うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「かりそめドッペル」感想

「まだあなたはあなたを獲得していない」

産声は個の獲得の証明である前置き。

 

 

 

えー、今回はTeToriapot/てとりさんところのフリーゲーム「かりそめドッペル」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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恋愛だったりそうじゃなかったりする、とにかく様々な感情と価値観を叩き込まれるノベルゲーム。それぞれ5編が格納されていて、ルートに入ってからは一本道。全部読み終えて数時間。

 

この作者様の作品はどれも世界観を共通としていますが、中でも『ばつえいビルッテ』をプレイしておくと、話がより分かりやすくなる……とは思いつつも!

個人的にはシリーズの中でこの『かりそめドッペル』が最もオススメしたい作品ですし、世界観の説明なども作中でされることが多いので、本作から入るのもアリだと思います!

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

選べる5つの物語

 

共通ルートは最小限に数分、そこから5つの物語にガッツリと分岐します。どの話もボリュームたっぷり! そしてお話の雰囲気もそれぞれガラッと違っていて、1作品で5本味わえる満足感でした~!

一方で、作中の文化・宗教・歴史はどっしりと濃い一本筋が通っています。だからこそ、本作がばらばらにならず、まさに字義通り、世界観を感じさせる一作品になっているんだなあと感じました。

自分は左から順番に読んでいきましたが……。なるほどこれは「どれから読んでもいい」というより「どれから読むかオススメするのがすごく難しい」だなと感じました。ネタバレを避けれなかったので追記に格納しましたが、少なくともこう、アトランダムな短編連作とはまた違った味わいのように思います。

 

 

 

不定形の主人公

 

主人公というか視点主というか。メインキャラクターであるソーサーはドッペルゲンガー、それも、「相手の理想を写し取る」ドッペルゲンガーです。

もうこの設定の時点でとても好みでして!!! 

というのも私、刷り込みとかすり替えとか誰かを投射した依存とか、代替可能な関係とかレプリカとかそういう、アイデンティティがグラグラ揺さぶられる話大好きなんですよ~!

実際のところはソーサーがかなり利他的なので、アイデンティティに悩む展開は少なかったように思うのですが、そのぶん周りの人たちの思い悩みや問題点にガッツリ焦点が当たっていて、やっぱり楽しめました。

 

で、興味深いのはこのソーサーが普段は不定形であること。そのおかげで描写の文がものすごく面白いんですよ! 「今のソーサーは妖精らしいので視線が低い」とか「指だとソーサーが認識しているところは~」とかとか、それこそ自分がスライムみたいな不定形になってみないと書けないような面白い文章がぽんぽん出てくるんですよね! もうこれだけでもめちゃくちゃ、没入感のある文章でした。

斬新さだけでなく、それにともなう中身もしっかりある作品だと思います。

 

 

 

アクのあるキャラクター

 

純粋な“善人”はいません。というより、“善”の定義からまず深く考え込むことになるのが本作だと思います。

それぞれのキャラクターに色々と、いわゆるキャラ属性みたいなものが付与されてるんですが、この属性が絶妙に深いんですよ。物事の良い面だけじゃなくて、都合の悪いところとか、見ようによっては意地悪く取れるところとかを、きっちり突いてくる感じ。だからこそキャラクター像がどんどんはっきりして行って、かなりリアルに感じられます。

デザイン自体が多様なのも良いんですよね~。性別からして両性無性男性女性その他多種多様、種族もドワーフやら悪魔やらわんさかと、もちろん見た目も個性的。いや~、ここに世界が一つドンとご用意されてる感じがしてとても楽しかったです。

 

 

 

エログロ鬱も飛び出るよ!

 

お話の雰囲気がガラッと違う、と述べた通り、けっこうエグイ話も飛び出てきます。そして、そこが好きです。

いわゆるタブーとされがちな倫理観に切り込んでいくのが、本作の魅力だなあと思います。例えば性愛と恋愛は切り離せるものなのかとか、メンヘラって実は強かじゃないのかいやいや弱いから依存してるんだろ、とか。そこにたった一つの固定観念を叩きつけるのではなくて、多様な価値観があることを示したうえで、“このキャラクターは”この道を選びましたという結論を見せてくれます。ここに安心感がありましたね~!

