないんだけど、やっぱり原因はそこにもある気がして、やるせなさがたまらなかったです。

 

だからこそグッドエンドを見れた時はほっと一息。二つとも「カイゼルが一人残されるエンド」ではあるはずなんですが、共通している部分があるからこその違いを強く感じました。

さりげなく幼児退行ネタが出ていたところもありがたし。

 

 

 

デミテラルート

 

デミテラといえば最序盤でメンバーの役割分担ができていることに着目する台詞がなんか妙に印象に残っています。TRPGにおける熟練PL感がある。カイゼルのドライに見えるところがデミテラの対人態度と上手く噛み合っていて、かなりテンポのよいお話でした。高INT二人の話の早さ素晴らしいですね……。

ハッピーエンドはまさに大団円。全員の行く末が明確に語られるほか、本拠地へ突っ込んで全ての問題を解決してしまうという流れがまさに〆でした。最後にクリアしたルートだったのもあり、ああこれで終わってしまうんだなあという切なさが大きかったです。

バッドエンドのほうもTHE研究者って感じで良かったです……。死体性愛者とかって馬鹿にされたり怯えられたりしてるのかなあ。そうであってほしくないからこそそういうシチュエーションが見たい気持ちあります。

色々な問題が片付くルートというのもあって、プレイヤーとしても諸々の感情を拗らせず、すんなりと萌えの視線で見がちなルートでもありました。デミテラが立った時の身長差の描写がめちゃくちゃ萌えで好きです。

 

 

 

ロイエンド

 

実質彼のルートはなくて、攻略対象のルートに一つロイエンドが挟まってるような形ですが、せっかくなので別枠で語ります。

 

ロイ関係のエンドでもやっぱりナバトルートが好きなんですよー。だってロイが可愛い。ロイが可愛いんだよなあ……。

ロイが動揺しまくるスチル大好きなんですよね。カイゼルと比べてロイはやっぱり人で、ひねくれた物言いだけど存外に虚勢を張ってて、感情が豊かなんだということをまざまざと思い知らされるイベントでした。すごく愛おしくなると共に、人喰いの気持ちも疑似体験できるような。ロイエンド以外のカイゼルからしても、この彼が消えてしまうのは、もといカイゼル自身と一緒に溶けてしまうのは、さぞ切なかったろうなあ。

 

バハンルートでのロイエンドも勿論好きです。こちらはロイの強さが際立つエンドでしたねえ。ある意味残酷なまでにバハンの望み通りであり、そして反面完全にバハンの望みを無視した形。痺れました。

カイゼルとバハンの関係と比べてロイとバハンの関係はとても冷たい。二人とも一切そんなことは言わないし描写でも煽られることはないのに、この違いを感じるように描かれているのがあまりにも巧みでした。

バハンが思い悩む必要なく自らを使いつぶせると思えば、後ろ向きであれ、楽なエンドと言えるのかもしれません。幸福には苦悩が伴うもの。このエンドが不幸だと言い切れない、言いたくないのまた、どうしようもなくやるせなくて、大好きです。

 

デミテラルートだと、ロイとの相性が悪いというのがかなり意外でした。改めて考えてみると、ロイは虚勢の壁が大きいだけでかなり素直なタイプだとも思えるので、デミテラみたいに根っこがややこしいタイプは苦手そうだなあとも思えますが。

なまじハッピーエンドがロイも含めて幸せになれちゃうエンドなぶん、デミテラのポテンシャルの高さやそれでもうまくいかなかったバッドエンドが偲ばれます。

 

そういえばヒューリルートだけ、ロイエンドが無い形になるんですよね。……でしたよね? 自信ないけども。これに関しては他ルートならロイや彼に繋がる第三者が挟まってくるところを、ディニやノーダス達が担ってくれたからかなーとも思っています。ディニたちの掘り下げはヒューリだからこそできることだとも感じているので、これはこれで好きです。

 

 

 

 

 

はあーーーーいっぱい綴ってしまった!!

とにかく好きなんですよ、すごく好きな要素が詰まってて本当に私好みの作品でした。上質な物語を時間をかけてじっくりと楽しめた……。ありがとうございました。