うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「ばつえいビルッテ」感想

「絡んだ糸は厄介だが解けばそこには簡明が残る」

あなたと君が笑い合いたかっただけの前置き。

 

 

 

えー、今回はTeToriapotさんところのフリーゲーム「ばつえいビルッテ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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エンド分岐はあるものの、ラスト少し前の選択一つだけで分かれるので回収しやすいです。ただ、物語理解をしっかりしていきたいなら、セーブは定期的に分けることをおススメ。

 

 

さらに前置きとして。私はこの作品大好きです。たまらん大好きです!! ただし、序盤はかーなーり思うところもあった作品でした。なので、全肯定ではないことだけご承知おきください。

 

というわけで、特徴的な点など。

 

 

キャラ同士の関係性が鍵を握るストーリー

 

本作は、神殺し・創世記・英雄譚・あるいは上位存在の意思にあらがうキャラクターたちの物語です。一方でその根幹は、キャラ同士の憎悪・友情・慈愛・あるいはそれに類する複雑激重感情を巡る関係性です。

要は、「悪いやつ倒しましたバコーン!」とか「○○と××仲良しでよかったね!」とか、そういう明確でわかりやすいストーリーではありません。いや、ストーリー自体は簡明なんですが、その簡明さを理解するまでの工程が複雑。伝わるかなあこれで。

 

このストーリーの魅力を理解するには、キャラの想いに焦点を当てる必要がある……一方でキャラの背景事情を理解するにはストーリーや舞台設定の咀嚼が必要……。双方が絡み合っているので、ちゃんと全貌を理解しようと思うと、かーなーり難しく感じた作品でした。自分用の箇条書きメモがテキストだけで25KB。しかもまだわからんことだらけ。ははは。

 

まあ、本作の必読や紹介文のあちこちにある通り、ストーリーや細かいキャラクターの思惑などはぜーんぶ無視して突き進むこともできはします。

でもやっぱり、ポルペロの思惑とかマティーニャの葛藤とかビルッテの役割に付与されたおぞましさとか、知った上でプレイする方が絶対楽しい……! 読み流すのはもったいない、でも、いや読み流すプレイヤーがいてしまうのもわかる気はするという、1ファンとして勝手ながらジレンマも感じてしまう作品です。

 

 

 

彼と彼女と彼と彼

 

ここは合わなかった点なのでバッサリ切っていきますが……。

セリフや文章回しにかなり癖があり、匂わせを含め、曖昧な物言いが多用されます。さらにはキャラが誰かを呼ぶときに「あれこれそれ」「彼」「彼女」「種族名」「役職名」「二つ名」などが入り混じるので、セリフは一個一個丁寧に追って行かないと後々パンクします。しました。

あとテキストボックスの広さの関係か演出か、目的語が飛ばされてたり主語が省略されてたりすることもあるので、現状を把握しようと思うだけでもめちゃ難しいです。この既視感はあれだ、古文の授業。

 

そして情報開示が基本的に遅い。カルーア家とドランティア家の家系図が後出しされた時はブチギレました。オープニングで出してくれ!っていう。まあこのタイミング問題は伏線を読み解いた後の答え合わせを意識されているのかもしれませんし、自分で物語を考察していく楽しさも1プレイヤーとして理解はできるので、突き過ぎたくはないのですが……。

なんだろう、用語辞典等もありキャラが真相を語ってくれるシーンもありはするんですけど、その親切さが絶妙に噛み合っていないというか、プレイヤーが無知であることをそもそも想定されていない感じがしました。

 

ただですね!

これは裏を返せば良点でもあります。文化や宗教に至るまでとても細やかな世界観が構築されていること。モブキャラがモブとして登場せず、どの子にも大なり小なりのドラマがきっちり用意されていること。ただ眺めるだけでなく、プレイヤーが能動的に物語を解釈して行こうと思える余地があること。エトセトラエトセトラ。

実際、私もメモ書いたりスクショ撮ったりしながらああかなこうかなって考えつつ進めたあの時間は、めちゃくちゃ楽しくもあったんですよ……!

なので結局は、合う人ならとことん合うし合わない人は読み流せばよし、という冒頭に繋がるのだろうと思います。

 

 

 

独特の絵柄と多様なスチルが織り成す表現

 

ついテキストに着目してしまいますが、グラフィックも両手を挙げて賞賛したい点の一つです!

