うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「雨を破って」感想

「雨雲が僕らを覆い、雨音が僕らを閉ざす」

早く、逃げ出さなくては沈んでしまう前置き。

 

 

えー、今回はハラワリさんところのフリーゲーム雨を破って」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

選択肢一つでエンド分岐あり、BL、少年同士。恋愛感情というよりは、周囲のどろりとした感情から抜け出す、互いを拠り所とするような印象が強いです。

 

……結論から言うと私この作品大好きでして!!!

公式の注意書きは一見厳ついんですが、プレイ後はこの厳重さも納得の出来だと感じました。ですので、あくまでごくごく厳選した合いそうな方に対してのみ全力で勧めたい気持ちがあります。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

閉塞的な田舎が舞台

 

じっとりとしたとある田舎が舞台です。権力に肩をいからせる大人達の寄合があり、狭いからこそ澱む陰口があり、内の結束が強く排他的。この描き方がかなり印象的でしたね……。誰かの視線や湿度がひしひしと伝わってくるような書き心地で、とても筆力を感じました。

イズルサイドはこうした大勢の息苦しさを感じる一方で、さとサイドは親という個室に押し込められるような息苦しさを感じます。こちらもこちらで、優しく物腰柔らかに否を許さない雰囲気、圧のかけ方が非常に上手かったです。もう本当に……身に詰まされる感じが……。

過剰に書くんじゃなくて、あくまで等身大の無神経なところが好きなんです。ちょっとした小言やからかいが降り積もるあの厭さ。ミートボールといったささやかだからこそ感じられるリアルさ。作品全体に、じわじわと呼吸がしにくくなるような雰囲気が忍び寄っていて、とても印象深かったです。

 

 

 

鬱であり闇であり解放である話

 

陰鬱なBLと言いたいんですが、私が仮にこう言われてぱっと連想するとしたら、愛憎カプとかいじめとかなんですよね。そうじゃないんだよな……。ほんとうに言葉で言えないくらい絶妙な機微と深い澱を感じる作品です。

鬱ゲーかと言われればそうだと言いたくなる気持ちがあるんですが、それ以上に、読後の開放感がすさまじくて! 「助かった」より「やりきった」、そんな印象が強いです。盛り上がりが最高なんですよね……。苛烈で、なりふり構えなくて、もう、もう、そうしてしまっていたんだっていう行き詰った感じが最高でした。

タイトル回収の仕方があまりにも、あまりにもピタリとハマり、唸らされました。エンドロール見た後も起動画面をじっと見つめて余韻に浸ってしまうなど……。

ふわふわしたことしか書けなくて恐縮ですが、とにかく、ズガンと大穴を開けられるような衝撃がありました。心を、震わせる。

 

 

 

対照的だけど凸凹ではないCP

 

メインキャラ二人はどちらも対照的です。

華奢で色白、親の言うことをよく聞き、物腰柔らかに喋る少年、さと。

健康的な見た目で、家族と不仲、荒っぽい言葉遣いもする少年、イズル。

 

で、こう来ると対比カプというか、ケンカップル系の凸凹コンビなのかなーと思いがちなんですが……そうじゃないところがポイントなんですよねえ!

羨ましいとか憧れるとかそういうワードがほとんど出てこないんですよ。無理に比較させるんじゃなくて、さともイズルもただ互いの環境や生き方が違ってきただけなんだなあという、それだけのフラットさ。お互い悩みも行き詰まりもあるんだけど、じゃあ取り替えようって話にはならないところ。家庭は人の数だけある感じが好きです。

 

最後の最後で二人がくっつく後押しになる台詞が、ああいう言葉だったのも好きです。本当に生きてる声が聞こえた気がしたんですよ。気取った言葉じゃなくて、心の底からの生々しい声って感じが好きでした。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

いつも以上に観念的な感想ばかり書いてしまいましたが、とにかく、心を揺さぶられるお話でした。先が気になって一気に読んでしまった……!

 

閉塞感、等身大の友達、優しさの形をした虐待、じっとりとした雨の雰囲気などがお好きな方にオススメしたい作品です。

 

 

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