うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「ミノニヨクシティ」感想

「君は悪くないということと、誰かが悪いということはイコールにならない」

誰にも悪いものを押し付けずに生きてみたいな前置き。

 

 

えー、今回はせがわさんところのフリーゲームミノニヨクシティ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐有りの探索ゲー。主人公の見た目が単眼だったり、ホラーめいた演出や心をすり減らすような描写はありますが、それらも踏まえて温かい場所へ帰結するお話です。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

厳しい社会と優しい世界

 

痛みや理不尽を誤魔化さず向き合っているお話だなあと感じました。同時に、そういった傷ついたものたちに優しい世界であるなあとも感じます。

この作品、びっくり要素や追いかけっこ自体は無いんですが、肝の冷える描写やリアルに突き刺さってくるシーンはかなり多いんです。で、やっぱり怖いものってやっぱり印象に残りやすいので、つい鬱ゲーと言いかけてしまう気持ちもあります。

 

それでも、それでも温かい話だと思う理由が、明確に一つあります。

このゲームは戦わなくて済むからです。

システムとしてバトルが無いという意味ではなく、本作の中のシーン全てにおいて戦わなくて済むところが好きです。

例えば、大事なお友達のためにがんばるシーンがあります。でもそれは障害物を排除するというやり方ではなく、ちょっとお目こぼししてもらうというやり方で切り抜けます。

例えば、辛い辛い現実と向き合うシーンがあります。けれども、自分自身との対話をしたり、過去の自分を否定したりすることはありません。

 

糾弾されないって本当にありがたいんですよ。

辛いと分かってて選んだ道だし、あるいは何かを捨てると分かって選んだ道だし、プレイヤーがエンターキーを押す瞬間にその罪悪感はのしかかってきてて、きちんとその道の辛さも実感できるように創られている。そのうえで、誰かが肯定してくれる、あるいは未練がないように整えてくれるのは本当に優しい。あたたかなお話だなあと、心から感じます。

 

 

 

たくさんの優しい人たち

 

本作の中で、主人公のピギュラ君はミノニヨクシティの新しい住民として、一生懸命色んなことをこなしていくわけなんですが……。

心から実感したのが、“やさしさ”でした。

別に潔癖な世界ってわけじゃないんですよ。つっけどんな人や荒っぽい人もいて、街では時々怖いことも起こって、無条件で全肯定されるわけでもなくて。ただ、ゲーム内でピギュラがいっぱい走り回るその頑張りを街の皆が見ていてくれて、こっちが声をかければ向こうも優しい言葉を返してくれたり、距離を置いて見守ってくれたりするんです。ちょっとずつこの街に認められている感じがして、嬉しかったなあ。

優しさの塩梅って人の価値観が出るところだなあと常々思っていまして。その点、この作品のやさしさは、とても肌身にあたたかいものでした。

 

なんだろうなあ……。

上記と少し被るんですが、押しつけが無いんですよね。

ピギュラに限らず他の住民同士の話にしてもそうなんですけど、心配してても無理やり連れだすことはしないし、プライベートな場所はその人だけが入れるように造られているし、距離感がとても心地よいんです。

心配して気遣うことと、他人のペースや秘密の場所を守ること。

この両方が共存しているっていうのが本当に、心から、やさしくて好きです。

 

 

 

時に不気味で時に心穏やかな世界

 

ちょっと観念的な話ばかりしてしまったので、具体的な部分についても。

やはり目を引くのは自作グラフィックですね! 町の中央にドドンとそびえたつ、毛細血管バシバシの大目玉にギョギョっとした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

序盤で既にかなり広いマップだなと感じていたのですが、ゲームが進むとさらに世界は広がります。ちょっとした隙間に新しい行き先ができたり、開かなかった扉の先へ行けるようになったり。縛りがどんどん解けていって、この作品は“こういう世界観もアリ”なんだな、と、視界が開けていくようなプレイ感でした。

 

あと嬉しいのは、お着替えができること! 

ピギュラ君自体がかなりシンプルなキャラデザなので、お洋服といってもどこに(どうやって?)着るのかなと初めは疑問に思っていたんですが……なるほどね! 行き先によってお洋服を変えてみたり、今日の目標に合わせて心機一転してみたり。ふふふ。想像以上のおしゃれさんで可愛かったです。

 

 

 

魅力的な自作BGM

 

これはクリアしてから知ったんですが、なんと本作のBGMのほとんどが自作です! 一部素材はあるにしても、絵もBGMもストーリーも自作ってやっぱり作品としての強度が高いですよねえ……。一貫してるというか、この作品はこれ!っていうしっくりくる感じが心地よいです。