単にぐちゃぐちゃにしたり心の闇を表現したりするだけなら、きっとすごく簡単なんですよ。でもそうじゃなくて、こう、作者様の価値観やデリケートな話題に対するスタンスに信頼のおける本作は、この簡単なことをものすごく丁寧に、誤解がないようにされてる印象があるんですよね。傷つけるだけではないというか、根本に他者への心地よい無関心と許容があるというか……。

なので、倫理的によろしくない話や、ウッと息を詰めそうになる生々しい感情の描写も、余計な杞憂をせず全力であるがままに読めたように思います。

作品を通じて信頼を感じさせてくれる作者様は良いなあ……。

 

 

 

 

 

このほかにも、各章のタイトルや、常に斜めで仕切られている画面デザイン、隅々まで快適なシステム面など語りたいところは多くありますが。肝心の各話の中身について、語っていたら一万字を突破しそうなので、いったん別記事に分けてしまおうと思います。

 

アングラな展開にも耐性があって、とにかく“世界”を堪能したり、色んな関係性と激重感情を観測したい方向けの最高ノベルでした。

 

 

ネタバレガッツリ感想記事はこっち↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

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フリーゲーム「植物モチーフ詰め合わせ4品」感想

「芽を出すにはまず植えなければ」

習作で収穫できるものもあるだろうな前置き。

 

 

 

えー、今回はKIJI-N-CHIさんところのフリーゲーム「植物モチーフ詰め合わせ4品」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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タイトル通り、ノベルが四つ読める短編集なノベルゲー。そのうちの一つは植物関係の奇病ということでさらに四つ分かれているので、実質7つの作品が楽しめます。

作品は相互に関連性もないので、好きなところから読み進められます。

 

 

というわけで、今回はもうさくっとネタバレ込みで、全話の感想など。

 

 

 

 

『草だよ。』

 

いや触手だコレー!

というわけで、双子の男子学生がちょっとえっちな実験にいそしむ話です。セリフはえちえちになってもわりと態度や進行は粛々としているのが好き。

全部は見ていませんが分岐はかなり多数。見終わった後の選択肢すぐ次の組み合わせを愉しめるのもプレイしやすい配慮を感じました。

 

 

 

『KOTONOHA』

 

文字通り、文字。会話する間ずっと形作られていく葉が綺麗で、なんだろうな、タイムラプス?を見ている感覚でした。これがやりたくて書いた話って感じだなー、なんて。

 

 

 

『herbARiumer』

 

これだけ独立して一作品出ないかな~~~!

と思ってしまうくらいには、世界観もしっかりと独立してオチも綺麗な作品でした。現代社会の風景にふわりと重なり合う植物たちが、ほんっとうに美しいんですよ……。

立ち絵や線画は素材とのことでしたが、その重ね具合、加工技術は随一。ずっとなり続けるBGMも、かなり激しめであるはずなんですが、どのシーンにも合ってるんですよねえ。不思議だ……。

地の文とシステムを使った会話が別々の表示なのもポイント。なんか、画面全体を使った一つの世界を感じられたなあと思います……!

ストーリー面も感無量。退廃も再生も両方味わえるのが気持ち良かったです。創作をしている方には読んでみて欲しい話だなあ。

 

 

 

『植物症』

 

植物にまつわる奇病と生きる女性たちの話、ということで、順番に。

 

 

『四肢幹化症』

大切にされたくない、過保護にされるからこそ逃げ出したい、でも破壊したり嫌ったりしたいわけじゃないし、感謝だってある。この葛藤! うわ~~~~ってなりました。

こういう感情すごく、刺さっちゃうんですよね。他者の愛を受け取り損ねるし与え損ねるみたいな、なんか、思いやりという綺麗なものがどんどんねじ曲がっちゃう感じの。

私がそっちのマイナスイメージに強く引きずられてしまったせいで、爽やかと思うべきであろうオチにあまり注視できなかったのが惜しまれました。フラットに読みたかったなーこれ。

