うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「牟奄-ムエン-」感想

「千切れた腕は自分と呼べるのか?」
分身呼びが気になる前置き。

 

えー、今回はProject Gemさんところのフリーゲーム牟奄-ムエン-」の感想をつらつら書きますね。

追記にて長ったらしい考察文。けっこうレビューっぽい文章になっちゃってるかも。


アジアンテイストな世界観でお送りする、短編アドベンチャー。プレイ時間は2時間かかるかかからないかくらいでした。公式サイトがかなり雰囲気あってかっこいいので、未プレイの方はとりあえずサイトのほうを覗いてみることをオススメします。

 


では、さっそく魅力的だった点から。

 

 

とにかくハイクオリティ

まず初めに。クオリティはかなり高いです。
システム面ではかゆい所に手が届き、文章もテンポよく、フルボイスの演技力も感嘆物で、グラフィックも見ればわかる通り独特の世界観を表現しきっていてとても綺麗です。
とにかく出来の良い物をやりたいならDLしてみるのが吉かと。
続いてもう少し詳しく書いていきますね。

 

 

シンプルイズベストなシステム

ノベルゲーに必要な基本システムは勿論搭載。ボイスもオンオフが聞きますし、オートモードでもボイスを最後まで聞いてから進めてくれます。ボイス優先で少し下がるBGMのほうまで調整ができる、隅々まで至れり尽くせりなシステムです。
即死イベントに入る分岐点でオートセーブがあるのも大変ありがたい……! セーブロードで反応を見直す時、大いに役立ちました。

途中のミニゲームもちょっとしたアクセントとして効果的でしたね。アクション苦手なので難易度低くて助かりました。

 

 

キャラの魅力が数倍のフルボイス

マオの声優さん、魅力的でしたね!!! トラブルメーカーなマオがチャーミングに見えるのは、あのボイスも理由の一つだと思います。
もちろん、マオだけとは言いません。どのキャラのボイスもイメージぴったりで、まさにハマり役でした。どの人も滑舌良くて聞きやすいのも一番のポイントですね。
加えて、ウィンドウが非アクティブでもボイスが流れてくれるのはさりげなく助かるシステムでした。

 

 

きっちり組みたてられた世界観

物語の舞台はアジアンファンタジーなテイストです。独自の世界観がしっかりしているので専門用語も出てきますが、それに至るまでの流れが丁寧なので、すんなりと受け入れられます。
背景画像やティモンの服装などを見ていると、一度観光に行ってみたくなるくらい魅力的な世界観でした。この作品は短編ですが、それこそ大長編のストーリーでも十分活用できそうなポテンシャルを感じます。設定資料集欲しい!w
エンドロールで見られる設定画も楽しかったです。ああいう形での裏側公開は本当嬉しい限り。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。
とにかくクオリティの高い一作です。
が、一か所だけ人を選びそうなところとして挙げますと……

 

 

やや頭を捻りたくなる考察メインのストーリー

 

「エンディングに辿りついても明確な答えは与えられません」「隅々を見て考察してください」といったことが公式サイトに書かれていることからも伝わると思いますが、はっきり言って読後感はもやっとします。唐突に終わります。それでも考察物は好きだし、と頑張ってはみたのですが……結果は追記にて。


擁護すると、シナリオ自体はとても良いんです。序盤の話の広がり方は凄く自然でしたし、キャラクターの行動も一貫していますし。

何より、あの特殊な世界観にプレイヤーが自然となじめるのは、物語上の構成がしっかりしているからにほかなりません。段階的に物語が進んで世界説明が成されていくあの自然さは、本当、真似したくなるくらいです。すげぇ!!


ただ。だからこそラストが惜しい。もっと言えば、考察メインの道を選ぶわりに解くべき謎が多すぎるように感じました。

 

思うに、考察メインの作品は「どうとでもとれる要素が多くちりばめられているパターン」と「たった一つの真実を求めるパターン」の二つがあると思うんですね。凄く乱暴な物言いをすれば前者がゆめにっきで後者がうみねこか。で、この作品は後者を求めて作られていると推測されるんですが……。
ならプレイヤーは何を解き明かせばいいのか?これがわからない。マオの正体について?ジーグイの存在について?地上世界と地下世界の設定について?そもそもこの物語は一体何だったのかというところまで?

それを“考察”で片付けろと言うのは少々プレイヤーに対して求めるものが多すぎるように感じました。


結論としては、プレイヤーに求める謎解きに関してもう少し誘導が欲しかったな、というところです。謎自体のヒントではなくて、とっかかりのヒント。あとは伝聞調じゃない確定情報も。

 

ここまで書いといて何ですが、ひとえに私の読解力がおそまつすぎるということも言えます。棚に上げてます。申し訳ないです。
また、だからこそ公式サイトに「プレイヤー自身が探求するゲーム」と書かれているのだろうとは思います。製作チームのやりたいことは、うん、わかっているつもりなんです。それでもやっぱり、もうワンステップほしい!なんてわがままを感じました。


初読で全て理解したって方とかカタルシスバリバリできっちり考察出してる方とかやっぱりいらっしゃるのかなー、と気になるところ。

 

 

 

と、いった感じで。
最後だけうだうだ書きましたが、繰り返すようにクオリティはとっっっても高く、プレイ中は楽しく読み進めさせて頂きました。
アジアン系の世界観が好きな方は試しに触れて見ることをオススメします!

