「第一印象は見た目が9割」
話す前からエスパーにはなれない前置き。
えー、今回は、Four Leaf Studiosさんところのフリーゲーム「かたわ少女」の感想をつらつら書きますね。
数年ほど前から日本語翻訳チームが結成されていたのですが、このたび、ようやく日本語版が完成しました!やったー!というわけで満を持してプレイしました。
概要としては、男性向けのR-18シーンありなギャルゲー。設定でエロ要素をカットできるのでとりあえずギャルゲーということで。
何よりの特徴が、攻略対象が全員特別学級の子……要は障害者であるという点です。
なお、タイトルに「かたわ」という用語が入っていますが、もちろん差別的な意図はありません。自分もその意に賛同を示したく、障害という表記をさせて頂きます。あしからず。
まあ、リアルと混同する人はそういないと思いますが……こればかりは敏感な話題ですし、詳しいスタンスなど気になる方は公式サイトをご覧ください。
不謹慎だと言われて開発中止になるんじゃ、とハラハラ見守っていたのですが、なんてことはなくこうして完成してくれてほっと一安心。
前置き長くなったー!
というわけでさっそく魅力的な点をば。
キャラクターの未来に焦点を当てるストーリー
障害とくると、お説教とか差別がどうとかいやいや逆差別だとか、どうにも本筋が障害ばかりにいってしまいがちなイメージがあったのですが。
こういった面を強調しすぎず、あくまで主役は攻略対象と主人公、そのキャラクターに注目しているのがすごく良かったです! 全体的に、障害をどう乗り越えるかより、むしろ彼らの未来はどうなるのかに主眼が置いてあったような印象を受けました。
産まれた時から…な子もいるわけで、それこそ高校生ならもうハンデがどうのな話題は今さらな感じになるのかも。もちろん、トラウマと向き合ってどうこうするルートもあるんですけどね。
お話としても、恋心の揺れ動きとかラブコメとかよりは、二人の将来・これからについて話す展開の方が多かったように思いました。
豊富なグラフィック
とにかく立ち絵の種類が豊富です。立ち絵の無いキャラなんていないんじゃないかってくらい、ぽっと出のサブキャラにもばっちり立ち絵がついてます。スチルはいわずもがな。
章ごとに出てくるカットインが、その章の内容を想起させるものが多くて素敵でした。華子の目隠しのが好きだなあ。だんだん溜まっていくのもやりがいがあって良かったです。
何よりびっくりしたのはムービー。それぞれのルートのオープニングみたいで、キャラによってかなり印象の違う映像になっていました。
トゥルーのエンドロールで流れてた映像は、キャラの初期案とか構想案なのかな? できればあれもまとめてみたかった!でもトゥルーのご褒美と考えれば嬉しかったです。
あらゆる面に行きとどいたシステム
スキップなどの基本システムはもちろんのこと、データ削除や流れているBGM名の表示、18禁シーンのオンオフ切り替えなど、かなり色々な面で行きとどいている一作でした。中でも、シナリオの全てを細かく回想できるのはとてもありがたかったですねぇ。
バックログだけはちょっと見づらかったかなあ。
でも、スクロールでログを見た時に立ち絵も再現されるのは素晴らしかったです。すげー!
