「永遠に遊び続けられたら楽しいのになあ!」
どうせ飽きるに決まってる前置き。
えー、今回はStarGazerさんところのフリーゲーム「クロノウサギ#5/END」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
一本道ノベル。各話連載の形でアップされていたらしく、それぞれの章ごとにDLもできますが、この「#5」のバージョンなら一括で完結まで読み進められるので新規の方はこちらがオススメです。
というわけで、特徴など。
ループする世界に立ち向かうストーリー
元々DLを決めたきっかけがここ、ループものという一点です。何度もリセットされる無力感って、ぞくぞくしますよね……。後悔と鬱展開の話もなかなかにドロドロでした。
多層式のパラレルワールドが出てくると話がややこしくなるイメージもあるんですが、ことこの作品においては回想のタイミングがちょうど良くて、すんなり理解ができました。世界が繰り返すごとにじわじわと真相に近付いて行く、不穏さとカタルシスが入り混じる感じも好きです。中だるみが無かったのもグッド。
何よりも、終盤の盛り上がりが絶好調で、あれだけでも読んだ価値はあったよなあと思いました。
アンドロイドと人間の境界
アンドロイドは人間か~等々、アンドロイドものだとスポットを当てられがちなこの部分にも上手く斬りこんでましたねぇ。ハルカの出した結論には唸らされるところがありました。
ハルカとカルディア、二人のアンドロイドの対比構造も素晴らしく上手でした。どちらも健気なんだけど、その方向性が異なるというか、本当根本は同じなのに対照的なキャラって良いですよね。
一方気になる点としては、
駆け足のラストと消化不良の黒幕
直前までの盛り上がりが実によく、完成されているからこそ出てきてしまう不満点なのだろうとは思いますが。ラストが駆け足で、メインヒロイン等を選ぶこともなくふわっと終わってしまったのが少し消化不良でした。
ジャンルがミステリとなっているので、読者に委ねるところを残すためかもしれませんが……ここは語り過ぎるとネタバレになるので追記にて。
あと余談として、これはあくまで私の縁が悪かった話なんですが、VR等が現実のものとなっている昨今にこの作品を読んだのはもったいなかったなぁと。もうちょっと早めに出会っていれば、近未来設定にも心動かされたのかもしれません。
とまあ、こんな感じで。
アンドロイド、ループもの等にピンとくる方向けの一作でした。
追記ではネタバレ込みの所感など。
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ネタバレ注意。
タイトルについて
初めは黒の兎だとばかり思っていて、白ウサギに対するクロウサギが出てくるのかなーと妄想していたのですが、ソーちゃんの資料を二回目に見たところでやっとクロノスウサギってことかなーと気付きました。遅い!
終盤の展開について
いやー、やっぱりどうしても気になってしまうのが終盤です。
家族の話に回帰したのは綺麗だと思いますし、主役はやっぱりハルカと吉光だったのかなあと思いもするのですが。欲を言えばもう一声欲しかった……!
あとそもそもなのですが、最後のループの世界で親と離れて暮らすことになった原因は何だったんでしょうね? 足が元に戻っているのなら、親と同居していてハルカが消える(というか買われない?)世界が構築される可能性もあったと思うのです。
朱乃が最後の世界を構築する際、気軽にお宅訪問するため、無意識ながら吉光の親の存在を遠ざけたとか……? でもハルカとまで仲良くなれる彼女ならわざわざ両親を退けなくても、むしろ親公認の関係が築けそうな気もします。
あとはモノリスがなるべく過去ループ世界との齟齬を無くすため、共通項がより多くなるような形で世界構築を行ったとか。
あるいは、朱乃の願いがやり直したいどうこうの域を越えて、みんなが幸せになれますように的なニュアンスだったので、ハルカの幸せも含められるように構築されたとか。
うーん。ロマンがあるのは最後の案だと思うんですが。
うっかり読み飛ばしてる可能性が強くてはらはらしつつ、この辺りもうちょいあからさまにして欲しかった気持ちもありました。
諸々の謎について
根本としてモノリスってなんだったんでしょうね。
ミカヅキウサギはこう、消去法で該当者が絞れなくもない気はするのですが。モノリスは正体不明すぎて消化不良でした。不思議パワーとしても良いんでしょうけど、ここまでの展開がきっちり丁寧に編み上げられているぶん、問題の根本だけがふわっと浮かんだままなのは気になっちゃったり。
とここまで書いてそわそわしてしまっていますが、ミカヅキさんって彼ですよね? あの……うっとうしい感じで雑に扱われていたあの……。明るいキャラが闇を持っているのは萌えますしあのハイテンションはヤクのせいと考えればなるほどと思ってしまう反面、違ってたらめっちゃ恥ずかしい気もしています!ひい!
ミカヅキウサギの部分もエピローグでスポットを当ててほしかったですねぇ。
「誰の目にもとまらなくなった」という風な描写をするためああなったんだろうなあというのは理解もできます。だとするなら最初から最後までミカヅキウサギはモノローグも無し、という思いきった構成もできたかもしれませんが、やっぱりそれだとモノリスみたいな消化不良が残るんでしょうし。うーんうーん、やっぱりあの形に落ち着いてしまうのかなあ。せっかくなら深く読みたかった気持ちもありはしますが、ここは致し方なしですよね。
それとネタバレ関係で書きたいのがカルディアのこと。
カルディアがいたかどうかでハルカを好ましく思えるかどうかがバキっと分かれる気がします。あの子は本当に良い役割をしてた。かつ、サブキャラらしく話の枠は取り過ぎず、終盤の勢いと共に退場したのも衝撃度が増してなお良かったです。
お互いにマスターの笑顔を求めているというのもまた、心に刺さりました。
制限が無ければ人にはなれない~というのを万能になりつつあるハルカが言ってのけるのもまた、含蓄が合って良いです。
あとヤンデレ好きとしてはハルカがダークサイドに堕ちきってしまいそうなところや、隠れて恋情を吐露しているところなどに大変萌えました。
という感じで。
一気読みしたくなる作品だよなあと思います。