クリア後おまけと、真夜中マーケットのBGMが好き。

公式でBGM集も用意されているので、気になった方は是非。ただしネタバレ画像もあるのでそこはご了承ください。

www.nicovideo.jp

 

 

 

キャラが好きになって、もっと知りたくなる展開

 

面白いのは伏線の出し方、そしてさりげなさです。

隠されているというよりは、無理に回収しなくていい作りなところが好き。ミノニヨクシティの皆の話して、毎日行き先が増えてできることも増えていって、街全体が好きになって、色々やっているうちに自然と皆のこともわかるようになっていくこの感じ。探索好きには嬉しいし、作品丸ごと好きになれちゃうなあって思います。

 

会話分岐もかなり多くて、毎日セリフが変わるのは勿論のこと、朝と夜、本日の目標が出る前と出た後などなど、細かい分岐に応じて色んな人の反応が変わります。

セリフ差分好きとしてはもう、話しかけるのが楽しくって!

好感度システムはありませんが、物語の終盤には好きなキャラ一人を指名して起きるイベントもあります。こういう、好きがどんどん深まっていく構成とても好きです。

 

そして最高なのがクリア後おまけ!!

プレイヤーの手を離れてもこの世界はまだまだ続いていくんだなあという感じがして嬉しいですし、何より、好きになったキャラの掘り下げをさらにできるところが嬉しい! 最高でした……!

 

 

 

惜しかった点

 

さて大絶賛の後に、気になった点を少しだけ。

 

・誘導がやや薄い

特に終盤ですが、フラグになるアイテムやキャラはわかってもその場所がわからず戸惑いがちでした。といってもこの作品は謎解き探索ゲーではなく、あちこち走り回って色んな人と交流するゲームだと思うので、この点はある意味この作品らしいと言えるのかも。

・ぱっと行ったり来たりしたい

きのここねくしょんの演出自体は好きですが、上記の様に歩き回る関係でだんだんと楽しさより手間を感じるシーンが増えたのも確か。街の端から端に飛べるシステムや、裏世界に一度で行けるアイテム、海流に慣れると移動スピードが上がる、などがあるとより助かったなあと感じます。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

鬱要素、ほどよい距離感の優しい物語、独特のゆるーいセリフなどを楽しみたい方にオススメです。

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意。

キャラクターについて考察まがいの自解釈など。

 

 

ガルル・サナ・ルナ・ジェミニ

 

ガルルはもうほんとそのまま、無邪気に風船追いかけておっこちたみたいな感じだと思ってたからまさかサナルナと関係があるとは思っても見ませんでした。

よくプロフィール読んだらちゃんとガルルは大人の人なんですよね。てっきりカラコロ君やぴぎゅ君と同年代だと思い込んでました。うっかりうっかり。

となるとガルルの蒸しパンで上に浮かんでいった風船は、ミノニヨクシティへ迎え入れられなかったサナルナのお母さんの魂みたいな何かなのかなあ。一人だけ別のところへ、みたいな。

 

ガルルが庇った姉妹のことも恥ずかしながら最初はジェミニだと思ってたんですよ。母と父の乱闘があのツインクッキーの右端の血で、妹を鏡に見立てて、みたいな。違った。ご本に書いてあった。

そして私の勘違いのおかげで気づいたけどジェミニサナちゃんは同い年だったんですね。なるほど……。かなりサナのほうが大人びて見えるのはやっぱりお姉ちゃんだからなのかなー。

 

実は二回目の着いて来てくれる人選びでジェミニを選んだくらいには彼女が好きです。選ばれたのが意外そうな反応だったのに胸がぎゅっとなりました。内気でお友達すくない、みたいな感じだったのかな……。あれでもっともっと仲良しになりたいなって思えました。好き。

歩行グラは一人だけどお店に居る時だけ二人に見えるのは、カウンターの内側の見えないところに大きい姿見があるのかな。

 

 

サナルナは、姉の心配を妹は嫌がらないし、妹の奔放を姉は無理やり強制しないし、なんだかんだでバランス取れてていいな~って思います。こういう家族っていいですよね。心配させるのがかわいい妹、みたいなセリフを聞いて、ほんとに二人が姉妹で良かったなあって思いました。お互いの矢印がお互いに向いてて、いいなあ。

 

 

 

ギルバート

 

もともとギルバートさんは意図して道化になりたがってるような印象はあったんですが、彼の回想を見て、あー、となりました。[食]アイテム回想の、仕切りの裏にある本、うっかり見落としてる方もいらっしゃるんじゃないかな? ああいう、なんだろう……美学みたいな……そういうものを貫ける人は本当に芯が強くて憧れます。仮に虚勢だとしても。