まずシンプルに、使用されているスチルの枚数がこれでもかというほど多い! 決めどころのシーンからちょっとした説明の補足まで、あらゆるところで使用されます。独自の良さが光る絵柄なので、これだけでもかなり世界観を濃厚に感じられました……!

一方で戦闘時の味方キャラや起動画面などは、デザイン性の高いアイコンで表現。こちらもまた色使いや形にセンスがあり、その裏に含んでいる意味合いなどの深読みもできて楽しかったです。

街のマップがうろつく形式ではなく気になる箇所を選択するという、ADV形式?なのも斬新でしたね~。場所の全景がぱっと見で確認できて、地図としての役割もはたしている感じでした。

 

 

 

 

イベント戦であり演出でもあるボス戦

 

バトルはシンボルエンカウントどの敵にもテンションブチ上がるセンスの良さがあるので、つい全撃破してしまいました。

レベルは上限が設定されているので、ゴリ押しはできない仕様です。頭を一捻りする必要のあるボスもいるので、脳筋だとクリアできないバランスかと。たたかう連打で終わらない、味のある戦闘が好きな方向けです。

逆に終盤のボスはイベント要素が強め。やるべきことは事前に提示されるので、詰まることはないはずです。こういうゲーム性は親切。

 

そして何より! ボスキャラの敵グラフィックがこれまたすっごい良いんですよ!!! ポルペロルート(と勝手に呼んでいる)とかもうマジでドラマティックで!!! BGMの踊るような雰囲気もあいまって、見ててめちゃくちゃ良かったですね……。

難しい敵については攻略テキストも同梱されています。おのれ盤上の狙撃手。

狂信者に混乱がぶっ刺さる、等々、バトルでの攻略方法にもキャラクター性が重視されていて萌えました。こういうシステムで見るキャラの個性っていいよなあ……!

 

純・欺・策という三属性も新鮮でしたし、それがそのままキャラクターの個性や分類に繋がっているところも魅力的でした。属性名がもうロマンあふれる。

 

 

 

 

韻律重視のフレーバーテキスト

 

装備品の説明文、新マップ突入時の説明、マップ内の零れ話、戦闘前の口上文! 

どこをとっても耳に心地よい名文の嵐です!! 

文だけなのに「耳に心地よい」とはこれいかに、と思われるかもしれませんが、いやもう目で追うだけでもめちゃくちゃ気持ち良くなれるテキストが盛沢山なんですよ……。詠唱とか呪文にも似た感じ。

敵が使うスキルや使用時のセリフも要注目です。アシレトダンジョンの敵は特に不気味で底知れなくてめっちゃ良かったなあ……。

 

特に装備品は全て敵からのドロップアイテムになるので、「あの敵がこれを落とすのか……」という深読みもできてよりおいしいです。

何よりポルペロルートのラスボスの戦闘前口上が大好き!!! エンドごとで対比されてるのもいいんですよ……! クリアした後も脳内でずっとリフレインしてました。もう言葉遣いが美しいんだこれが……。

 

余談ですが、作者様が定期ゲー界隈の方と知ってかなり納得してしまうなど。定期ゲープレイヤーさんって決めセリフやフレーバーテキスト上手な方多いですよね。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

熱いロマンと美しい物語とドロドロした人間模様が描かれる、ハイセンスなRPGでした。こういうのが味わえるからフリゲはやめられねえ!

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

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フリーゲーム「ものやみジャック」感想

「鬼火はゆらりと揺らめくもので、もちろん誰にも捕らわれない」

他を翻弄するほど愉しいものはない前置き。

 

 

 

えー、今回はTeToriapotさんところのフリーゲーム「ものやみジャック」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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進行は一本道、要所の選択でエンド分岐するADV。操作有りのウディタゲー。短編。

好きなところとちょっと……なところと両方あるので、包み隠さず書きます。が、やっぱり好きな作品ですし、この作品を起点とするシリーズ一連全部大好きです! そこだけは事前に主張させてください。

 

というわけで、特徴的な点など。

 

 

 

設定用語と独自世界観がガッツリ

 

正直、初回プレイの時はかーなーり困惑しました。

まず設定用語がかなり多い! 病名・キャラ名・家名が混ざり合うので、用語集があってもなお把握にかなり苦労しました。

また、(これはストーリーのギミック上仕方がないのですが)重要なシーンでのセリフは「こいつ」「それ」「これ」といった指示語が飛び交うので、今誰が視点主で誰のことを喋っているのかを常に強く意識する必要がありました。

もっと言えば、舞台は狭い病棟だけであるのに、作中で設定されてる東西南北全ての世界が物語に絡むので、そこも辛かったです。

 

要は、説明役の無知なキャラが一人もいなくてプレイヤー私は置いてけぼりになりがちでした。

まあ、メモ取りながらでもなおエンドに行くまでストーリーを全く理解できなかったのは私の読解力の乏しさのせいなんですが……。

 

 

 

 

どこを読んでも心地よいテキスト

 

それでもですね!!