 


追記ではネタバレ全開の考察解釈。

 

 

 


けっこう無茶なところもある考察。
ネタバレ注意です!!

 

 

 

(1)錆の病の原因は?

これは十中八九、地上の空気かと。
エンディング近くでマオが「空気が漏れて~」みたいなことを言っていたり、地上に出た瞬間ティモンが塵になったりしたことからこれは確定で、良い、はず。
また、トンネル内でティモンが「病で死んだ人を埋めると土が錆びる」と言っていたことから、接触感染もするのかも。外に出たエンドではティモンを抱きしめたマオも錆びていきますし。

 


(2)汽車の運転手の仕組みとは?

作中での描写(確定情報)

  • それぞれの区を行き来する特別な人達
  • ゴーグルやマスクが制服
  • 運転手になれば病の進行を遅らせる薬がもらえる

まず、この運転手達は皆病だと推測できる。薬を与えられることと運転手になることが取引条件にされるってことは、それだけ運転手が人手不足ってことになるはず。運転手は病ですぐなくなり、薬を条件に次の欠員を補充し、その人もすぐなくなり――な短い勤務スパンがあるのではなかろうか。
で、注目したいのは運転手の服装。これ、空気感染を避ける防護服っぽいですよね。ここも(1)の補足になるかと。

汽車の運転手はただでさえ地上の空気に触れやすい。さらに言えば、普通に地下世界で暮らしているぶんには気付けないこと(地上の存在や病の原因について)知る機会が増える。
その点、初めから重度の病の者を送りこんでしまえば、仮にすぐ死んでも諦めはつくし、仕事柄機密情報を知ったとしても短い寿命じゃ何もできないと判断できる。そんな感じかな?
この辺りの運転手システムにおける上部機関は壱区にあるんだろうけど……壱区の描写はほとんどなかったからこれ以上は何とも言えない。

とりあえず、汽車に携わる人達は地下と地上のパイプ役、あるいはそれに準ずる人だと自分は考えている。

 

 

(3)シャシャは何をどこまで知っていた?

さて、(2)を前提に進むとしたら、シャシャがどこまであの世界の情報を握っていたのかが気になってくるところ。

仮に地上の空気が病の原因であると知っていたなら、シャシャの性格からして全力でティモンを止めにかかると思われる。でも、彼は外に出ることを渋ってはいたけど、命の危機とかそういう切迫した感じはなかった。
加えて、「帰ってくるよね友達だもんね」といった感じの台詞をシャシャが言っていたことから、シャシャが恐れていたのは「外に出てティモンが死んでしまうこと」ではなく、「ティモンが地下世界を去り、自分と二度と会えなくなること」だと思う。要は、地上に出ても死にはせずまた地下に帰ってこれるとシャシャは思っていた。
以上から、シャシャは「病の原因が地上の空気である」ことについては一切知らない、んじゃないかなー?

このことから、運転手であっても地下世界および地上世界の全貌を知っているわけではないと推測できる。
上司的な人達は、汽車を運転する上で必要最低限のことしか教えていないのかもね。ジーグイという存在のことと、地上が存在しているってことくらい。せいぜい、地上はあるけどその存在自体は秘密ね言ったらクビよ、の範囲じゃなかろうか。

 


(4)ジーグイって結局何者?
「怪物」と称されていたジーグイ、結局あれは何なのか?

確定情報としては、

  • シャシャはジーグイという名前を知っていた
  • マオの台詞「資料通り、肉体だけは頑丈みたいね」→この後シャシャの沈黙台詞がいくつか
  • ティモンは怪物としてしか知らなかった

まず、ジーグイについて平凡な地下住人は知らず、特別な職である運転手は知っているような存在であるということが言えそう。
さて、ならマオは知っていたのか?資料とは?これについては(5)に回すとして。

ジーグイの見た目は、人の面、腕の形をしている脚部、布に覆われた姿……。
ぱっと見こそバケモノじみてはいますが、これよくよく見ると各部分はとても人間っぽいんだよねぇ。


で、ここで思い出すのがマオの身体について。
マオの身体も袋に入って捨てられていた。しかもわざわざ汚マークつきの袋に。で、マオは生首状態でも動ける。一方、ジーグイも部品の継ぎ合わせっぽい外見のわりに動ける。

つまりジーグイって地上人の慣れの果てなんじゃないのか……?
もっと言えば、空から落ちてきたがらくたみたいに、空から迷い込んできた地上人がバラバラにされて袋に詰められた結果があれでは、と思う訳なのだが。この辺りは妄想も入ってるので何とも。いかがざんしょね。

でもこれだと、どうしてあの欠片を苦手とするのかの謎は解けないままなんですよねー。それにあの欠片は結局何なのかってところも。これについては皆目見当がつきません。

 


(5)シャシャとマオの内緒話なんだったの?

