「君の声をコマンドだと僕は勘違いしていた」
ただ素直に気持ちを叫んでいただけだった前置き。
えー、今回は月読みの里さんところのフリーゲーム「虚構世界」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ファン待望!なクロスオーバー作品。コマンド選択型の探索ゲー、謎解きはありますがヒントは充実。メタな技術が光る一作です。
前提作品の一部の記事はこちら↓
というわけで、良かった点など。
進行と共に増えていくファイル
まず驚かされたのがメタ技術について!
ただキャラがプレイヤーを認識しているだけに留まりません。本作はゲーム内・外問わず、あらゆる手段を用いてプレイヤーへアクションを起こしてきます。いやもう、ウディタの可能性をとくと感じさせてくれる作品でした!
フリゲフォルダに謎のファイルが生成されたり、キャンセルキーが「いいえ」以上の意味を持っていたり、そういう演出大好きなんですよね~! メタ演出が好きな方は絶対合う、と豪語したくなるくらいには楽しかったです。
手法が多種多様なところもポイント。単純にプレイヤーのひらめきを求めてくる場面もあり、謎解きゲーとしても味わい深かったです。
たっぷりじっくり楽しめる掛け合い
本作はファンディスク的な側面が強く、同作者様の他ゲームの登場人物たちが多数登場します。ガッツリネタバレなキャラクターも登場するので、個人的には関連作品を全部プレイしたうえで挑んで欲しい気持ち。
何より舌を巻くのが、会話の巧みさについて。一見自然な会話の中に、プレイ済みだとニヤッとできるフレーズが仕込まれてるんですよ。「あ、地雷踏んだな」と冷や汗が垂れる掛け合いもあって、いやあ実に楽しかったです。
しかも、これもある意味メタ的な楽しみ方と言えるんですよねえ。本編中では彼らの事情が明かされないのでなおさら効果的。作者様と既プレイヤーにだけ通じる「ニヤリ」が感じられました。
やっぱり私は狂いがちな人が好きなので、某先生やミヤ君が絡んだ際に見られる会話が楽しかったです。パッと見ほのぼのなのが恐ろしいんだよな……。
細やかな会話分岐
加えて主張したいのが、ちょっとしたテキストの分岐の多さです。
会話や調べるなどのコマンドは二回試してなんぼ。テンポが良いのでさくさく読めてしまいますが、テキスト量や立ち絵差分の手間はかなり膨大だったのではないかと思います。
しかもさりげないポイントとしては、テキストが二段階表示なところ。一言ごとにさりげなく表情を変える様がかなり生き生きとして見えて、とても良い演出でした! やっぱり作りが丁寧なんだよなあ。
中にはこう、本編の進行には関係ないけど好奇心でやった行為に反応が返ってくることもあって感動しました。具体的なポイントなどは追記にて。
丁寧なレベルデザインと暗闇の奥の世界
この作者様の話をする時はどうしても毎回「レベルデザインが秀逸」と言いがちなんですが、本作も例に漏れず素晴らしかったです。何だろう、繰り返すことでプレイヤーに学ばせるやり方がすごく上手いんですよねえ。
謎解きでもこの魅力は遺憾なく発揮されますが、やっぱりストーリーにも注目したいところ。ただのお祭りゲーに留まらず、しっかり『虚構世界』という作品としてもまとめてあるところがとても好ましかったです。
とまあ、こんな感じで。
エイプリルフールに公開されたこともあり、まさにタイトル通り、様々な嘘が絡むとても素敵な作品でした。
この作者様の他作品が好きな方には是非ともプレイして欲しい良作です。
追記ではネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!
攻略はありませんが考察、というか解釈はあります。
最後のエンドロールまで思いっきり書いてしまいますのでネタバレ注意。
反応ポイントについて
- まずカイワとシラベルは基本的に2回(場所によっては3回)内容が変わるので、基本的に反応が変わるまで選ぶとお得。
- 何回かチームが合流するガラス張りの地点で、その場にどのチームが辿り着いているかでちょこっとだけシラベルのテキスト差分あり。
- 1チームだけさくさく進むより、並走させてカイワするほうがたくさんの反応が見られる(はず)。
- アルファに対して撃つシーンでキャンセルするとかなり多めの差分あり。思いつかない人がいっかいキャンセルしてみるだろうという作者様の読みがすごい。
おおーっと思ったのはこの辺りですね。
全然関係ないですが、イレネオさんとミヤ君のヤバイ×ヤバイ=安定、みたいな、ツッコミ不在のほのぼのワールドが面白かったです。
“彼女”について
初回プレイ時、演出がすごすぎる衝撃と動揺と感動で、ストーリーが頭に入らないくらいにひたすら没頭してました。ははは。
というわけで自分用まとめ。
ただの本作のあらすじをまとめただけのネタバレになってしまっているので、私みたいに興奮しすぎて落ち着いて読めなかった人向けかなと思います。
アルファは一人。この作品は彼女の内的葛藤の話。
天使の輪っかと悪魔の羽根がその証拠。見た目のせいで迫害された彼女が、これからヒト(善)であるか、怪物(悪)であるか、いっそどちらも諦めて自死するか。
後半の暗転画面で語られる話はアルファの過去。
見た目のせいで迫害
↓
同じ境遇の人(便宜上βとします)に出会ってアルファと名付けてもらう
↓
βの計画に従って迫害してきた人に復讐する
↓
復讐が他の人達にバレて騒ぎになる
↓
βがアルファを売って生き延びようとする
本編中で「二度と騙されねえ」と言っているのはこのβの裏切りのことを指してるんだろうなあと後になって気づいて苦しくなりました。β自身も「怯えずに済む」と言っている(はず)なのが本当にしんどい……。別に悪人ってわけじゃないんですよね、誰も……。
で、ゲーム中に戻って。
ヒトVS怪物の葛藤はプレイヤーの手によってヒトの勝利を収めました。今度はヒトVS自死の葛藤です。ここで、決定権はプレイヤーにゆだねられます。
ここからTake meのヒントは無くなってしまうのが熱い。それでも今までやってきたことを思い出せばわかるはず、という信頼をプレイヤーに与えてもらえるのが熱い。
暗い話が好きな私ではありますが、今回ばかりは自死を求めるアルファが、最後にああ言ってくれたのが救いでした。
エンドロールまで付き合えば、プレイヤーはアルファを内的葛藤の苦しみから外へと連れ出すことができるわけです。初めっからずっとTakemeと呼びかけてくれていた声に応えて。
いやー、すごい熱い話だったなあ……。
余談ですが、かすれた文字を読めたのが31日の二人なのって、アルファと同郷?同じ世界の別時系列?ってことなんでしょうかね。ちょっと気になる。
ともあれ、技術面でもストーリーの熱さでも見たことのない、濃度の高い作品でした。
イレネオさんがいっぱい話してるシーンが見れて嬉しかったです!!!