とまあ、こんな感じで。
追記ではがっっっつりネタバレ込みの各ルート感想です。
既プレイの方は下記よりどうぞ。
ネタバレ注意
【主人公について】
イケメンリア充。アーガイル似合う主人公ってなかなかいませんよね、流石です。
やれやれ系かと思いきや、感情的にヒロインに当たる時もあり、逆にびっくりするほど冷たい時もあり、ルートや分岐によってかなり違いが出る主人公だなーと感じました。
私は共感できないことの方が多かったかなあ。でもそれが悪い点だったってわけじゃなくて、むしろテンプレ的な動きがないぶん新鮮でした。
【静音ルート】
可愛い子達に振り回されつつ案外楽しくやるルート。
生徒会の二人にはけっこう否定的な選択をしていったつもりだったんですが、まさかのルート入りで驚いた覚えがあります。
まあぶっちゃけると、サボリの常習や理不尽に近い強引さなどがどうも苦手で、自分には合わないところがあったのは確かです。この辺りの距離感の緩さを許せるかは本当人それぞれですよねぇ。
ただ、主人公は結果的に彼女達の強引さに救われた、といった形で物語を締めてくれたのでそう違和感はありませんでした。
[]の表記が初めて出て来た時は感動しました。やっとわかる!みたいな。さりげなく嬉しいです。
初めに見たのは静音と別れる方のバッドエンドでした。いや、だってあのミーシャにあんなされたら、ねぇ? 体型的にミーシャが好みストライクなのと、この主人公なら多少はインモラルなこともやりそうだなあっていうのとで、つい選んでしまいました。はっは。罪悪感。はっはっは。
静音との18禁なシーンはそういえばこれエロゲだったって思い出させられるくらいこう、衝動的でした。勢い任せなのもまたそれらしい。じゃれあってる感じが伝わってきて微笑ましかったです。
で、まあ一通り読み終わって。静音はなんというか、戦車みたいな子でした。静音の性格上か、このルートは色々な人と衝突する場面が多かったイメージがあります。彼女自身、そういう性質を冷静に捉えているところが好印象です。
むー^って拗ねてる顔の立ち絵が可愛い。
自分の側に引き込んでおいて放りだすってのはちょっと身につまされるところもあり。終盤、ちょっと訳が固くて意図を飲み込みづらかったのが残念です。私の理解力も含めて……。
【笑美ルート】
お互いがお互いを高め合う、まさにパートナー的な存在になれるルート。
初めは可愛い後輩ちゃんなイメージだったんですが、想像以上に頑固で強烈な子でした。
言葉と心裏腹の典型的なタイプ。彼女の言葉を文字通りに受け取ってしまうとどんどん距離が離れていきます。しかしながらそれも笑美が葛藤しながらも“覚悟”しようとしている証なわけですよね、まったく強い子ですよもう。
残念ながら私は鈍感だからこういうタイプのことは上手く付き合えないだろうなあ。
ピュア元気っ子かと思いきや、かなり意地悪な顔つきの立ち絵もあってちょっとビビりましたw
なお、選択肢次第で、笑美をひたすら追いかけ続けるルートか絡め手で落とすルートに分岐します。でもエンディングは共通。私は追いかけルートでクリアした後、絡め手ルートを回収しました。追いかけルートの方が笑美にもどかしさをより感じるんですが、そのぶんベストエンド行った時の展開は少女マンガのように熱くロマンティックでした。一方絡め手ルートは、主人公が空気を読んで行動してくれるので胃痛にならずに済むかと。
なお、分岐のキーはおそらく「幻視痛」のとこの選択肢です。
案の定、初めに見たのはバッドエンドでした。寂しいお別れ。心配が上手く伝わらずにお節介になっちゃったルートですね。もどかしさにやきもきしました。
一方ハッピーエンドでは、かなりバッドエンドすれすれの展開をしつつも、少し心持が違うだけで見事にハッピーへ変わってくれました。こっちでは根本の部分で笑美を想いやろうとする気持ちがあったからなんでしょうね。笑美は常に追いかけないとすぐ逃げちゃうと再認識できました。これなら二人の今後も安心できそうです。
てっきり笑美の足に関してひと悶着あると思っていたのですが、足より事故と父が地雷ワードのようで。18禁シーンで何か言及があるかとも思っていたのですが、身体を支える云々はあっても普通にいちゃいちゃしてました。