シャシャがいったん駅に帰ろうと申し出たところ、マオがごにょごにょして、やっぱり頑張りましょうと意見が変わるあのシーン。
あの直前、ジーグイを吹っ飛ばすシーンで(4)でも挙げたマオの意味深な台詞やシャシャの沈黙が入るんですよね。

とりあえず、マオの「資料の通り~」の台詞でシャシャがマオの後ろ暗い部分に気づき、ティモンとシャシャを引き離そうとして駅へ引き返すことを提案したのだと思います。
けれどもマオが内緒話でそれを阻止した、と。
何を言ったのかはぶっちゃけさっぱり。

 

仮にシャシャがマオを敵視していたなら、いくらジーグイからティモンを守るためと言えど再びティモンとマオを二人きりにするはずはないと思うんですよね。だから、少なくともあの最期のシーンにおいてシャシャはマオを危険視していなかったということになる、はず。

となれば可能性としては、

  • マオに怪しさは感じていたが危険視するほどのものではなかった、内緒話でマオが嘘をついてティモンの敵ではないというようなことを言った
  • 内緒話でマオが後ろ暗い部分を明かしてティモンのために死ぬよう示唆した

辺りが挙げられるかな?
内緒話の後のシャシャが青褪めていて、脅されている感があったことから、三番目がありそうかなーと思いますが……。
やっぱり具体的な内容自体は全然予想がつきません!

 


(6)マオは何者?

エンディングとエピローグにおいて急に方向転換、というか黒幕っぽいポジションに変わるマオさんですが。
とりあえず彼(彼女?)の目的は本人が言っていた通り、「扉を開けること」です。で、扉を開けるとどうなるかと言えば、地上の空気が地下に思い切り流れ込むわけであって……極端に言えばマオの目的は「地下世界の滅亡」になるのかしらん。

「扉を開けないと上に帰れない」という台詞が、マオの責任感から来ているのかそれとも誰かに脅されてのことなのかも気になるところですね。非正規ルートで地下に来て、自分の目的まで忘れてしまっていたところを考えると、特攻スパイ的なものとも言えるのかなあ。
とりあえずマオは、地下世界の「資料」を読んで必要知識を得たうえで地下に来たことが台詞などから伺えます。エンドによっては手錠をかけられることから、やはり地下世界における敵のポジションなんでしょうね。この辺りから、地下世界と地上世界は水面下で対立しているらしいことも察せます。

 

でも、逆に言えばマオについてわかることってこのくらいなんだよなあ。

 

あとはマオの人となりについて、おちゃらけたオカマに見えつつ、地下世界の食糧自給などをズバっと切り込んできたりジーグイの対処で大活躍したり爆破したりと、かなりの切れ者のイメージがあるかなってところ。

他の疑問はまだまだ残っています。
例えば誰もが首を捻ったであろう「騙していた」という台詞について。
騙す相手はティモンだろうけども。どういう意味で騙したのか。外に出ればティモンが死ぬことを隠していたことを言っている? でも隠すことと騙すことは違いますよね。うーん?
身体がバラバラになっても継ぎ直し可能で動けるってのもよくわからないし。実はサイボーグとか?うん、ねーな。さすがに無茶でした。

とにかく、自分の解釈ではここまでが限界です。

 


(8)結局どういうストーリーだったの?

外に出るエンドの場合。
地上スパイのマオが地下世界の好奇心旺盛な少年ティモンを騙し、見事地下世界を滅ぼす話。地上の勝利。

地下に残るエンドの場合。
地下は唾棄すべき敵であると教えられたマオが、予想外に優しく良い人だったティモンにほだされて、マオ自身の任務を放棄し犠牲となる話。地下の勝利、または現状維持で引き分け?

こんな感じの水面下戦争話だったのかなーと思ってます。あらすじだけはね。

 


(9)タイトルの意味は?

牟:牛の鳴き声、むさぼる、うばう、矛
奄:おおいかぶせる、たちまち、ふさがる
(↑第二版角川漢和辞典より引用)

マオ、は発音によってはモウ(牛の鳴き声)にも取れるかなー?と考えたがちょっと無理やりかな。
地上スパイであるマオは地上の矛、だがティモンの存在によって刃に覆いがされてしまった……と考えればエンディグっぽい気もするけど。いやーでもやっぱりこじつけだなー。

あとムエンを変換し直すなら霧煙で塵になって消えていく感じが出てるかなーと思ったけどこれはもはや言葉遊びである。でもよくないですかね。なんて。
スタートするときのタイトル、よく見ると錆びてる感じでぞっときました。こういう、全て終わった後に戻ってくるとわかるタイプの演出好きです。

 

 

とまあ、こんな感じで。
あと気になる要素としてはティモンが地上人と地下人のハーフであるってことと、マオの腕辺りがちょっと錆っぽく見えるくらいですが……。どこにどう繋がるのかはさっぱりです。

 

なんとなく結論っぽいものは自分の中で出たけれど、これが正解!とは勿論言えるわけもなく、めっちゃもやもやしています。オススメの考察や解釈があればコメント欄に是非どうぞ。超見たいです。