花一匁のキャラで一番好きなのが彼です! あのねー、まず私が本を読むのが好きというのもあって、みんなの読書トークが楽しめるのが嬉しい! 加えて、どんな読み方であってもギルバートさんは否定してないっぽいところが好きなんですよねえ。読みながら途中で寝ちゃうのも、ああそういう時もあるよねって感じで。柔らかくて好きだなあ。

 

 

 

ジーキル・ヒロ・ヤコフ

 

初め、ギャラリーのジーキルの本のことをヒロの本かと思いかけてました。へへへ。

あちこちのお話を聞いてると、やっぱりジーキルさんって基本良い人だなあという印象です。いや、周りが良い人だから良い反応を返してるだけで、特別に善人ってわけではないのかもなんだけど……。復讐する気はしっかりありつつ、邪険にしたり無闇に払いのけたりせずに、そこそこ気にかけてくれるこの感じがいいなーと思います。距離感がほどよくて良い。

この手の人は独りでいなくなっちゃうのが心配にもなるんですが、だからこそ、詰めてくるヒロの存在が安心します。

 

 

で、ヒロの自覚って何なのかなーと考えていましたが……やっぱり煙草系の何かなんだろうなあとは思います。

初めはこう、ヤクザものの抗争みたいなのも考えたんですが、ヒロはむしろガチの悪ができないからこそちょい悪に足を踏み入れてる感じもしました。あとジェミニの花一匁でどうしても煙草はやめられないって言ってた、はず。だから煙草の方が要素は強いんじゃないかな……。

 

 

ヤコフさん自身はアングラ感のない、紳士的な人だと思うので、お店の営業時間上ジーキルヒロとよくつるむことになるっぽくて意外性が楽しいです。ヤコフさんが自覚する時のことを考えると不安でもありますが……カラコロとピギュラみたいにジーキルやヒロが繋ぎとめてくれたらいいなあ……。

ヤコフの恋人さんがミノニヨクへ来ていないのは何故なんでしょうね。ヤコフさんの選ぶ人なので、潔く終わらせることを選んだ人なのかなとぼんやり感じてはいるのですが、具体的に何がどうというところは謎のままです。でも想像の余地があって好きです。綺麗な人だったなあ。

ヤコフさんの本の読み方が私と近くて嬉しかった思い出。

 

 

 

カラコロ君・やおやの売り子たち

 

うーん実にハグしたい。

2日目の夜だったかな、「よるがこわくない!!」って言ってたのがすごく印象的だったんですよ。ああこの子は真っ暗な夜ばかり過ごしてきたんだなあって。

色々イベントをこなしてから彼のことがわかると、改めて、キャラデザインの秀逸さにぞっとします。ずっと上向いてるよね。なるほどね。唯一カラコロ君が俯く例のシーンで、まさにカラコロ君とショータ君の影がぴったり同じポーズになるのが本当に、本当に演出の上手さを感じました。

早乙女を食べた時から気づいてはいたんだけど、こうやって直面させられると、やっぱり辛いものは辛いなあと……。だからその直後に、私だけでなく色んな人があちこちでカラコロ君戻ってきて良かったね良かったねって言い合ってて、あったかい気持ちになりました。

 

あとカラコロ君好きなのって単純な話、会うたびにめちゃめちゃ喜んでくれるからです。すごく嬉しくなっちゃうじゃないですかそりゃもう! やおやの売り子のみんなも、きっとそんな感じで、カラコロ君と仲良しになったのかなあと妄想しています。

ちょっと寡黙な売り子の彼が好きです。

 

余談、4日目以降に早乙女を使うとちょっと内容が変わります。また、お友達にならないと早乙女の内容に少しだけ赤色が増える他、自室信号機内のプロフィールが開眼します。イザナイのセリフもちょこっと変わります。見るのは寂しいけど、見ておくとこの世界に深みは増す、かも。

 

 

 

ジョシュ・センセー

 

二人の自覚について。ロールシャッハ病院を見るに、薬物中毒がキーだとは思うんですよ。あの病院で寄ってくるもの?がみんな黒塗りだったのも気になってて、ちょうどジョシュさんの肌色と一緒だよねえと思うなど。

ジョシュさんが注射に執着してるのは自分に自分で打ちまくったからじゃないかなー、なんて。ただ、先生は何かというとこれがわからない……。妄想を広げるなら薬を求めた薬中患者の暴動、またはリスカかなと思います。リスカロールシャッハ病院の建物にあったので。

よくわからない、けど、雪だるまでめっちゃ嬉しそうにする先生和むので好きです。お顔が満面の笑みになってるであろうことが、表情わからなくてもわかっちゃうんだよなあ。

 

 

 

スピー・ジャミガ・ホポポ

 

スピーは凍死と見ました。だってあざらし?だし……。よく寝てるし……。冬の寒い寒い地域から離れてどこか遠くへ行きたいという、無意識の気持ちが、運転手さんにつながったのかもしれないなーなんて。

 

ジャミガちゃんは[食]のアイテムでまず「?」ってなったんですよ。ミノニヨクはやっぱり人のための楽園って感じなので、噛み付いた蛇本人が来るとはあんまり思えず……。噛まれた飼い主側が、飼ってた蛇のせいじゃないあの子は悪くないんだと言いたいがために、噛まれた自分自身を消して大好きな蛇の姿を取ってしまったということなのかなと思いました。

 

ホポポさんはね、元気で良いと思うよ!!