 

 

『花弁嘔吐症』

創作界隈で知られる花吐病ではなくて、ガチで単に嘔吐物が花になるだけの病です。爽やかに毒と皮肉をまき散らしながら夜を駆け抜けた話、という印象。

なにか、こう、こじつけようと思えばアンチテーゼ的なものが読み取れそうな気はするのですが。これはそうじゃなくて単に、世間の一意見を小馬鹿にしながら弾ける男女は見てて気持ち良いよね~で終わりたい気持ちが大きいです。

 

 

『蔓草頭痛症』

……?となってしまった話。一人を知ってから改めて二人になることで絆が……的な……合わないのになお二人でいることが愛みたいな……あれかな……。もう少し、頭痛について深く考えながら読んでたらちゃんと感想が出せたのかも。

 

 

『胸部萌芽症」

胸元の芽がネックレスに引っかかる、という、繰り返し描写されるこの仕草がすごく好きでした。頭痛症もそうでしたが、ネックレスにまつわる描写がなんか繊細で好きです。あっちで述べてあったことを繋げてしまうと、この萌芽症の女性はこれからずっとネックレスをひっかけながら過ごすわけで、つまり彼と易々別れることはなく、お互いの命を感じながらゆるゆると続いていくのかな……等々。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

やっぱ『herbARiumer』だな~!! あの世界観がすごく刺さったので、あれを読めただけでも本作をプレイしてよかったです。

 

 

 

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フリーゲーム「けいこくブラッド」感想

「本当の勝者とは戦いの舞台にすら立たないもの」

先んじてWINのピリオドを打っておく前置き。

 

 

 

えー、今回はTeToriapotさんところのフリーゲーム「けいこくブラッド」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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ティラノ製ノベル、短編、分岐有。とある没落貴族の姉妹たちとその彼氏たちを巡る、サイコパスお家騒動。

 

キャラ属性など軽くネタバレしておりますが、次々と狂った展開が頭蓋にぶち込まれる展開がとても面白いノベルなので、気になる方はプレイしてから是非どうぞ!

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

一途でヤバイ最高男がいます

 

セイジュウロウが好きです!!!!!!!

ゲーム性や内容から入ったほうがいいのを理解したうえでまずこの好きキャラについて語ってもよろしいですか? ありがとうございます。

このセイジュウロウという男なんですが、すごく理路整然としているうえに明らかヤバイ女から脅されても人当たりよく返してみせれるだけの社交性や自分の力を過少なく理解した余裕が見られる男なんですよ。しかも大好きな恋人が最優先で彼女のためなら快適な環境を整えることもいとわない好青年と来た! いや~~もう最高ですね、私こういう、一見まともで話も通じるのにどっか致命的なところがズレた、社会的人間に擬態したキャラが大好きなんです! あくまで自然な行いのように異常を淡々と述べてくれるヤバさも素敵でした。

色々ぼかしつつ書きましたがとりあえずこのように好きな女に一途なヤバイ男がいます。最高!!!

 

 

 

恋人、アベック、カップル、ペア

 

さて、というわけでようやっと本編へ。

キャラ数は多いですが、人物紹介や用語解説がきっちりしているので、事前にそちらを読んでおけば物語の理解も容易です。構成も群像劇めいてはいるものの、パートごとに分けて視点主も切り替わる方式なので、普段群像劇読むの苦手な私もすんなり読むことができました。

 

結論言ってしまうと、ヤバイ奴にはヤバイ奴が付いて回る。

類は友(恋人?)(家族??)を呼ぶ、ですね! 

それでもあくまでストーリーは淡々と、舞台回しのように進められる温度感も素晴らしかったです。ぶっ飛んだキャラと、コンパクトに収まりよくまとまるストーリー、このバランスがとても好きでした!

