「プレゼントを頂くのは恐縮なので悪い子になります」
良い子は気遣い屋さんな前置き。
えー、今回はタンクタウンさんところのフリーゲーム「クミとクマ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
基本システムはデフォルトですが、かなり丁寧なチュートリアルや公式サポート掲示板があるため、RPGが初めてな人にも安心して勧められます。
というわけで良かった点など。
王道と絡め手が上手く生きるストーリー
少女がファンタジー世界に飛ばされてしまい、魔王を倒す勇者として旅に出る。おおまかなあらすじはこうなるのですが、この作品の面白いところは、随所で王道な展開に捻った要素が加わるところです。
魔王を倒しに向かうのは、選ばれし少女と若く熱意に溢れる騎士、そしてクマのぬいぐるみ。そう、クマのぬいぐるみです。関西弁です。これでファンタジーの世界観を保てているのがまた素晴らしい。
他にも衝撃的な再会のドシリアスなシーンで突如迷言が飛び出してきたり、闇の商人が芸人もびっくりなアイテムを持ちだしてきたりと、こちらの予想をズラしてくるのが絶妙に上手です。
それでいて、泣かされるところは泣かされちゃうんだから、上手いですよねぇ。
日常の描写と細かな動きの丁寧さ
外に出る時は靴を履く、三人家族だとホールケーキは余る、お裁縫には道具が必要、雪が降るならフードを被って、空を飛んだら髪が揺れる。
そういった“当たり前”の描写をとても大切にされている作品でした。
この作品は街中にかなりの数のアイテムが隠されているんですが、アイテムよりも上記のような、自然だけどどこかくすっとくる会話を見たいがために探索していたところもあった気がします。
ドットの動きや会話分岐が細かいんですよねぇ。
仲間が増えたり減ったり操作キャラが交代したりした時には、ついつい本筋を脇に置いてあちこち練り歩いてしまいました。意外なところで反応してくれたりして、凝ってて素敵です。
異世界にぽんと飛ばされてもどこかあったかい感じがするのは、こういった細やかなところで共感を抱けるからかもしれません。
寝て起きた時のワクワク感
クリスマスまでにラスボスを倒す、というのがひとまずの目標になります。とはいえ多少のんびり進んでも余裕のある設定にはなっているようで、延長もできるらしいのでご安心。
それで、良いなあとまず思ったのがカレンダー!
一家に一つは過言としても、一つの街に一つは必ずあるんですよね。我が家にはなぜか四つありますが。ともあれこういうさりげないところに日常的なものがあると、なんだか身近でいいよなーと思います。
また、驚いたのがロード時に今日は何日か教えてくれること。
喋るキャラもランダムですし、経過日数によってセリフも変わるというこれまた丁寧な会話分岐が設定されています。惚れるしかない。
今日はどんな日にしようかな、みたいな休日のわくわく感がよみがえってくるようでした。
余談ですが、夏休みに起きた時がすごく楽しみだったのを思い出します。早く起きたらゲームができるし遅く起きてもいっぱい寝られて幸せ。良い時代だったなあ。
コミカルな会話で気絶も目覚めるバトル
そして、RPGということでバトルにも注目。
ボスは基本固めで回復量が多く、長期戦が前提です。きっちり街を歩き回っているなら勝機はありますが、レベリングも探索も苦手……となると少々難易度は高いかも、なんて。
けれども救済措置として面白いのが戦闘不能になると次ターンで復活させてもらえるシステムです。クマからのツッコミ、クミの応援、ウェハースの喝入れ等々、どれも個性的でキャラ同士の関係性がわかるのも面白いところ。ランダムで復活する時としない時があるのも、ほどよいハラハラ感を味わえます。
気絶復活もそうなんですが、バトル中にとにかくキャラが喋りまくってくれるんですよねぇ。ボスによって会話も変わるという、本当に掛け合いの楽しい作品です。
惜しい点・合わなかった点
一方、気になったのは、
- 終盤までの移動手段の無さ
- 一度入ると強制的に日数経過する展開
- 時期限定のサブイベント
辺りでしょうか。
移動のテンポについては言わずもがな、かなり前の作品なので仕方がないとは思うのですが全体的に動きはちょっともっさりしてます。吹き出し表示のウェイトが長めだったり。でもここは腰を据えてプレイできるということで。
あと日数やサブイベは、やっぱり一度警告や日数経過を察せれるちょっとした会話があると良かったなあと思います。基本的に取り逃してもカバーは効くようにアイテム数は調整されているようですし、日数にも基本余裕はあるのですが……やっぱりあると気になってしまうもので。
とはいえプレイに支障のない範囲ですので、アイテム集め等気にならない人は全然だいじょーぶ。周回プレイをして回収する手もありますしね!