いわゆる障害な部分について、過剰に描写せず適度に収めているのも、それ含めて彼女達が“普通”の女の子として見える所以なのかなーなんて。
実はナースくんが元彼だったの、と言われるのをハラハラしながら待っていたのですが、そんなことはなかったです。はっはっは。
【琳ルート】
よくわからないを重ね合いながらわからないなりに落ち着くルート。
琳は一貫して初対面の時のイメージのままの子でした。自由でマイペースでコミュニケーションには不器用そうな感じ。
act3辺りからの、言葉で何かを表現するもどかしさについての話が凄く心に染みました。こうやって感想文書く度に考えがちなことだったりするのでなおさらです。でも、誰も誰かを理解できないってことはむしろ琳自身が一番気付いていることだと思っていたので、それが寂しいと泣く琳に驚かされると共にこっちも寂しくなりました。
なんやかんやこうやって勝手に書いてるけど、結局こういう私が自分勝手に満足してる解釈こそが琳の怒ることなのかもなー、なんて。
彼女のルートで初めて、一発ハッピーエンドに辿りつきました。やったよ琳ちゃん! 選択肢を選ぶ時にはすごく気を遣いましたねぇ。あんまり媚びず求めずで選択をしていった気がします。ハッピーエンドでは、最後まで恋人になるとか付き合うとか好きとかの表現をせずに、ああいう風に終わったのがすごく琳らしくて好きです。
さすが芸術もテーマにしているだけあって、スチルやムービーに印象的なものが多かったです。特にルート入った時のムービーには、とにかく見惚れてしまって、一通りプレイが終わってからまた見に行くくらいでした。スチルは、夜の煙草のあれが好きです。
あと個人的な嗜好の話になって恐縮ですがR-18な展開が慰めシーンから始まったのもツボでした。いいよね御慰めシチュエーション。琳の悲愴さに胸が痛みつつだったので、脳内ぴんくとまではいきませんでしたが、ああいうもの悲しい行為はとても好みです。
余談ですが着替えシーンで下着が上下不揃いだったのすごく彼女らしくてよいです。
結局のところ、琳は自分が型に嵌まるのも誰かを嵌めるのも嫌で、何かを定義づけたり表現したりするのはすごく難しいって考え方が根本にあるように感じました。だから久夫が型を求めようとするとひらひら逃げちゃう。説明しろ、とか、嬉しいだろって琳を決めつけたりとかの選択肢でバッドに行くのはそのせいなんじゃないかなー。
琳はありのままでいたいのに、誰もが琳に期待とか恋とか友情とかの決まった型を押し付けてくるから、彼女曰く「上手くいかない」「私はできない」になるのかもしれないと。
これ、書いてるとすごく虚しいですね。こういう風に解釈することだって、琳は嫌うと思うので。
何にせよ、かなり想いをいれたくなる子でした。
【リリールート】
頼れるお嬢様な彼女に面倒見てもらいつつ恩返しするルート。
お話が一番理解しやすくて、ラストの熱い展開も含めてすごくまとまりのよかったルートでした。
正直、最後まで「何故リリーみたいないい子が久夫に惚れてくれたんだろう……!?」と思ってしまっていたのですが。やっぱり彼女がよく言っていた、誠実さというのが決め手なんでしょうかね。
他ルートと比べるとけっこう初期からキス等のアプローチが飛んできたのでとってもドギマギしました。プレイ後の今にして考えると、ちょっと大人な雰囲気の彼女に良いようにされる感じがあって、まさにこのルートらしい展開だったんですよね。
行動としてはぐいぐいくるのに、あんまり距離が近くなった感じがしないなーと思っていたんですが、それが見事にラストへ繋がってくれて楽しかったです。
リリールートでも一発ベストエンド達成。やったぜ。とにかく正直であればいい感じだったので攻略も楽でした。後で他のエンドを回収しようとして気付いたんですが、リリーに関してはベストエンドまでの道のりにバッドエンドが含まれてる感じなんですね。
長距離恋愛は現実的じゃない、っていうリアルな考え方をしているのがツボでした。その辺りをロマンだけで済ませない辺りにこだわりを感じます。こういう思考大好きです。
