「繋がれるならそれは重畳、心も棒穴も手のひらも」
明け透けに愛を謳っていきたい前置き。
えー、今回はひとりよがり劇場さんところのフリーゲーム「それは間違いだった」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
なんというか、この作品、私の中で扱いが難しい作品だったりします。
失礼千万を承知で書きますが、手放しで全部好きとは言えないんですよ。でも黙って放り捨てるには惜しすぎる、どこまで許容できるかで評価が変わる……そんな何とも言い難い気持ちなんです。
なのでこのもにゃもにゃした言い方から嫌な予感がする方は、本記事は避けて頂く方が無難かもしれません。
逆に、合わなかったって方には読んで欲しいかも?
というわけで、特徴的な点など。
会って欠かせぬ処女チェック!
度胆を抜くのがここですよね!
大半のキャラが必ずと言っていいほど尋ねてくるのがこれ。「処女かどうか」です。初対面の時のみならず、日をまたいで会っても聞かれ、攻略対象以外にも聞かれ、果てには女の子にまで聞かれ、世間話のように当然の如く毎シーンで処女チェックが入ります。
白昼堂々往来問わず、青姦やら何やらとエロワードが飛び交うすさまじい世界です。それに対してヒロインも突っ込むことはあれど、特に嫌悪感を示すことはなく、「ちょっとしたジョーク」くらいのノリで流されていきます。
初めはこの世界観に呆然としてたんですよ。
どれもこれも下ネタがなんか生々しいというか、あえて粘ついた表現を選びがちというか、ムッツリスケベが無理やりヤリサーで馴染もうとしてるみたいな雰囲気を感じまして。かといって男性向けエロや尻軽あほえろ系とも違うんです。特に謎だったのは時々純愛ブレーキが踏まれるところ。
そんなわけでいまいちこの作品における常識的な感覚の落としどころがわからず、中盤辺りまでは困惑してたんですね。
が、理解しました。ティーンズラブだ! おそらく! 社会人だけど!
ムーンライトノベルズでもなくノクターンノベルズでもなくティーンズラブ。なんかすごい腑に落ちました。一人で。
イケメンたちにちやほやされつつ性的にアピールされるのを目的とした世界観なんだな、と解釈して以降は突っかかりなくするすると読めたように思います。ですので、この辺のツッコミどころをそういうものとしてスルーできる方向けです。
和風ファンタジーの社会人ラブ
舞台として面白いのは、現代ものと和風ファンタジーの良いとこ取りをしているところです。妖怪は出てくるけど会社や合コンの概念もある、住民は始終着物姿だけど街にはゲーセンもある、警察でもなく役人で十手持ちだけどBLやら何やらのオタ用語は浸透している、みたいな……。上手い例えになってるかなあ。
なんというか、こう、色んな要素がないまぜになってなお成立しているところが興味深かったです。おじいちゃん口調と現代口調が使い分けられるのもこういう世界観ならではでグッド!
癖になる口癖
上手いなー、と思うのが口癖やちょっとしたセリフの繰り返しについてです。ヒロイン自身がここに気づいてくれる時もあり、慧眼として描写の説得力に繋がっているのも良点。また、誰も指摘せずとも読んでいて印象に残ったセリフが決めどころで再度やってきて、おおと思わされる時もあります。
中でも私、蒼悟さんの「何それ、訳が分からない!」が大好きなんですよ!! かなり頻発してる印象のあるセリフなんですが、これ言ってる時の蒼悟さんってホント楽しそうで見ててにこにこしちゃうんですよね! ああ~今透子ちゃんに惚れてるな~ってのがありありと伝わってきて、ほんと微笑ましいです。楽しそうで好き!
可愛いもカッコイイも描けるグラフィック
初めて一枚絵が出た時めちゃめちゃときめいたんです! イ、イケメン! あまりにも顔が良い! しかもどのルートでもカッコイイ!
スチルの構図なのかな、ものすごくビシっと決まってる感じがして見惚れちゃうんですよね……。攻略対象のみならず、実はヒロインの透子も見た目はクール美女系なので、これまたカッコイイです。必見。
で、さらに語りたいのがサブキャラの女の子の可愛さです!!
もうね~、二人ともほんとかわいくて、しかもちょっとジャンルの違う可愛さなんですよね。立ち絵の表情変化もキュート。かわいいとカッコイイ、両方描き分けられるのほんと素敵です。
細やかな自由行動と会話分岐
作中では何度か自由行動のターンがあり、行き先を決めることで一か所につき最大3つのイベントが発生します。この分岐および会話イベント量が素晴らしかったです!
初めはどこを選べば誰と会えるのかがわからずもやもやとしていたんですが……。ある程度キャラを把握して、いそうなところがわかるようになると、かなり楽しめるようになりました。
あと単純に、周回プレイして他ルートを回収する時も飽きないんですよね。行き先が四か所あるだけでなく、会話中の選択肢が出る頻度も高くて、何度も色んなイベントを味わえました。
イメージぴったりオリジナルBGM
嬉しいのがここ!! BGMが自作である点です!
もうねー、すごくびっくりするほどイメージに合います。何より各キャラのテーマソングがあってそれのアレンジがエンディングに繋がる演出大好きなんですよ! 緋鉈のBGMとか聞いた瞬間に耳で惚れましたからね。素敵です。
和風ゲーではあるんですが、意外と現代的なアレンジ?楽器?音遣い?も多くて、良い感じにアッパーな作風とよく合います。
公式サイトでDLできるので作業用BGMにもできちゃいますよ! オススメ! 好きです!!
