「残りのページを数えるよりは、お話の先を予想する方が楽しい」
終わりがあるのが悪いわけではない前置き。
えー、今回はJelikoさんところのフリーゲーム「遺書」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
一本道短編ノベルゲー、美しい雰囲気の一作です。
繊細で穏やかな別れの話
タイトルからして別れを想起させるこの作品ですが、雰囲気としては終始穏やかです。彼女へのプレゼントを考える彼と、部屋に来た彼を迎える彼女。一つ一つ柔らかく沁み込むような文章が多くて、シンプルなはずの話なのに、なんだかとてもきらきらして見えました。
初めは文字が小さめで読みづらいなあと思っていたんですが、一言一言をゆっくり拾っていくこの雰囲気には合うよなあと思い直したり。背景も枠のその向こうを考えたくなるような綺麗さがあって、お洒落な雑貨屋の雰囲気がありました。
小説とステンドグラスとチョコレート
また、良いなあと思ったのは話の端々に出てくる小道具の数々です。
まずあのチョコレートのくだりからして素敵ですよねぇ。
特に私は彼サイドから始めたので、「どうして彼女がチョコレートを?」という小さな疑問から、彼はどれを選ぶのか、彼女はどんな反応をするのか、彼と一緒になってどきどきしながら読み進めました。
彼の気持ち一つ一つは現実にありえそうな、とても身近なものなんですが、これがお話となると小さな謎やきっかけとなってくれて「先が気になる」という気持ちを膨らませてくれたように思います。
彼らの背景事情についても、あえて言い切る前に扉の音で察せれるような展開にしてあるのも上手いなあと思わされました。
他にも、パッと目を引く美麗なイラストや、おまけとして読めるなれそめ話なども魅力的。
クリア後は自然と「素敵な時間をありがとう」と言いたくなりました。
本が好きな人や、恋人との穏やかな時間にあこがれる人、切なくもあたたかいお話が好きな人に強く強くオススメしたい一作でした。
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