 

 

 

事件性を帯びたモノクロピクトグラム

 

画面構成はモノクロですが、濃淡やキャラデザの個性がしっかりしているので、不思議と華やかに見えます。次女アベックちゃん方なんて、色がついていなくても自然と色が付いて見えるような気がしちゃいますもんね。

ピクトグラムで表されるエンド画像も大好きです! デフォルメされているからこそ滲み出るヤバさ……好き……。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。サイコパスメンヘラヤンデレバチギレヤンキー異常者大集合みたいな作品が好きな方に強くオススメ! お祭り騒ぎではなく、あくまでギュッと本編がサスペンス的に締めているからこその感じる一作でした。

 

 

 

余談。

なんと、彼氏達と彼女達の出会いが描かれた番外編的な小説も用意されています! 

www.pixiv.net

シホさんとの出会いが想像以上にヤバイのと、あくまで舞台装置的な立場だった四女?ペアのヤバさが改めて知れました。大満足。プレイ後は是非あわせてどうぞ。

 

 

 

 

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フリーゲーム「ナントカ三術将」感想

「名前は覚えずともよいが、存在は覚えようとせずとも焼き付くだろう」

圧倒的個性をドカーンでバキーンだ!な前置き。

 

 

 

えー、今回はPixel_Noteさんところのフリーゲームナントカ三術将」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

キャラを召喚させつつストーリーを読む……うーん、ADV?シミュレーション? なんか面白いゲー!

ふりーむからだとDL版のみですが、上記のサイトからいくとブラウザ版もあるのでスマホの方も是非。

 

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というわけで、良かった点など。

 

 

 

速攻で納得のタイトル回収

 

まず述べたいのがこのタイトル!

響きが良くて覚えやすく、「三術将」のいかめしさ「ナントカ」のふんわり感が絶妙。私なんかはこのタイトルを見て、なんだこれ?と興味を惹かれたプレイヤーなわけですが……同じような方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

そして作中でのタイトル回収のタイミングがまーた気持ち良いんだこれが!

ゆる~い雰囲気とシリアスでカッコイイ雰囲気が混じり合うストーリーにも、ぴったり合っている最高タイトルでした。

 

 

 

かわいく興味深いエレメントたち

 

召喚→ストーリー→召喚を繰り返していくのが本作の流れ。召喚はキーとなる石を選んでワンタップ、実質ガチャ。

これ上手いなーと思ったのが、登場するエレメントのみでなくその数もランダムなところです。単純に1エレメントだけ登場するのなら「外れ」「当たり」だけになってしまうんですが、数が増えることで、「今回はたくさん来てくれたなあ」とか「いっつもこの子はこの子と一緒だなあ」みたいな感想が生まれてくれるんですよ。機械的な作業じゃなくて、しっかりと楽しみに繋がる良い仕様でした。

 

さらには、召喚できるエレメントも多種多様。このデザインがまたどれも可愛いこと可愛いこと! 最高位のエレメントもどことなく愛嬌があって、ゆるかわ?ゆめかわ?な感じに和みました。

 

 

 

繰り返しも楽しくなる着せ替え要素

 

目を見張るのはオプションの多彩さ。

セーブデータのアイコンを選べれるゲームってめちゃくちゃ良くないですか!?!? 今はメアト回っぽいからメアトにしとこ~、とか、シリアスだからイグニスにしておこう……とか、気分で変えられるのがすごく楽しかったです……。あと私はストーリー見返すためにセーブデータ分けるタイプのプレイヤーなので、お話の転換点が一目でわかるのも本当に助かりました……!

メニューのデザインも、色変えのみでなくモチーフ変更まである丁寧さ。いやもう感服です。

デザイン性のみでなく、召喚の演出スキップなど、利便性として嬉しい要素もしっかり搭載してくれているのがありがたかったです。

 

加えて、BGMの豊富さにも注目したいところ。これはストーリー進行によって切り替わる仕様なのですが、このBGMのチョイスがどれも熱いこと熱いこと! 特に終盤は、画面は同じでゆる~い雰囲気でも、BGMが代わるだけでどことなくその緊迫感を感じるような効果を感じました。

デザインもBGMも変わることが、あのなんとも夢中になるプレイ感につながるんでしょうねえ。

 

 

 

戦闘はないけどガッツリRPG世界!