本作で魅力として推したいのもやっぱりテキストなんですよ。

というのも、セリフの一つ一つ、メニュー画面のちょっとした説明書き、一つ一つがものすごく語感の良い響きばかり組み合わさっていいまして。要は読んでいてすごく心地良いテキストがそろい踏みなんです!

演劇とか詩とか、音の響きを重視するテキストが好きな方には特に刺さるんじゃないかなあ。

毎週のジャックの紹介文も好きですし、エンド2での役職名を羅列するあの表現も大好きです。

 

 

 

 

最後は綺麗に全貌が見える仕様

 

冒頭でさんざん書いてしまいましたが、全エンドさえ見てしまえば、ストーリーのネタバラシもおまけ部屋で確認できるのでご安心。

設定が多くあることは世界観が濃厚とも言い変えられますし、用語集や各チャプターの見返し機能はとても便利でさっと見返せるありがたい仕様でした。

なにより、この物語を起点として始まるこの作者様の一連のシリーズ、ゲームの一言で済ませるには惜しまれるこの世界・文化・宗教・伝記・民話・etc.……

これらが大好きなんですよ!!! 

なので、刺さる人にはめちゃくちゃぶっ刺さる作品だとはやっぱり主張しておきます。

あの、ざわざわした余韻のあるエンドが大好きなんだ~……! ウオオ……。

ちなみに既プレイの方は、クリア後のRead meネタバレ部分は必見です。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

色んな人外や奇病が見れて、各キャラの思惑や関係が複雑に絡み合ってる感じも、噛み応えばっちり。何よりこういうダークな言い回しがガツンとハマる方は絶対多いと思うので! 

気になった方は一度手を伸ばしてみることをおススメします。

 

むしろ本編は次作『ばつえいビルッテ』といっても過言。

というわけで下記も合わせて是非どうぞ!

 

 

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フリーゲーム「天使と悪魔の旗印」感想

「君は信念を、僕は成長を、二つ合わせて理想を」

掲げて今日もここに立つ前置き。

 

 

 

えー、今回はレパートリーの少ない喫茶店(アルス)さんところのフリーゲーム「天使と悪魔の旗印」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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一本道、バトルとストーリーを交互に繰り返すタイプのRPG。短編ファンタジー。天使と悪魔の半端者の話。

 

 

 

というわけで、特徴など。

 

 

 

旗印に通じるストーリー

 

タイトル、初めはすごくシンプルだなーと思ってたんですよ。どういうゲームなのかが読めなくて、なんだろう、どこかに置いてある小説のタイトルみたいな感じを受けてたんですよね。

これがプレイし終わった後は、この「旗印」がこれ以上ないってくらいしっくりくるものになりました。

 

主人公は二人、どちらも天使であり悪魔である半端者です。ここと定められない心細さ、劣等感、奇異を見る人の目。そういう居場所のなさとどう立ち向かっていくか……そんな感じのストーリーでした。

精神的に強い子と弱い子、どちらのお話も見れるからすごくすんなり心に届いたように思います。片方だけだったら、失礼ながらたぶんちょっとばかりは反感を持ってしまったんではないかなあ。両方の考え方が見れたから良いなあと感じられたし、二人が二人であるからこその作品というのが本当に心で実感できたように思います。

 

 

 

オッと思わされるキャラデザ

 

天使と悪魔。と言うと、西洋なイメージはもちろん根強いかと思いますが、本作のキャラデザは細部がかなり異色です。特にルーンは、なんていうのかな、民族調な感じ?