彼が村長代理をしてるのも初めは謎だったんですよね~。で、色々知ってる側なのかな?とか思ってたんですけど……。たぶん何にも知らなくて、調子が良くって軽快、だからこそ適材適所で選ばれたのかなあとも思います。

 

 

 

ミチビキ・イザナイ・凶関係

 

あはは~。あはは!!

いやあどちらも好きです。二人とも、口調がふっと素に戻るとこが好き。

イザナイのほうもエンド分岐や条件によってちょこちょこ会話内容が変わってるんですよね。彼女はこう、優しい世界を信じて裏切られた人なのかなあと思っています。

 

おまけモードで他世界の凶とお話しできるのが一番嬉しかったかも。幽霊さんなのかな、お話したいな、と思っていた彼らの正体に気付けた時の興奮がやばかったです。

海底都市の凶さんの言うことがかなり引っかかってるんですよねえ。ミチビキの思惑というか考えというか。凶さんの言う懸念はわからなくもないんですよ、一人だけが魂を外へ流さず留め置いているのはたぶん、よそからみると力を蓄えていると思われるんでしょうし。ミチビキは上位存在なので、冷たい見方をすれば、手駒を揃えていると考えられなくもないんでしょうし。

 

でもなんか、物事はもっと単純な気もします。ミチビキがそういう人に見えないというか……。ユウヤを説得していた時の、強制はしないんだけど辛いことがあまりに多すぎることをよくよく“自覚”している、心配から来る言葉がとても重く優しかったので。

ミチビキも今までいろんな人を見送っては、叶わずに歯噛みしてきた時期があるのかなあ。

何度繰り返してきたのかはわかりませんが、とにかく、ミチビキもイザナイもきっと元は優しい人で、そこからどのように動いたかで道が分かれた人なんだろうなあと思います。

 

 

 

ピギュラ・ユウヤ

 

私この物語の何が安心したかって、ユウヤの死因が、彼自身の不注意であったことが安心しました。

例えば、ユウヤは信号を守っていたのに轢かれてしまったという結末であったなら私はきっと、このお話と向き合える自信がなかったと思っています。もしそうだとしたら私は、顔の知らない運転手さんを恨んでしまうので。

そうじゃなくて、誰が悪いというふうに責任を押し付けずに済むようなお話を作ってくれるところが、心から優しくて好きです。

 

信号無視したユウヤが悪かった? 一人でおつかいを任せたお母さんが悪かった? 飛び出しを止まれなかった運転手が悪かった? ユウヤに気づけなかった道向こうのお父さんが悪かった?

きっと原因探しはいくらだってできてしまうし、本人たちは痛いくらいに自分を責めていたと思うんです。それを神の視点のプレイヤーが、「自業自得だよね」「あいつが悪いよね」なんて言うのは、少なくともこの作品においては合わないなと感じています。

だから、責任の所在を分散して、誰も悪いと言い切れないようにして、色んな人の苦しい気持ちをそっと丸く整えてくれているこのお話が大好きです。

 

ノーマルエンドで線香が二つあるのはご両親の立ててくれた分なんだろうなあ……。

 

 

 

カーラース

 

色々と考えがいがあっていいですよね。

妙にライトや星など、光を強調するものが多いなあと思います。一方で彼自身は真っ黒ですし、真っ赤な壁の絵などからして、夜道で刺されたとかそんなんかなと考えつつ……。謎。

彼自身かなり気弱みたいですし、寄ってたかって虐められたとか、何かの生贄に選ばれたとか、考えようと思えば何とでもできそうですね。

どうも同じ作者様の別作品? に何かヒントがあると聞いたので、そちらもプレイしてみようと思います。

 

 

 

 

とにかく、語りたいことはこんな感じかな!

まだまだ色々いっぱい、魅力的な要素も惹かれた点もあるんですが、それこそ語り尽くせなくなるのでここで一度区切ります。

実に隅々まで堪能させてもらえた、良作でした!

 

 

 

こっそりおしらせんでん

過去ねつ造したり色々妄想したりした二次創作文ですよろしくね

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