 

戦闘こそありませんが、本編内の描写だけでも熱いバトルや変化球の状態異常など、色々なRPGらしい世界観を感じました。

そもそものOPからして、三術将の登場の仕方がそれぞれ違ってて大好きなんですよね~。どういう能力持ちなのかを知るとなおさら、「だからこれなのか!」という興奮があって楽しかったです。

突然能力やアイテムを出してくるのではなくて、日常パートで先出しすることでプレイヤーに印象づけておいたり、エレメントと関連付けしてあったりするところがとても良い! 読みやすいし、作品世界への没入感も高まりました。

 

エレメントを集めると読める図鑑に対してのコメントも、彼らの生活や、この世界での日常がほんのりと伝わってきて楽しかったです! 図鑑が読みたくてエレメントコンプしたまであります。異世界の日常、みたいなものを見たい方は垂涎ものかも。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

あちこち凝ってて、引き締めるところは引き締めて、でも基本はゆるくて明るくていっぱい楽しい! そんな感じの一作でした。

 

 

追記ではネタバレ感想

 

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フリーゲーム「深雪に咲く」感想

新雪に足跡をつける楽しさは、汚す罪悪感に勝るものか?」

もとより罪悪感がない子どものままでいたかったな前置き。

 

 

 

えー、今回はThunderSonia さんところのフリーゲーム深雪に咲く」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

ルート分岐有、公式サイトに完全攻略ありの乙女向けノベル。異種族恋愛もの。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

人間と妖怪と妖怪の話

 

 

攻略対象は二人。片や時折言動の不穏な妖怪、片や敵対心剥き出しの人間。主人公が人懐こく他者を疑わないからこそ、攻略対象側の方にうかつに近寄れない要因が用意されていたように思います。六花の本心は? 千景の警戒は? などなど、先を読みたくなる関係性を見せて頂けました。

千景はツンツンした態度の裏に痛々しさがあり、そのうえで見せてくれる包容力や男らしさにグッときましたし。

六花は飄々とした態度の裏に、どこか危うげな、傍にいたいと思わせるところがあって、これまた魅力的でしたね~。

 

ヒロイン兼主人公は、人間に嫌われた雪女。彼女の性格付けも大好きです! 人間と妖怪、あるいは同じ妖怪でも違う種族という設定を上手く活用することで、自然と無知シチュを生み出しているという。思わず拍手喝采

中でも、照れても言うべきことはちゃんと言う、ここが何より彼女の推しポイントです! そう、恥ずかしがって黙り込む性格だったら多分この話はどっちのルートも破滅一直線だったはず! 

内気な愛されヒロインですが、前に出る時はきちんと出てきて、身を呈すところもあるのが好きでした。

 

 

 

どちらも一歩踏み越えると危うい攻略対象

 

さて本作はR15作品。成人向けに踏み越えないからこその絶妙なギリギリ・ドキドキを味わえたように思います! 攻略対象が双方、それぞれの理由で「堕ちる」感じを見せてくれたところがすごくツボでした。きちんとバックボーンがあって、病む過程に納得があるところも好ましかったですね~。

特にバッドエンドの後日談は、蠱惑的という表現がしっくりくる展開でした。直接的な描写はないのに、ものすごく雰囲気が濃密で、色っぽいんですよね……。理性がグラっと来る描写の仕方がとても上手だなあと思います。

ハッピーエンドはしっかり明るい円満エンドですが、ヤンデレ好きの自分からするとつい深読みして、「これからもひと悶着ありそうだな……」とニヤニヤできるシーンもありました。ふへへ。とはいえ、あっちのルートの椿ならなんとかできちゃうんだろうなあと思うので、ハピエン主義の方もご安心くださいね!

 

 

 

 

分岐先でも聞けるパートボイス

 

攻略対象はボイス有り。さすがにフルではありませんが、重要なパートにもおまけにも声が収録されていて、ボリュームはしっかりあります。

ありがたいな~と思ったのが、共通パートだけでなく選択肢の細かい分岐にも声が入っていること! 私の勘違いでなければ、好感度に影響しない選択肢にも声が収録されていた、はず……?