元々この作者様は絵師さんとして知っていて、キャラデザ自体いつも好みだなあと思っていたんですが、本作でもそのセンスは遺憾なく発揮されていました。

全身画で隅々まで装飾等々が見れるのも嬉しい! 腰羽根良いですよね~。

 

欲を言えば、全身になると立ち絵の距離が離れてしまうので、バンと思い切り画面半分浸食する勢いで出してしまうか、バストアップでの差分が欲しかったなあと思いはしましたが……。サイドビューでデフォルメ版の立ち絵も見れるし、絵の種類自体はかなり多いので多くをねだりすぎかなー、なんて。

 

嬉しかったのは、仮要員で仲間にできるモブキャラにもしっかり立ち絵があるところ! てっきりちょっとしたセリフだけだと思っていたので、思わぬところでも登場してくれてとっても嬉しかったです!

 

 

 

シンプルなゲーム制

 

ダンジョン攻略などはなく、ゲーム性はシンプル。バトルの場は同じワンマップの繰り返し、道中のクレセントの反応などもほぼ同じで、敵の特徴解説も意味があるのは前半の2回ほど。若干の作業ゲー感は否めません。

それでも多少なりの工夫は認められます。サイドビュー形式自体がまず斬新ですね! どうしても自分はフリゲ慣れしてしまっているので、ウディタですっかり見慣れた画面とは異なっていて目新しかったです。

バトルの難易度はちょうどいい感じかな? MP管理が若干シビアで、レベル上げは必要な感じ。閃きシステムなども搭載されており、通常攻撃の連打だけにはならないような調整がされています。

ゲーム性をお求めの方とはミスマッチを起こしそうな気もしますが、ゲームらしさ、独自要素はきちんと持っている作品だと感じました。

 

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

こじらせた男の子と優等生の女の子、「太陽と月」と見せかけた「月と太陽」、男女バディものなどがピンとくる方に。

 

 

本作品のキャラがゲスト出演する別ゲー↓

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フリーゲーム「白緋ト云フ名ノ傾城」感想

「洞は底がないから虚と呼ぶのです」

支えて下さい、なければ穴ごと落ちて下さいな前置き。

 

 

 

えー、今回はJelikoさんところのフリーゲーム白緋ト云フ名ノ傾城」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

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遊郭を舞台とした、和風ノベルゲー。恋愛というよりは情念。一本道、プレイ時間は数時間ですが、その濃密さや美しさは延々と脳裏に焼き付く一作。

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

衝撃から始まり、静かに幕を引く話

 

花魁の死、という壮絶なシーンから始まる本作。プロローグがエピローグとはよく言ったもので、この死に至るまでどのような想いがあったのか綴られていくのが本作です。

男二人の視点が交互に繰り返されながら、物語は進みます。

目を見張るのがやっぱりこの目次ですよ! 美女を美女として描けるの、心底素晴らしいと思います。アップにするのが艶やかな唇というのもまた衝撃的で良い……。

 

そしてこの男二人の対比がとても良い!

背景の使い方が上手いんですよねえ。二人をしっかり、朱と白で色分けしたうえで、要所でふっと入り混じる。この感じが、真反対のようで似ているところのある二人の人間性の表現に繋がっていたなあと……。染み入る演出でした。

あと月の描写が大好きなんですよね! 普段は鷹野に使われる月の背景が、(確か私の記憶では)一か所、弥一のシーンで使われるところがありまして。あの美しい文すらも抑え、背景画像一枚でハッと弥一の想いにも気づかされる、あの演出が最高でした……!

 

 

 

どっぷりと感じられる吉原の色

 

花魁の口調からこまごまとした描写、登場する舞台の小物に至るまで。どこもかしこも「艶」で「粋」で「宵闇」のじっとりとした雰囲気を感じさせる作品でした。

文章がとにもかくにも美しいんですよね……。こういう遊郭物はなんとなし、用語や風習が独自で小難しい印象を持ってしまっていたのですが……。本作は見慣れない単語もすっと頭に入ってくる美文ばかりで、とても読みやすかったです。「~しんせん」「~かえ?」といった花魁独特の語尾も、逆に「~ですかい」「へえ、」といった男連中の江戸喋り?も隅々まで表現されていて、かなり濃厚でした。

この世界観は本当に本作でしか味わえない、「美」だと思います。

 

 

 

圧倒的演技力で魅せるフルボイス

 

サウンドノベルと銘打たれている本作。なんと驚き、地の文も含めて全てフルボイスです。

いや、終わってから知ってびっくりしたんですよ!

全部同じ人!? って!

