「絡んだ糸は厄介だが解けばそこには簡明が残る」
あなたと君が笑い合いたかっただけの前置き。
えー、今回はTeToriapotさんところのフリーゲーム「ばつえいビルッテ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
エンド分岐はあるものの、ラスト少し前の選択一つだけで分かれるので回収しやすいです。ただ、物語理解をしっかりしていきたいなら、セーブは定期的に分けることをおススメ。
さらに前置きとして。私はこの作品大好きです。たまらん大好きです!! ただし、序盤はかーなーり思うところもあった作品でした。なので、全肯定ではないことだけご承知おきください。
というわけで、特徴的な点など。
キャラ同士の関係性が鍵を握るストーリー
本作は、神殺し・創世記・英雄譚・あるいは上位存在の意思にあらがうキャラクターたちの物語です。一方でその根幹は、キャラ同士の憎悪・友情・慈愛・あるいはそれに類する複雑激重感情を巡る関係性です。
要は、「悪いやつ倒しましたバコーン!」とか「○○と××仲良しでよかったね!」とか、そういう明確でわかりやすいストーリーではありません。いや、ストーリー自体は簡明なんですが、その簡明さを理解するまでの工程が複雑。伝わるかなあこれで。
このストーリーの魅力を理解するには、キャラの想いに焦点を当てる必要がある……一方でキャラの背景事情を理解するにはストーリーや舞台設定の咀嚼が必要……。双方が絡み合っているので、ちゃんと全貌を理解しようと思うと、かーなーり難しく感じた作品でした。自分用の箇条書きメモがテキストだけで25KB。しかもまだわからんことだらけ。ははは。
まあ、本作の必読や紹介文のあちこちにある通り、ストーリーや細かいキャラクターの思惑などはぜーんぶ無視して突き進むこともできはします。
でもやっぱり、ポルペロの思惑とかマティーニャの葛藤とかビルッテの役割に付与されたおぞましさとか、知った上でプレイする方が絶対楽しい……! 読み流すのはもったいない、でも、いや読み流すプレイヤーがいてしまうのもわかる気はするという、1ファンとして勝手ながらジレンマも感じてしまう作品です。
彼と彼女と彼と彼
ここは合わなかった点なのでバッサリ切っていきますが……。
セリフや文章回しにかなり癖があり、匂わせを含め、曖昧な物言いが多用されます。さらにはキャラが誰かを呼ぶときに「あれこれそれ」「彼」「彼女」「種族名」「役職名」「二つ名」などが入り混じるので、セリフは一個一個丁寧に追って行かないと後々パンクします。しました。
あとテキストボックスの広さの関係か演出か、目的語が飛ばされてたり主語が省略されてたりすることもあるので、現状を把握しようと思うだけでもめちゃ難しいです。この既視感はあれだ、古文の授業。
そして情報開示が基本的に遅い。カルーア家とドランティア家の家系図が後出しされた時はブチギレました。オープニングで出してくれ!っていう。まあこのタイミング問題は伏線を読み解いた後の答え合わせを意識されているのかもしれませんし、自分で物語を考察していく楽しさも1プレイヤーとして理解はできるので、突き過ぎたくはないのですが……。
なんだろう、用語辞典等もありキャラが真相を語ってくれるシーンもありはするんですけど、その親切さが絶妙に噛み合っていないというか、プレイヤーが無知であることをそもそも想定されていない感じがしました。
ただですね!
これは裏を返せば良点でもあります。文化や宗教に至るまでとても細やかな世界観が構築されていること。モブキャラがモブとして登場せず、どの子にも大なり小なりのドラマがきっちり用意されていること。ただ眺めるだけでなく、プレイヤーが能動的に物語を解釈して行こうと思える余地があること。エトセトラエトセトラ。
実際、私もメモ書いたりスクショ撮ったりしながらああかなこうかなって考えつつ進めたあの時間は、めちゃくちゃ楽しくもあったんですよ……!
なので結局は、合う人ならとことん合うし合わない人は読み流せばよし、という冒頭に繋がるのだろうと思います。
独特の絵柄と多様なスチルが織り成す表現
ついテキストに着目してしまいますが、グラフィックも両手を挙げて賞賛したい点の一つです!
まずシンプルに、使用されているスチルの枚数がこれでもかというほど多い! 決めどころのシーンからちょっとした説明の補足まで、あらゆるところで使用されます。独自の良さが光る絵柄なので、これだけでもかなり世界観を濃厚に感じられました……!
一方で戦闘時の味方キャラや起動画面などは、デザイン性の高いアイコンで表現。こちらもまた色使いや形にセンスがあり、その裏に含んでいる意味合いなどの深読みもできて楽しかったです。
街のマップがうろつく形式ではなく気になる箇所を選択するという、ADV形式?なのも斬新でしたね~。場所の全景がぱっと見で確認できて、地図としての役割もはたしている感じでした。
イベント戦であり演出でもあるボス戦
バトルはシンボルエンカウント。どの敵にもテンションブチ上がるセンスの良さがあるので、つい全撃破してしまいました。
レベルは上限が設定されているので、ゴリ押しはできない仕様です。頭を一捻りする必要のあるボスもいるので、脳筋だとクリアできないバランスかと。たたかう連打で終わらない、味のある戦闘が好きな方向けです。
逆に終盤のボスはイベント要素が強め。やるべきことは事前に提示されるので、詰まることはないはずです。こういうゲーム性は親切。
そして何より! ボスキャラの敵グラフィックがこれまたすっごい良いんですよ!!! ポルペロルート(と勝手に呼んでいる)とかもうマジでドラマティックで!!! BGMの踊るような雰囲気もあいまって、見ててめちゃくちゃ良かったですね……。
難しい敵については攻略テキストも同梱されています。おのれ盤上の狙撃手。
狂信者に混乱がぶっ刺さる、等々、バトルでの攻略方法にもキャラクター性が重視されていて萌えました。こういうシステムで見るキャラの個性っていいよなあ……!
純・欺・策という三属性も新鮮でしたし、それがそのままキャラクターの個性や分類に繋がっているところも魅力的でした。属性名がもうロマンあふれる。
韻律重視のフレーバーテキスト
装備品の説明文、新マップ突入時の説明、マップ内の零れ話、戦闘前の口上文!
どこをとっても耳に心地よい名文の嵐です!!
文だけなのに「耳に心地よい」とはこれいかに、と思われるかもしれませんが、いやもう目で追うだけでもめちゃくちゃ気持ち良くなれるテキストが盛沢山なんですよ……。詠唱とか呪文にも似た感じ。
敵が使うスキルや使用時のセリフも要注目です。アシレトダンジョンの敵は特に不気味で底知れなくてめっちゃ良かったなあ……。
特に装備品は全て敵からのドロップアイテムになるので、「あの敵がこれを落とすのか……」という深読みもできてよりおいしいです。
何よりポルペロルートのラスボスの戦闘前口上が大好き!!! エンドごとで対比されてるのもいいんですよ……! クリアした後も脳内でずっとリフレインしてました。もう言葉遣いが美しいんだこれが……。
余談ですが、作者様が定期ゲー界隈の方と知ってかなり納得してしまうなど。定期ゲープレイヤーさんって決めセリフやフレーバーテキスト上手な方多いですよね。
とまあ、こんな感じで。
熱いロマンと美しい物語とドロドロした人間模様が描かれる、ハイセンスなRPGでした。こういうのが味わえるからフリゲはやめられねえ!
追記ではネタバレ感想。
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