うそうさ〜第二号室〜

フリゲ!鬱展開!ヤンデレ!万歳

フリーゲーム「廃屋にて」感想

「画面向こうの悲鳴はエンターテイメント」

そして逆方向もまた然りな前置き。

 

 

えー、今回は月読みの里さんところのフリーゲーム廃屋にて」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐はあるものの、基本は周回前提の短編探索ゲー。全エンド見て30分くらい。ただし余韻は無限大。鬼ごっこやびっくり要素はないものの、ぞっとさせられるホラーです。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

「なにこれ怖い」と「なるほど怖い」エンド

 

本作のエンドは2種類。周回前提と書けば慣れた人はお察しかと思いますが、いわゆる謎が謎のまま終わるエンドと、真相が察せられるエンドが用意されています。これ自体はフリーホラゲあるあるかな。

しかしながら私が上手いなと感じるのは、どちらのエンドにもホラーとしての満足感が用意されていること。

謎が謎のまま終わるエンドって、なんかたいていもやもや~っとして終わるじゃないですか。それが周回へ手を伸ばすための布石にもなるとは思うんですが、一つのエンドだと思うとちょっと、消化不良な時もありまして。

それに対して本作はどちらのエンドにもきっちり「オチ」をつけることで、違った形のホラーを味わわせてくれました。丁寧! 素敵! 片方の「なあもしかして、」が次のエンドへ繋がるところも大好きです。

 

 

 

廃屋を照らす月明り

 

注目したい丁寧さはストーリーのみならず、グラフィックにもあります。

まず感服したのが月明りの表現です! 窓によって光の差込具合が違っていて、しかもそれが歩くキャラのドットにきちんと反映するんですよ。ホラーと言えば闇と思いがちですが、光が差し込んだ時にちらっと見える表情などにも恐ろしさは垣間見えるものだなと改めて教えられました……。

また、本作はキャラドットの動きがとても細やかでして。顔の向きやちょっとした動作がきちんと表現されるんです。歩いててキャラが瞬きするって細やか過ぎませんか!? 初め見た時心底感動しました。

なのでこう、プレイヤー側も見逃がさないようにしようと思いたくなるんですね。その気持ちに応えるような差分も用意されていたりして、いやあ、この手の細かい分岐を確認するの大好きな私は実に捗りました。

 

 

 

感覚的に理解できるアイコン

 

ゲームシステムはというと、作中でも言われている通り、「気になるところを調べるだけ」。探索ホラゲの基礎基本。ですがここを丁寧に整えているのが本作の魅力でもあります。

さっくり羅列するとこんな感じ。

  • システム説明やヒントが色文字
  • 調べられるものに矢印アイコン
  • 動かせるものはアイコンの色が変化
  • 拾えるものは縁取り
  • 「調べる」と「拾う」が区別されているのでエンド分岐がスムーズ
  • 近づくとアイコンが表示されるので景観がきちんと楽しめる

これだけでもすごいの通じますかね、プレイヤーとしてありがたいことづくめで感動しました。作りが丁寧……!

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

廃墟探索と聞いてピンとくる方や、さくっと満足なホラゲをお求めの方は是非。

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「記憶の檻」感想

フリーゲーム「虚構世界」感想

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

 

 

真相エンドのテキストまで引用してしまっているので本当にネタバレ注意です。

ちょっと断定的な文章が多くなってしまったので、真相を勘違いしていたら恥ずかしいんですが、あくまで自分はこう受け取ったよーということで大目に見て頂ければ幸い。

 

 

 

 

真相まとめ

 

考察解釈というよりは作品のあらすじをおさらいする感じになりますが。

その前に誤解から。恥ずかしながら初めは私、アサギくんの言う通りあの骸骨=ネギシだと思ってしまっていまして。なので、幼い自分が死んだってことは霊? 霊が免許? 免許証は他人のもの? と大混乱してしまっていたんですね。

でも違いました。ここで生きるのが免許証。呑み込みの悪い私にとってこういった誤解しようのないアイテムを入れてくれているのは本当に助かります。……顔写真付きって明言されている時点でなりすましはあり得ないですよね。

 

 

というわけで、自分用の真相まとめ。

 

まず、「ママはいなくなった」。母方の父は死んでいる。だからあの家にいるのはネギシと父だけ。だから骸骨はネギシの父

「幼い頃の自分は、すでにあの部屋で死んでいる。」の意味は、パパに従い続ける自罰的な自分は死んで、やっと自由になれた……かな。

 