乙女ゲーって、まあ言ってしまえば全正解の攻略見てささっと回収するタイプの方もいると思うんですよね。そんな中で、聞き逃されてしまう可能性の高い場所にもきちんと声を当ててくださっているところに丁寧さを感じました。

 

なお、どちらの声も(実際の性別は存じ上げませんが)女性声優によるショタボイスに近い印象です。私的な好みを言えば、一部ねっとりしすぎてたり無理してたり感はありましたが……もちろん刺さる人は刺さる声質だとも思います。何より、最後まで聞けるクオリティは確保してくださっていて助かりました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

登場人物全員が孤独感を抱えているのも、人肌恋しい冬や雪のイメージとぴったりなんですよね……。病みエンドもハッピーエンドも、お互いに暖め合いたいという気持ちに変わりはないように思うので、そういう雰囲気が好きな方にオススメです。

 

 

 

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フリーゲーム「Phan Somunia」感想

「未完成は悪じゃない、可能性の塊だ!」

あなたの世界はいずれ誰かとの世界になる前置き。

 

 

 

えー、今回はおにぎりと四葉のクローバーさんところのフリーゲームPhan Somunia」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

プレイは数時間、ただしやり込んだり詰まったりしたらもっともっと時間のかかる、ボスラッシュゲーです。選択肢はありますが、おそらくは一本道? のはず。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

仲間を召喚して世界を救え!

 

本作はガチャゲーです!

……と、言うと絶対語弊があるので補足すると、ゲーム内のアイテムでガチャを引いてキャラクターを集め、そのキャラでパーティを組んでボスを倒していくゲームになります。

 

まず着目したいのが、このキャラクターの出典について。なんと登場するのは、「他世界の創作キャラ」達です。同作者様の他フリーゲーム作品のキャラはもちろんのこと、別作者様のフリーゲーム、さらにゲームの垣根を超えて創作漫画のキャラクターまで。とにかく色んなオリキャラたちがここぞとばかりに飛び出してきます。

 

といっても、作中で特段セリフがあるわけではなく、個性として用意されているのは外見とスキル名くらいです。なので、他登場作の履修は不要! 中にはそもそも元となる作品がない子もいるので、前提知識はいりません。そのぶんお手軽に触れる、はず。

「このキャラ知ってる!使いたい!」の流れもあれば、「このキャラかわいい~!使いたい!原作はどんなだろう?」の流れもあり、あちこちへ派生していく楽しみが感じられるゲームでした。

 

 

 

自動進行のオートバトル

 

斬新さはキャラのみに留まらず、バトルにも及びます。

なんと本作、全ての戦闘は自動的に進行。RPGにおけるコマンド入力などはなく、事前にセットしておいたAIに応じてキャラクターが勝手に戦闘をしていくシステムです。

このAIの調整がたーのしいんだこれが!

 

私はAIを組むゲームって一つ二つしかプレイしたこと無かったので、困惑することもありましたが、やっぱり楽しかったです。「思い通りにいかない→弄ってみる→微調整する→動いたー!」この流れ自体がおそらくは、ゲーム制作の楽しみにも通じてるんじゃないかなあ。ひいては、本作の舞台の根幹にも。

AIに〇%の確率で行動というランダム行動が入っているところも面白いんですよね! クリティカルなどもそうですが、ガッチガチの詰将棋じゃなくてあくまで色んな戦法があるという幅で留められているところも、遊びやすくて良かったです。

 

と、AI調整の楽しさを熱く語ってしまいましたが、デフォルトでスキルが組まれているので、一応はキャラを入れ替えるだけでも進められるはず?

ちなみに、自分のオリキャラを作中に取り込んで、カスタムAIで味方キャラとして活躍させることも可能です。私は創作をしないタイプなのでやりませんでしたが、それこそ「うちの子」を使いたい方には朗報ではないかなー、なんて。

 

 

 

腕の鳴る強敵たち

 

雑魚戦やレベル上げの概念はなく、ひたすらボスを倒していくだけのシンプルシステム。だからこそ、熱くガチのバトルが楽しめます!