確かに発音の癖などよく聴けばしっかりと同一人物なのですが、それ以上に、圧倒的な別人と思わせるだけの演技力がありました……! 無理な声替えをせず、自然と聴きやすい演技に収めてくださっているのもポイント高いです。

正直に言うと、少し活舌は気になったかな? な行が弱そう、演技がたいそう良い分耳に引っかかるところはやっぱり惜しまれたなあとも思います。

しかしながら! あの圧倒的な、息の詰まるような雰囲気を出せるのはやはりこの声優さんあってこそのものです。

 

もっと言うと、このゲーム作者様はノベルゲの画面映え重視で本文のフォントがかなり小さめで読みづらいのがたまに傷だなあと感じておりまして。そこをボイスでしっかりカバーして頂けていたため、相乗効果でよりよく感じました。

 

女性の台詞ももちろん同じ男性声優さんが担当されています。変に異性ぶった声ではなく、あくまでこの方自身の声帯というか……聴き苦しいベール抜きに率直な演技力で声を届けてくれたような印象でした。何より、白緋の、あの底知れぬ雰囲気の女性を、男性の声帯であそこまで表現できるものなのかと! 驚かされるばかりです……。

あとがきもちらりと触れられますが、この声優さんの筆致自体もとても抑制が効いていて、美しかったです。このお二人だからこそあの、触れればふつりと途切れてしまいそうな、絶妙な雰囲気が生み出せたのだろうなと思います。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

艶やかで、繊細で、苛烈で、美しい。静かにじっくりと読み進めたい。そんな物語でした。

 

 

ちなみに!

2021/11/5に『Scarlet and Blank』というタイトルでSteam英語版がリリースされるとのこと。これを機に是非原作?日本語版?も広まって欲しい気持ちです。わくわく。

 

 

 

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フリーゲーム「ロンドリア物語2」感想

「世界を救え! でもその前にご飯たべよう!!」

ピクニック気分が平和の鍵な前置き。

 

 

 

えー、今回はひーりんまるはうす.さんところのフリーゲーム「ロンドリア物語2」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

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クリアまで20時間くらい、ギャグでライトなSRPG。もちろん無印と話は繋がっているので既プレイ推奨。変更点はあれど、変わらぬとっつきやすさで楽しめる逸品です。

 

過去作感想記事↓

フリーゲーム「ロンドリア物語」感想

フリーゲーム「ロンドリア物語~外伝~」感想

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

さくっと盛り上げさっと次へ行くストーリー

 

ポップにギャグでテンポの良いストーリーは前作と同様。とにかくさくさく攻略していきたい派の方にはありがたい仕様です。

このシリーズ、小難しい用語もなく手を付けやすいのがやっぱりいいですよね~……! ゲームとしてのボリューム自体はしっかり分厚いんですが、根底の明るさのおかげで気楽にプレイできました。

もちろん、「王子、死ぬなよ」も健在ですよ!

自分の中ではSRPGというとまだまだ大粒で重厚なイメージが根強いので、こういう明るくライトな作品が有名作として存在してくれてるのはジャンル自体の幅の広がりとしても良いなあと感じます。

 

 

 

事前にわかる支援効果

 

さて、前作では事前に決まっていた支援関係ですが、今作では大手商業SRPGのように自分で発生させることができるようになりました。条件も単純で、ただ一緒に出撃させるだけ。しかもそのおかげで、キャラ同士の支援会話が読めるようになりました! やったー!!

 

まずありがたいのは、事前に支援が誰と起こるかわかるところですね。私はなるべく多くの支援を全力で回収したい派なので、めちゃくちゃ助かりました~……! 格納場所はおまけページなので、ネタバレが嫌な方も避けられます。

自分の場合、何故か起用する気の全くなかったノルドゥラとカーラルドが支援相手の関係で常に出ずっぱりでした。こういう意外な出撃枠が増えるのも、支援の醍醐味かも。

 

さらにはなんと、なんと、支援会話の見返し機能付き!!! 私みたいなキャラ重視のプレイヤーにはめちゃくちゃとてもかなりすごく、ありがたい機能でした!! 実装感謝~……!

一回の会話自体は数行のやり取りで、基本的にはほのぼの仲良くなる流れがほとんど。こういったちょっとした会話のおかげでキャラへの愛着がわくってもんですよね!