なぜネギシが皆を殺して回るのか、という点は正直論の対象外というか、どうとでも想像できる余白部分かなと思います。個人的には過去虐待され続けたフラストレーションというよりは、父から教えてもらったことを生かして「ちゃんとする」を実行しているんだと解釈するとたいへん捗ります。

 

 

 

本作のテーマについて

 

廃墟部の三人がけっこう、ふわふわしたところがあるのも結末に効くな~と思うんですよ! それらしく廃墟探索の注意点などを語るシーンはあるものの、やっていることは「グレーゾーン」で「遊んでいる」。ここがすごく本作のテーマに響きます。

 

あ、ちなみに自分は本作のテーマを「遠くで起こった誰かの悲劇をエンターテイメント化すること」だと思っています。

 

まず、主にハシバミを中心に交わされる霊感の話について。霊がいるいないの議論はさておき、この部分は何も起こらないほうのエンドに説得力を出すための良い伏線だと思います。

一方で、何か起こってしまうほうのエンドから見ると、この霊についての話はめちゃくちゃ皮肉です。

ネギシは父を殺しましたが、霊なんてものは出てきません。霊感の強いハシバミはあっさりと現実的な脅威に殺されます。いやあ、清々しいほどに、生きている人間の方が怖い説です。逆説的に、ネギシに起こったことは架空の物語ではなく作中での現実的な事件なのだとまざまざと感じさせてくれます。

 

何より好きなのがアサギ君のやられ方について。

彼はめちゃくちゃ良い人だと思いますし私自身が骸骨=ネギシと勘違いしていましたが、棚に上げて書きます。正直、そりゃ刺される! いやネギシ自身の動機は徹底して明かされないので、別にアサギが何をやっても殺されていたんだとは思うんですが。それはそれとしてアサギの中では「虐待を受けた可哀想な子が殺されてしまった」という悲劇のエピソードがもうできあがっていて、心優しく(意地悪く見れば自分に酔って)可哀想な霊を慰めてやるという物語が上映されているわけじゃないですか。この暢気さ、実在する人物を一段上から観客として物を見ている不気味さよ! これがなあ、糾弾されるでもなく同調されるでもなくただ「用済み」にされるあっけなさ、話の通じなさ、別次元で生きている感じがたまらなく好きなんです。

話が通じるわけないもんな、お互い。観客とパンダだもんな。

 

なんか結局、廃墟探索の三人って物見遊山なんですよね。

彼らがすごく人間的で、きっと仲良しで根は良い人だろうなっていうのは、本当に作中の掛け合いの端々で伝わってくるんですよ。良いグループだなあと心底思う。でもそれとは別として、ヒイロの血液鑑定の話から分かる通り人の悲劇を面白がるような側面があるわけなんですよね。そしてそれはゲームをプレイして「録画」しているプレイヤーにも言えることなんですよね。仮想であれなんであれ残虐な事件を対岸のエンターテイメントにしている。

 

で、それが悪いっていうわけじゃないんです本作は。そんなにお説教くさくない。

ただ、それならお前らがそうなっても仕方がないよな、という至極冷静な帰結を感じます。そうなる可能性があるからそうなった。終わり。みたいな。だから、エンドのラストでプレイヤーは報復されたんだろうなあと思います。

ああ気持ち良い。

ネギシが喋らないキャラクターで本当に良かった。余分がない。本当にテーマが一貫している。最高です。

 

 

 

細々した要素

 

クリアしてみると色々と細やかなところに目が行きますよね!

 

まずアイテム関連。記録がナイフだったのも、何なら「彼らを殺すまでの記録」とも読めますし。何かが起こるほうのエンドだとはさみに血がつくのも実に細やか。

 

続いてネギシの立ち絵について。これ心底すごいなと思うのが、一人用済みになるごとに立ち絵が変化していくことなんですよ! 1人目と3人目、似てますけど血の量と目の光が違ってますからね。要チェックですよ。感動しました。この手の細やかな変化大好き。

元々頬に傷があったのは、前の犠牲者に抵抗された名残なのかなーとか、色々と考えてしまいます。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで!

1時間もかからない短さながら、随所に丁寧さを感じる、とても緻密な作品でした……!!