「恐怖は目と目の隙間から来る」
ホラーの雰囲気作りってかなり難しそうな前置き。
えー、今回は凍土博覧会さんところのフリーゲーム「狂骨」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ウディタ製の短編ホラーゲーム。追いかけっこあり、謎解き難易度は高め、音で脅かすタイプの仕掛けはありません。じわじわくる不気味さを堪能するタイプのホラゲです。
というわけで魅力的な点についてあげていきますね。
セピア色と旧字体が織り成す明治の世界観
まず一番に見て頂きたいのが注意書き!
いやぁreadmeや取説に目を通すのは当たり前なんですが、こういうところから既に雰囲気が出てると没入感が違いますよね。
他にも、常にゲーム画面を覆うセピア色、少し胡散臭い宣伝混じりの張り紙、掲示物の文字順が反対なところや婚約者云々の設定と言い回しなどなど。あちこちに醸し出される明治らしい雰囲気にぞくぞくしました。
妖怪好きには涎もののギミックや引用
かの鳥山石燕大先生の妖怪図が引用されているように、妖怪好きならニヤリとくる場所がたくさんあります。雰囲気作りとしてだけでなく、謎解きのギミックになっているのがまた好ポイント! 風の神の仕掛けに気付いた時はテンションが上がりました。
なお、ゲームの必読等には書かれておりませんが作者様が京極夏彦ファンを公言されている通り、こちらの作品は「京極堂シリーズ」の影響がかなり強く見受けられます。が、単なるオマージュに留まらず、しっかり“ホラーゲーム”らしい味を出してあるのが本作の素晴らしいところ。これは前述したギミックに加えて、あの静かに襲い来るようなOPを見れば伝わるんじゃないかなと思います。
真相の影を色濃くする断片情報
さらに興味深いのが情報の落とし方。
新聞記事や博物館の説明書きなどの事実関係と、日記などの思わせぶりな文章が組み合わさって、最後にガチリとピースがはまってくれます。もうこれが気持ち良くって! 探索した分だけ見返りが出てくる感じで嬉しかったです。
また、作中で操作キャラ変更や視点切り替えが起こる時もあるのですが、別視点中も各キャラが動いて物語が進行しているのがわかるのも面白いところ。それぞれのタイムラインとか作ってみたら楽しそうだなあ。
あ、と言っても群像劇のように複雑になっているわけではなく根幹はシンプル、身がまえる必要はありませんのでご安心を。
一方惜しかった点としては、
一部ストーリーの展開
京極堂シリーズ好きな自分としては、一部の真相や後日談があまりにそのままに感じられて少しだけ残念でした。でも、前述の通りお話の全体像はかなり骨格のしっかりしたものです。それこそ未読の方は全く気にならない点かと思います。
もう少しを求めたくなる音響面
まずキークリック音、これがデフォルト音なのが非常にもったいない! 視覚面と内容面で良質な不気味さを醸し出しているぶん、ここも是非こだわって欲しかったところ。
そしてBGM、曲自体はお洒落なものが多かったんですが、博物館・明治時代・校舎などの印象とはちょっとズレがあるように感じてしまいました。序盤は和テイストなものから選んでも良かったんじゃないかなーと思いつつ、明治の洋風文化を意識してあえてやってるのかなあとも思いつつ。
ぐだぐだ書きましたが、雨音の使い方や最後の間に入った時のBGMが流れるタイミング、あれは本当震えるほど素晴らしかったんです。だからこそ、贅沢ながらもう少しと言いたくなってしまいました。
とまあ、こんな感じで。
セピアで明治な世界観や、妖怪のどことなく不気味な雰囲気、細かな情報が繋がっていくストーリーなどに惹かれる方へオススメです。
最後に、ネタバレ込みの感想をほんの少しだけ追記にて。
ネタバレ注意。
というわけで、ネタバレ込みで書いてしまいますが。
いやあ、最後までプレイして改めて見ると「ああー!」と思わされるところが多くてとってもカタルシスのある一作でした。
初めて奴に遭遇した時の反応とか特にそう。二度目で意味が変わって見える台詞って大好きです。
序盤の街・駅パートも、初めは明治な雰囲気を堪能させるためのものとして、次は彼女のキャラを深めるためのものとして。あの上手さには痺れました。序盤は笑える台詞を言ってくれたNPCに後からぞくっとする部分が出てくる辺りもまたホラーらしくて素敵です。
綺麗にハッピーで終わるほうのエンドも好きですが、鬱展開やヤンデレに萌える私としてはもう片方のエンドも大好きです。
どうもサイトを見た感じだと、二周目要素やおまけの拡張が構想されているもよう……?
次回作のご予定もあるそうですし、期待して待ちたいところです!