状態異常、物理連撃、HP半分削れたら発狂、などなど敵の行動パターンも多種多様。ボスをあっさり1ターンで倒せたはずのパーティが、別ボスだと全く通じないことも多くて、頭を使う楽しさを味わえました。

あれこれ組み直す必要があるのも、ガチャで色んなキャラが手に入る多様性と噛み合ってて好きです。

 

そのぶん、システムを読み流しちゃうとちょっと辛いかも。かくいう私も、セット変更でアイテムの変更もできることや、アイテムは毎戦闘で補充されることをまったく気づいていなかったので、道中かーなーり苦労しました。さすがにヴァンはアイテム抜きだと倒せなかったな……。

逆に言えば、こちらができることは全てやりきって死闘を繰り広げる熱いバトルが楽しめます!

 

 

 

あなたの選択に合わせた温度感

 

さて、本作の主人公であるプロトですが、実は私達プレイヤーの選択肢によってだいぶ態度が変わります。

私はこれを知らなくて初回は普通にプレイしていたのですが、後でネタ選択肢を選んだところ「ええ!?」となりました。ははは。プレイヤーへの呼び方自体が変わってしまうところも面白くて好きです。

他にも、ラスボスを倒す・一体だけボスを残したうえで倒す、等々ちょっとした分岐もあります。エンド数や分岐については全然必読に書いてなかったので、危うく見逃すところだったんですが……。まあそもそもがオートセーブですし、分岐を全回収するよりプレイヤーに合ったエンドに辿り着いて欲しいって感じなのかな。

おそらくはシステム外で一度セーブデータを消さないと、周回プレイはできない、はず……? 気になる人は見て見るのも一興かと。

 

 

 

 

夢と可能性が現実を貫くストーリー

 

システムに注目したくなってしまうところですが、ストーリーもなかなか、心の柔らかいところに刺さります。中でも、ラスボス前の会話がすごく好きでした!

誰でもあると思うんですよね、何か作ろうとしてすぐやめてしまったり、一次創作をやりかけて手前でどうしたらいいのかわからなってしまったり。そういう創作者あるあるの挫折と、しっかり向き合ったうえで、ハッピーエンドを見せてくれます。

優等生的と言えるかもしれませんが……それでも希望を手に取リたい!という熱い感情は伝わりました。ハッピーエンドと呼ぶ以上に、“祈り”を感じるストーリーラインです。

 

トゥルー……と言って良いのかな、一番長くプレイできるエンディングが初見で見れたエンドです。そして、クリア後コンテンツを超えた向こうにまた希望が待ってくれているところも、なんだか元気をもらえて好きです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

追記ではキャラの使用感など。

 

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フリーゲーム「UnderGarden chronicle」感想

「私にはまだ私がないから、私を知るあなたを導きたい」

そしていつか掌の間で私を作っていきたい前置き。

 

 

 

えー、今回はYellowline(さふらん)さんところのフリーゲームUnderGarden chronicle 」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ラスト直前にエンド分岐ありの、基本は一本道なRPG。ほんのり百合含む。大筋だけだと1時間弱、おまけ要素やクリア後イベントなどを含めると3時間くらいかかりました。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

外を目指す彼女たちの話

 

たった一人で目覚めた少女、アシュレイ。進むうちに色んな女の子たちと出会いながら、外を目指していく……というのがざっくりとしたあらすじ。

この「外を見たい」の動機付けがいい! というのも、まず何より「エリオットに見せてあげたいから」が先立つんですよ。アシュレイは記憶がないと諸々の展開上、アシュレイ自身が強く外を求めるっていうのはまた少し違う気がするので、そうでなくて、エリオットが理由になっているところがすごくしっくり来て好きでした!

 

初めて出会った子という愛着もありますし、そこから流れるように百合へ展開できる点も絶妙。そこからさらに、途中の闇堕ちや覚醒イベントにもつながっていく、実に導線の綺麗なストーリーラインでした。

 

他にも、ヴァディスのマスターに対する強い情念や、イゾルデがラストで叩きつけてくる想いなど、あちこちに「想い」を強く感じられる作品だったように思います。

ノローグ自体は淡々としているので、ドラマティックというよりは静かに燃える炎といった感じかな?