 

 

 

スペースキーでちょっと嬉しい立ち絵

 

ガッツリBIGサイズな立ち絵も勿論健在。しかも豪華なのは、前作既出のキャラでも新規絵が楽しめること! こういうので新しく立ち絵を描き直すのって、めちゃくちゃ大変なんじゃないかという想いがあるわけですよ……。そのうえ被弾絵も実装済。ちょっとした差分や顔グラも合わせたら多分イラストの総数はものすごいことになるんじゃないかなー、なんて。

そして何より、ファンとして嬉しいのが、前作の立ち絵に切り替えることもできるところです!! これ、ほんとさりげなくめちゃくちゃ嬉しい! 特にロンドは無印での立ち絵がすっご~~~くお気に入りだったので嬉しかったです。気分によって切り替えるのもいいかも。

 

特にこのゲームはキャラゲーな側面も強いですし、SRPGでどのキャラを起用するかってわりと顔で決めることが多いので、グラフィックに力が入ってるのは良点だなーと思います。当軍のオスヴィンなんて腹筋でスタメン入り決定したもんね。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

カラッと楽しめる、シリーズの良いところをしっかり今回も受け継いでくれた良続編でした!

 

追記では自軍紹介など。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「ロンドリア物語」感想

フリーゲーム「ロンドリア物語~外伝~」感想

 

 

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フリーゲーム「ごちむす」感想

「元より世界に興味はない、ご都合主義と呼ぶがよい」

ただし都合が良いのは世界ではなく主人公の方な前置き。

 

 

 

えー、今回はきぎぬさんところのフリーゲーム「ごちむす」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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元はVIPRPG紅白2014に提出されたやるゲ。ですが、ふりーむの方にも公開されており、VIPRPGのお約束ネタも全くといっていいほどないので、初めての方でも楽しめると思います。

 

 

というわけで、良かった点など。

特殊な設定などに関しては一部ネタバレを含みますが、掴みの驚きが大事な作品だとも思っているので、未プレイの方はご注意を。

 

 

 

女の子と一対一のドキドキイベント

 

大半のプレイヤーはゲームを進めるととあるイベントを起こすことになると思います。そう、仲間になってくれた女の子たちと一対一で行う“あの”イベントです!

これで着目したいのが反応セリフの多さ! できる行動は四種類あるのですが、そのどれもに順を追って3つずつ、計12パターンの反応が楽しめます。これだけでも、その手の性癖持ちの私には垂涎もの!

 

主人公が何をしているのか、相手のセリフだけで察せられるところがまた良かったですね~! 想像力は膨らむも、肝心のところは「見せられないよ!」みたいな感じ。全部あけすけにされるよりもずっと興奮が大きかったです。

ただ免責事項として。これはネタバレに掠ってしまいますが、ピュアにえちえちな展開をお求めの方は即刻逃げた方がよいと思います。

 

 

 

リソース管理要素

 

さて、本作の一番の特徴とも言えそうなのがこの、リソース管理について。バトルをするたびにとある数値が減っていき、それを適宜補填しながら進むのが主な流れと鳴っています。

この補填の代償と内容がま~た、すんばらしいんですよね!!

リソースが減って窮地に陥れば陥るほど、補填することでさくっと主人公が強くなれるので、RPGとしても進みやすくなっています。私はギリギリまで突き進んで残り20辺りで帰還してまた突き進んで、を繰り返していましたが、もう少しざっくばらんと余裕を持って行動してもいけるかも。

 

なお、敵キャラはしっかりバフデバフや状態異常を使いこなさないと倒しきれません。特に終盤のボスなどは倒す順番を工夫する必要も出てきます。なので、数値的には普通だけどバトル難易度は高め。結果としてある程度ゲーム慣れしている人向けの印象は受けました。

といっても、いっぺんクリアさえしてしまえば強くてニューゲームがあるので、自信のない方もご安心です。

 

 

 

ゲームブックを感じさせるマップ探索

 

拠点→ダンジョン攻略→拠点を繰り返す形式の本作。このダンジョン探索もまた楽しかったです!

というのも、単純な宝箱や移動ギミックの他に、ぽんとイベントマークが置いてあるんですよ。アイテムが手に入る時もあれば、強敵と戦う時もあり。普通のRPGであれば遠慮なく突っ込むこともできますが、本作はリソース管理要素を挟むので、なかなか考えなしには進めません。この緊張感がすごく好きでした~!