で、エンドに到達して。本当私が穿った見方をしているんだと思うんですが、これってかなりの依存愛だよなーと感じまして……いやだって命をかけて彼女を引きとめてってこれリリーからの想いがあったからとんとんに見えますが下手するとかなりの脅迫だよなーなんて……考えてたらすごくヤンデレ萌えしました。ごめんなさいごめんなさいでも萌えませんかね。
R-18のシーンもリリー優位が多め。目が見えないからこそ~な描写がかなりキました。それこそ感情移入しまくって盛り上がりました。下着が可愛くて素晴らしい。というかここまできてやっと気付いたんですが作者さん騎乗位好きですよね?ね?必ず1回は入ってる気がします。
カップリングとしてリリーと久夫の二人はめちゃくちゃ絵になって好きです。超かっこいい。それこそああいった大人のお店の雰囲気もしっくりきます。道歩いてたらきっと二度見するレベル。
ミーシャの茶髪ロングの話がしっかり語られるのはこっちのルートでなんですね。先に静音ルートやったときに、スチルをみてちょっとひっかかっていたんですが、無事に解決して良かったです。
晃さんも是非攻略したかった、むしろ姉妹丼になって刺されてもいいくらいの魅力的なサブキャラクターでした。
【華子ルート】
多分好みの子だろうなあと思っていたので最後に取っていたルート。
引っ込み思案で大人しい子なイメージは勿論あるのですが、バッドエンドやトゥルーエンドではぎょっとする一面も。無害だと思っていた子がどす黒いもの溜めこんでるのはかなり衝撃的なんですが、でもこれ、現実だと当たり前っちゃ当たり前なんですよね……。ちょっとしみじみしました。
どうやら彼女はバッドエンドがかなり多いようで、私自身、最後の最後で一回ミスしてバッドエンドに行ってしまいました。
リリーに一理あるって言ってるのに久夫が言うこと聞いてくれない展開はかーなーりストレス。あれなら街に行く行かないの選択肢を間違えた時点で選択肢消して強制バッドにして欲しかったです……。そりゃ華子も怒るわな。私でもそうする、だれだってそーする。押し売り善意ほど苛立つものはないです。
でも激昂する華子とか、嫌いって叫ばれる展開には良い意味で度肝を抜かれたので、まあうん。あの言葉は、華子が自分自身に苛立っててそこを久夫が抉りに来たからその怒りが過激に表出したんだろうなーと解釈してます。嫌いって言ってるけど嫌いだけじゃないというか。一時的に感情がそっちに振りきれただけ、みたいな。にしても、友達で本当大好きなんだけど嫌いって叫びたくなる時ってのはわかるので、かなり共感できました。
トゥルーのほうは、今までかなり共感できてた華子が全然違う人みたいに見えて戸惑いました。でも、この感覚こそ、本編で久夫が感じていたものなのかもなあと思ったり。私としては、華子が愛からとかじゃなくてただ久夫を引き留めるため、飽きられないためにああいうことをしたと読んでるんですが……あってるよね? こう書いちゃう時点で情けないね?
といってもラストで華子はすさまじい強さを見せてくれたし、何より一番最後の贈り物の演出が少女漫画もびっくりの胸にきゅんとくる展開だったので、読後感はかなり良かったです!
リリー編であっさり華子の閉じこもりが解決していたぶん、ルートが違うだけで出来事の重みが随分変わるんだなーと思いました。リリー編だと、腫れものにせず干渉しすぎずの態度が良い具合に作用して解決したと考えたらいいのかな。リリー編での華子閉じこもり事件は華子編のノーマルエンドと似通っているのかもしれませんねぇ。
華子の性格からしてR-18なシーンは辿りつけないかむしろ無理やりになってしまうのではとはらはらしていましたが、なんとか愛ある?展開になって満足でした。黒ストわぁい。
とまあ、こんな感じで。
- 外見の好み 静音・華子・リリー
- 全クリア後の好み 琳・リリー・華子
- ルートストーリーの好み 琳・リリー・華子
- ムービーの好み 琳・華子・静音
でした!
こうして挙げるとやっぱり私は琳と華子がお気に入りみたいです。
なんにせよ、かなりの長時間をじっくり楽しめました!
日本語翻訳スタッフ様ありがとうございます~ もちろん作者様も! ここで書いてもしようがないかもしれないけどw
ではこの記事はこの辺で。
長文にお付き合いありがとうございました!