とまあ、こんな感じで。
これぞ王道、これぞほのぼの、まさに子どものための素敵な世界観でした。
公式サイトには攻略ヒントや掲示板もあるので、困ったときには是非。
大人も子供も楽しめる、少女の成長を見守りたいor一緒に成長したい人向けです。
追記ではネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意。
思い切り伏字無しぼかし無しでエンディングに触れてます。
まずエピローグ、クミが自分の足で歩いておうちへ帰るのがいいなあって思ったんです。
ラスボスを倒した後の街を回れるゲームって、なんとなくお別れを言う準備をしているみたいで、切なかったりあったかかったりするんですが。クミがおうちに辿り着く最後まで、プレイヤーの手で導いて、ちゃんとお別れさせられたのが本当に良かったなあって。泣きます。
何が響いたってやっぱり、仲間との別れですよね。
クミからウェハースへの最後の問いかけってものすごく重たいものだったと思うんですよ。
あの問いができるってことは、クミ自身も魔王を倒すなんて無謀だって考えが一度は浮かんだってことだと思うんですよね。大口開けてきゃっきゃと笑うクミは、決して子供っぽいポジティブさでここまで来たわけじゃなくて、周りの事情を飲み込んで動いてきた子だったんだなと。そう思ったらもう言葉も出ませんでした。
ウェハースからではなくクミのほうから、もう姫はミルフィーユなんだと言えるのも凄いところです。下手な大人より大人だ…!
そして、そうやって大人な成長を一歩見せたところでグレちゃんとのあのシーンですよ。泣くしかありませんよ。
エピローグの世界を自分で操作していく時点で、なんとなくこの物語とのお別れを察してはいたのですが、それでもここは心に来ました。まだ続いてほしい、別れたくない。そういえばクミが明確に「嫌だ!」ってだだをこねたのはこのシーンだけだと思うのですが、どうだったかな。
グレの「ちゃんとした大人になるには自分が邪魔になってしまう~」的な説得が辛かったです。ライナスの毛布は剥がされてしまうし大人になるとぬいぐるみとは添い寝をしなくなってしまう……。
だからこそ、エンディングは最高のクリスマスプレゼントでした。クミとグレが直球に通じるのではなくて、間に切ない設定が挟んであるのも好きです。
プレイヤーのサブイベ回収具合がダイレクトに影響するのも嬉しいんですよね…! ああこんなことあったなあ、一緒に歩いて来てよかったなあ、みたいな。
で、こちらのティッシュ箱を使い尽くさせておいて開発室のあの一言ですよ!泣き笑いにもなりますわ!99回身ぐるみ剥ぎました!
もうねー、この落ち込ませすぎずの明るい締め方が、世界観に合ってるなあと思います。
次点で思い入れ深いのはバニラアイス周りでしょうか。
初見からして敬語かつカッコイイキャラとして気になってはいたのですが、まさかああいう展開になるとは思ってもみませんでした。良いですよね参謀っぽくて。
彼が絡むとウェハースがどことなくかわいくなってしまうのがなんか萌えました。グレちゃんとは好敵手って感じなので、また新たな一面が見れる感じ。
こちらはソードオブファイア全強化・ドラゴン魂・練炭石改改をゲット済みだったのでかなり楽勝だったのですが、せっかくならもっと早めにラスダンへ挑んでありがたみを噛み締めても良かったかなーと思います。
あ、ちなみに12月16日クリアでした。
ほのぼのゲーかあ、と気楽に始めたはずなのに、気づけばガッツリやり込んでいた気がします。ぶわっと泣いてにっこり笑顔で終わった明るい作品でした。