「事故だ、殺人だ、呪いだ、人はそのように言いました」
そして彼女は祝福だと言いましたの前置き。
えー、今回は猪垣ハインツ(さよならメメント)さんところのフリーゲーム「Goodbye Carol」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
選択肢はあるものの、エンド一つで一本道のノベルゲー。
展開だけ見ると悲惨なシーンもあるんですが、鬱というよりは切なさや仄暗い穏やかさが漂う感じの作品です。
というわけで、良かった点など。
幽霊・首なし・墓守の世界
やはりまず印象に残るのは死と隣り合わせのキャラ設定かなと思います。
足無し幽霊の主人公、首無しの従者、墓守のお友達、喋る骸骨達、などなど。設定だけ見るとどことなくハロウィンめいてるんですが、残酷さやお祭り騒ぎ感は控えめ。時に明るく、時にしっとりと、穏やかな生活をしているような雰囲気です。
立ち絵の差分やスチルも多く、何よりタイトル画面の構図からしてとても魅力的。みんなの顔が見えないところも含め、意味深でとても好きです。
あくまでミステリ風ノベルゲー
記憶喪失の主人公の過去を思い出すため奔走する、というのが本作の第一目標になります。よりどころもなく、誰が知人かもわからず、自分自身のことすら定かでない……となれば不安感でいっぱいになりそうなところ。ですが興味深いのは、ミステリであってもヒリヒリした緊張感は無く、常にどことなく穏やかさを感じるところです。
オズワルドとのコミカルなやり取りがやっぱり影響してる気がしますねー。彼、好きなんですよ! やり取りも良いし、首が無いのに表情豊かなところも素晴らしい。
他にも、サブキャラの髑髏たちもデフォルメかわいいですし。カーリー自身が賢く冷静で色々とツッコミもこなしてくれるのも影響してるかも。
そんなわけで舞台設定自体はけっこう暗いんですが、落ち込みすぎず、穏やかに結末を迎え入れられたように思います。
選択肢が見やすい、わかりやすい
さりげなく助かった点として、選択肢の表示の仕方。
本作はティラノ製なんですが、選択肢のボタンの配置や背景画像での補足がすごく助かりました。特に例の、ABCDの選択肢。配慮の行き届いた作品だなーと感じたものです。
そのほか、スキップやオートなどのシステムも完備。ただ、オート機能をかけたままセーブすると、再開した時に文字表示が軽くバグるのでご注意を。
エンドは一つなので選択肢自体は遊びに近いんですが、世界観も深まるし、オズワルドの反応も面白いので、色々試してみるのをおススメします。
惜しい点
終盤が駆け足
詳しく書いてしまうとどうしてもネタバレになるので追記に隠しますが、急に作品のテンポが変わったなと感じました。爽快さよりも戸惑いと新たな疑問への引っかかりが出てきてしまったように思います。
といってもこれは私の呑み込みが悪いだけかも、なんて。関連作『Rene』をプレイするとかなり感じ方が変わると思うので、そちらも是非チェックしてみてください。
逆に言えばクライマックスでの勢いが良いとも言えますしね!
とまあ、こんな感じで。
ミステリ“風”であり、謎解きや真相の究明が主題というわけではないので、未プレイの方はそこも加味しておくとよりベター。真相を土台として、キャラ同士の関係性に着目していくお話だなーと感じました。
追記ではネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ感想
表で書いた、惜しいなと感じた点について。
……と言いたいところですが、関連作の『Rene』をプレイするとかなり感じ方が変わりました。色々繋がっていく気持ち良さときたら!
せっかく書いたので謎だった点も置いておきはしますが、Reneを既プレイかどうかでかなり印象は変わると思います。
というわけでここからは『Rene』未プレイ時の感想。
カーラの記憶が蘇ったと同時に、周辺人物と舞台設定両方の謎も一気に開示されてしまったので、情報量に頭がパンクしました。
それまでは、カーラが寝る→夢を見る→謎が生まれる→1つのエピソードが進展していく、みたいにゆっくりと物語が進行して行ってたと思うんですよね。だから、ラストでこれまでの謎や隠されていた設定が一気に出てきて混乱しました。
カーラの正体、カーラの過去、フュラーの正体の話、ツモリの話、墓地や世界観の説明、オズワルドの設定、お屋敷に人がいない理由。考えてみればこれらが全部一度でわっと説明されてしまった状況なんですよね。
なので消化しきれていない設定や謎もあります。
- 屋敷が滅びたのは何故
- 神様は何だったのか
- 夜に出てくる化け物っていうのは何だったのか
- ツモリが墓地の人に畏敬されてる?のは何故?
- 戻ってくるつもりだったのにわざわざカーラが外に出ていったのは何故?
等々。
中でも最後の疑問点、カーラが離れていったことに関しては、カーラが生きていることに気付いた時点で死の世界からは弾かれてしまうってことなのかと思ったんですが……。ツモリが戻りたくないから戻らないみたいなことを言ってたから違うかなと。
なので、カーラが一度外を見て知ってから納得のうえで戻ってきたかったということなのかな……? クリア後に冒頭とつながる、ループ物めいた趣もある気がします。カーリーの生死が関わるので厳密には違いますが。
私も考察ゲー好き故、「もっと説明して」と丸投げするのはちょっとなあという気後れがあります。私が読み損ねてる気も大いにするし!
続編というか関連作として別作品がある他、記事を書いている2019現在は服読本が頒布される予定らしいので、その辺りに期待しようかなと思います。
終盤が性急と言っても、好きだったところもあって。
例えばカーラの記憶の部分が駆け足だったのはむしろ納得なんですよ。
カーラとキャロルの関係は元々プレイヤーが察せられるようにできていたんだと思うんですよね。だから、今までの積み重ねがぱっと実を結んで、気づいた瞬間に物語が走り出す、この勢い自体は好きでした。
あと、終わり方!
あれ本当シーンが絵になりますよね……。降ってくる十字架が、呪いとも祝福とも見れるところがすごく好きなんです。クリア後のタイトル画面の変化も、さりげなくささやかなんだけど、だからこそ安らかさを感じられて素敵でした。
余談、彼女の開眼立ち絵がめっちゃかわいくて好き。