「わたしたちは生き延びることにしました」
できたのではなく意志としての前置き。
えー、今回はCHARONさんところのフリーゲーム「ほろびのゆりかご」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
RPGツクールMV製のADV。操作有り、ミニゲームや追いかけっこはなし、グロ描写有り。ルートが三つに分かれており、そこからさらに複数のエンドへ分岐します。
というわけで、良かった点など。
距離感が絶妙な立ち絵
これでも色々フリゲをプレイしてきたつもりですが、立ち絵の距離感がめちゃくちゃ近いのが本作の特徴だなーと思います。
バストアップがずずいっと表示されるのに加えて、とにかくみんな可愛い! 表情差分だけでなくポーズ変化も用意されていているので、グラシック重視の方は大満足かと思います。
中でもミクリが一番好き! この作者様の描かれる女性の中で、ミクリはレアなタイプの顔つきではないかなーと思うんですが、どうなんでしょう。口周りの色気が好き……。
さらには顔芸──というと語弊がありますが──辛い場面ではしっかり顔を崩して苦悶の表情を見せてくれるので、ただ可愛いだけでないところも魅力かなと思います。発狂顔やリョナの捗る顔もあります。やったね! ツナがぐっと下唇噛み締めてる感じの表情好きなんだ……。
パラレルに近い二つのストーリーライン
生存のための地下シェルターで過ごす五人の物語、というと、これはポストアポカリプスって言って良いんですかね。この辺よくわかってないのですが……。
ともあれ、本作はかなり序盤に大きく二つへ分岐します。
Aルートはドラマ的でキャラ同士の気持ちのぶつかり合いがメイン。
BルートはSF的でキャラ一人一人のバックグラウンドや成長がメイン。
さてそれから……? といった感じ。
キャラと舞台は同じ、というところからここまで毛色を変えられるんだな~と驚かされました。個人的にはAルートのぎすぎす具合のほうが好きかな。
ADVあるあるの、何もわからないまま終わりましたエンドもあるため、基本的にはやっぱり周回プレイ推奨。ただ、鬱展開もあればルートによってはリョナグロもあるため、ある程度そういった描写が好きな方向けだとは思います。
はっきりしたキャラ属性
上記の通りストーリーがばらつく本作ですが、それでも置いてけぼりにならず楽しめたのは、キャラクター作りが上手いからだと思っています。メギが一番わかりやすいですよね。もうずーっとママ。全員のママじゃなくて、ホタローのママ。
あと質感にぞくぞくするのはツナの無邪気な毒でした。アイツは悪い奴だからいじめていい、みたいな論調って、未熟で無垢な子どもならではですよね……。しれっとエグくて好きです。一方であっさり意見を翻すところも自由で柔軟。好きとか以前に、上手いキャラだなーと思います。
進行がわかりやすいマップマーク
イベントの起きるポイントはマップにマークされているので、基本的には迷子知らず。プレイの期間が空いてもすっと物語を進められるかと思います。また、まだマップ探索をしたい、というプレイヤーのために、物語が進展する時は必ず選択肢で意思を聞かれます。
選択肢の表示方法については思うところもありますが……これは後述で。
ともあれ、プレイヤーに向けて親切な作りを心がけて頂いているような印象でした。
続いて難点としてもいくつか。
・選択肢の誤選択が多発
通常の選択肢決定にウェイトが一切なく、誤選択が多発します。バックログもなく、キャンセルキーで読み進めてもNOの選択肢と認識されてしまう仕様。自分は読み飛ばしを気にしてしまうので合いませんでした。どちらの選択肢でも受け答えは同じ、というシーンがほとんどではあるのですが……。
・周回プレイが手間
『選択』の重要性を説くゲームであることは重々承知です。そのうえでなお言います、テンポが悪い!
回想シーンが長すぎて見飽きてしまったり、余計なところでウェイトが激長だったり。同じ展開を繰り返すようなストーリーラインだからこそ、全体的なゲームテンポのゆったり具合が悪目立ちしていたように感じました。
・カタルシスはあるものの
ストーリーについて。ドンデン返しや起承転結の転に当たる部分は多く、起伏は楽しいお話です。ただ、ある意味では整合性がまったくなく、ある意味では話の筋が通り過ぎており、もやもやとする気持ちがあったのも確かです。詳しくは追記に格納しますが……。
ただ演出力はめちゃくちゃあるので、勢いに呑まれてグッとくるタイプの方は合うはず。
とまあ、こんな感じで。
鬱展開好き、グロも平気、綺麗な演出とひと繋ぎのストーリーに惹かれる、といった方にオススメです。
追記ではネタバレ感想。
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ネタバレ注意。
ストーリーについて
ゲーム内の「生への渇望」が、メタ視点でホタローの「誕生」に繋がり、一つの「生きる」というテーマを伝えてくれる。ここはめちゃくちゃ良かった、構成の妙!!って感じがしました!
じゃあどこがもやもやしたのかというと、夢という片付け方について。構成として最良なのはわかっているので、これは完全に感覚や印象で物を言ってます。
ホタローは覚醒してから終始「みんなを守る」と言い続けますが、あの世界が夢になってしまうのなら、その自立に無かったことになってしまう気がして、もやっと。「みんなで生き伸びる」ならわかるんですよ。でもそれ以上に「支える」「守る」といった言い回しが多かったので、最後の最後で守るべきものを失ってしまうみたいな……うーん……私が感じた本作のテーマとここだけズレているような気がしていて……どこにピースを入れればいいのかわからない感じがしてます。
あともう一つ、Cルートのバッドエンドも思うところあり。
なんだろう……あの場に居た五人の物語やこれから見れないし、見たいという感情自体が悪とされてしまうんだなあという寂しさ? みたいな。
ゲームを通じて彼女達へ愛着を持ったのに、覗き魔扱いされて、しまいには悪として叩かれてしまうというのがなんだか、うーん。このゲームをプレイしたこと自体を否定されてしまうような感じ……? この辺の自分の感情の落としどころに困りました。
でもこの、手を離される感じが、居心地の良い場所を離れて過酷な現実に「誕生」するということなのかなあ。
いやでもこれ、冷静になってこうやって後になって思い返してるからもやもやしてるだけで、一気にプレイして演出見て「いや~感動だった~」で終わらせれば済む話な気もするんですよね。考えすぎかもしれない。
解釈、考察、他
ブルースターの間で会えるママは本当のママの権化みたいなものなんだろうなあと思っています。メタ的には、ホタローがまだ誕生していなくて母親の顔がわからないから、仮としてメギの姿を被っている感じ。
Cルートのトゥルーエンド、メギとミクリ、両方選んでみたんですよ。でも〇印の会話は共通してミクリ×エンゼリカでした。だから、やっぱりメギは誰かの彼女とか攻略対象とかじゃなくて、属性:ママなんだなあと感じます。