中には、特定の仲間がいるとショートカット・いなければイベントの無駄撃ちという分岐もあり。どことなくゲームブックを感じられます。

あとさりげなくBGM選曲がすごく好き。クリア後にサウンドルームあって大喜びでした。

 

 

 

淡々としたマルチエンド

 

物語の本筋自体はものすごくあっさり味。エピローグが数文挟まれて終わるだけのものです。が! この、乾き切った語り口が個人的には痺れるな~とも感じます。

そもそもがこの主人公、無口なだけでなく、根本からして感情移入しづらいキャラクターです。だからこそあの簡素なエンドの文体によって、異物感が最後まで続いてくれてイイんですよね。これぞ添加物なしの良さなのかなー、なんて。個人的には好きな描写です。

 

一方で道中は仲間キャラやアドバイザーのセレナが喋ってくれるので、華はしっかりと感じられます。また、ストーリー進行に応じて拠点のモブキャラも会話内容が少しずつ変化していくので、テキスト量としては満足。ストーリーとセリフを別個で語りたいタイプの作品です。

エンド分岐の条件がテキストファイルで同梱されているのも助かりました!

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ダークな嗜好をお持ちの方には両手を挙げてオススメできる、愉しい作品でした!

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

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フリーゲーム「黄昏境界線」感想

「誰もが平和を求め、同時に繁栄を求めていた」

停滞は進化の妨げなりや?な前置き。

 

 

 

えー、今回はケニーさんところのフリーゲーム「黄昏境界線」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

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一本道、クリアまで数十時間におよぶRPG。バトルもテキストもキャラも気を抜かない、最後まで密度がしっかりの対策です。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

重厚で洒落た言い回しのストーリー

 

まず必見なのがここ! ストーリーのがっつりしたボリュームです!!

特にふりーむだと、バトルのバランス調整や難易度が前面に推されているように見えるのですが、いやいやこれがお話部分もものすごく魅力的なんですよ!! なので当ブログではまずここを推して参ります。

 

一言で言うと、ドラマ。

神と人、国家の闇と貴族の誇り、異能力者への不信と祭り上げられた英雄……などなど。様々なテーマを介しつつも、お話は「少年と少女が想いを通じ合うハッピーエンド」に集結します。この! 古き良きRPGなストーリー! これがものすごく好きでした~!!

細やかな描写やキャラの暗躍がしっかりと描かれているので、肝心の「絆」の部分がしっかりと説得力を持って、ズガンと響いてきてくれるんですよねえ。私はキャラに愛着を持ちがちなので、主人公・クリスに着目しながらストーリーを進めましたが、物語の全体像や伏線などに目を向けても楽しめる作品だと思います。

 

ハートに訴えかける場面と理知的に事を進める場面とがきっちり用意されているところも推したい。理想論でであっても、それを信じたいと思わせてくれるような展開が多かったです。要は、信頼できる!

 

世界観には専門用語を含めつつも、すんなりと頭に入っていくようなやり口だったのも好ポイントでした。いっそweb小説なりでがっつり読み返したい気持ちもあるんですが、この作品はRPGだからこそ成り立つお話だとも思うので、ぐぬぬ。ジレンマです。

 

 

 

シニカルだけど前向きな台詞の数々

 

主人公からして、貧民街出身の逃げるが取柄な小悪党。どことなく斜に構えた態度で物語は展開していきます。

でも、注目したいのは終始前向きなところ!

若干やれやれ系主人公な文脈も垣間見えつつ、やる時には奮起してしっかり眼前見据えながら逃げ回ってくれるのが、このクリス・クニクルスです。かっこいいー! パーティに明るい子がいたり生真面目な子がいたりもして、ダークに走りすぎないようバランスが取れてるのもポイントですねー。

 

洋画っぽい言い回しといえばいいのかなあ……。漢字たっぷり・比喩ドバドバな台詞が飛び交うので、そういうのを、アツイ!これぞロマン!!と感じられる方には是非プレイして欲しい気持ちです!

 

 

 

個性も魅せ場もしっかりあるキャラクター

 

メインキャラもサブキャラも、登場するキャラは本当に一人一人が生き生きと舞台上に立ってくれます。

何よりうれしいのが、それぞれにきちんと見せ場があるところ!

終盤になって味方キャラが一人ずつ自分の影と立ち向かう展開、オタクは皆好きでしょ。私は好きです。それぞれに焦点を当てた回があって、クリスとの会話や過去エピソードを通じてそのキャラの個性がどんどん深まっていくのが、プレイしていて楽しかったです。さりげなく顔グラの差分もかなりあって、どこまでも凝ってました!