 

 

 

 

コンセプトがしっかりしたマップ

 

どの階層も統一感があって、決まったコンセプトを感じられます。下水道から始まり、岩窟を越えて草原へ、屋内を経てさらには……といった具合。上に行けば行くほど変貌していくマップに、次はどのテーマかとわくわくしました。

 

そして注目したいのが、テーマはマップの外観だけでなくギミックにも及ぶところ! 謎解きの手法が階層によってがらりと変わります。特に淑女のマップが楽しかったな~!

『箱』という異空間だからこそできる表現でもありますよね。

 

各マップ名がどれもすごくカッコイイ!! ここも推しポイントです!

セーブする時にマップ名が表示されるので、それでより印象に残るというのもありますね。しかもフロアごとにマップ名が違うので、そういう細やかなテキスト差分が好きな私、大歓喜でした。

 

 

 

使えるスキルも変わる装備品:換装

 

グラフィック面で言うと、戦闘中の味方キャラのグラフィック! こちらも、等身高め?なミニキャラで可愛かったです。普段のメニュー画面ではきりりとした立ち絵が見れるので、ギャップがまた良き。

しかも物語を進めていくと、「換装」とつくアイテムが手に入ります。これはなんと戦闘中のグラフィックまで変わってくれるという、着せ替え要素有りな装備品! もちろん、使えるスキルが増えたりパラメータがぐんと上がったり、ステータスとしてもしっかり良点があります。

1周目では一種類くらいですが、やり込み要素をクリアしていくとかなり色んな立ち絵とスキルが見られました! どの衣装もすごくかわいいし、意外性のあるお洋服もあって、雑魚戦やレベリングも楽しかったです。

 

 

 

ここが本番ハードモード

 

前述の通り、本作のエンドは3種類。一応最終戦前の選択肢をロードすればすぐに回収できはしますが、個人的には2周目のプレイを推奨します。

というのも、クリア後に開放されるハードモード限定イベントのボリュームがめちゃくちゃたっぷりあるからです!!

私は周回要素があると聞いていたので、道中にあるやり込みダンジョンも2周目のためにとっていたのですが、レベリングや難易度的にもこのやり方で進めてよかったな~としみじみしています。そんなわけで、未プレイの方はおまけダンジョンも後回しにしちゃっていいんじゃないかと。

 

ハードモードは、最序盤だけかなりきついかな……。でもそこで死をかいくぐり回復しながら壁を乗り越えられさえすれば、あとはとんとん拍子に進められるかと思います。仲間が増える=楽になる、ですしね!

 

ちなみに、クリア後は「全て引き継ぎ」できる簡単2周目モードと、「引継ぎは図鑑のみ&EXP倍&敵強化」のハードモードと、まるっと一からやり直す通常モードがあります。特に簡単2周目ことリターンモードは、分岐でセーブし忘れたり、魔物図鑑をどうしても埋めたかったりする方にも優しい仕様です。これがあるの嬉しいですよね~!

 

 

 

がっつりやり込み裏ダンジョン!

 

さて、一周目でも突入はできる裏ダンジョンについて。

こちらもかーなーり腕の鳴る難易度でした~! 特にメインストーリーの方は比較的進めやすい難易度だったので、ガラッと雰囲気が変わって驚かされましたねえ。「ここの敵は強いぞ!」と警告メッセージが出てくるあたり、納得の“ガチ”です。

 

一方で、中に仕込んであるイベントはどれもお祭り騒ぎで楽しいものばかり。キャラ崩壊と取るか意外な一面と取るかはプレイヤー次第ということで……。

とにかくひたすらに強きを求め、ボスラッシュにうきうきと胸が躍るプレイヤーの方には是非チャレンジして欲しい所存です。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

RPGとしても百合としてもストーリーとしても、どこか納得感のある一作でした。

 

追記ではネタバレ感想や攻略など。ちょっと長め。

 

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