とまあ、こんな感じで。
いやはや食わず嫌いはよくないなと、改めてこういったジャンルの魅力も教えてもらった気持ちでした。
追記ではネタバレ感想。
ネタバレ注意
ざっくりとキャラクターや各エンドの感想です。
蒼悟
この人が一番感性が変と言われるべき人だと思う……。
「ふふっ面白い女だ」構文便利ですよね。蒼悟さんは(一応)(外面は)常識人っぽいようですし、透子みたいな自暴自棄の男勝りなりたがり夢女子みたいな子は周りにいなかったのかもしれません。
ヤンデレ一歩手前の腹黒性欲ガッツリ鬼畜眼鏡。こう、一番プレイヤーの人気を掻っ攫えそうな属性盛り具合だなーと感じます。キャリアがあっても強い男ってわけじゃなくて、時々憂いを見せてくるところがまたグッとくるんですよね。
口調萌えしたキャラでもあります。水生ちゃんとの掛け合い、緋鉈との掛け合い、透子との掛け合い、それぞれ口調が全部違っててよき。恋人になりたいというよりほんとに家族になりたい、妹ポジになりたい、そんな邪念を抱かせてくれるキャラでした。
水生ちゃん
かわいいよね。あとズバズバ言ってくれる女の子キャラって女に好かれるよね。こういった性格の子が攻略対象の妹として居るの、上手い立ち位置だと思いました。若人エンドの立ち絵のうるうるお目目がとても可愛くてよき。
腹黒というより器用な子という印象です。社会が成り立つには嫌でもコミュニケーション取らないとやってけないし、取っとく方がお得ってのをよく知ってる感じ。それこそ透子よりはずっとお姉さんな気がしました。
社会的強者が謎フィルターでもってこちらを純粋に慕ってくれるの、喪女の社会貢献構成プログラムって感じがして趣深いです。
緋鉈
鉈と言う字を人名に持ってくるセンス好き。
おかしな感性をしてるキャラ、と言われがちな彼でしたが、三原色の他二人がすでにそこそこ恋にやられてイカレちゃってるので相対的に変人感は薄かったかも。急に一人で会話して自己完結しちゃうところにTHEオタクを感じて面白かったです。
メール告白のくだりはおいおい~となりましたが、急に引っ込み思案になるところが彼らしくもあり。何よりこういった展開はこの作品ならではだとも思います。火力不安定のガスコンロみたいな人だ。
もともとの髪も好きなんですが短髪普段着があまりにイケメンでびっくりしました。これは惚れるしモテる。なるほどね。
ストーリーとしては、お金目当ての人に騙されがちな彼が無償の愛と出会って~と……なるかと思いきやヒロインはガッッッツリ金目当てなところに笑いました。ここも本作独特で好き。急に優等生になってもそれはそれで嘘くさいし、本人がありならありだよね~、なんて。
むっつり属性が赤・火のキャラに当てはめられてるのも斬新で素敵でした。あと対面座位よきわかる。
橙司
好き!!!
率直に言って見た目が好きなんですよ。そして忍者属性って良いですよね。萌えますよね。一般常識も持ち合わせてるし、性欲に頭焼かれてないし、もうこれぞって感じだったので、攻略対象外だったのは少し惜しまれました。
と言っても作者様もチャレンジはしてくださっていたようですし、逆に攻略対象じゃないからこそより光ってみえるのかもしれません。
翠香
あざとい・ナルシスト・エゴマゾを足して割った感じ。
私は3周目で彼のルートに入ったんですが、思えば彼の素というか、ツンツン対応を見れるのは「メールを送らない」の時だけなんですね。あのシーンを見てるか見てないかでだいぶキャラの見え方が変わる気がします。
結局純潔主義は貫かんのかい! と思ってしまったんですが、別に彼は婚前交渉自体ダメとは一言も言っていませんでした。うっかりうっかり。
最序盤の、ほどよく気の置けない友人みたいな関係が良かったので、変態化した後はお疲れ様です~という感じ。ただ紫織ちゃんがいっぱい出てきてくれたり、彼を慕って敬語ムーブしてくれたりするのは嬉しかったです。敬愛で動く一途な子好き~!
「わし、竹林翠香!87歳!」のシーンの、カッコいくて憂いを帯びた一枚絵にこの文章つけるセンスと勢いがめっちゃ好きでお気に入りです。思わずスクショ撮った。
紫織
一枚絵で惚れちゃいました。かわいい~!
せっかくなので大人バージョンの立ち絵も見たかったなあと思う気持ちもあり。でもプロフや章区切りに使われている画像の表情が可愛かったのでオールオッケー。帯の髑髏といい、意外とポップにキャッチーな感じの服装でグッときました。古風な美少女だからなおさらギャップが好き。
翠香に対しても、水生ちゃんに対しても、透子に対しても、好意が全部純粋で卑屈さやこじらせがないところがいいなあって思います。長生きしてるけど一本筋。好き。
墨人
なんだこの上司は!というプロローグの印象が一転、エピソードがあれこれ後からまろび出てきた人。このなれそめエピソードを隠す辺り、プレイヤーに対しても透子が良い子ぶってるというメタな構成とも言えて、興味深かったです。
「最低な女」発言も、他ルートでは「いや勝手に向こうが言い寄ってきただけで拒否も示してるのになんでここまで……」という気持ちがあったんですが、ここにきてようやく実感を持てたように思います。最後の最後に墨人さんへけじめをつけるところも一貫してて良き。
ざっくり語るとこんな感じ。
まとめると、
- キャラが好き 紫織ちゃん!
- ときめいた 緋鉈さん
- シナリオが好き 墨人
でした!