 

バトルにおける同じ盾役でも例えば、クリスは避け盾・ガランドゥは受け盾といった差別化があります。ストーリーにおける女の子との関係性も戦友・相棒・右腕、などなど盛りだくさん。どの局面においても、誰かが誰かの上位互換にならないように、という意思を強く感じました。

 

ちなみに自分はガランドゥが一番好きです。理性を持って狂気の道をしっかと歩む姿、実に矜持を感じてかっこいい!! 

CP的な意味だとオートリ主従が好きです。おてんば姫と堅物従者めっちゃおいしいんだ~……。あんな、サブキャラ的な二人にも、きっちり内面を感じられる会話などが盛り込んであって嬉しかったです。

 

 

 

こだわり抜かれたバランスのバトル

 

さて、バトル要素ももちろんないがしろにする気はありません。

古き良きコマンドバトル、特殊な状態異常や属性攻撃なども取り揃えて、約数十時間のプレイを最後までじっくり頭を使いながら楽しめるようになっています。

 

面白いなーと思ったのは装備品について。なんだろう、「無条件にこの防具が最強です!」みたいなのがないんですよ。どの防具にも短所があって、だからこそ長所がめちゃくちゃ強力。属性耐性を全て揃えるパズル系の装備品もありますが、本作は何を捨て何を取るかで悩まされることが多かったように思います。

状態異常もそうですね。完全無効は一種類、複数耐性はパーセンテージで管理、という印象が強かったです。

 

これはキャラについてもそうと言えるのかな……? 意図されている性能はそんな気がしますが、個人的にはティグレとセフィーロが二強で万能だったように思います。でもこれもプレイスタイルによってまたガラッと変わるんだろうな~!

サポート重視と見えるキャラが意外と攻撃にも回れたり、逆に攻撃役がアイテムをさっと使って回復する必要のある場面があったりと、終始流動的なバトルが多かったです。

 

まとめると、常に動き回って休む暇のない、激しいバトルが盛沢山!

戦闘狂のあなたへ、文句なしにオススメです。

 

 

 

 

ハートフルがそこそこハードな難易度

 

さて、ここは魅力ながらためらいにもなる点として。

戦闘の難易度についてです。

 

まず本作は、ストーリー重視向けとして簡単難易度のハートフルモードも用意されてはいます。が、やっぱり「たたかう」連打派の方にはそれでもかなり厳しいと思います。頭を使ってのバトルは必要不可欠です。

ただこのバトルの難易度は作者様の強いこだわりかつ魅力でもあると思っているので……これを崩すのであればもうバトル全スキップになってしまいかねないんでしょうね……。やはりストーリーを私は推したいので、それもそれでアリの選択だとは思うのです。が、これだけ凝ってこだわり抜かれたバトルシステムの修正履歴を見ると軽率に言い出せそうにはありません。

 

ちなみに私は、一話~三話辺りまでアドバンス、四話~六話途中までカジュアル、以降特に各話の最終ボスについては常にハートフルで進みました。最終章よりもその手前がきつかったかな。

でもやはり、被ダメージからして難易度による違いはしっかりと感じましたし、配慮したうえでのこのバランスなんだろうとは強く感じました。

それに作り自体はすごく誠実で丁寧なんですよ! 

強いスキルを使う前には必ず予備動作が入りますし、初見殺しにはならないように戦闘中に会話イベントなども挟まれます。規定ターンごとに行動する敵が多いためか、バトル画面には常にTURN表示がされています。私はターン数え間違いをしょっちゅう起こすプレイヤーなので、ここが実にありがたかった……。

 

ストーリー重視の方にも是非プレイして欲しいゲームなのですが、RPG初心者にはさすがに厳しそう。でも、雑魚敵は無視して進めるつくりなので、そういう意味ではオススメしやすい作品と……言いたい!

何より詰将棋デフォ戦が苦手な私でもクリアできたので、いける! はず!!

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

あと細やかな点だと、セーブタイミングの挟み方やアナライズによる敵ステータスの確認など、プレイしやすさへの配慮も素晴らしかったです。

 

魂がぶつかり合う重厚で熱いストーリー、睨み合い思考を回す高難易度バトル、雑魚戦不要のRPGにピンとくる方へおススメです。

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

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